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第一幕 京編
意外な関係性
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そんな千紗と忠平の親子のやり取りに皆が気を取られている隙に、一人息を潜めその場から離れようとする者がいた。
幸せそうな千紗の寝顔に安堵しながらも、小次郎だけは背中ごしに感じるその気配を逃さなかった。
「おい、お前、何処に行くつもりだ?」
「げっ!」
小次郎の呼び止めに、皆が一斉に盗賊の頭、四郎へと視線を向ける。
背中に突き刺さるいくつもの視線。四郎の背中に冷汗が垂れた。
そして、とどめとばかりに小次郎の誰よりも鋭く冷たい視線が加わって、逃げられないと観念してた四郎はゆっくりと後ろを振り返る。
「俺にバレてないとでも思ったか、四郎」
「あは、あはは、やっぱりバレてましたかぁ……。おっす、久し振り」
笑顔を引き攣らせながら片言に言葉を返した四郎。
「兄上?何故盗賊の男の名前を?この男と知り合いなのですか??」
どこか通じあった二人のやり取りに、秋成は驚き口を挟む。
秋成の抱いた疑問に、小次郎の口からは予想もしなかった答えが返って来た。
「……あぁ。そいつは……俺の弟だ」
「…………へ?」
突然の小次郎からの爆弾発言に、秋成の思考が思わず停止した。
それは秋成だけに留まらず、四郎の仲間の盗賊の少年達も、武士団の者達も、普段冷静な忠平でさえも驚いた様子で、皆が好奇の目で二人を見守った。
「でもよく分かったな、俺が弟の四郎だって。兄貴と最後に別れたのは、俺がほんの子供の頃だったのに。俺も最初は分からなかったぜ。あんたが小次郎の兄貴だって」
「ふん、当たり前だ。親父の愛用していた刀を持っていればな」
「あぁ、それか~」
「四郎、何故お前がここにいる? どうして千紗を攫った?こいつが、俺の主だと知っての狼藉か?!」
「いや、違うんだ。その姫さんを攫ったのは本当に単なる偶然で、兄貴を怒らせようとしてやったわけじゃ……」
「ならば、平の名を持つ武士であるはずのお前が、何故このような所で盗賊紛いのことをしている?」
「そ、それには深い深~い訳があるんだ。頼むからせっかく再会した弟を、そんな怖い顔で睨まないでくれよ兄貴~」
「ほぉ、さぞかし立派な“言い訳“なんだろうな?その話、ゆっくりじっくり聞かせて貰おうじゃないか」
焦った様子の四郎とは対照的に、怒りをチラつかせながら四郎の元へゆっくりと近づいて行く小次郎。
小次郎からピリピリと伝わってくる威圧に、一歩一歩後退る四郎。
そしてついにはその威圧に耐えかねて、背を向けて逃げ出そうとした。
だが小次郎はそれを許さず、背中を見せた途端、物凄い勢いで四郎の首根っこを捕える。
そしてそのまま……首根っこを掴まれたまま四郎は小次郎にズルズルと引き摺られる始末。
「このまま連れ帰って、親父の元へ強制送還だっ!!」
「あ、兄貴~……首……首がしまって………苦し……」
こうして、千紗の誘拐事件は無事に幕を閉じた。
だが、この事件をきっかけに、千紗、小次郎、秋成、幼き日々を共に過ごして来たこの三人の運命の歯車が、少しずつ噛み合わなくなっていく事を、この時はまだ誰も気付いてはいなかった。
幸せそうな千紗の寝顔に安堵しながらも、小次郎だけは背中ごしに感じるその気配を逃さなかった。
「おい、お前、何処に行くつもりだ?」
「げっ!」
小次郎の呼び止めに、皆が一斉に盗賊の頭、四郎へと視線を向ける。
背中に突き刺さるいくつもの視線。四郎の背中に冷汗が垂れた。
そして、とどめとばかりに小次郎の誰よりも鋭く冷たい視線が加わって、逃げられないと観念してた四郎はゆっくりと後ろを振り返る。
「俺にバレてないとでも思ったか、四郎」
「あは、あはは、やっぱりバレてましたかぁ……。おっす、久し振り」
笑顔を引き攣らせながら片言に言葉を返した四郎。
「兄上?何故盗賊の男の名前を?この男と知り合いなのですか??」
どこか通じあった二人のやり取りに、秋成は驚き口を挟む。
秋成の抱いた疑問に、小次郎の口からは予想もしなかった答えが返って来た。
「……あぁ。そいつは……俺の弟だ」
「…………へ?」
突然の小次郎からの爆弾発言に、秋成の思考が思わず停止した。
それは秋成だけに留まらず、四郎の仲間の盗賊の少年達も、武士団の者達も、普段冷静な忠平でさえも驚いた様子で、皆が好奇の目で二人を見守った。
「でもよく分かったな、俺が弟の四郎だって。兄貴と最後に別れたのは、俺がほんの子供の頃だったのに。俺も最初は分からなかったぜ。あんたが小次郎の兄貴だって」
「ふん、当たり前だ。親父の愛用していた刀を持っていればな」
「あぁ、それか~」
「四郎、何故お前がここにいる? どうして千紗を攫った?こいつが、俺の主だと知っての狼藉か?!」
「いや、違うんだ。その姫さんを攫ったのは本当に単なる偶然で、兄貴を怒らせようとしてやったわけじゃ……」
「ならば、平の名を持つ武士であるはずのお前が、何故このような所で盗賊紛いのことをしている?」
「そ、それには深い深~い訳があるんだ。頼むからせっかく再会した弟を、そんな怖い顔で睨まないでくれよ兄貴~」
「ほぉ、さぞかし立派な“言い訳“なんだろうな?その話、ゆっくりじっくり聞かせて貰おうじゃないか」
焦った様子の四郎とは対照的に、怒りをチラつかせながら四郎の元へゆっくりと近づいて行く小次郎。
小次郎からピリピリと伝わってくる威圧に、一歩一歩後退る四郎。
そしてついにはその威圧に耐えかねて、背を向けて逃げ出そうとした。
だが小次郎はそれを許さず、背中を見せた途端、物凄い勢いで四郎の首根っこを捕える。
そしてそのまま……首根っこを掴まれたまま四郎は小次郎にズルズルと引き摺られる始末。
「このまま連れ帰って、親父の元へ強制送還だっ!!」
「あ、兄貴~……首……首がしまって………苦し……」
こうして、千紗の誘拐事件は無事に幕を閉じた。
だが、この事件をきっかけに、千紗、小次郎、秋成、幼き日々を共に過ごして来たこの三人の運命の歯車が、少しずつ噛み合わなくなっていく事を、この時はまだ誰も気付いてはいなかった。
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