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第二幕 千紗の章
夜明け前
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「姫様っ!あと少しです。頑張って下さい!」
「……はぁ……はぁ……はぁ………」
秋成に手を引かれながら、必死に秀郷が示した達智門を目指して走る千紗。
だが、2ヶ月以上もの間、内裏の外へ出ていなかった千紗の体力の衰えは想像以上で、体は悲鳴を上げていた。
秋成の励ましの声も、自身の荒い呼吸に消されてどこか遠くに聞こえる。
千紗の体を心配しながら、彼女の後ろをついて走るヒナが、遠くに見えてきた門を指差し言った。
「千紗姫様、秋成様……見えて参りました。あれが……達智門です」
ヒナが示した先の門は、秋成達を受け入れるかのように既に開門されていて、秀郷が言った通り門を守る警護兵の姿も見えない。
「よし、そのまま突っ込むぞ! 姫様、あと少し……あと少しです。頑張って下さい!」
「……はぁ……はぁ……はぁ……あっ……」
最後の力を振り絞り、門をくぐった所で、足が縺れた千紗は、顔から前方へ向けて転びそうになった。
「姫様っ!!」
それを秋成が慌てて受け止める。
もう体に力が入らないのか、秋成の腕の中、荒い息をたてながらグッタリした様子の千紗。
「…………千紗姫様……」
たった3ヶ月離れていただけで、別人のように弱ってしまった千紗を腕に抱きながら、秋成は寂しげに見つめた。
「…………」
そして、静かに千紗の背と足を持ち両腕で抱き上げると「姫様、よく頑張りました。あとは俺とヒナに任せて、ゆっくりお休みください」優しい口調で千紗にそう語りかけた。
懐かしい秋成の温もりに安心したのか、千紗はそのまま彼に体を預け、ゆっくり目を閉じた。
「秋成……様? 千紗様……は………大丈夫……でしょうか?」
心配そうに、千様の顔を覗き込みながら、ヒナは訊ねる。
「酷く疲れたのだろう。どうやら眠ってしまわれたようだ。少し無理をさせ過ぎてしまったな。出来る事ならば、どこかで休ませてやりたいが……」
そう言いながらも、休ませてやる時間的余裕も、場所もない状況に、秋成は肩を落とす。
変わってヒナは、千紗を休ませてあげられる何処か良い場所はないかと思案していると、ふと脳裏にある景色が浮かんできた。
「秋成様!あ、あり……ます。藤太様が示した……東の山に……誰も知らないとっておきの……隠れ場所が……」
「本当か?!」
「はい! 今からそちらへ案内……致します!」
「助かる、ヒナ。本当にありがとう。お前が共に付いてきてくて、本当に心強いぞ」
感謝を伝えながら、秋成はヒナの頭をワシャワシャに撫でつける。
褒められた事と、秋成に頼りにされている事が嬉しくて、ヒナは嬉しそうに微笑んだ。
その後秋成は、達智門を出た少し先に立つ松の木の下で、秀郷が言っていた白馬を見つけると、千紗とヒナ、それからヒナが手にしていた荷物を馬に乗せ、自身は馬の手綱を引き、急ぎ達智門を後にする。
そして秀郷の助言通り、東を目指して駆け出した。
薄暗かった辺りも、徐々に白さを増して行き、眼前に聳え立つ山々の背後には橙色の光が僅かにはみ出して見える。
その光が東に連なる山々の輪郭をくっきりと浮かび上がらせ、何とも神秘的な景色が広がっていた。
夜明けが間近に迫っていることを予感させた。
「……はぁ……はぁ……はぁ………」
秋成に手を引かれながら、必死に秀郷が示した達智門を目指して走る千紗。
だが、2ヶ月以上もの間、内裏の外へ出ていなかった千紗の体力の衰えは想像以上で、体は悲鳴を上げていた。
秋成の励ましの声も、自身の荒い呼吸に消されてどこか遠くに聞こえる。
千紗の体を心配しながら、彼女の後ろをついて走るヒナが、遠くに見えてきた門を指差し言った。
「千紗姫様、秋成様……見えて参りました。あれが……達智門です」
ヒナが示した先の門は、秋成達を受け入れるかのように既に開門されていて、秀郷が言った通り門を守る警護兵の姿も見えない。
「よし、そのまま突っ込むぞ! 姫様、あと少し……あと少しです。頑張って下さい!」
「……はぁ……はぁ……はぁ……あっ……」
最後の力を振り絞り、門をくぐった所で、足が縺れた千紗は、顔から前方へ向けて転びそうになった。
「姫様っ!!」
それを秋成が慌てて受け止める。
もう体に力が入らないのか、秋成の腕の中、荒い息をたてながらグッタリした様子の千紗。
「…………千紗姫様……」
たった3ヶ月離れていただけで、別人のように弱ってしまった千紗を腕に抱きながら、秋成は寂しげに見つめた。
「…………」
そして、静かに千紗の背と足を持ち両腕で抱き上げると「姫様、よく頑張りました。あとは俺とヒナに任せて、ゆっくりお休みください」優しい口調で千紗にそう語りかけた。
懐かしい秋成の温もりに安心したのか、千紗はそのまま彼に体を預け、ゆっくり目を閉じた。
「秋成……様? 千紗様……は………大丈夫……でしょうか?」
心配そうに、千様の顔を覗き込みながら、ヒナは訊ねる。
「酷く疲れたのだろう。どうやら眠ってしまわれたようだ。少し無理をさせ過ぎてしまったな。出来る事ならば、どこかで休ませてやりたいが……」
そう言いながらも、休ませてやる時間的余裕も、場所もない状況に、秋成は肩を落とす。
変わってヒナは、千紗を休ませてあげられる何処か良い場所はないかと思案していると、ふと脳裏にある景色が浮かんできた。
「秋成様!あ、あり……ます。藤太様が示した……東の山に……誰も知らないとっておきの……隠れ場所が……」
「本当か?!」
「はい! 今からそちらへ案内……致します!」
「助かる、ヒナ。本当にありがとう。お前が共に付いてきてくて、本当に心強いぞ」
感謝を伝えながら、秋成はヒナの頭をワシャワシャに撫でつける。
褒められた事と、秋成に頼りにされている事が嬉しくて、ヒナは嬉しそうに微笑んだ。
その後秋成は、達智門を出た少し先に立つ松の木の下で、秀郷が言っていた白馬を見つけると、千紗とヒナ、それからヒナが手にしていた荷物を馬に乗せ、自身は馬の手綱を引き、急ぎ達智門を後にする。
そして秀郷の助言通り、東を目指して駆け出した。
薄暗かった辺りも、徐々に白さを増して行き、眼前に聳え立つ山々の背後には橙色の光が僅かにはみ出して見える。
その光が東に連なる山々の輪郭をくっきりと浮かび上がらせ、何とも神秘的な景色が広がっていた。
夜明けが間近に迫っていることを予感させた。
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