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第一幕 板東編
再会
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「なっ?!者共、止まれ~~~~っ!」
もの凄い早さで馬を走らせていた所を、突然目の前に人が飛び出して来たのだから、驚かないはずがない。
全く予想もしていなかった出来事に、先頭を駆けていた人物は慌てて馬の手綱を引きながら、後続へと指示を出すも、全速力で走る馬をそう簡単に止められるわけはなく、減速しながらも止まりきれなかった馬は、飛び出した千紗目掛けて突進した。
「危ない、千紗っ!!」
「っ?!」
千紗の危機に秋成が大声を上げながら千紗の元へと飛び出して行く。
目の前に迫り来る恐怖に為す術もない千紗はと言えば、声にならない声を上げながら咄嗟に目を閉じる事しかできなかった。
次の瞬間、ヒヒ~ンと言う馬の鳴き声と共に、何か突き飛ばされる音が鈍く響き渡る。
その後流れる静寂。
誰もが息を呑み目の前に広がっているかもしれない惨劇に顔を背ける。
そんな中、一人の子供の叫び声が長い静寂を破った。
「……め……千紗姫~?!」
朱雀帝だ。
千紗の身を案じた朱雀帝が、彼女の名を必死に叫びながら彼女の元へと駆け寄って行ったのだ。
朱雀帝の声に皆が目を開けば、秋成に覆いかぶさられるようにして倒れている千紗の姿がそこに在った。
「姫様っ?!」
「千紗姫様~!!」
朱雀帝に続いて清太や春太郎、ヒナまでもが茂みから飛び出し千紗達の元へと駆け寄って行く。
ぞろぞろと姿を現す見知った顔に、一体何が起こっているのか、馬上で彼、彼女らを見下ろしていた小次郎は固まったまま今も動けずにいる。
代わって小次郎の後ろから、ある人物が声を上げた。
「清太、春太郎、それにヒナまで?! お前達、こんな所で一体どうした?」
「あ~兄貴! 四郎の兄貴だ! 会いたかったぜ四郎の兄貴!!」
「僕達は四郎の兄貴に会いにここまで来たんだよ」
声を上げた人物、それは清太や春太郎達にとってとても懐かしい人物。以前盗賊を名乗っていた時に、頭と慕っていた“四郎の兄貴”その人だった。
四郎の登場に、清太達は嬉しそうに彼の元へと集まった。
「会いに来たって、だからどうして?坂東なんてこんな遠くにお前達だけでどうやって来たんだよ?」
「坂東で、戦が起こってるって聞いて、姫様がどうしても行くってきかなかったから、おいら達護衛で付いてきたんだ。それにね道案内にもう一人いるんだよ。四郎の兄貴とも知り合いらしいんだけど、でも結局その人のせいで今道に迷ってたんだ」
「せいとは酷い言われようですな清太殿。そして久しぶりだな、四郎、小次郎」
清太のフリに最後の一人、貞盛が茂みの中から姿を現した。
「久しぶりって……もしかして太郎さん?あんた太郎さんなのか?」
「いかにも、私はお前達の従兄弟、太郎貞盛だ。四郎と会うのはお前が子供の頃以来か。すっかり大きくなって、大人になったな四郎」
ニッコリ微笑みを浮かべながら四郎との再会を喜ぶ貞盛。
だがもう一人、彼の従兄弟であるはずの小次郎はどこか緊張した面持ちで、重たい口を開いてみせた。
「……貞盛、どうしてお前が? どうして千紗達と一緒にことんな所に?」
「千紗姫様が板東へ行くと仰られ、忠平様の命を受けて私が千紗姫様を板東へお連れするよう頼まれたのだ。そう怖い顔をするな小次郎。お前とも2年ぶりの再会なのだから、もっと喜んでくれても良いではないか」
「…………」
何とも読めない貞盛の態度に小次郎は警戒心を抱きながら、複雑な表情で彼を暫くの間見つめていた。
一方、すっかり存在を忘れられた千紗と秋成はと言えば――
「おい、お主等、私達の存在を忘れてはおるまいか? そして秋成、お主は早う私の上から退かぬか! さっきから重いのだ」
「重いって、失礼ですね。身を挺して守ってあげた人間に対して」
「守ってくれるのならば、もっと優しく守らぬか。人の事を突き飛ばしおって」
「それが嫌なら最初から危ない真似しないで下さいよ。まったく貴方と言う方は、何度同じ事をしたら気が済むのですか。何度俺の心の臓を縮めれば」
「すまぬすまぬ。だが体が勝手に動いてしまうのだから仕方あるまい」
「仕方ないで片付けないで、少しは考えてから行動して下さいって言ってんですよ、俺は」
千紗に覆いかぶさった状態で、そんな嫌味を吐きながらゆっくり千紗の上から身を起こした秋成。
と、千紗の寝転ぶすぐ横に、また仰向けで倒れ込んだ。
何処か怪我を負ったのか、着物の袖には微かに血が滲んで見える。
そんな秋成と千紗の元に、いつの間に馬を下りていたのか、懐かしい人物が顔を覗かせた。
「お久しぶりです……兄上」
「……あぁ。久しぶりだな、秋成。元気にしてたか?」
久しぶりに義兄弟同士会話を交わしながら、秋成に向かって手を差し出す小次郎。
小次郎が差し出すその手を握りしめながら、小次郎によって体を引き起こされる秋成。
「はい、兄上もお元気そうで何よりです」
こうして、秋成達は無事2年ぶりとなる小次郎との再会を果たしたのであった。
もの凄い早さで馬を走らせていた所を、突然目の前に人が飛び出して来たのだから、驚かないはずがない。
全く予想もしていなかった出来事に、先頭を駆けていた人物は慌てて馬の手綱を引きながら、後続へと指示を出すも、全速力で走る馬をそう簡単に止められるわけはなく、減速しながらも止まりきれなかった馬は、飛び出した千紗目掛けて突進した。
「危ない、千紗っ!!」
「っ?!」
千紗の危機に秋成が大声を上げながら千紗の元へと飛び出して行く。
目の前に迫り来る恐怖に為す術もない千紗はと言えば、声にならない声を上げながら咄嗟に目を閉じる事しかできなかった。
次の瞬間、ヒヒ~ンと言う馬の鳴き声と共に、何か突き飛ばされる音が鈍く響き渡る。
その後流れる静寂。
誰もが息を呑み目の前に広がっているかもしれない惨劇に顔を背ける。
そんな中、一人の子供の叫び声が長い静寂を破った。
「……め……千紗姫~?!」
朱雀帝だ。
千紗の身を案じた朱雀帝が、彼女の名を必死に叫びながら彼女の元へと駆け寄って行ったのだ。
朱雀帝の声に皆が目を開けば、秋成に覆いかぶさられるようにして倒れている千紗の姿がそこに在った。
「姫様っ?!」
「千紗姫様~!!」
朱雀帝に続いて清太や春太郎、ヒナまでもが茂みから飛び出し千紗達の元へと駆け寄って行く。
ぞろぞろと姿を現す見知った顔に、一体何が起こっているのか、馬上で彼、彼女らを見下ろしていた小次郎は固まったまま今も動けずにいる。
代わって小次郎の後ろから、ある人物が声を上げた。
「清太、春太郎、それにヒナまで?! お前達、こんな所で一体どうした?」
「あ~兄貴! 四郎の兄貴だ! 会いたかったぜ四郎の兄貴!!」
「僕達は四郎の兄貴に会いにここまで来たんだよ」
声を上げた人物、それは清太や春太郎達にとってとても懐かしい人物。以前盗賊を名乗っていた時に、頭と慕っていた“四郎の兄貴”その人だった。
四郎の登場に、清太達は嬉しそうに彼の元へと集まった。
「会いに来たって、だからどうして?坂東なんてこんな遠くにお前達だけでどうやって来たんだよ?」
「坂東で、戦が起こってるって聞いて、姫様がどうしても行くってきかなかったから、おいら達護衛で付いてきたんだ。それにね道案内にもう一人いるんだよ。四郎の兄貴とも知り合いらしいんだけど、でも結局その人のせいで今道に迷ってたんだ」
「せいとは酷い言われようですな清太殿。そして久しぶりだな、四郎、小次郎」
清太のフリに最後の一人、貞盛が茂みの中から姿を現した。
「久しぶりって……もしかして太郎さん?あんた太郎さんなのか?」
「いかにも、私はお前達の従兄弟、太郎貞盛だ。四郎と会うのはお前が子供の頃以来か。すっかり大きくなって、大人になったな四郎」
ニッコリ微笑みを浮かべながら四郎との再会を喜ぶ貞盛。
だがもう一人、彼の従兄弟であるはずの小次郎はどこか緊張した面持ちで、重たい口を開いてみせた。
「……貞盛、どうしてお前が? どうして千紗達と一緒にことんな所に?」
「千紗姫様が板東へ行くと仰られ、忠平様の命を受けて私が千紗姫様を板東へお連れするよう頼まれたのだ。そう怖い顔をするな小次郎。お前とも2年ぶりの再会なのだから、もっと喜んでくれても良いではないか」
「…………」
何とも読めない貞盛の態度に小次郎は警戒心を抱きながら、複雑な表情で彼を暫くの間見つめていた。
一方、すっかり存在を忘れられた千紗と秋成はと言えば――
「おい、お主等、私達の存在を忘れてはおるまいか? そして秋成、お主は早う私の上から退かぬか! さっきから重いのだ」
「重いって、失礼ですね。身を挺して守ってあげた人間に対して」
「守ってくれるのならば、もっと優しく守らぬか。人の事を突き飛ばしおって」
「それが嫌なら最初から危ない真似しないで下さいよ。まったく貴方と言う方は、何度同じ事をしたら気が済むのですか。何度俺の心の臓を縮めれば」
「すまぬすまぬ。だが体が勝手に動いてしまうのだから仕方あるまい」
「仕方ないで片付けないで、少しは考えてから行動して下さいって言ってんですよ、俺は」
千紗に覆いかぶさった状態で、そんな嫌味を吐きながらゆっくり千紗の上から身を起こした秋成。
と、千紗の寝転ぶすぐ横に、また仰向けで倒れ込んだ。
何処か怪我を負ったのか、着物の袖には微かに血が滲んで見える。
そんな秋成と千紗の元に、いつの間に馬を下りていたのか、懐かしい人物が顔を覗かせた。
「お久しぶりです……兄上」
「……あぁ。久しぶりだな、秋成。元気にしてたか?」
久しぶりに義兄弟同士会話を交わしながら、秋成に向かって手を差し出す小次郎。
小次郎が差し出すその手を握りしめながら、小次郎によって体を引き起こされる秋成。
「はい、兄上もお元気そうで何よりです」
こうして、秋成達は無事2年ぶりとなる小次郎との再会を果たしたのであった。
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