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第一幕 京•帰還編
青天の霹靂
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朱雀帝の宣言に、内裏は一気に歓声に湧いた。
賑やかな拍手と祝福の言葉がそこかしこから朱雀帝と千紗、二人に向けて送られる。
そんな中、群衆のとりわけ後方から見ていた小次郎と秋成、ヒナ、そしてキヨの四人は突然の事柄にわけも分からずただ呆然と周囲の様子を見つめていた。
「……え?……千紗姫様が……帝の求婚をお受け入れになるなんて……突然どうして?」
「「…………」」
「あんなにも……結婚は自分で決めた相手と、言い張っていた千紗姫様が?」
「「…………」」
「帝を……好きになったと言う事なのでしょうか?」
目の前で起こっている出来事に、キヨがポツリポツリと少しずつ困惑を吐露しはじめる。
だが、側で聞いていた小次郎も秋成も、キヨが口にした疑問に何も返す言葉がなくて、まるで自分達だけが目の前の空間から弾き出されたかのように、目の前の展開にただただ困惑するしかなかった。
何故突然に、千紗は帝の后になっているのか?
何故、あのチビ助の后に……?
先程キヨが言っていたように千紗が朱雀帝を好きになったとは、秋成にはとても考えられなかった。
だって千紗が好きなのは、きっと――
「私はてっきり、姫様は小次郎様の事を好きなのかとばかり……」
秋成が考えていた事を、丁度キヨが口にする。
キヨの言葉に秋成は改めて思う。
誰の目から見ても、やはり千紗が好きな相手は小次郎なのだと。
あのチビに、心変わりなどするはずがないと。
では何故?
――『千紗は、今はまだ結婚などする気はございません。見た目や噂だけでしか人を見ることの出来ない貴族になど、興味はない。結婚するのなら、見た目だけじゃない。たとえ髪が短くても、こんなボロボロの着物を着ていても、千紗を、千紗自身を好きになってくれる、そんな人が良い!』
己の考えをしっかりと持っていた千紗が、己の信念をそう簡単に曲げるわけがない。
――『父上お願いがあります。千紗に外出の許可を下さい!千紗が小次郎を助けに参ります!!』
あの時も――
――『姫様。何をなされているのですか!』
『戦の準備じゃ!私も小次郎について行く』
『何を馬鹿な事をっ!』
『馬鹿な事ではない!約束したのじゃ!小次郎と。もし小次郎がこの戦に少しでも迷いを見せたら止めると。あやつの心はまだ迷ってる。伯父に刃を向ける事を迷ってる。私にも、何が正しいのかもう分からない。だが先の戦、伯父を殺した事をあやつは今も苦しんでいる。それは確かだ。小次郎にもう二度と、後悔の残る選択をさせたくないのだ!』
あの時も――
千紗は信念を貫いた。
そんな彼女がもし、信念を曲げるような事があるとしたら?
秋成は、必死に千紗の行動の意味を考える。
数日前、朱雀帝に会いに行ってから、どこか元気のなかった千紗。
今にして思えば、この事があったから元気がなかったのではないか?
秋成は直感的に思った。
あの時、千紗は、朱雀帝と何を話したと言った?
――『うむ。やはり小次郎の話だったぞ。あやつがな、やっと小次郎に味方してくれると約束してくれたのだ。この国を司る天皇が味方をしてくれるのだから、これでもう、鬼に金棒!小次郎の疑いは晴れたも同然だ!喜べ秋成!』
千紗の語った言葉を思い出して、秋成は1つの結論に辿り着いた。
千紗が己を曲げる時があるとしたらそれはきっと、人の為。
まさか千紗は、小次郎を守る為に自身を犠牲にしたのではないだろうか。
そんな結論に辿り着いて、秋成は怒りにギリギリと拳を握り締めた。
賑やかな拍手と祝福の言葉がそこかしこから朱雀帝と千紗、二人に向けて送られる。
そんな中、群衆のとりわけ後方から見ていた小次郎と秋成、ヒナ、そしてキヨの四人は突然の事柄にわけも分からずただ呆然と周囲の様子を見つめていた。
「……え?……千紗姫様が……帝の求婚をお受け入れになるなんて……突然どうして?」
「「…………」」
「あんなにも……結婚は自分で決めた相手と、言い張っていた千紗姫様が?」
「「…………」」
「帝を……好きになったと言う事なのでしょうか?」
目の前で起こっている出来事に、キヨがポツリポツリと少しずつ困惑を吐露しはじめる。
だが、側で聞いていた小次郎も秋成も、キヨが口にした疑問に何も返す言葉がなくて、まるで自分達だけが目の前の空間から弾き出されたかのように、目の前の展開にただただ困惑するしかなかった。
何故突然に、千紗は帝の后になっているのか?
何故、あのチビ助の后に……?
先程キヨが言っていたように千紗が朱雀帝を好きになったとは、秋成にはとても考えられなかった。
だって千紗が好きなのは、きっと――
「私はてっきり、姫様は小次郎様の事を好きなのかとばかり……」
秋成が考えていた事を、丁度キヨが口にする。
キヨの言葉に秋成は改めて思う。
誰の目から見ても、やはり千紗が好きな相手は小次郎なのだと。
あのチビに、心変わりなどするはずがないと。
では何故?
――『千紗は、今はまだ結婚などする気はございません。見た目や噂だけでしか人を見ることの出来ない貴族になど、興味はない。結婚するのなら、見た目だけじゃない。たとえ髪が短くても、こんなボロボロの着物を着ていても、千紗を、千紗自身を好きになってくれる、そんな人が良い!』
己の考えをしっかりと持っていた千紗が、己の信念をそう簡単に曲げるわけがない。
――『父上お願いがあります。千紗に外出の許可を下さい!千紗が小次郎を助けに参ります!!』
あの時も――
――『姫様。何をなされているのですか!』
『戦の準備じゃ!私も小次郎について行く』
『何を馬鹿な事をっ!』
『馬鹿な事ではない!約束したのじゃ!小次郎と。もし小次郎がこの戦に少しでも迷いを見せたら止めると。あやつの心はまだ迷ってる。伯父に刃を向ける事を迷ってる。私にも、何が正しいのかもう分からない。だが先の戦、伯父を殺した事をあやつは今も苦しんでいる。それは確かだ。小次郎にもう二度と、後悔の残る選択をさせたくないのだ!』
あの時も――
千紗は信念を貫いた。
そんな彼女がもし、信念を曲げるような事があるとしたら?
秋成は、必死に千紗の行動の意味を考える。
数日前、朱雀帝に会いに行ってから、どこか元気のなかった千紗。
今にして思えば、この事があったから元気がなかったのではないか?
秋成は直感的に思った。
あの時、千紗は、朱雀帝と何を話したと言った?
――『うむ。やはり小次郎の話だったぞ。あやつがな、やっと小次郎に味方してくれると約束してくれたのだ。この国を司る天皇が味方をしてくれるのだから、これでもう、鬼に金棒!小次郎の疑いは晴れたも同然だ!喜べ秋成!』
千紗の語った言葉を思い出して、秋成は1つの結論に辿り着いた。
千紗が己を曲げる時があるとしたらそれはきっと、人の為。
まさか千紗は、小次郎を守る為に自身を犠牲にしたのではないだろうか。
そんな結論に辿り着いて、秋成は怒りにギリギリと拳を握り締めた。
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