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第二幕 千紗の章
内裏の賊騒ぎ
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千紗が秋成との再会を果たしていたのと同じ頃――
すっかり夜も更け、本来ならば皆が寝静まっているだろう時間帯、内裏では賊が侵入したと大騒ぎになっていた。
松明を手にした警護の男達が、侵入した賊を探して内裏のあちらこちらを駆けずり回っている。
中でも内裏の主である朱雀帝の部屋の前や前庭には特に多くの人員が配され、何とも物々しい様子だ。
部屋の中には朱雀帝とその母、隠子。そして朱雀帝の弟、成明がいて、三人で肩を寄せあい不安な夜を過ごしていた。
「この内裏に、賊が侵入するなんて、何と恐れ多い事をするやからがいたことか。帝、成明も、危ないですから決してこの部屋から出てはなりませんよ」
「……はい、母上」
母の腕に抱かれ、どこか憂の帯びた表情を浮かべながらも素直に母の命に従う意志を示す朱雀帝。
そんな兄とは対照的に、成明はワクワクした様子で隠子に言った。
「分かっております。もしこの部屋に賊が現れたら、この成明が母上と兄さまをお守りいたします!」
「まぁ、それは頼もしいこと」
ニッコリと微笑みを浮かべ、まだ幼い息子の頭を撫でてやる隠子に、成明は「へへへ」と嬉しそうに笑った。
「でも、母上と兄様は成明がお守りするとして、姉様は大丈夫でしょうか? 今日は物忌みをしていたから今もお部屋で一人きりでいるはず。この騒ぎの中を一人でいるのは心細いのではないでしょうか?」
「っ!」
会話の中、何気か口にしたであろう弟の発言に、朱雀帝は「はっ」とさせられる。
脳裏に浮かぶは賊騒ぎに怯える千紗の姿。
もし千紗の身に何かあったら――?
「あっ、帝?! どこへ行くのですか??!危ないですから、早く戻ってきなさい!」
「申し訳ありません母上。でも、千紗姫の事が心配なので、千紗の様子を見に行って参ります」
「何を言っているのです! 今この部屋を出るなんて危険すぎます! 貴女自ら行かずとも、千紗の部屋にも護衛をつけるよう母が話をして参ります。だから貴女はここで大人しくっ……あ、帝っっ!?」
千紗の身を案じるあまり、いてもたってもいられなくなった朱雀帝は、母の制止も振り切って自室を飛びすと、藤坪殿を目指して一目散に走り出していた。
「お、お待ちなさい!! 帝っ!帝~~っっ!!」
何とかして朱雀帝を止めようと、隠子もまた息子を追いかけ部屋を出て行く。
「あぁ~兄様も母上も、待って下さりませ~。成明も一緒に行きまする~!」
そしてもう一人、成明もまた、とてとてと楽しげに二人の後を追って走り出した。
「み、帝?!隠子様っ?!成明様まで、お待ちください! いったいどちらへいかれるのですか? 賊の居場所もわからぬまま、勝手に動かれては困ります!! 」
突然何も告げずに部屋を出て行ってしまった朱雀帝達親子。
国の最高権力者である三人の護衛を任されていた男達は、予想もしていなかった事態に顔が青く染まる。
そして彼等もまた、慌てふためきながら3人の後を追い駆け走り出した。
一向が目指すは千紗姫がいる藤坪殿。
今まさに、秋成が千紗姫を内裏から攫いだそうとしているその最中に――
すっかり夜も更け、本来ならば皆が寝静まっているだろう時間帯、内裏では賊が侵入したと大騒ぎになっていた。
松明を手にした警護の男達が、侵入した賊を探して内裏のあちらこちらを駆けずり回っている。
中でも内裏の主である朱雀帝の部屋の前や前庭には特に多くの人員が配され、何とも物々しい様子だ。
部屋の中には朱雀帝とその母、隠子。そして朱雀帝の弟、成明がいて、三人で肩を寄せあい不安な夜を過ごしていた。
「この内裏に、賊が侵入するなんて、何と恐れ多い事をするやからがいたことか。帝、成明も、危ないですから決してこの部屋から出てはなりませんよ」
「……はい、母上」
母の腕に抱かれ、どこか憂の帯びた表情を浮かべながらも素直に母の命に従う意志を示す朱雀帝。
そんな兄とは対照的に、成明はワクワクした様子で隠子に言った。
「分かっております。もしこの部屋に賊が現れたら、この成明が母上と兄さまをお守りいたします!」
「まぁ、それは頼もしいこと」
ニッコリと微笑みを浮かべ、まだ幼い息子の頭を撫でてやる隠子に、成明は「へへへ」と嬉しそうに笑った。
「でも、母上と兄様は成明がお守りするとして、姉様は大丈夫でしょうか? 今日は物忌みをしていたから今もお部屋で一人きりでいるはず。この騒ぎの中を一人でいるのは心細いのではないでしょうか?」
「っ!」
会話の中、何気か口にしたであろう弟の発言に、朱雀帝は「はっ」とさせられる。
脳裏に浮かぶは賊騒ぎに怯える千紗の姿。
もし千紗の身に何かあったら――?
「あっ、帝?! どこへ行くのですか??!危ないですから、早く戻ってきなさい!」
「申し訳ありません母上。でも、千紗姫の事が心配なので、千紗の様子を見に行って参ります」
「何を言っているのです! 今この部屋を出るなんて危険すぎます! 貴女自ら行かずとも、千紗の部屋にも護衛をつけるよう母が話をして参ります。だから貴女はここで大人しくっ……あ、帝っっ!?」
千紗の身を案じるあまり、いてもたってもいられなくなった朱雀帝は、母の制止も振り切って自室を飛びすと、藤坪殿を目指して一目散に走り出していた。
「お、お待ちなさい!! 帝っ!帝~~っっ!!」
何とかして朱雀帝を止めようと、隠子もまた息子を追いかけ部屋を出て行く。
「あぁ~兄様も母上も、待って下さりませ~。成明も一緒に行きまする~!」
そしてもう一人、成明もまた、とてとてと楽しげに二人の後を追って走り出した。
「み、帝?!隠子様っ?!成明様まで、お待ちください! いったいどちらへいかれるのですか? 賊の居場所もわからぬまま、勝手に動かれては困ります!! 」
突然何も告げずに部屋を出て行ってしまった朱雀帝達親子。
国の最高権力者である三人の護衛を任されていた男達は、予想もしていなかった事態に顔が青く染まる。
そして彼等もまた、慌てふためきながら3人の後を追い駆け走り出した。
一向が目指すは千紗姫がいる藤坪殿。
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