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第一幕 板東編
平氏の成り立ち②
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「臣籍降下とはな、帝に複数の子や孫がいた場合、皇位を継げない者が必ず出てくるだろ。そう言った皇位継承の見込みのない下級皇族達が、子を成し家族を増やしたらどうなる?」
「皇位継承の見込みのない下級皇族が増えて行く?」
「そうだ。継承権もないのに、朝廷で面倒を見なければならない厄介者が際限なく増えて行くってわけ。下級皇族が増えれば増えた分だけ朝廷の財政は圧迫されるんだ。皇族の衣食住は、民が納める税で賄われてるらしいからな」
「うむ」
四郎の説明を真剣に聞きながら、千紗が相槌を打つ。
「だから彼等下級皇族達は“天皇の一族”から、“天皇に仕える臣下”に降下させられるんだ。それが臣籍降下」
「ほお、ほお、つまりお主達の祖父にあたる高望王は、皇族の地位を剥奪されたと言う事か?」
「剥奪って言うと聞こえは悪いけど……まぁ、そんな所かな」
「地位を剥奪されて、その後高望王はどうなったのじゃ?」
千紗は興味津々と言った様子で、四郎に話の先を促した。
「高望王は皇族ではなくなったけれど、臣籍降下された者達には中級貴族なみの役職くらいは与えられる。腐っても天皇の孫だからね。この時高望王が与えられた職が、上総介だった」
「ほお、ほお、ほお!……ところで四郎、上総介とはなんじゃ?」
またしても話の腰を折る千紗に四郎の口元が少し引きつる。
なかなか先に進まぬ話に若干の面倒臭さを覚えながらも、四郎は再び話を脱線して、今度は地方官僚についての説明を千紗に聞かせ始めた。
「……上総介とは、上総の国を治める国司の官職名の一つだ。因みに官職名は上から守、介、掾、目の順に並ぶ。つまり上総介とは簡単に言えば、上総国の中で二番目に偉い人ってところかな」
「ほうほう、なるほどな。所で国司――」
「国司とはすなわち、朝廷に代わって地方の国々を統治する任を受けた京の役人の事。そうだなぁ、姫さんは、兄貴と伯父貴達がこの坂東で戦を起こしている事は知ってるんだろ?」
また新たに三度目の質問をされる事を見越してか、四郎が千紗の発言を遮り話を続ける。
四郎からなされた質問に、千紗はある一部分をごまかしながら答えた。
「うむ。チビ――いや、父上から聞いたのじゃ」
「そうやって京にいる太政大臣様が、遠く離れたこの板東地の情勢を知っいるのも、国司が情報を逐一京に報告しているからなんだよ。他にも税の徴収だったり、祭事の催し。司法や軍事にいたるまで、京で朝廷がしている政務を、地方では国司が朝廷に代わって行っているんだ」
「なるほどの。ではその重き任を、お前達の祖父である高望王が任され、この地へやって来たのだな」
「あぁ、そうだ。高望王は、臣籍降下された際に平性を賜り、平高望と名乗った。そして上総介の任を受け、この地にやって来た。それが俺達、板東平氏の始まりってわけだ」
「……その人は、国司の任期が終わっても京に戻らなかったの?」
四郎と千紗の会話に、何故か突然朱雀帝が口を挟んで来た。
突然の割り込みに、千紗と四郎は二人揃って朱雀帝の方へと振り向く。
「…………」
二人から浴びせられる視線に耐え切れなくなったのか、おどおどした様子で無言のまま俯く朱雀帝。
そんな朱雀帝の態度にクスリと小さく笑いを零しながら、四郎はこう言葉を続けた。
「皇位継承の見込みのない下級皇族が増えて行く?」
「そうだ。継承権もないのに、朝廷で面倒を見なければならない厄介者が際限なく増えて行くってわけ。下級皇族が増えれば増えた分だけ朝廷の財政は圧迫されるんだ。皇族の衣食住は、民が納める税で賄われてるらしいからな」
「うむ」
四郎の説明を真剣に聞きながら、千紗が相槌を打つ。
「だから彼等下級皇族達は“天皇の一族”から、“天皇に仕える臣下”に降下させられるんだ。それが臣籍降下」
「ほお、ほお、つまりお主達の祖父にあたる高望王は、皇族の地位を剥奪されたと言う事か?」
「剥奪って言うと聞こえは悪いけど……まぁ、そんな所かな」
「地位を剥奪されて、その後高望王はどうなったのじゃ?」
千紗は興味津々と言った様子で、四郎に話の先を促した。
「高望王は皇族ではなくなったけれど、臣籍降下された者達には中級貴族なみの役職くらいは与えられる。腐っても天皇の孫だからね。この時高望王が与えられた職が、上総介だった」
「ほお、ほお、ほお!……ところで四郎、上総介とはなんじゃ?」
またしても話の腰を折る千紗に四郎の口元が少し引きつる。
なかなか先に進まぬ話に若干の面倒臭さを覚えながらも、四郎は再び話を脱線して、今度は地方官僚についての説明を千紗に聞かせ始めた。
「……上総介とは、上総の国を治める国司の官職名の一つだ。因みに官職名は上から守、介、掾、目の順に並ぶ。つまり上総介とは簡単に言えば、上総国の中で二番目に偉い人ってところかな」
「ほうほう、なるほどな。所で国司――」
「国司とはすなわち、朝廷に代わって地方の国々を統治する任を受けた京の役人の事。そうだなぁ、姫さんは、兄貴と伯父貴達がこの坂東で戦を起こしている事は知ってるんだろ?」
また新たに三度目の質問をされる事を見越してか、四郎が千紗の発言を遮り話を続ける。
四郎からなされた質問に、千紗はある一部分をごまかしながら答えた。
「うむ。チビ――いや、父上から聞いたのじゃ」
「そうやって京にいる太政大臣様が、遠く離れたこの板東地の情勢を知っいるのも、国司が情報を逐一京に報告しているからなんだよ。他にも税の徴収だったり、祭事の催し。司法や軍事にいたるまで、京で朝廷がしている政務を、地方では国司が朝廷に代わって行っているんだ」
「なるほどの。ではその重き任を、お前達の祖父である高望王が任され、この地へやって来たのだな」
「あぁ、そうだ。高望王は、臣籍降下された際に平性を賜り、平高望と名乗った。そして上総介の任を受け、この地にやって来た。それが俺達、板東平氏の始まりってわけだ」
「……その人は、国司の任期が終わっても京に戻らなかったの?」
四郎と千紗の会話に、何故か突然朱雀帝が口を挟んで来た。
突然の割り込みに、千紗と四郎は二人揃って朱雀帝の方へと振り向く。
「…………」
二人から浴びせられる視線に耐え切れなくなったのか、おどおどした様子で無言のまま俯く朱雀帝。
そんな朱雀帝の態度にクスリと小さく笑いを零しながら、四郎はこう言葉を続けた。
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