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第一幕 京•帰還編
かけがえのない時間②
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ひとしきり笑った後で、藤太はすっと千紗の前に手差し出し言った。
「改めて、自己紹介だ。俺は藤原秀郷。皆からは俵藤太と呼ばれている。因みに俺も将門と同じ坂東人。下野出身の荒くれ者だ」
「なるほど。だから先程小次郎が板東にいた頃から憧れていたと申しておったのだな。……ん? でも待てよ。下野? 下野と言う……あの?」
「あぁ。この馬鹿が騒ぎを起こして、謀反の疑いまでかけられたあの下野だ。ったく。人の留守中に勝手に人の土地を騒がせやがって」
「も、申し訳ございません藤太殿」
突然、藤太に嫌味を言われ、たじたじの小次郎。
「嘘だ嘘だ。いちいち本気にするな」
小次郎の様子に藤太は楽しげに笑いながら小次郎の背中を豪快に叩いた。
「お前が下野の国府を守ろうとしてくれた事は知ってるいるさ。下野国府からもお前の無罪を訴える嘆願書が出されていると聞くしな」
「………え?」
藤太の言葉に、千紗は驚いて聞き返した。
「その話、誠か?」
「ん?」
「下野国府は、小次郎を擁護しておるのか?」
「ん? あぁ。俺の耳にはそうそう届いているが、違うのか?」
思わず小次郎の顔を見る千紗。
小次郎は、騒動の後、下野国府へ謝罪に訪れた際、下野守に掛けられた言葉を思い出しながら小さく頷いて見せた。
――『此度の事では我々下野国府はそなたの味方だ。京へは、再び文を送っておく。私達が実際に見聞きした事を、嘘偽りなく京に伝えるつもりだ。それはきっと、そなたを擁護する内容になるだろう。どれだけ力になれるか分からぬが、我らは味方。それだけは覚えておいてくれ』――
「………そうか。そうか。小次郎の味方をしてくれる者は、千紗達以外にもまだまだいるのだな。そうか……そうか……」
そう安堵の声を漏らしながら、千紗は先程の小次郎の話を思い出していた。
――『心だに誠の道にかなひなば祈らずとても神や守らん
(訳:心さえやましくなければ、ことさら神に祈らなくても、自然に神の加護があるであろう)』――
自分以外にも、小次郎の事をちゃんと分かってくれている者は確かにいるのだと、千紗は嬉しくなって、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。
「ま、そんなわけで将門とは同郷のよしみで仲良くさせて貰ってる。ここで会ったのも何かの縁だ。お嬢さんも、以後宜しくな」
再び、千紗に向かって手を差し出す藤太。
「あぁ、宜しく頼む」
その手を千紗はギュッと掴んで、藤太と握手を交わした。
「改めて、自己紹介だ。俺は藤原秀郷。皆からは俵藤太と呼ばれている。因みに俺も将門と同じ坂東人。下野出身の荒くれ者だ」
「なるほど。だから先程小次郎が板東にいた頃から憧れていたと申しておったのだな。……ん? でも待てよ。下野? 下野と言う……あの?」
「あぁ。この馬鹿が騒ぎを起こして、謀反の疑いまでかけられたあの下野だ。ったく。人の留守中に勝手に人の土地を騒がせやがって」
「も、申し訳ございません藤太殿」
突然、藤太に嫌味を言われ、たじたじの小次郎。
「嘘だ嘘だ。いちいち本気にするな」
小次郎の様子に藤太は楽しげに笑いながら小次郎の背中を豪快に叩いた。
「お前が下野の国府を守ろうとしてくれた事は知ってるいるさ。下野国府からもお前の無罪を訴える嘆願書が出されていると聞くしな」
「………え?」
藤太の言葉に、千紗は驚いて聞き返した。
「その話、誠か?」
「ん?」
「下野国府は、小次郎を擁護しておるのか?」
「ん? あぁ。俺の耳にはそうそう届いているが、違うのか?」
思わず小次郎の顔を見る千紗。
小次郎は、騒動の後、下野国府へ謝罪に訪れた際、下野守に掛けられた言葉を思い出しながら小さく頷いて見せた。
――『此度の事では我々下野国府はそなたの味方だ。京へは、再び文を送っておく。私達が実際に見聞きした事を、嘘偽りなく京に伝えるつもりだ。それはきっと、そなたを擁護する内容になるだろう。どれだけ力になれるか分からぬが、我らは味方。それだけは覚えておいてくれ』――
「………そうか。そうか。小次郎の味方をしてくれる者は、千紗達以外にもまだまだいるのだな。そうか……そうか……」
そう安堵の声を漏らしながら、千紗は先程の小次郎の話を思い出していた。
――『心だに誠の道にかなひなば祈らずとても神や守らん
(訳:心さえやましくなければ、ことさら神に祈らなくても、自然に神の加護があるであろう)』――
自分以外にも、小次郎の事をちゃんと分かってくれている者は確かにいるのだと、千紗は嬉しくなって、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。
「ま、そんなわけで将門とは同郷のよしみで仲良くさせて貰ってる。ここで会ったのも何かの縁だ。お嬢さんも、以後宜しくな」
再び、千紗に向かって手を差し出す藤太。
「あぁ、宜しく頼む」
その手を千紗はギュッと掴んで、藤太と握手を交わした。
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