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第一幕 板東編
束の間の休息③
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「「ッ……」」」
千紗達の視線に気付いたその女達は、慌てた様子で起き上がると、再び柱の陰へと隠れる。
その姿に、今度は千紗が大声を上げた。
「お主達、先程からコソコソと、いい加減に気分が悪いぞ。小次郎に何を命じられたかは知らぬが、どうせ監視するならば、もっと堂々と監視せぬか!!」
女達に向かって、急に怒鳴り声を上げたかと思うと千紗は、縁側から庭へと飛び降り、彼女達の元へと駆けて行く。
「あぁ姫様……またそのように行儀の悪い……」
苛立ちから頭をかきむしりながら、急いで秋成も千紗の後を追いかけた。
「「きゃーーー」」
千紗と秋成、迫り来る二人に恐怖を覚え、悲鳴を上げながら逃げ惑う女達。
千紗と下女達、そして秋成による追いかけっこが始まった。
「お、姫さんは今日も元気だね~」
そんな追いかけっこの最中に、暢気な声が掛けられる。
声の主は四郎。
丁度千紗の部屋を訪ねる途中だった四郎は、元気な千紗達の姿を見つけて、母屋の廊下から楽しげに眺めた。
「お前、そんな呑気に高みの見物などしていないで、姫様の暴走を止めるの手伝え!」
脳天気に笑いながら見学しているだけの四郎に向かって秋成が怒鳴った。
だが、四郎が出る幕はなく、その後すぐに千紗が女達を捕まえ、追いかけっこは終了となった。
捕まえた二人をズルズルと引きずりながら離れへ連れ込む千紗。
そうして部屋へと戻って来た千紗は、自身の前に侍女達を正座させ、尋問を始めた。
「さて話しを聞こうか。お主達は何故コソコソと私達を監視していた? 小次郎の命令か?」
「も……申し訳ございません。私どもは決して……決して貴方様を監視していたわけではなく……申し訳ございません!!」
千紗の与える威圧に、怯えた様子の女達は、床に額を擦りつけながら必死に謝り始めた。
その様子を庭から心配そうに見守る秋成。
秋成とは対象的に縁側からニヤニヤと楽しそうな様子の四郎。
朱雀帝は、部屋の隅で千紗の剣幕に怯えながら小さくなっており、貞盛はと言えば、そんな帝の側に控え、静かに場の空気を見守っている。
「監視するつもりではなかったと言うのならば、何故コソコソと私達を覗き見ていた? 何の目的で? その訳を話さぬか」
「そ、それは……」
「姫様、そのくらいになされませ。怯えておりますよ」
本気で怯えを示す女達が哀れに見えて、思わず助け船を出す秋成。
「うるさいぞ秋成、お主は黙っておれ」
「ですが姫様、その者達はただ、兄上の命に従っていただけにございましょう。その者達を叱り付けるのは理不尽にございます」
「叱り付けてなどおらぬではないか。私はただ、小次郎が監視を命じた理由を問うているだけだ」
「ですから、その理由は命じられた側に聞くのは筋違いでしょう。理由が聞きたいのなら命じた側の人間――そう、四郎に聞くのが道理」
秋成はキッと縁側に座り、高みの見物を決め込んでいた四郎を睨みつけた。
「え~?そこで俺に話題振る?」
「お前、この状況を楽しんでいないで、少しはお前の従者達を助けようと言う気はないのか?」
「あ~はいはい。わかりました。わかりましたよ~、と」
そう言って四郎は面倒くさそうに立ち上がり、千紗達のもとへと歩いていく。
千紗達の視線に気付いたその女達は、慌てた様子で起き上がると、再び柱の陰へと隠れる。
その姿に、今度は千紗が大声を上げた。
「お主達、先程からコソコソと、いい加減に気分が悪いぞ。小次郎に何を命じられたかは知らぬが、どうせ監視するならば、もっと堂々と監視せぬか!!」
女達に向かって、急に怒鳴り声を上げたかと思うと千紗は、縁側から庭へと飛び降り、彼女達の元へと駆けて行く。
「あぁ姫様……またそのように行儀の悪い……」
苛立ちから頭をかきむしりながら、急いで秋成も千紗の後を追いかけた。
「「きゃーーー」」
千紗と秋成、迫り来る二人に恐怖を覚え、悲鳴を上げながら逃げ惑う女達。
千紗と下女達、そして秋成による追いかけっこが始まった。
「お、姫さんは今日も元気だね~」
そんな追いかけっこの最中に、暢気な声が掛けられる。
声の主は四郎。
丁度千紗の部屋を訪ねる途中だった四郎は、元気な千紗達の姿を見つけて、母屋の廊下から楽しげに眺めた。
「お前、そんな呑気に高みの見物などしていないで、姫様の暴走を止めるの手伝え!」
脳天気に笑いながら見学しているだけの四郎に向かって秋成が怒鳴った。
だが、四郎が出る幕はなく、その後すぐに千紗が女達を捕まえ、追いかけっこは終了となった。
捕まえた二人をズルズルと引きずりながら離れへ連れ込む千紗。
そうして部屋へと戻って来た千紗は、自身の前に侍女達を正座させ、尋問を始めた。
「さて話しを聞こうか。お主達は何故コソコソと私達を監視していた? 小次郎の命令か?」
「も……申し訳ございません。私どもは決して……決して貴方様を監視していたわけではなく……申し訳ございません!!」
千紗の与える威圧に、怯えた様子の女達は、床に額を擦りつけながら必死に謝り始めた。
その様子を庭から心配そうに見守る秋成。
秋成とは対象的に縁側からニヤニヤと楽しそうな様子の四郎。
朱雀帝は、部屋の隅で千紗の剣幕に怯えながら小さくなっており、貞盛はと言えば、そんな帝の側に控え、静かに場の空気を見守っている。
「監視するつもりではなかったと言うのならば、何故コソコソと私達を覗き見ていた? 何の目的で? その訳を話さぬか」
「そ、それは……」
「姫様、そのくらいになされませ。怯えておりますよ」
本気で怯えを示す女達が哀れに見えて、思わず助け船を出す秋成。
「うるさいぞ秋成、お主は黙っておれ」
「ですが姫様、その者達はただ、兄上の命に従っていただけにございましょう。その者達を叱り付けるのは理不尽にございます」
「叱り付けてなどおらぬではないか。私はただ、小次郎が監視を命じた理由を問うているだけだ」
「ですから、その理由は命じられた側に聞くのは筋違いでしょう。理由が聞きたいのなら命じた側の人間――そう、四郎に聞くのが道理」
秋成はキッと縁側に座り、高みの見物を決め込んでいた四郎を睨みつけた。
「え~?そこで俺に話題振る?」
「お前、この状況を楽しんでいないで、少しはお前の従者達を助けようと言う気はないのか?」
「あ~はいはい。わかりました。わかりましたよ~、と」
そう言って四郎は面倒くさそうに立ち上がり、千紗達のもとへと歩いていく。
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