上 下
4 / 11

1-4. JSとの戯れ

しおりを挟む
【保健室】

「うへへ。可愛いなあ~」

 ポプラは反省の色を見せることなく、ベッドで寝ている幼子のことをヨダレを垂らしながら見ている。
 スケベ面から校内一の美少女の面影はなく、どちらかといえば、初めてのエロ本をみた男子のようでもはや無邪気さすら感じる。

 見たところ、この幼子は小学生だ。
 先程、背中に背負っていたのはランドセルだった。
 それに、微かに膨らむ胸元には小学校の校名とこの子の名前である伊地知光いじちひかるという名札が着いていた。
 因みに俺はロリ専門の魔術師ではないのでその膨らみに鼻の下は伸ばさない。

「しかし......。どうして、小学生?」

「うむ。ワトソン君。私が考察しよう」

 ほう......。
 では、聞かせてもらおうじゃないか。

「恐らく、この子は自発的にこの学校に来たのではない。誰かに連れて来られたのだ」

「どうしてそれが?」

「この子の小学校はここから遠い。距離にして4kmはある。そして、今は夕暮れ間近。そこまでしてこの高校に来る理由がこの子にある? 恐らく、これは誰かに連れて来られたとしか考えようがない」

 ポプラはドヤ顔で胸を張った。
 いや、そんな、名探偵っぽいのは言い方だけだから......。

「俺は違うと思う」

「ん? じゃあ、何だってのさ!」

「強制的にここに連れて来られたのなら、この子を連れてきた奴がいないのがおかしい。そして、何より、この子は何て言ってあの教室に来たか覚えてるか?」

「え? うん。友達部ってここですか? って」

「そう。あの教室には部活名の書いてある札も無ければ校内のポスターも俺が全部剥がしたから『友達部』という言葉が出て来る事自体がおかしい」

 ポスターを剝がす時は本当に辛かった......。
 もう、いっそのこと、光の粒になって消えたいと思っていた。

「じゃあ、何でこの子はそれを知ってたのかな?」

 ポプラは頭を抱えている。
 おいおい。
 ここまで俺が説明してやったんだろ。
 お前が気付けよ!
 うんうんと唸っているポプラから答えが出て来る気配すらない。
 っうか、謎解きっぽい雰囲気出してるけど。
 これ、何の捻りもないからな。

「ふう。この子の名前何て言う?」

 俺は胸元の名札を指さす。

「伊地知光? ん? 伊地知?」

 やっと気付き始めたか。

「伊地知って名前は九州とか沖縄方面ではポピュラーな苗字だ。ただ、この千葉ではあまり聞かない。うちの学校に一人だけいるだろ? 伊地知って苗字が」

 流石にここまで言えば、ポプラの口から俺が求めていた名前が出た。

「あ! 生徒会長の伊地知恵いじちめぐみちゃん!」

「そう。恐らく、この子は生徒会長の妹か何かだろう」

 ってか、お前、先輩の事、ちゃん付けするなよ。
 お兄ちゃんはそういう上下関係うるさいからね。

「じゃあ、友達部を聞いたのって......」

「そうです。私がお姉ちゃんから聞きました」

 栗毛の幼子、もとい、伊地知光はむくりと起き上がる。

「光ちゃん... ...。さっきはごめんなさい!」

 ポプラは綺麗な90度姿勢で伊地知光に謝罪。
 先程と雰囲気の違う高校生を見た小学生は言葉に詰まりながらも。

「え、あ、まあ、二度としないでくださいね」

 と高い高いの禁止という重要な事はシッカリと主張した。
 流石、あの生徒会長の妹だ。
 小学生の女子が高校生に自身の意見を物申すというのは思っているよりもハードルが高い。
 先程の弱々しさは微塵もなく、芯の強い子だと俺に印象付けた。

「うん......。しないよ。高い高いわね・・・・・・

 ん?
 何か引っかかる言葉を吐くとポプラは伊地知光に抱きついた。

「いぎゃあああ!! 何ですか! 止めて!」

「いいじゃないの~! 高い高いはしないけどぎゅ~はさせていただきます!」

「お兄さん! 助けてください!!」

 伊地知光は見ず知らずの俺に助けを求める。
 しょうがない......。
 このままでは話が進まないしな......。

「てい!」

「いた!」

 空手チョップを受けたポプラは痛がりながらも伊地知光を離さない。

「てい! てい! てい!」

 殴打に次ぐ殴打!
 だが、カメのように固まり、離れる気配がない。

「うわああ!!! お兄さん早く!!!」

 伊地知光は再び、泣き叫ぶ。
 しっかし、うるせえなこいつ。
 あんまり、言うとブラックお兄さん出現しちゃうよ?

「てい! てい! てい!」

「おにいさああああ!!!」

 スピードが上がるにつれて俺のチョップの威力も加速度的に上がる。
 そして、夢中になった俺はやってはいけないミスをおかした。

「てい! てい! てい! あっ!」

「ぎゃっ!」

 俺の右手はポプラの後頭部を綺麗に横滑りし、抱き着かれて泣いていた伊地知光の額に直撃。

「......あ、あんまりだぁああ!!」

 と伊地知光は綺麗な顔をぐしゃぐしゃにして泣く。
 彼女は初めてこんな感情を味わったから泣くのだろう。
 俺にもこんな時期があった。
 ただ、すぐに慣れて涙は流れなくなる。
 泣ける内に泣いておくが良い。

「もう泣き止んだ?」

「今、泣いたばかりだよおおお!!!」

 いっけね!
 面倒過ぎてワープしようとしたけど俺、そういう力無かった!

「痛いね。怖かったね」

 ポプラは最後の将のような慈愛の心に満ちた声で幼子を撫でる。

「あんたのせいだから!」

 言うことは言う。
 本当に君は強い子やで。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

TSしちゃった!

恋愛
朝起きたら突然銀髪美少女になってしまった高校生、宇佐美一輝。 性転換に悩みながら苦しみどういう選択をしていくのか。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

君は今日から美少女だ

恋愛
高校一年生の恵也は友人たちと過ごす時間がずっと続くと思っていた。しかし日常は一瞬にして恵也の考えもしない形で変わることになった。女性になってしまった恵也は戸惑いながらもそのまま過ごすと覚悟を決める。しかしその覚悟の裏で友人たちの今までにない側面が見えてきて……

処理中です...