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第二幕 千紗の章
女達の恋話②
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「ですが千紗姫様、私は恋多き女ですからね。確かに保明様は私の初恋の方であり、特別な方です。けれど保明様に限らず私は今までたくさんの恋に胸を焦がして参りました!」
しんみりした口調で初恋の思い出を語っていたはずのキヨが、今度は鼻息荒く語り出す。
「そうなのか? キヨに浮いた噂など、全く聞いた事などなかったから、心配しておったのだが。父上も、もう30を越えた娘が結婚もしないでと、お主の事を哀れんでおったぞ」
「まっ……まぁ、失礼な! 私だって姫様の知らぬ所で恋の一つや二つ。いや三つや四つ!……とにかくたくさんの恋をして参りました。ご心配には及びません!」
「そうだったのか。ほうほう。では、保明様以外にはどんな恋をして来たのだ?」
息巻くキヨに、千紗は面白くなって彼女の経験を更に深堀してみる事にした。
「こ、これ以上は、姫様と言えど教えられません」
しかし、そこまで語っておいて急に口を閉ざそうとするものだから、なかば千紗はムキになって問いただした。
「何故だ?良いではないか。教えてくれ」
「教えられません!」
「さっきまで息巻いておったくせに何故じゃ」
「何故って、恥ずかしいじゃないですか」
「私とキヨの仲ではないか」
「そうは言われましても……」
「こっそりで良いから、教えてくれ」
「え~~?」
あまりにしつこい千紗に、キヨもついには折れて、「では」とこっそり耳打ちした。
「え~~~~?」
キヨの答えに、千紗は驚きの声を上げる。
「お主、小次郎が好きだったのか?!それに秋成の事も気になっておるじゃと??!」
「し~し~し~!姫様、声が大きいですよ! これではこっそり教えた意味が……」
「待て。小次郎は……百歩譲ってまだ分かる。歳も近いしな。
だが、秋成はないであろう。秋成とお主とでは一回り近くも離れておるではないか。それでも恋愛の対象になるのか?」
「千紗姫様、誤解はしないで下さいね。好きとは違いますよ。ただ、気になると言っただけで」
「だから何故二人の事が気になるのだ?」
「それは……小次郎様は、男らしい所が素敵だと思います。
あの方の武骨なまでに真っ直ぐな心根は、見ていて惚れ惚れ致します。保明様も、小次郎様のように真っ直ぐで芯のお強い方でした。秋成様は……自分でもなぜ気になるのか、よく分からないのですが、しいて言うなら……似ているのです。どことなく保明様の面影に……」
「秋成が?」
「はい。秋成様を見ていると、不思議と保明様の事を思い出すのです」
保明の名前に、成明が跳び跳ねながら二人の会話に口を挟む。
「成明は? 成明は保明兄様に似ているか? 成明の事も好きになってくれるか?」
「そうですね。成明様も、さすが保明様とご兄弟だけあって目元がそっくり。とてもお可愛らしいお顔をなされておりますし、将来は有望かと」
「待てキヨ!いくらお主が節操ない人間と言えど、成明は、成明は駄目だ!こんな親子程に歳の離れた子に手を出すなど、絶対にダメだ!」
冗談とも本気とも取れるキヨの言葉を遮って、千紗は慌ててキヨの魔の手から成明を庇おうと、ギュッと抱き締め言った。
「まぁ姫様ったら酷い。キヨはそんな人間ではございませんよ」
「いや。確かに今、獲物を狙う鷹のように鋭い目をしていた!」
「していませんって」
三人の賑やかな声が部屋に明るく響く。
その横で、一人静かに訊いていたヒナもまた、クスクスと楽しげ笑っていた。
しんみりした口調で初恋の思い出を語っていたはずのキヨが、今度は鼻息荒く語り出す。
「そうなのか? キヨに浮いた噂など、全く聞いた事などなかったから、心配しておったのだが。父上も、もう30を越えた娘が結婚もしないでと、お主の事を哀れんでおったぞ」
「まっ……まぁ、失礼な! 私だって姫様の知らぬ所で恋の一つや二つ。いや三つや四つ!……とにかくたくさんの恋をして参りました。ご心配には及びません!」
「そうだったのか。ほうほう。では、保明様以外にはどんな恋をして来たのだ?」
息巻くキヨに、千紗は面白くなって彼女の経験を更に深堀してみる事にした。
「こ、これ以上は、姫様と言えど教えられません」
しかし、そこまで語っておいて急に口を閉ざそうとするものだから、なかば千紗はムキになって問いただした。
「何故だ?良いではないか。教えてくれ」
「教えられません!」
「さっきまで息巻いておったくせに何故じゃ」
「何故って、恥ずかしいじゃないですか」
「私とキヨの仲ではないか」
「そうは言われましても……」
「こっそりで良いから、教えてくれ」
「え~~?」
あまりにしつこい千紗に、キヨもついには折れて、「では」とこっそり耳打ちした。
「え~~~~?」
キヨの答えに、千紗は驚きの声を上げる。
「お主、小次郎が好きだったのか?!それに秋成の事も気になっておるじゃと??!」
「し~し~し~!姫様、声が大きいですよ! これではこっそり教えた意味が……」
「待て。小次郎は……百歩譲ってまだ分かる。歳も近いしな。
だが、秋成はないであろう。秋成とお主とでは一回り近くも離れておるではないか。それでも恋愛の対象になるのか?」
「千紗姫様、誤解はしないで下さいね。好きとは違いますよ。ただ、気になると言っただけで」
「だから何故二人の事が気になるのだ?」
「それは……小次郎様は、男らしい所が素敵だと思います。
あの方の武骨なまでに真っ直ぐな心根は、見ていて惚れ惚れ致します。保明様も、小次郎様のように真っ直ぐで芯のお強い方でした。秋成様は……自分でもなぜ気になるのか、よく分からないのですが、しいて言うなら……似ているのです。どことなく保明様の面影に……」
「秋成が?」
「はい。秋成様を見ていると、不思議と保明様の事を思い出すのです」
保明の名前に、成明が跳び跳ねながら二人の会話に口を挟む。
「成明は? 成明は保明兄様に似ているか? 成明の事も好きになってくれるか?」
「そうですね。成明様も、さすが保明様とご兄弟だけあって目元がそっくり。とてもお可愛らしいお顔をなされておりますし、将来は有望かと」
「待てキヨ!いくらお主が節操ない人間と言えど、成明は、成明は駄目だ!こんな親子程に歳の離れた子に手を出すなど、絶対にダメだ!」
冗談とも本気とも取れるキヨの言葉を遮って、千紗は慌ててキヨの魔の手から成明を庇おうと、ギュッと抱き締め言った。
「まぁ姫様ったら酷い。キヨはそんな人間ではございませんよ」
「いや。確かに今、獲物を狙う鷹のように鋭い目をしていた!」
「していませんって」
三人の賑やかな声が部屋に明るく響く。
その横で、一人静かに訊いていたヒナもまた、クスクスと楽しげ笑っていた。
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