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第一幕 板東編
御田植祭②
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ヒナの活躍により、四郎による秋成いじりが終焉を迎えた頃――
「あぁ~千紗姫様、ヒナも。やっと見つけたぁ!! 桔梗さん達が探してたよ。着替えが終わったなら早く戻って来てくれって」
少し離れた場所から、慌ただしく近づいてくる声に、何事かと四人が同時に振り向くと、その先には春太郎の姿があった。
どうやら彼は、今日の祭りの主役である千紗とヒナの二人を、必死になって探していたらしい。
「おぉ、すまなかったな。春た――」
「急いで急いで!もうすぐ祭りが始まっちゃうから」
千紗の言葉を遮って、春太郎は強引に二人の腕を引っ張ると、嵐の如く、元来た方向へ走って行ってしまった。
そしてあっと言う間に三人の姿は、人混みへと紛れ消えて行く。
「「………」」
ポツンと二人だけでその場に取り残されてしまった四郎と秋成。
「……俺達も行くか、あっきー」
「………あぁ」
一瞬の出来事に呆気に取られながらも、消えて行った千紗達の後を追って、二人もまた、人混みへと向かって歩き出した。
秋成達が人混みの中へ混じる頃――
雲一つ無い真っ青な初夏の空に、笛や太鼓の音が高らかに鳴り響く。それが祭りの合図だ。
「始まったみたいだな」
四郎の言葉通り、賑やかな音色に会わせて、真っ白な単衣に、真っ赤な袴、白拍子の如く着飾った美しき女達が、人垣の中心で優雅な舞を踊り始めた。
「あれは?」
「田の神様への奉納の舞だ。田植えを初める前の、ちょっとした挨拶って所かな。この舞と笛や太鼓の音色が、俺たちを田んぼへと導いてくれるよ。ほら、バラバラだった人の群れが、自然と行列を成して移動して行くだろ」
確かに四郎の言う通り、それまでバラバラに集まっていた人の群れが、楽の音色に導かれるように綺麗な列を成し、舞を踊る女達の後ろをぞろぞろと歩き出す。
本当に自然と形成された列に、秋成が関心して見とれていると、四郎が楽しそうにこんな説明を付け加えた。
「整った綺麗な行列だろ。この行列もまた、神様への奉納の一部なんだぜ」
秋成や四郎も行列に加わり祭りへ向けて歩を進める。
暫く歩くと、先頭を行く雅楽隊が静かに歩みを止めた。
雅楽隊の前に広がるは、太陽の光が水に反射され、キラキラと綺麗な輝きを放つ無数の田んぼ。くねくねと曲がりくねった、歪な形の田んぼが幾重にも広がっている。
その田んぼの一角に、舞を披露した女達とはまた別の、今度は紺の単衣に赤い襷、白い手拭い、新しい菅笠を身に纏い綺麗に着飾った女達が、ぞろぞろと現れた。彼女達こそが早乙女と呼ばれる少女達で、皆一列に列を成し、一人また一人と田んぼへと入って行く。
そんな早乙女の中、最後尾に位置する三人を指差し四郎が言った。
「おっ、やっと姫さん達が出て来たぜ」
四郎が指さす先を見つめる秋成。
四郎の言った通り、早乙女の列の最後尾には、桔梗、千紗、そしてヒナの順に田んぼへと入って行く姿があって、桔梗に手を貸して貰いながら、おっかなびっくり田んぼへと足を踏み入れる千紗のなんとも危なっかしい姿を秋成はハラハラしながら見守った。
「姫さ~ん、ヒナ~、頑張れよ~」
楽しそうに手を振りながら送った四郎の声援に気付いたのか、ふいに顔を上げた千紗は、四郎と秋成に向かって大きく手を振り返してくれた。
だが、田んぼの泥に足をとられたらしい千紗の体は、ぐらりと大きく揺れ、顔面から田んぼ目掛けて倒れ込みそうになる。
「姫様っ!」
思わず秋成が声を上げた。
倒れそうになる千紗の体は、前にいた桔梗と、後ろにいたヒナによって支えられ、何とか転倒を免れる。
ペロリと下を出し、恥ずかしそうに笑いながら二人にお礼を言う彼女の姿に、秋成はほっと胸を撫で下ろした。
「あぁ~千紗姫様、ヒナも。やっと見つけたぁ!! 桔梗さん達が探してたよ。着替えが終わったなら早く戻って来てくれって」
少し離れた場所から、慌ただしく近づいてくる声に、何事かと四人が同時に振り向くと、その先には春太郎の姿があった。
どうやら彼は、今日の祭りの主役である千紗とヒナの二人を、必死になって探していたらしい。
「おぉ、すまなかったな。春た――」
「急いで急いで!もうすぐ祭りが始まっちゃうから」
千紗の言葉を遮って、春太郎は強引に二人の腕を引っ張ると、嵐の如く、元来た方向へ走って行ってしまった。
そしてあっと言う間に三人の姿は、人混みへと紛れ消えて行く。
「「………」」
ポツンと二人だけでその場に取り残されてしまった四郎と秋成。
「……俺達も行くか、あっきー」
「………あぁ」
一瞬の出来事に呆気に取られながらも、消えて行った千紗達の後を追って、二人もまた、人混みへと向かって歩き出した。
秋成達が人混みの中へ混じる頃――
雲一つ無い真っ青な初夏の空に、笛や太鼓の音が高らかに鳴り響く。それが祭りの合図だ。
「始まったみたいだな」
四郎の言葉通り、賑やかな音色に会わせて、真っ白な単衣に、真っ赤な袴、白拍子の如く着飾った美しき女達が、人垣の中心で優雅な舞を踊り始めた。
「あれは?」
「田の神様への奉納の舞だ。田植えを初める前の、ちょっとした挨拶って所かな。この舞と笛や太鼓の音色が、俺たちを田んぼへと導いてくれるよ。ほら、バラバラだった人の群れが、自然と行列を成して移動して行くだろ」
確かに四郎の言う通り、それまでバラバラに集まっていた人の群れが、楽の音色に導かれるように綺麗な列を成し、舞を踊る女達の後ろをぞろぞろと歩き出す。
本当に自然と形成された列に、秋成が関心して見とれていると、四郎が楽しそうにこんな説明を付け加えた。
「整った綺麗な行列だろ。この行列もまた、神様への奉納の一部なんだぜ」
秋成や四郎も行列に加わり祭りへ向けて歩を進める。
暫く歩くと、先頭を行く雅楽隊が静かに歩みを止めた。
雅楽隊の前に広がるは、太陽の光が水に反射され、キラキラと綺麗な輝きを放つ無数の田んぼ。くねくねと曲がりくねった、歪な形の田んぼが幾重にも広がっている。
その田んぼの一角に、舞を披露した女達とはまた別の、今度は紺の単衣に赤い襷、白い手拭い、新しい菅笠を身に纏い綺麗に着飾った女達が、ぞろぞろと現れた。彼女達こそが早乙女と呼ばれる少女達で、皆一列に列を成し、一人また一人と田んぼへと入って行く。
そんな早乙女の中、最後尾に位置する三人を指差し四郎が言った。
「おっ、やっと姫さん達が出て来たぜ」
四郎が指さす先を見つめる秋成。
四郎の言った通り、早乙女の列の最後尾には、桔梗、千紗、そしてヒナの順に田んぼへと入って行く姿があって、桔梗に手を貸して貰いながら、おっかなびっくり田んぼへと足を踏み入れる千紗のなんとも危なっかしい姿を秋成はハラハラしながら見守った。
「姫さ~ん、ヒナ~、頑張れよ~」
楽しそうに手を振りながら送った四郎の声援に気付いたのか、ふいに顔を上げた千紗は、四郎と秋成に向かって大きく手を振り返してくれた。
だが、田んぼの泥に足をとられたらしい千紗の体は、ぐらりと大きく揺れ、顔面から田んぼ目掛けて倒れ込みそうになる。
「姫様っ!」
思わず秋成が声を上げた。
倒れそうになる千紗の体は、前にいた桔梗と、後ろにいたヒナによって支えられ、何とか転倒を免れる。
ペロリと下を出し、恥ずかしそうに笑いながら二人にお礼を言う彼女の姿に、秋成はほっと胸を撫で下ろした。
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