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第一幕 板東編
親子喧嘩
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千紗を追い掛け秋成が辿り着いた先、そこはこの屋敷の主である忠平の部屋。
秋成は忠平の部屋の庭先で、地面に片膝をつき、頭を垂れた姿勢でただじっと千紗の退室を待った。
部屋からは言い争う二人の声が聞こえていた。
「父上!父上!」
「千紗?!お前っ……また裳着を済ませた娘がうろうろと…………」
「どうして教えてくれなかったのですか?」
「何をだ? 何をそんなに怒っているのだお前は?」
「何故小次郎の事を教えてくれなかったのですか、父上」
「……その話か。その話はお前には関係のない事だ。お前は気にしなくて良いから、早く部屋へ戻りなさい」
「関係ない? 関係ないわけがないではありませんか! 小次郎は、私の兄も同然の存在ですよ。私が小次郎からの便りを待っていることも知っていながら、何故坂東の状況を教えて下さらなかったのですか?」
「お前がそれを知った所でどうなる? 何も出来はしないであろう。私とて同じだ。知った所で何もしてやれない。だから、お前には余計な心配をさせなくて良いようにと黙っていたのだ」
「薄情な! 小次郎が困っていると言うのに父上はただ手を拱いていたのですか?」
「落ち着け、千紗」
「千紗は落ち着いております。落ち着いているからこそ、何か小次郎を助ける方法はないかと考えて……そうだ! 父上、お願いがあります。千紗に外出の許可を下さい! 千紗が小次郎を助けに坂東まで参ります!!」
「お前は……また何馬鹿な事を言い出すのか。そんな事、許すはずがなかろう!!」
「何故ですか? 父上が動かないのなら千紗が――」
「こんの…………馬鹿娘が! お前は貴族の娘だ。何ヶ月かかるともしれぬ旅に出せるわけがなかろう。それも戦が起こっている危険な地に。嗚呼もう……だからお前には伝えたくなかったのだ。こう言う馬鹿を言い出す事は目に見えていたからな!」
「父上!」
「もう良い。お前は何も心配しなくて良いから、頼むから部屋で大人しくしていてくれ」
「嫌です!千紗はじっとなどしていられません!!」
「千紗っ!!!」
「っ?!」
忠平に一喝されて、一瞬怯む千紗。
だが、いくら怒られようと千紗も引く気はないらしく、忠平の目を反抗的な目で睨み続けた。
「……」
「…………」
親子二人、無言の睨み合いが続く。
ふとその沈黙の中、突然聞こえて来た外の騒がしさに、二人の意識がそちらへと逸らされた。
「お前、どうしてここに。帰れと言ったはずだぞ」
「うるさい。お前のような下賎者の言葉になど耳を貸す道理はない!」
「あっコラ。今は姫様と忠平様が大事な話をしている最中――」
秋成と、もう一人子供の言い争う声。
「秋成の奴は、いったい何を騒いでおるのだ?」
睨み合いの喧嘩に釘をさされた千紗は、不機嫌な様子で何事かと外の様子を見に行こうと立ち上がった。
と、その時――
「千紗姫様!」
部屋に下ろされた御簾を乱暴に上げ、朱雀帝が忠平の部屋へと突然に乱入してくる。
秋成は忠平の部屋の庭先で、地面に片膝をつき、頭を垂れた姿勢でただじっと千紗の退室を待った。
部屋からは言い争う二人の声が聞こえていた。
「父上!父上!」
「千紗?!お前っ……また裳着を済ませた娘がうろうろと…………」
「どうして教えてくれなかったのですか?」
「何をだ? 何をそんなに怒っているのだお前は?」
「何故小次郎の事を教えてくれなかったのですか、父上」
「……その話か。その話はお前には関係のない事だ。お前は気にしなくて良いから、早く部屋へ戻りなさい」
「関係ない? 関係ないわけがないではありませんか! 小次郎は、私の兄も同然の存在ですよ。私が小次郎からの便りを待っていることも知っていながら、何故坂東の状況を教えて下さらなかったのですか?」
「お前がそれを知った所でどうなる? 何も出来はしないであろう。私とて同じだ。知った所で何もしてやれない。だから、お前には余計な心配をさせなくて良いようにと黙っていたのだ」
「薄情な! 小次郎が困っていると言うのに父上はただ手を拱いていたのですか?」
「落ち着け、千紗」
「千紗は落ち着いております。落ち着いているからこそ、何か小次郎を助ける方法はないかと考えて……そうだ! 父上、お願いがあります。千紗に外出の許可を下さい! 千紗が小次郎を助けに坂東まで参ります!!」
「お前は……また何馬鹿な事を言い出すのか。そんな事、許すはずがなかろう!!」
「何故ですか? 父上が動かないのなら千紗が――」
「こんの…………馬鹿娘が! お前は貴族の娘だ。何ヶ月かかるともしれぬ旅に出せるわけがなかろう。それも戦が起こっている危険な地に。嗚呼もう……だからお前には伝えたくなかったのだ。こう言う馬鹿を言い出す事は目に見えていたからな!」
「父上!」
「もう良い。お前は何も心配しなくて良いから、頼むから部屋で大人しくしていてくれ」
「嫌です!千紗はじっとなどしていられません!!」
「千紗っ!!!」
「っ?!」
忠平に一喝されて、一瞬怯む千紗。
だが、いくら怒られようと千紗も引く気はないらしく、忠平の目を反抗的な目で睨み続けた。
「……」
「…………」
親子二人、無言の睨み合いが続く。
ふとその沈黙の中、突然聞こえて来た外の騒がしさに、二人の意識がそちらへと逸らされた。
「お前、どうしてここに。帰れと言ったはずだぞ」
「うるさい。お前のような下賎者の言葉になど耳を貸す道理はない!」
「あっコラ。今は姫様と忠平様が大事な話をしている最中――」
秋成と、もう一人子供の言い争う声。
「秋成の奴は、いったい何を騒いでおるのだ?」
睨み合いの喧嘩に釘をさされた千紗は、不機嫌な様子で何事かと外の様子を見に行こうと立ち上がった。
と、その時――
「千紗姫様!」
部屋に下ろされた御簾を乱暴に上げ、朱雀帝が忠平の部屋へと突然に乱入してくる。
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