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第一幕 京•帰還編
騒がしい来訪者
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「では忠平様、次こそは本当に行きますね。失礼いたします」
「あぁ。またいつでも遊びに来なさい。秋成、荷物が多くて一人では大変そうだ。小次郎を送って行って上げないさい」
「かしこまりました」
久しぶりの主従の再会を喜びあった後小次郎は、秋成を共に連れ、忠平に深々と頭を下げて見せながら忠平の元を後にした。
門を出た所で、一人中年の女人とすれ違う。
「お、お待ちください隠子様っ!」
その女人は供の者の静止も聞かずに、慌てた様子で忠平の屋敷の中へと駆け込んで行く。
あまりの取り乱し方に、小次郎と秋成は互いに首を傾げながら、どちらからともなく女人が駆けて来た方向へと視線を向けた。
するとそこには一台の豪華な牛車が停泊していて、牛車の装いから察するに、どうやらかなり高貴なお方のようだと分かった。
高貴な家柄の女人であれば、人前に姿を晒す事など滅多にないはずなのに、人目も気にせずあの取り乱しよう。
はて、一体何事があったのだうか?
と、女人の事が妙に気になりながらも、小次郎は彼女が消えて行った忠平の屋敷を今一度振り返りながら後ろ髪を引かれる思いで屋敷を後にした。
◆◆◆
「……きら……寛明っ!」
小次郎達が忠平達の元を去ってから、さほど時間を空かずして“ドタバタ”と慌ただしく近付いて来る足音があった。
と同時に女性特有の金切り声が屋敷に響き渡った。
「何だ何だ、何事だ??」
突然の騒がしさにキョロキョロと辺りを見渡す千紗。
そのすぐ隣で、何故か朱雀帝は身を強張らせながら、千紗の着物の袖の端をギュッと震える手で掴んでいた。
「チビ助?」
まるで怯えているかのような朱雀帝の姿に、千紗は不思議そうに声を掛けるも、その声は突然部屋に飛び込んできた金切り声の主に書き消されてしまう。
「寛明っっ!!!」
「…………母上……」
朱雀帝に母と呼ばれたその女――隠子は部屋へ入ってくるなり千紗の背から覗く朱雀帝の元へと、千紗を押し退け涙ながらに抱きついた。
「おっっとっと」
隠子によって弾き飛ばされた千紗は、ヨロヨロと体制を崩しながら忠平の元へと倒れ込む。
「大丈夫か、千紗」
「はい、なんとか。ですが父上、これはいったい何の騒ぎでございましょう? 突然現れたあの女人はいったい?」
忠平に支えられながら、目を丸くして千紗は訪ねる。
「あの方は帝の母君だ。お前も何度か会った事があるだろう。直近ではお前の裳着の儀式の時にも会っていたはずだが、覚えてないか」
「あぁ、あの時の。たしか父上の妹君でもあられましたよね」
「あぁ、そうだ」
忠平の説明に、千紗は成る程と納得した。
久しぶりに帰って来た我が子を心配して、あのように取り乱していたのかと。
だが、母と子と言うには何処か奇妙に感じられた。何故母を前にして、朱雀帝はあのように表情を強ばらせているのかと。
裳着の儀の際には仲の良い親子に見えたのだが。
「あぁ。またいつでも遊びに来なさい。秋成、荷物が多くて一人では大変そうだ。小次郎を送って行って上げないさい」
「かしこまりました」
久しぶりの主従の再会を喜びあった後小次郎は、秋成を共に連れ、忠平に深々と頭を下げて見せながら忠平の元を後にした。
門を出た所で、一人中年の女人とすれ違う。
「お、お待ちください隠子様っ!」
その女人は供の者の静止も聞かずに、慌てた様子で忠平の屋敷の中へと駆け込んで行く。
あまりの取り乱し方に、小次郎と秋成は互いに首を傾げながら、どちらからともなく女人が駆けて来た方向へと視線を向けた。
するとそこには一台の豪華な牛車が停泊していて、牛車の装いから察するに、どうやらかなり高貴なお方のようだと分かった。
高貴な家柄の女人であれば、人前に姿を晒す事など滅多にないはずなのに、人目も気にせずあの取り乱しよう。
はて、一体何事があったのだうか?
と、女人の事が妙に気になりながらも、小次郎は彼女が消えて行った忠平の屋敷を今一度振り返りながら後ろ髪を引かれる思いで屋敷を後にした。
◆◆◆
「……きら……寛明っ!」
小次郎達が忠平達の元を去ってから、さほど時間を空かずして“ドタバタ”と慌ただしく近付いて来る足音があった。
と同時に女性特有の金切り声が屋敷に響き渡った。
「何だ何だ、何事だ??」
突然の騒がしさにキョロキョロと辺りを見渡す千紗。
そのすぐ隣で、何故か朱雀帝は身を強張らせながら、千紗の着物の袖の端をギュッと震える手で掴んでいた。
「チビ助?」
まるで怯えているかのような朱雀帝の姿に、千紗は不思議そうに声を掛けるも、その声は突然部屋に飛び込んできた金切り声の主に書き消されてしまう。
「寛明っっ!!!」
「…………母上……」
朱雀帝に母と呼ばれたその女――隠子は部屋へ入ってくるなり千紗の背から覗く朱雀帝の元へと、千紗を押し退け涙ながらに抱きついた。
「おっっとっと」
隠子によって弾き飛ばされた千紗は、ヨロヨロと体制を崩しながら忠平の元へと倒れ込む。
「大丈夫か、千紗」
「はい、なんとか。ですが父上、これはいったい何の騒ぎでございましょう? 突然現れたあの女人はいったい?」
忠平に支えられながら、目を丸くして千紗は訪ねる。
「あの方は帝の母君だ。お前も何度か会った事があるだろう。直近ではお前の裳着の儀式の時にも会っていたはずだが、覚えてないか」
「あぁ、あの時の。たしか父上の妹君でもあられましたよね」
「あぁ、そうだ」
忠平の説明に、千紗は成る程と納得した。
久しぶりに帰って来た我が子を心配して、あのように取り乱していたのかと。
だが、母と子と言うには何処か奇妙に感じられた。何故母を前にして、朱雀帝はあのように表情を強ばらせているのかと。
裳着の儀の際には仲の良い親子に見えたのだが。
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