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第一幕 京編
罪と罰②
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「昨日……いや、もう3日前になるか? お主と交わした約束を覚えておるか?」
「約束?」
「そうだ。お主だけは何があっても妾の側にいてくれると」
――『分かった。約束する。俺は、この先何があってもお前の側にいる。たとえ裳着をしたって、結婚したって、しわくちゃの婆さんなったって、俺はお前の側でお前を見守っていてやる』
千紗の言葉に、秋成はあの日千紗の前で口にした己の覚悟の言葉を思い出す。
改めて千紗から問われ、俯いていた顔を真っ直ぐ千紗の元へと上げ「勿論だ!」と答えた。
秋成の返答に、千紗は満足気に微笑むとこう言葉を続けた。
「では、妾を辱めた罰として、今一度誓え。この先もずっと、妾に忠誠を誓うと。妾の側で、ずっと妾を守り続けると。皆の前でな」
千紗から下された“罰”に拍子抜けする秋成。
「……そんな事で、良いのか?それじゃあまりにも、罪が軽すぎる……」
「これを軽いと取るも、重いと取るも、そなたの自由じゃ。この罰を受けるも辞めるもまたお主の自由。妾はこの罰を強制するつもりはない。さぁ、どうする秋成?」
「千紗……」
まるで秋成を試しているかように、どこか楽しそうな千紗。そんな彼女とは対象的に困った様子の秋成。
だが、暫くの沈黙ののち、眉間に刻まれていたシワが緩められた秋成の表情は、ゆっくりと穏やかな表情に変わって行く。
そして、はっきりとした口調で千紗にこう言葉を返した。
「その罰、喜んでお受けいたします」と。
「ふふふ。これで、ここにいる皆が証人となった。妾の我が儘に振り回される事に疲れても、これで本当に逃げられなくなったぞ秋成」
「逃げるつもりなど毛頭ない。お前の我が儘に付き合う覚悟なら、とうの昔に出来ている」
互いの絆を改めて確かめ合い、誓い合った二人の幼なじみは、互いに顔を見合わせ笑いあった。
「ところで秋成、小次郎はどうしたのじゃ? 先程から奴の姿が見えぬようじゃが」
「っ!?」
秋成との和解の後、何の気なしに口にした小次郎の名前。だが、彼の名を出した事で和やかだった空気が一瞬にして不穏なものへと変わった。
「??どうしたのじゃ、皆急に黙り込んで?小次郎は、どうかしたのか?」
千紗の問いに答える者は誰もいない。一体どうしたと言うのだろう。押し寄せる不安に、千紗は秋成を名指しで問いただした。
「秋成? 小次郎はいったいどうしたと言うのじゃ? のう、秋成」
「…………」
気まずそうに、長い間沈黙を続けていた秋成だったが、ようやく観念したのかゆっくりと口を開き始める。
「兄上は……ご自分の国へお帰りになれれました」
「………………え?……帰っ……た? 小次郎が?」
「……はい」
「…………何故じゃ? 何故小次郎は急に………」
秋成の口から告げられた言葉は、千紗にとって全く思いもよらなかった内容で、千紗は頭を強く殴られたような、そんな強い衝撃を受けた。
頭の中が真っ白になる。
「……何故……小次郎が?どうして……急に??」
突然告げられた兄と慕う大切な人との別れ。
思いもよらなかった急な展開に、千紗の頬には一雫の涙が零れ落ちた。
「約束?」
「そうだ。お主だけは何があっても妾の側にいてくれると」
――『分かった。約束する。俺は、この先何があってもお前の側にいる。たとえ裳着をしたって、結婚したって、しわくちゃの婆さんなったって、俺はお前の側でお前を見守っていてやる』
千紗の言葉に、秋成はあの日千紗の前で口にした己の覚悟の言葉を思い出す。
改めて千紗から問われ、俯いていた顔を真っ直ぐ千紗の元へと上げ「勿論だ!」と答えた。
秋成の返答に、千紗は満足気に微笑むとこう言葉を続けた。
「では、妾を辱めた罰として、今一度誓え。この先もずっと、妾に忠誠を誓うと。妾の側で、ずっと妾を守り続けると。皆の前でな」
千紗から下された“罰”に拍子抜けする秋成。
「……そんな事で、良いのか?それじゃあまりにも、罪が軽すぎる……」
「これを軽いと取るも、重いと取るも、そなたの自由じゃ。この罰を受けるも辞めるもまたお主の自由。妾はこの罰を強制するつもりはない。さぁ、どうする秋成?」
「千紗……」
まるで秋成を試しているかように、どこか楽しそうな千紗。そんな彼女とは対象的に困った様子の秋成。
だが、暫くの沈黙ののち、眉間に刻まれていたシワが緩められた秋成の表情は、ゆっくりと穏やかな表情に変わって行く。
そして、はっきりとした口調で千紗にこう言葉を返した。
「その罰、喜んでお受けいたします」と。
「ふふふ。これで、ここにいる皆が証人となった。妾の我が儘に振り回される事に疲れても、これで本当に逃げられなくなったぞ秋成」
「逃げるつもりなど毛頭ない。お前の我が儘に付き合う覚悟なら、とうの昔に出来ている」
互いの絆を改めて確かめ合い、誓い合った二人の幼なじみは、互いに顔を見合わせ笑いあった。
「ところで秋成、小次郎はどうしたのじゃ? 先程から奴の姿が見えぬようじゃが」
「っ!?」
秋成との和解の後、何の気なしに口にした小次郎の名前。だが、彼の名を出した事で和やかだった空気が一瞬にして不穏なものへと変わった。
「??どうしたのじゃ、皆急に黙り込んで?小次郎は、どうかしたのか?」
千紗の問いに答える者は誰もいない。一体どうしたと言うのだろう。押し寄せる不安に、千紗は秋成を名指しで問いただした。
「秋成? 小次郎はいったいどうしたと言うのじゃ? のう、秋成」
「…………」
気まずそうに、長い間沈黙を続けていた秋成だったが、ようやく観念したのかゆっくりと口を開き始める。
「兄上は……ご自分の国へお帰りになれれました」
「………………え?……帰っ……た? 小次郎が?」
「……はい」
「…………何故じゃ? 何故小次郎は急に………」
秋成の口から告げられた言葉は、千紗にとって全く思いもよらなかった内容で、千紗は頭を強く殴られたような、そんな強い衝撃を受けた。
頭の中が真っ白になる。
「……何故……小次郎が?どうして……急に??」
突然告げられた兄と慕う大切な人との別れ。
思いもよらなかった急な展開に、千紗の頬には一雫の涙が零れ落ちた。
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