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第二幕 千紗の章
伯父達の悪巧み
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陸奥守の息子である忠輔と結ばれた同盟をきっかけに、小次郎の元へはまた少しずつ、協力者が集まり始めた。
京での裁判の結果も後押ししたのか、将門軍の兵の数は、およそ500にまで膨れ上がって行った。
◇◇◇
「兄者!大変だ!大変だ大変だ!!」
「どうした良正、騒々しいぞ」
――上総国武射郡・良兼の屋敷
小次郎の元に兵が集まりつつある噂を掴んだ良正は、小次郎の動きを報告すべく、兄である良兼の屋敷を訪れていた。
「良文の兄者が将門についた! いや、正確には良文兄者の子、忠輔がだが」
「何、良文が?……ふん、相変わらず馬鹿な奴だ。こちらに与しないにしても、大人しく傍観者を続けていれば痛い思いをせずにすんだものを」
「それだけじゃない。豊田近隣の村々や、豪族達が次々と小次郎軍に与している。小次郎軍の兵力は少なく見積もっても500はかたい。兄者……やっぱり、今回の戦はやめた方が良いんじゃ………」
下総国の現状を報告すると共に、弱音を吐きだす良正。
「何をたわけた事を申しておる!!」
そんな弟に、良兼は声を荒げて言った。
「だ、だけど……京での一件以来、俺達への世間の風当たりは悪いし、そのせいでこっちの兵力は思うように集まらないし……」
「それでもこちらとて兵の数は500。小次郎軍に負けてはおるまい」
「で、でも……小次郎の奴は先の戦で2000もの大軍をたった100余の兵力で打ち破った。そんな奴を相手に互角の兵数で勝てるかどうか……」
「情けない。全く情けないぞ良正! お前は忘れてしまったか、我等の今の立場を。公を欺いたと世間から後ろ指を指され、上総介としてのわしの名声は地に落ちた。そんな今の状況を覆すにはどうすれば良い? 小次郎を倒すしかもう道はあるまい! わし等が生き残るにはもう、それしか手はないのだ!ここで逃げる事など許されぬわ!」
ピシャリといい放つ兄に、良正はそれ以上何も言い返せない。ただただ顔をしかめる事しか出来なかった。
「心配するな良正。今度の戦、わしに良い策がある。決っして負ける事のない、とっておきの秘策よ」
「秘策?」
いったいどんな策を考えたと言うのだろうか。自信に満ち満ちた顔で良兼は言った。
「小次郎め、我等に楯突いた事を必ずや後悔させてやる!」と。
それから幾日か後、坂東の地で再び伯父と甥、骨肉の争いが幕を開ける。
_______________________________
●武射郡
現在の千葉県北東部。良兼の屋敷は現在の山武郡横芝光町あたりにあったとされる。
京での裁判の結果も後押ししたのか、将門軍の兵の数は、およそ500にまで膨れ上がって行った。
◇◇◇
「兄者!大変だ!大変だ大変だ!!」
「どうした良正、騒々しいぞ」
――上総国武射郡・良兼の屋敷
小次郎の元に兵が集まりつつある噂を掴んだ良正は、小次郎の動きを報告すべく、兄である良兼の屋敷を訪れていた。
「良文の兄者が将門についた! いや、正確には良文兄者の子、忠輔がだが」
「何、良文が?……ふん、相変わらず馬鹿な奴だ。こちらに与しないにしても、大人しく傍観者を続けていれば痛い思いをせずにすんだものを」
「それだけじゃない。豊田近隣の村々や、豪族達が次々と小次郎軍に与している。小次郎軍の兵力は少なく見積もっても500はかたい。兄者……やっぱり、今回の戦はやめた方が良いんじゃ………」
下総国の現状を報告すると共に、弱音を吐きだす良正。
「何をたわけた事を申しておる!!」
そんな弟に、良兼は声を荒げて言った。
「だ、だけど……京での一件以来、俺達への世間の風当たりは悪いし、そのせいでこっちの兵力は思うように集まらないし……」
「それでもこちらとて兵の数は500。小次郎軍に負けてはおるまい」
「で、でも……小次郎の奴は先の戦で2000もの大軍をたった100余の兵力で打ち破った。そんな奴を相手に互角の兵数で勝てるかどうか……」
「情けない。全く情けないぞ良正! お前は忘れてしまったか、我等の今の立場を。公を欺いたと世間から後ろ指を指され、上総介としてのわしの名声は地に落ちた。そんな今の状況を覆すにはどうすれば良い? 小次郎を倒すしかもう道はあるまい! わし等が生き残るにはもう、それしか手はないのだ!ここで逃げる事など許されぬわ!」
ピシャリといい放つ兄に、良正はそれ以上何も言い返せない。ただただ顔をしかめる事しか出来なかった。
「心配するな良正。今度の戦、わしに良い策がある。決っして負ける事のない、とっておきの秘策よ」
「秘策?」
いったいどんな策を考えたと言うのだろうか。自信に満ち満ちた顔で良兼は言った。
「小次郎め、我等に楯突いた事を必ずや後悔させてやる!」と。
それから幾日か後、坂東の地で再び伯父と甥、骨肉の争いが幕を開ける。
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●武射郡
現在の千葉県北東部。良兼の屋敷は現在の山武郡横芝光町あたりにあったとされる。
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