24 / 31
2章 傭兵団拡張編
2話
しおりを挟む
【前文】
ハッピーニューイヤー!
明けましておめでとうございまーす!!
【本文】
セントネルに店を出した事により僕の傭兵家業の頻度はさらに減り、今では商人のように働くことの方が増えていた。そんな僕を支えていたのはセナであった。奴隷として買った当初は反抗的な態度でいたが一ヶ月経った今ではかなり懐かれた。撫でてやると表情をへにゃ~とさせ、あまり構ってやれない日だと足にしがみついて来たりするなどと甘えてくる子犬のようになっていた。
セナがここまで劇的に変えさせたのは【創造】で新しい商品を創っていた時、金平糖を創ってみたんだがそれを恐る恐るセナにあげた所、警戒していたセナだがそれを口に含むと驚いていた。
「甘い。美味しい。もっと欲しい。ちょうだい!」
と、言ってくるのでもう少しあげると笑顔で食べる姿が可愛らしくつい撫でてしまった。前に撫でようとしたら睨みつけてきたのでやばいと思ったが、
「気持ちいい。もっと、もっと」
頭を手にスリスリと擦り付けてくる程には気に入られた。それからのセナの行動は何かと僕の後ろを付きまとって来た。そこで僕の秘書として仕事を教え、働いてもらった所、かなり優秀でだった。計算の仕方を教えれば簡単に覚えるし、倉庫のポーションの数を営業終了後に毎日チェックしていたのだが、僕がチェックしに行こうとしたらセナが紙を手渡してきて、
「数えてきた。偉い?褒めて、褒めて」
と言って僕の手を自分の頭の上に持って来て頭を擦り付けた。
このようにセナは当初からは想像も出来ない代わり映えをしていた。それから僕はセナばかりを構うようになってしまった事から、フィルやナナ、ミリアと言った子供達のリーダー格の子達の機嫌が日に日に悪くなっていき、その事にシュベインは僕に「大変だな」と言いからかってくる始末であった。
それからの僕の子供達のご機嫌取りは大変だった。デートまがいな事を毎日のようにさせられた。その為、1週間、2週間と時間が過ぎていき、気がつけば更に1月が過ぎていた。流石にのんびりし過ぎたと思った僕は対商会ギルド対策としての行動を再開した。
「現在の売り上げの主力商品はポーションだけど、今後は別の商品を売り出そていきたいと思う。そこで僕は人工エリクサーを売り出したいと思うが、フィル達はどう思うだろうか?」
僕の質問にフィル達は悩んでいた。まず、エリクサーという物がどんな物かを理解していない子供もいた。だが、ナナやフィルと言ったリーダー格の子供は理解しているようであった。
「エリクサーは今まで自然から取れる物の他にダンジョンなどでしか取れませんでした。それを人工的に作ったとなりますとかなり注目されてしまう事になると思います」
「フィル、ありがとう。僕もその事は懸念しているよ。だけど、商会ギルドを黙らせる為の商品が必要なんだ。他の意見はないか?」
僕がそう言うと直ぐにセナが手を上げた。
「エリクサーに含まれている効力を別々のポーションにする。そうすればエリクサーでは無くなると思う」
セナの発言に静まり返った。そして、僕は叫ぶように声を出した。
「それだ!!そうすればエリクサー程注目を集めなくて済む。偉いぞセナ~」
「褒められた~。ふにゅ~」
僕はセナの頭を撫でて褒めてやると、だらしない表情をしたセナから変な声が出た。
そんな様子を見ている子供達からは嫉妬や妬みの視線が僕ら2人を突き刺した。それに気づいた僕は咳払いをしてごまかし、セナを撫でるのをやめた。
「あぅ~」
セナは物足りなかったのかまたも変な声を出していた。
「では、今後はセナの意見を取り入れたポーションを新商品として売り出す。これにより商店組み、移動販売組みは今までに増して忙しくなるが頼むぞ」
「「「「「はい!」」」」」
行動方針を決めた後の行動は早かった。早速【創造】を用いてポーションを創り出した。
======================================
======================================
欠損回復ポーション
詳細 : 腕や足と言った四肢や体の一部などが、欠損した
時、このポーションを飲む事で、腕なら腕を足な
ら足と言った1部分のみ再生する。
(腕と足を欠損した場合、二回飲まないと片方し
か再生しない)
======================================
======================================
======================================
======================================
蘇生ポーション(10秒)、(15秒)、(20秒)
詳細 : このポーションは死んだ直後に死んだ者にかける
事で効力を発揮する。決められた時間内にかける
事で最低状態で生き返る。ただし、決められた時
間内に使われなかった場合、使用したとしても生
き返る事はない。
その為、使用するタイミングが鍵を握る。
======================================
======================================
======================================
======================================
解毒ポーション(小~特上)
詳細 : このポーションを飲む事で毒状態を回復する事が
出来る。効力は最低が小で低級のモンスターなど
の毒が解毒できる。最高は特上でS級クラスのモ
ンスターの毒でも解毒が出来るが、一部のモンス
ターの毒は解毒が出来ない。
======================================
======================================
今回新たに作ったのはこの3種類である。この中でも一番売れそうなのは蘇生ポーションだと僕は思う。同じ団の仲間が死んでも助かる可能性があるこのポーションは持っていて損はしないと思う。だから、買う人は多いと思う。作るのに苦労するという事で値段は高めに設定しておこう。これも安く売っていれば、たださえ目が付けられるのに更に目をつけられそうだ。
早速生産ラインも整えて、自動生産も始めた。生産された物は僕が転移して各所に届け、販売準備も完了した。
そして、次の日に各所で販売を開始した。確認の為に僕はディグル領の店で待機していたがナナの手慣れた手さばきにより客対応での問題は無かったが、蘇生ポーションと欠損回復ポーションの数を少ない量しか販売しなかった為に「在庫は無いのか」、「何でもう無いのか」などと言ったクレーム対応が目立っていた。
セントネル領の店にも顔を出したが、やはりこちらも同じような状態であった。ディグル領の店はナナがクレーム対応をスムーズに対応していたが、こちらは慣れていないせいか怒鳴る男の客のクレーム対応に店員の1人がおわれていた。
「おい!もう無いってどういう事だ!俺は蘇生ポーションが売っているって聞いたから、わざわざ買いに来たんだぞ!!」
「も、申し訳ありません。ですが、在庫がもう無いので今日届けられる荷物が届くまで売る事は出来ません」
「んだとコラ!予備の1個や2個くらいあるだろうが!出せやコラ!!」
「ひっ!」
離れて見ていたが店員も限界だろう。僕は店の奥からレジの方へ行き、怒鳴りつけている客に話しかけた。
「お客様、申し訳ありません。蘇生ポーション、欠損回復ポーションは製造が難しく数を揃えるのに時間がかかります。その為、販売出来る数も少ないですが、ご了承下さい」
僕は優しく対応したのだが、男の怒りは収まらなかった。
「んなこと知るか!こっちはわざわざ来てんだ!それに対応出来ねーのはそっちが悪いだろうが!」
「お客様の言うことも一理ありますが、運営する側としましては、どうしようも出来ない事もあります。これにはお客様にご理解していただくしかありません」
「んなことどーでもいいんだよ!わざわざ来た俺に帰れと言うのか!ああぁん!」
僕の後ろにいる店員はもう怯えに怯えてしまった。流石にこれ以上はアウトだな。
「ゴーレムよ、この者をつまみ出せ」
僕の言葉にゴーレムは男の腕を掴み外へと引っ張り出した。
「いてーなこの野郎!覚えておけよクソが!!」
そう言うと男は人混みに消えていった。
「他のお客様に迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。蘇生ポーションや欠損回復ポーションは明日には補充しておきますので、お求めの方は明日にまたご来店下さい。なお、数に限りがございますので、お求め際はお早めにご来店下さい」
僕はそう言って軽く一礼をした。
僕の言葉に店を出る者、携帯食料や回復ポーションを購入する者などと店はお客で賑わっていた。
「あ、ありがとうございます、カオル様!」
「いやいや、慣れてない中大変だと思うけど頑張ってね」
僕はそう言ってその子の頭を撫でてやり、店の奥に消えた。その時、撫でられた子は目をうっとりとさせて、他の子は妬みの目を向けていた。
店の事務室で僕は新たなゴーレムを考えていた。ディグル領の店にはアテナ、移動販売の方にはアイギスを回すとして、このセントネルに回すゴーレムがいない。なら、創ればいい、と思いどのようなゴーレムにするか悩んでいた。
・正義
・知恵
・商業
・魔術
・医学
これらを頭に浮かべた時ある想像が出来た。早速スキルを発動させ、オリハルコンを媒体に制作をした。
そして生まれたのが、『ミネルヴァ』である。盾と槍を持ち、アテナに負けぬ劣らぬ美貌を兼ね備えた知者がそこにはいた。
「私を生み出し者よ。あなたを我が主人と認めあなたの配下に収まりましょう」
「ありがとう。僕の名前はカオル。そして君の名前はミネルヴァだ。これからよろしく頼むよ」
「確かに名前を拝借致しました。これからよろしくお願いします主人様」
ミネルヴァの優しく微笑む笑みはどこか心温まる感じがした。
「君にはここの店で店員のサポートを主にして、ゴーレムをまとめ店の治安を守るのが今の君の仕事だ。僕がいない時は任せるよ」
「新参者ですが、頑張らせていただきます」
その日の夜、セントネル領の商店組みにミネルヴァを紹介した後、ミネルヴァにバルキュリーを渡し倉庫に明日の分を補充してあるのを確認した僕はギルドホールに転移して戻った。
次の日、僕は傭兵組みとシュベインで盗賊討伐クエストを受け、街道を歩いていた。
今回受けたクエストは子供達でも簡単にこなせる難易度だ。子供達のレベルも低い者で15、高い者で28とそこそこではあるが僕のスキルにより通常よりもステータスが向上している。そのおかげか僕がいない時はゴブリンやオークの討伐などのクエストをこなしている。だから、今回は少しレベルアップして対人に慣れてもらう為にこのクエストを受けた。
「もう少しで被害報告のあった所だ。カオルにいい所見せてやれ」
「「「「「おおぉー!!」」」」」
子供達のやる気が凄い。頑張った子や良い結果を出した子などを褒めて撫でてやっているうちに、頑張れば撫でられる、褒められると子供達は目の奥で闘士のようなものを燃やしていた。
「無理しないように頑張るんだよ。シュベイン、いつものように頼む。何かあったら僕も参戦するからな」
「おうよ!おし!お前ら2班に分かれて盗賊を捜索しろ。見つけてもすぐ攻撃するなよ。状況把握してから攻撃するんだ。無理だったら戻って来い。分かったら、行って来い!」
シュベインがそう言うと子供達はフィル組みとミリア組みの2つに班が分かれそれぞれ茂みに入っていった。
僕は空間地図を使い周辺状況を確認していた。フィル組みは西の方へ、ミリア組みは東の方へとちょうど反対方向に進んでいた。シュベインは2つの班の中心あたりにいる。
それから空間地図を確認していくと6つの赤点を見つけた。おそらくこれがクエスト目標である盗賊だろう。ミリア組みが一番近く、あと数分もすれば見つけれる距離にいた。僕は【トゥループサモン】を使い数体のゴーレムをミリア組みの方に送り出した。このゴーレム達は何かあった時の保険で、後方待機させる。
そんな時だった。グニャリと空間が歪むような感覚に襲われた。すかさず僕はゴーレムを召喚し警戒したが何も起こらず、空間地図を確認したが僕の周辺には何も反応はなかった。
「確かに何かを感じたはずだが・・・・・。それにこの感覚には覚えがある気がする」
僕は1人呟きながら、ゴーレム達を戻した。再び空間地図を使い子供達の様子を確認するとミリア組みが盗賊と思われる赤点と戦っていた。ゴーレム達が待機しているから危険ではないのだろう。そう思いながらフィル組みの方を見るとかなりの数の赤点に囲まれていた。シュベインも気づいたのかフィル組みの方に向かっているが、次々と赤点に襲われており、全然前に進めていない状況だった。
僕は空間地図で転移地点を設定し、転移した。
【後文】
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
昨日、今日と頑張り、1話分書き終えました。年明けに1話だそうと思っていたのですが、ギリギリでした。
誤字脱字があると思いますので見つけた時は感想にて教えて下さい。
それでは、皆さん良いお年をお過ごし下さい。
ハッピーニューイヤー!
明けましておめでとうございまーす!!
【本文】
セントネルに店を出した事により僕の傭兵家業の頻度はさらに減り、今では商人のように働くことの方が増えていた。そんな僕を支えていたのはセナであった。奴隷として買った当初は反抗的な態度でいたが一ヶ月経った今ではかなり懐かれた。撫でてやると表情をへにゃ~とさせ、あまり構ってやれない日だと足にしがみついて来たりするなどと甘えてくる子犬のようになっていた。
セナがここまで劇的に変えさせたのは【創造】で新しい商品を創っていた時、金平糖を創ってみたんだがそれを恐る恐るセナにあげた所、警戒していたセナだがそれを口に含むと驚いていた。
「甘い。美味しい。もっと欲しい。ちょうだい!」
と、言ってくるのでもう少しあげると笑顔で食べる姿が可愛らしくつい撫でてしまった。前に撫でようとしたら睨みつけてきたのでやばいと思ったが、
「気持ちいい。もっと、もっと」
頭を手にスリスリと擦り付けてくる程には気に入られた。それからのセナの行動は何かと僕の後ろを付きまとって来た。そこで僕の秘書として仕事を教え、働いてもらった所、かなり優秀でだった。計算の仕方を教えれば簡単に覚えるし、倉庫のポーションの数を営業終了後に毎日チェックしていたのだが、僕がチェックしに行こうとしたらセナが紙を手渡してきて、
「数えてきた。偉い?褒めて、褒めて」
と言って僕の手を自分の頭の上に持って来て頭を擦り付けた。
このようにセナは当初からは想像も出来ない代わり映えをしていた。それから僕はセナばかりを構うようになってしまった事から、フィルやナナ、ミリアと言った子供達のリーダー格の子達の機嫌が日に日に悪くなっていき、その事にシュベインは僕に「大変だな」と言いからかってくる始末であった。
それからの僕の子供達のご機嫌取りは大変だった。デートまがいな事を毎日のようにさせられた。その為、1週間、2週間と時間が過ぎていき、気がつけば更に1月が過ぎていた。流石にのんびりし過ぎたと思った僕は対商会ギルド対策としての行動を再開した。
「現在の売り上げの主力商品はポーションだけど、今後は別の商品を売り出そていきたいと思う。そこで僕は人工エリクサーを売り出したいと思うが、フィル達はどう思うだろうか?」
僕の質問にフィル達は悩んでいた。まず、エリクサーという物がどんな物かを理解していない子供もいた。だが、ナナやフィルと言ったリーダー格の子供は理解しているようであった。
「エリクサーは今まで自然から取れる物の他にダンジョンなどでしか取れませんでした。それを人工的に作ったとなりますとかなり注目されてしまう事になると思います」
「フィル、ありがとう。僕もその事は懸念しているよ。だけど、商会ギルドを黙らせる為の商品が必要なんだ。他の意見はないか?」
僕がそう言うと直ぐにセナが手を上げた。
「エリクサーに含まれている効力を別々のポーションにする。そうすればエリクサーでは無くなると思う」
セナの発言に静まり返った。そして、僕は叫ぶように声を出した。
「それだ!!そうすればエリクサー程注目を集めなくて済む。偉いぞセナ~」
「褒められた~。ふにゅ~」
僕はセナの頭を撫でて褒めてやると、だらしない表情をしたセナから変な声が出た。
そんな様子を見ている子供達からは嫉妬や妬みの視線が僕ら2人を突き刺した。それに気づいた僕は咳払いをしてごまかし、セナを撫でるのをやめた。
「あぅ~」
セナは物足りなかったのかまたも変な声を出していた。
「では、今後はセナの意見を取り入れたポーションを新商品として売り出す。これにより商店組み、移動販売組みは今までに増して忙しくなるが頼むぞ」
「「「「「はい!」」」」」
行動方針を決めた後の行動は早かった。早速【創造】を用いてポーションを創り出した。
======================================
======================================
欠損回復ポーション
詳細 : 腕や足と言った四肢や体の一部などが、欠損した
時、このポーションを飲む事で、腕なら腕を足な
ら足と言った1部分のみ再生する。
(腕と足を欠損した場合、二回飲まないと片方し
か再生しない)
======================================
======================================
======================================
======================================
蘇生ポーション(10秒)、(15秒)、(20秒)
詳細 : このポーションは死んだ直後に死んだ者にかける
事で効力を発揮する。決められた時間内にかける
事で最低状態で生き返る。ただし、決められた時
間内に使われなかった場合、使用したとしても生
き返る事はない。
その為、使用するタイミングが鍵を握る。
======================================
======================================
======================================
======================================
解毒ポーション(小~特上)
詳細 : このポーションを飲む事で毒状態を回復する事が
出来る。効力は最低が小で低級のモンスターなど
の毒が解毒できる。最高は特上でS級クラスのモ
ンスターの毒でも解毒が出来るが、一部のモンス
ターの毒は解毒が出来ない。
======================================
======================================
今回新たに作ったのはこの3種類である。この中でも一番売れそうなのは蘇生ポーションだと僕は思う。同じ団の仲間が死んでも助かる可能性があるこのポーションは持っていて損はしないと思う。だから、買う人は多いと思う。作るのに苦労するという事で値段は高めに設定しておこう。これも安く売っていれば、たださえ目が付けられるのに更に目をつけられそうだ。
早速生産ラインも整えて、自動生産も始めた。生産された物は僕が転移して各所に届け、販売準備も完了した。
そして、次の日に各所で販売を開始した。確認の為に僕はディグル領の店で待機していたがナナの手慣れた手さばきにより客対応での問題は無かったが、蘇生ポーションと欠損回復ポーションの数を少ない量しか販売しなかった為に「在庫は無いのか」、「何でもう無いのか」などと言ったクレーム対応が目立っていた。
セントネル領の店にも顔を出したが、やはりこちらも同じような状態であった。ディグル領の店はナナがクレーム対応をスムーズに対応していたが、こちらは慣れていないせいか怒鳴る男の客のクレーム対応に店員の1人がおわれていた。
「おい!もう無いってどういう事だ!俺は蘇生ポーションが売っているって聞いたから、わざわざ買いに来たんだぞ!!」
「も、申し訳ありません。ですが、在庫がもう無いので今日届けられる荷物が届くまで売る事は出来ません」
「んだとコラ!予備の1個や2個くらいあるだろうが!出せやコラ!!」
「ひっ!」
離れて見ていたが店員も限界だろう。僕は店の奥からレジの方へ行き、怒鳴りつけている客に話しかけた。
「お客様、申し訳ありません。蘇生ポーション、欠損回復ポーションは製造が難しく数を揃えるのに時間がかかります。その為、販売出来る数も少ないですが、ご了承下さい」
僕は優しく対応したのだが、男の怒りは収まらなかった。
「んなこと知るか!こっちはわざわざ来てんだ!それに対応出来ねーのはそっちが悪いだろうが!」
「お客様の言うことも一理ありますが、運営する側としましては、どうしようも出来ない事もあります。これにはお客様にご理解していただくしかありません」
「んなことどーでもいいんだよ!わざわざ来た俺に帰れと言うのか!ああぁん!」
僕の後ろにいる店員はもう怯えに怯えてしまった。流石にこれ以上はアウトだな。
「ゴーレムよ、この者をつまみ出せ」
僕の言葉にゴーレムは男の腕を掴み外へと引っ張り出した。
「いてーなこの野郎!覚えておけよクソが!!」
そう言うと男は人混みに消えていった。
「他のお客様に迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。蘇生ポーションや欠損回復ポーションは明日には補充しておきますので、お求めの方は明日にまたご来店下さい。なお、数に限りがございますので、お求め際はお早めにご来店下さい」
僕はそう言って軽く一礼をした。
僕の言葉に店を出る者、携帯食料や回復ポーションを購入する者などと店はお客で賑わっていた。
「あ、ありがとうございます、カオル様!」
「いやいや、慣れてない中大変だと思うけど頑張ってね」
僕はそう言ってその子の頭を撫でてやり、店の奥に消えた。その時、撫でられた子は目をうっとりとさせて、他の子は妬みの目を向けていた。
店の事務室で僕は新たなゴーレムを考えていた。ディグル領の店にはアテナ、移動販売の方にはアイギスを回すとして、このセントネルに回すゴーレムがいない。なら、創ればいい、と思いどのようなゴーレムにするか悩んでいた。
・正義
・知恵
・商業
・魔術
・医学
これらを頭に浮かべた時ある想像が出来た。早速スキルを発動させ、オリハルコンを媒体に制作をした。
そして生まれたのが、『ミネルヴァ』である。盾と槍を持ち、アテナに負けぬ劣らぬ美貌を兼ね備えた知者がそこにはいた。
「私を生み出し者よ。あなたを我が主人と認めあなたの配下に収まりましょう」
「ありがとう。僕の名前はカオル。そして君の名前はミネルヴァだ。これからよろしく頼むよ」
「確かに名前を拝借致しました。これからよろしくお願いします主人様」
ミネルヴァの優しく微笑む笑みはどこか心温まる感じがした。
「君にはここの店で店員のサポートを主にして、ゴーレムをまとめ店の治安を守るのが今の君の仕事だ。僕がいない時は任せるよ」
「新参者ですが、頑張らせていただきます」
その日の夜、セントネル領の商店組みにミネルヴァを紹介した後、ミネルヴァにバルキュリーを渡し倉庫に明日の分を補充してあるのを確認した僕はギルドホールに転移して戻った。
次の日、僕は傭兵組みとシュベインで盗賊討伐クエストを受け、街道を歩いていた。
今回受けたクエストは子供達でも簡単にこなせる難易度だ。子供達のレベルも低い者で15、高い者で28とそこそこではあるが僕のスキルにより通常よりもステータスが向上している。そのおかげか僕がいない時はゴブリンやオークの討伐などのクエストをこなしている。だから、今回は少しレベルアップして対人に慣れてもらう為にこのクエストを受けた。
「もう少しで被害報告のあった所だ。カオルにいい所見せてやれ」
「「「「「おおぉー!!」」」」」
子供達のやる気が凄い。頑張った子や良い結果を出した子などを褒めて撫でてやっているうちに、頑張れば撫でられる、褒められると子供達は目の奥で闘士のようなものを燃やしていた。
「無理しないように頑張るんだよ。シュベイン、いつものように頼む。何かあったら僕も参戦するからな」
「おうよ!おし!お前ら2班に分かれて盗賊を捜索しろ。見つけてもすぐ攻撃するなよ。状況把握してから攻撃するんだ。無理だったら戻って来い。分かったら、行って来い!」
シュベインがそう言うと子供達はフィル組みとミリア組みの2つに班が分かれそれぞれ茂みに入っていった。
僕は空間地図を使い周辺状況を確認していた。フィル組みは西の方へ、ミリア組みは東の方へとちょうど反対方向に進んでいた。シュベインは2つの班の中心あたりにいる。
それから空間地図を確認していくと6つの赤点を見つけた。おそらくこれがクエスト目標である盗賊だろう。ミリア組みが一番近く、あと数分もすれば見つけれる距離にいた。僕は【トゥループサモン】を使い数体のゴーレムをミリア組みの方に送り出した。このゴーレム達は何かあった時の保険で、後方待機させる。
そんな時だった。グニャリと空間が歪むような感覚に襲われた。すかさず僕はゴーレムを召喚し警戒したが何も起こらず、空間地図を確認したが僕の周辺には何も反応はなかった。
「確かに何かを感じたはずだが・・・・・。それにこの感覚には覚えがある気がする」
僕は1人呟きながら、ゴーレム達を戻した。再び空間地図を使い子供達の様子を確認するとミリア組みが盗賊と思われる赤点と戦っていた。ゴーレム達が待機しているから危険ではないのだろう。そう思いながらフィル組みの方を見るとかなりの数の赤点に囲まれていた。シュベインも気づいたのかフィル組みの方に向かっているが、次々と赤点に襲われており、全然前に進めていない状況だった。
僕は空間地図で転移地点を設定し、転移した。
【後文】
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
昨日、今日と頑張り、1話分書き終えました。年明けに1話だそうと思っていたのですが、ギリギリでした。
誤字脱字があると思いますので見つけた時は感想にて教えて下さい。
それでは、皆さん良いお年をお過ごし下さい。
0
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる