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第一幕 板東編
帰郷の時②
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「ん? どうした清太、春太郎。お主等何をそわそわしておるのだ?」
二人の様子に気付いた千紗が声を掛ける。
と、清太が遠慮がちに口を開いた。
「………だ……嫌だ……おいらはまだ、ここにいたい……」
「僕も……まだ京へは帰りたくない」
「……清太……春太郎?」
二人の思いがけない告白に、千紗はどこか寂しげに彼等の名を呼んだ。
「おいらはここに残る。四郎の兄貴と一緒に、ここに残る。おいら馬鹿だけど、これだけは分かるよ。小次郎の兄貴の不在を狙って、またこの前みたいに戦を仕掛けられたら? 今の四郎の兄貴には助けてくれる味方は誰もいないんだろ? 四郎の兄貴は一人でこの豊田の地を守らなくちゃいけないんだろ?」
「……それは……」
清太からの問い掛けに、小次郎は言葉に詰まった。
「だからおいらはここに残って、四郎の兄貴を助けたい。兄貴の力になりたいんだ」
「……僕も」
清太の言葉に、春太郎もまた同意を示した。
二人の語った熱い想いに、千紗は小次郎の意見を求めるように視線を向ける。小次郎も同じ事を考えたようで、困った顔で千紗を見ていた。
そんな困ったような二人の顔に、清太は潤んだ瞳で尋ねた。
「………だめか、姫様?」
「う゛……」
我儘を言い慣れていている千紗も、言われる側の立場には全く慣れてはいなくて、捨てられた子犬のような目で懇願する清太に、思わず言葉に詰まった。
「お願いだよ姫様、おいら達、今は藤原家に遣える身だって分かってるけど、でも四郎の兄貴の力にもなりたいんだ。ここに残る事を許して下さい。せめて小次郎の兄貴が戻ってくるまでの間だけ――」
「う゛ぅ………」
こうも必死にお願いされては駄目とも言えまい。何せ今まで散々我儘を言って来た側なのだから。
お願いされる立場になって初めて思い知らされる。こんな風にいつも秋成や小次郎達を自分も散々困らせて来たのだなと。
「……分かった。お主達はお主達の好きなようにしろ。父上には私から話しておく。小次郎、お主もそれで構わないか?」
「あ、あぁ。こちらも構わない。寧ろありがたいくらいだが、清太達は本当にそれで良いのか?」
「本当か!? やった~! ありがとう姫様、小次郎の兄貴!! 勿論だよ!! おいら達は四郎の兄貴に京でお世話になった恩返しをしたいんだ」
「やったね清太!これで僕達、四郎の兄貴の役にたてるかな。恩返しできるかな」
「あぁ、姫様が小次郎の兄貴を守るように、おいら達もここで四郎の兄貴を守ろうぜ、春太郎!」
坂東へ残りたいとの願いが通じて、本当に嬉しそうにはしゃぐ二人。
そんな二人の隣で、今度はヒナが何か言いたげな様子でおどおどと狼狽えていた。
二人の様子に気付いた千紗が声を掛ける。
と、清太が遠慮がちに口を開いた。
「………だ……嫌だ……おいらはまだ、ここにいたい……」
「僕も……まだ京へは帰りたくない」
「……清太……春太郎?」
二人の思いがけない告白に、千紗はどこか寂しげに彼等の名を呼んだ。
「おいらはここに残る。四郎の兄貴と一緒に、ここに残る。おいら馬鹿だけど、これだけは分かるよ。小次郎の兄貴の不在を狙って、またこの前みたいに戦を仕掛けられたら? 今の四郎の兄貴には助けてくれる味方は誰もいないんだろ? 四郎の兄貴は一人でこの豊田の地を守らなくちゃいけないんだろ?」
「……それは……」
清太からの問い掛けに、小次郎は言葉に詰まった。
「だからおいらはここに残って、四郎の兄貴を助けたい。兄貴の力になりたいんだ」
「……僕も」
清太の言葉に、春太郎もまた同意を示した。
二人の語った熱い想いに、千紗は小次郎の意見を求めるように視線を向ける。小次郎も同じ事を考えたようで、困った顔で千紗を見ていた。
そんな困ったような二人の顔に、清太は潤んだ瞳で尋ねた。
「………だめか、姫様?」
「う゛……」
我儘を言い慣れていている千紗も、言われる側の立場には全く慣れてはいなくて、捨てられた子犬のような目で懇願する清太に、思わず言葉に詰まった。
「お願いだよ姫様、おいら達、今は藤原家に遣える身だって分かってるけど、でも四郎の兄貴の力にもなりたいんだ。ここに残る事を許して下さい。せめて小次郎の兄貴が戻ってくるまでの間だけ――」
「う゛ぅ………」
こうも必死にお願いされては駄目とも言えまい。何せ今まで散々我儘を言って来た側なのだから。
お願いされる立場になって初めて思い知らされる。こんな風にいつも秋成や小次郎達を自分も散々困らせて来たのだなと。
「……分かった。お主達はお主達の好きなようにしろ。父上には私から話しておく。小次郎、お主もそれで構わないか?」
「あ、あぁ。こちらも構わない。寧ろありがたいくらいだが、清太達は本当にそれで良いのか?」
「本当か!? やった~! ありがとう姫様、小次郎の兄貴!! 勿論だよ!! おいら達は四郎の兄貴に京でお世話になった恩返しをしたいんだ」
「やったね清太!これで僕達、四郎の兄貴の役にたてるかな。恩返しできるかな」
「あぁ、姫様が小次郎の兄貴を守るように、おいら達もここで四郎の兄貴を守ろうぜ、春太郎!」
坂東へ残りたいとの願いが通じて、本当に嬉しそうにはしゃぐ二人。
そんな二人の隣で、今度はヒナが何か言いたげな様子でおどおどと狼狽えていた。
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