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第二幕 千紗の章
立ちはだかる者②
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「お、よく俺の名前を覚えていたな。そうだ俺は俵藤太改め、藤原秀郷」
秋成の呟きに、秀郷は豪快に笑った。
そんな秀郷とは対照的に、秋成の頬には冷や汗が流れる。
目の前にいるのは、秋成が尊敬し目標としていた義兄、小次郎が同じく憧れ目標にしていた男。そんな男と刀を交えて、勝てるのだろうか?
「どうして……貴女がここに?」
「悪いな。お前とこの嬢ちゃんが、こっそり企てていた計画を、偶然にも聞いちまったもんで。聞いちまった以上は放ってはおけないと、こうして張り込んでたってわけよ」
「……」
「次は俺から質問させてくれ。まぁ聞くまでもない事かもしれないが、お前等はいったいここで、何をしている?」
「…………」
「皇后様を内裏から連れ出して、どうするつもりだ?」
「……あ、義兄上のもとへ、お連れする」
秋成から返ってきた予想通りの答えに秀郷は、「はぁ~」と、まるで馬鹿にでもしているような盛大な溜め息をついた。
「今内裏は皇后様が誘拐されたと大騒ぎだ。もし坂東に行く前に捕まったら、首謀者のお前は首を跳ねられて死ぬかもしれない。いくら昔は仲が良かった幼馴染みとは言え、帝の妃となった方を連れ出すと言う事は、そう言う事だ。それでも坂東へ行くって言うのか?」
秀郷の言葉に、秋成は静かに自身の腰にぶら下げていた刀を抜いた。
その行為が彼の覚悟を物語っていた。
「ヒナ、目を瞑っていろ」
秋成は、秀郷に捕らえられているヒナに向けて一声掛ける。ヒナが目を瞑った事を確認しすると、秀郷の目の前に刀の切っ先を突き付けた。
「危険な事は百も承知です。それでも俺は、権力で無理矢理閉じ込められた姫様を、この内裏という籠の中から解き放って差し上げたい。また自由に己の意思で羽ばたいて欲しいのです」
「……ほぉ」
「それを邪魔すると言うのなら、俺は全力で貴方と戦います」
力強い声で秋成はそう吐き捨てる。
迷いのない真っ直ぐな瞳。
「お前のような若僧が? この俺と? 勝てると思うのか?」
「いいえ、思いません。それでも、例え相手が誰であろうと、姫様の行く手を阻む者あらば、俺は戦います。この方の従者になると決めた時から、千紗姫様の為死ぬ覚悟は出来ていますから」
千紗を背に庇いながら、ギュッと彼女と繋がれていた手に、力を籠める。
「っ…………」
秋成の覚悟に、千紗もギュッと彼の手を握り返した。
「………くっく……くくくく」
突然クックと喉を鳴らして笑い出す秀郷。
その笑いは次第に大きなものへと変わって行き――
「? 何が可笑しいのですか?」
「いや、面白い奴だ。その歳でもうそれだけの覚悟があろうとは。安心しろ。俺には最初からお前達を捕らえるつもりなどない。俺はただ、お前達に手を貸そうと思ってここで待っていただけだ」
そう言うと、秀郷はあっさりヒナを開放した。
「……え?」
彼の予想外の言葉と行動に秋成はただただ驚くばかりだった。
秋成の呟きに、秀郷は豪快に笑った。
そんな秀郷とは対照的に、秋成の頬には冷や汗が流れる。
目の前にいるのは、秋成が尊敬し目標としていた義兄、小次郎が同じく憧れ目標にしていた男。そんな男と刀を交えて、勝てるのだろうか?
「どうして……貴女がここに?」
「悪いな。お前とこの嬢ちゃんが、こっそり企てていた計画を、偶然にも聞いちまったもんで。聞いちまった以上は放ってはおけないと、こうして張り込んでたってわけよ」
「……」
「次は俺から質問させてくれ。まぁ聞くまでもない事かもしれないが、お前等はいったいここで、何をしている?」
「…………」
「皇后様を内裏から連れ出して、どうするつもりだ?」
「……あ、義兄上のもとへ、お連れする」
秋成から返ってきた予想通りの答えに秀郷は、「はぁ~」と、まるで馬鹿にでもしているような盛大な溜め息をついた。
「今内裏は皇后様が誘拐されたと大騒ぎだ。もし坂東に行く前に捕まったら、首謀者のお前は首を跳ねられて死ぬかもしれない。いくら昔は仲が良かった幼馴染みとは言え、帝の妃となった方を連れ出すと言う事は、そう言う事だ。それでも坂東へ行くって言うのか?」
秀郷の言葉に、秋成は静かに自身の腰にぶら下げていた刀を抜いた。
その行為が彼の覚悟を物語っていた。
「ヒナ、目を瞑っていろ」
秋成は、秀郷に捕らえられているヒナに向けて一声掛ける。ヒナが目を瞑った事を確認しすると、秀郷の目の前に刀の切っ先を突き付けた。
「危険な事は百も承知です。それでも俺は、権力で無理矢理閉じ込められた姫様を、この内裏という籠の中から解き放って差し上げたい。また自由に己の意思で羽ばたいて欲しいのです」
「……ほぉ」
「それを邪魔すると言うのなら、俺は全力で貴方と戦います」
力強い声で秋成はそう吐き捨てる。
迷いのない真っ直ぐな瞳。
「お前のような若僧が? この俺と? 勝てると思うのか?」
「いいえ、思いません。それでも、例え相手が誰であろうと、姫様の行く手を阻む者あらば、俺は戦います。この方の従者になると決めた時から、千紗姫様の為死ぬ覚悟は出来ていますから」
千紗を背に庇いながら、ギュッと彼女と繋がれていた手に、力を籠める。
「っ…………」
秋成の覚悟に、千紗もギュッと彼の手を握り返した。
「………くっく……くくくく」
突然クックと喉を鳴らして笑い出す秀郷。
その笑いは次第に大きなものへと変わって行き――
「? 何が可笑しいのですか?」
「いや、面白い奴だ。その歳でもうそれだけの覚悟があろうとは。安心しろ。俺には最初からお前達を捕らえるつもりなどない。俺はただ、お前達に手を貸そうと思ってここで待っていただけだ」
そう言うと、秀郷はあっさりヒナを開放した。
「……え?」
彼の予想外の言葉と行動に秋成はただただ驚くばかりだった。
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