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第一幕 板東編
仲間割れ②
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「伯父上達を助け出す」
「…………はぁぁ??!何馬鹿な事言って……敵を助けに行くって、兄貴、正気か??」
「たとえ今は敵でも、伯父上達は何があっても血の繋がった家族だ。見殺しにする事なんて出来い!」
「家族って……その家族だった奴等が俺達の親父を一方的に騙して土地を奪ったんだろ。あんな奴等、家族どころかもう親戚でもなんでもない! 兄貴、ちょっと冷静になれよ。おい、お前らも、ぼさっと突っ立ってないで兄貴を止めてくれ」
燃え盛る館に突進して行こうとする小次郎。そんな小次郎を何とか止めようと、四郎をはじめ周りにいた兵士達が必死で彼の行く手を阻んだ。
「離せ、離せっ! 行かせてくれ!」
「なりませぬ小次郎様、これ以上近付いては小次郎様の身も危のうございます」
「駄目だ! 早く何とかしないと伯父上達が……」
「だから落ち着けって兄貴! 飛び込んで行ってどうする? あの炎の中、兄貴に何ができるんだよ。それに中の状況もわからないのに無闇に飛び込むなんて自殺行為だ。ほら、見てみろよ。今は雨も降ってるし、少しずつだけど火の勢いも弱まってきてる。ここは自然に火がおさまるのをまってからでも……」
「それじゃあ遅い。伯父上達に何かあってからでは遅いんだ。頼む四郎、頼むから行かせてくれ。伯父上達を助けに行かせてくれ」
「だから、それは駄目だって。伯父貴は敵だぞ。敵なんだよ。助けようと近付いて攻撃されたらどうする。兄貴は味方の兵達まで見殺しにする気か?」
「…………それは」
四郎の言葉に、小次郎は返す言葉につまる。自分の我が儘で、皆を危険な目にあわせるわけにはいかない。
だが、それでも――
「ここでまた伯父達を見殺しにしたら、俺は絶対後悔する。もう……もう二度とあんな思いはしたくないんだ!」
小次郎の脳裏に再び甦る、国香を見殺しにしたあの日の光景。今目の前に広がる光景と重なって――
「兄貴……もしかして泣いてるのか?」
目を真っ赤に染め上げて悔しげに唇を噛み締める小次郎の姿に、四郎が思わず呟いた。
涙は激しく打ち付ける雨粒に紛れて分からなかったが、小次郎の様子に四郎は何故かそう思った。
兄の泣いている姿など、弟である四郎も見たのは初めてで、兄の葛藤の大きさを知って四郎の心にも惑いが生まれはじめた。兄を止めるべきなのか否か。
そんな四郎に追い打ちをかけるかのように、突然背後から予想もしていなかった人物が小次郎の味方に現れた。
「小次郎っ!」
「……え……姫さんっ?! それにアッキーも。あんたらどうしてここに?」
千紗と秋成だった。
小次郎を止めに駆け付けた千紗が、ついに小次郎の元へと到着したのだ。
「………千……紗? どうしてお前がここに?」
驚きを隠せないのは四郎だけではなかった。小次郎もまた、真っ赤に腫らした目を見開いて、千紗を見た。
「どうしてって、約束したであろう。もしお主の決断に、少しでも迷いが残っていたその時は、全力でお主を止めると」
「………」
まさか、本当に戦場まで現れるとは。小次郎は驚きを隠せなかった。
「小次郎、お主に今一度訊こう。この追い詰められた状況で出た、伯父を助けたい。その言葉が嘘偽りのない、お主の真の想いなのだな?」
「……あぁ、そうだ。助けたい。俺は死んでほしくない。たとえ疎まていようと、やっぱり俺は伯父上達に死んで欲しくないんだ」
「よし分かった。ならば参ろう。伯父上達を助けに。さぁ参ろうぞ、小次郎!」
そう言って、千紗は自信に満ちた顔で悪無邪気に笑った。
「…………はぁぁ??!何馬鹿な事言って……敵を助けに行くって、兄貴、正気か??」
「たとえ今は敵でも、伯父上達は何があっても血の繋がった家族だ。見殺しにする事なんて出来い!」
「家族って……その家族だった奴等が俺達の親父を一方的に騙して土地を奪ったんだろ。あんな奴等、家族どころかもう親戚でもなんでもない! 兄貴、ちょっと冷静になれよ。おい、お前らも、ぼさっと突っ立ってないで兄貴を止めてくれ」
燃え盛る館に突進して行こうとする小次郎。そんな小次郎を何とか止めようと、四郎をはじめ周りにいた兵士達が必死で彼の行く手を阻んだ。
「離せ、離せっ! 行かせてくれ!」
「なりませぬ小次郎様、これ以上近付いては小次郎様の身も危のうございます」
「駄目だ! 早く何とかしないと伯父上達が……」
「だから落ち着けって兄貴! 飛び込んで行ってどうする? あの炎の中、兄貴に何ができるんだよ。それに中の状況もわからないのに無闇に飛び込むなんて自殺行為だ。ほら、見てみろよ。今は雨も降ってるし、少しずつだけど火の勢いも弱まってきてる。ここは自然に火がおさまるのをまってからでも……」
「それじゃあ遅い。伯父上達に何かあってからでは遅いんだ。頼む四郎、頼むから行かせてくれ。伯父上達を助けに行かせてくれ」
「だから、それは駄目だって。伯父貴は敵だぞ。敵なんだよ。助けようと近付いて攻撃されたらどうする。兄貴は味方の兵達まで見殺しにする気か?」
「…………それは」
四郎の言葉に、小次郎は返す言葉につまる。自分の我が儘で、皆を危険な目にあわせるわけにはいかない。
だが、それでも――
「ここでまた伯父達を見殺しにしたら、俺は絶対後悔する。もう……もう二度とあんな思いはしたくないんだ!」
小次郎の脳裏に再び甦る、国香を見殺しにしたあの日の光景。今目の前に広がる光景と重なって――
「兄貴……もしかして泣いてるのか?」
目を真っ赤に染め上げて悔しげに唇を噛み締める小次郎の姿に、四郎が思わず呟いた。
涙は激しく打ち付ける雨粒に紛れて分からなかったが、小次郎の様子に四郎は何故かそう思った。
兄の泣いている姿など、弟である四郎も見たのは初めてで、兄の葛藤の大きさを知って四郎の心にも惑いが生まれはじめた。兄を止めるべきなのか否か。
そんな四郎に追い打ちをかけるかのように、突然背後から予想もしていなかった人物が小次郎の味方に現れた。
「小次郎っ!」
「……え……姫さんっ?! それにアッキーも。あんたらどうしてここに?」
千紗と秋成だった。
小次郎を止めに駆け付けた千紗が、ついに小次郎の元へと到着したのだ。
「………千……紗? どうしてお前がここに?」
驚きを隠せないのは四郎だけではなかった。小次郎もまた、真っ赤に腫らした目を見開いて、千紗を見た。
「どうしてって、約束したであろう。もしお主の決断に、少しでも迷いが残っていたその時は、全力でお主を止めると」
「………」
まさか、本当に戦場まで現れるとは。小次郎は驚きを隠せなかった。
「小次郎、お主に今一度訊こう。この追い詰められた状況で出た、伯父を助けたい。その言葉が嘘偽りのない、お主の真の想いなのだな?」
「……あぁ、そうだ。助けたい。俺は死んでほしくない。たとえ疎まていようと、やっぱり俺は伯父上達に死んで欲しくないんだ」
「よし分かった。ならば参ろう。伯父上達を助けに。さぁ参ろうぞ、小次郎!」
そう言って、千紗は自信に満ちた顔で悪無邪気に笑った。
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