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第一幕 板東編
小次郎の作戦
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四郎からの問い掛けに、小次郎はコクンと頷き肯定を示した。
「あぁ、あるさ」
「じゃあさ、兄貴のその考えを聞かせてよ。賛成するも、反対するも、話しはそれからだ」
「分かった。だがその前に、今一度状況の整理をさせてくれ玄明」
「あぁ?」
「お前先程、敵の兵は二千近いと言ったな。それだけの兵を伯父達はどうやって集めた? 全て自国の兵か?」
「いや。甲冑の色や形が皆バラバラだった。ありゃ半分以上が他国の兵だな。きっと脅しに近い遣り方で無理矢理味方につけたんだろう。あんたの従兄弟の太郎貞盛が寝返ったのも、半分は脅されたようなもんだったしな」
「そこだ!」
「は? どこだよ?」
「脅して無理矢理味方になった兵の士気が高いと思うか?」
「……いや、決して高くはないだろうな」
「だろう? 数が多くなればなる程、組織と言うのは動きが鈍くなる。やる気のない兵は逆に足手まといになる事もある。つまり二千の兵は弱点にもなり得ると言う事だ」
「あぁ……確かに。そう言われれば、そうかもしれないな」
小次郎の考えに初めて納得を示した玄明。四郎や屋敷の者達も確かにと頷きあっている。
「それからもう一つ」
「まだあるのか?」
「あぁ。他国の兵が短い期間で集められ、まともな統制が図れると思うか? 不意をついて奴等の足下を掬う事が出来れば、混乱を誘い、あっさりと大軍を崩すことができるかもしれない」
小次郎の語る作戦に、皆が息を飲んで聞き入った。
「ここで重要になってくるのは、何処を狙えば一番効果的に軍を崩せるかということ。さて、何処だと思う四郎?」
突然の謎かけに、四郎は少し考える。
考えた後で、どこか自信なさげゆっくりと自分なりの答えを口にする。
「どこって……多分、司令塔じゃないのかな?」
「ご名答」
「……そうか……そう言う事か。俺、分かったかも。兄貴の考えてる事が、何となく」
「何だ? どう言う事だ? 俺様にも分かるように説明しろ!」
小次郎の謎かけによって、何かを掴んだ四郎は一人納得した様子。だが、未だ先の見えない会話に玄明は割り込み更なる説明を求めた。
「兄貴は大軍全体を打ち負かす気なんて端からないんだよ。大軍を率いる伯父貴達さえ潰せれば、軍は乱れ混乱する」
「そうか!やっと俺様にも分かってきたぞ。つまりは混乱を誘って敵の自滅を狙うって事だな。それなら確かに数で圧倒的不利でも、何とかできるかもしれないな」
「いや、寧ろ少数だからこそ勝てる可能性がある。この作戦は、いかに相手の意表を突けるか。敵に襲撃を悟られない為には小回りの利く少数部隊の方が断然有利だ」
「確かにな。将門の言いたい事は分かった。だが……それはあくまで可能性の話だ。果たしてそう上手く行くのか? 絶対に成功すると言い切れるのか?」
玄明からの念押し。小次郎は言葉に詰まる。
確かに玄明の言う通り、あくまでも可能姓の話であり、絶対勝てる確証はない。こればかりは実際に戦ってみなければ分からない。
確証もないのに、本当に戦う事が正解なのか、小次郎は急に不安になった。
自分の決断が、ここにいる全員の――いや、ここにいる者だけではない。小次郎が治める土地に住まう全ての人間の生活に関わってくるのだと思うと、自分を信じきる事がどうしても小次郎には出来なかったから。
けれど、小次郎が恐れて超えられない壁を、四郎はあっさりと越えてみせた。
「あぁ、あるさ」
「じゃあさ、兄貴のその考えを聞かせてよ。賛成するも、反対するも、話しはそれからだ」
「分かった。だがその前に、今一度状況の整理をさせてくれ玄明」
「あぁ?」
「お前先程、敵の兵は二千近いと言ったな。それだけの兵を伯父達はどうやって集めた? 全て自国の兵か?」
「いや。甲冑の色や形が皆バラバラだった。ありゃ半分以上が他国の兵だな。きっと脅しに近い遣り方で無理矢理味方につけたんだろう。あんたの従兄弟の太郎貞盛が寝返ったのも、半分は脅されたようなもんだったしな」
「そこだ!」
「は? どこだよ?」
「脅して無理矢理味方になった兵の士気が高いと思うか?」
「……いや、決して高くはないだろうな」
「だろう? 数が多くなればなる程、組織と言うのは動きが鈍くなる。やる気のない兵は逆に足手まといになる事もある。つまり二千の兵は弱点にもなり得ると言う事だ」
「あぁ……確かに。そう言われれば、そうかもしれないな」
小次郎の考えに初めて納得を示した玄明。四郎や屋敷の者達も確かにと頷きあっている。
「それからもう一つ」
「まだあるのか?」
「あぁ。他国の兵が短い期間で集められ、まともな統制が図れると思うか? 不意をついて奴等の足下を掬う事が出来れば、混乱を誘い、あっさりと大軍を崩すことができるかもしれない」
小次郎の語る作戦に、皆が息を飲んで聞き入った。
「ここで重要になってくるのは、何処を狙えば一番効果的に軍を崩せるかということ。さて、何処だと思う四郎?」
突然の謎かけに、四郎は少し考える。
考えた後で、どこか自信なさげゆっくりと自分なりの答えを口にする。
「どこって……多分、司令塔じゃないのかな?」
「ご名答」
「……そうか……そう言う事か。俺、分かったかも。兄貴の考えてる事が、何となく」
「何だ? どう言う事だ? 俺様にも分かるように説明しろ!」
小次郎の謎かけによって、何かを掴んだ四郎は一人納得した様子。だが、未だ先の見えない会話に玄明は割り込み更なる説明を求めた。
「兄貴は大軍全体を打ち負かす気なんて端からないんだよ。大軍を率いる伯父貴達さえ潰せれば、軍は乱れ混乱する」
「そうか!やっと俺様にも分かってきたぞ。つまりは混乱を誘って敵の自滅を狙うって事だな。それなら確かに数で圧倒的不利でも、何とかできるかもしれないな」
「いや、寧ろ少数だからこそ勝てる可能性がある。この作戦は、いかに相手の意表を突けるか。敵に襲撃を悟られない為には小回りの利く少数部隊の方が断然有利だ」
「確かにな。将門の言いたい事は分かった。だが……それはあくまで可能性の話だ。果たしてそう上手く行くのか? 絶対に成功すると言い切れるのか?」
玄明からの念押し。小次郎は言葉に詰まる。
確かに玄明の言う通り、あくまでも可能姓の話であり、絶対勝てる確証はない。こればかりは実際に戦ってみなければ分からない。
確証もないのに、本当に戦う事が正解なのか、小次郎は急に不安になった。
自分の決断が、ここにいる全員の――いや、ここにいる者だけではない。小次郎が治める土地に住まう全ての人間の生活に関わってくるのだと思うと、自分を信じきる事がどうしても小次郎には出来なかったから。
けれど、小次郎が恐れて超えられない壁を、四郎はあっさりと越えてみせた。
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