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第一幕 京編
捕らわれ姫の企み
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「兄貴~~~!!来た!来たよ!お姉ちゃんの迎えの奴が!」
「よし!かかったか!」
秋成の誘い込まれた場所から少し離れた所に位置する、ある寂れた神社。彼等が根城とし、千紗を囚えていたその場所に、慌ただしく駆け込んで来る者があった。
「ん?お主、どこかで見覚えが?」
駆け込んで来た人物に千紗は眉をしかめる。どこかで見覚えのあるような、そんな違和感を覚えて。
「あっ!お主!!さっき市で会った子供ではないか?」
暫く考え込んだ後で、やっと辿り着いた記憶の一致に「あっ」と叫ぶ。
そうだそうだ。先程秋成と二人、市の外れにいた時に、声を掛けてきた子供ではないか。確か名前を、春太郎と呼ばれていたか。
予期せぬ春太郎との再会に、千紗は驚かずにはいられなかった。
まさか、彼も賊の一人だったとは。
「ご、ごめんねお姉ちゃん。こんな事に巻き込んで……」
千紗の上げた声に、まるで責められているような気分になった春太郎は、申し訳ないと言った様子で謝る。
「よいよい。これも人助けじゃ」
「え?」
だが、千紗から返ってきた思いもかけなかった言葉に、今度は春太郎が声を出して驚いた。
そして、何故人質であるはずの彼女が、怯える様子もなく、自分達の頭と笑いあっているのか。
状況が呑み込めない春太郎は、兄貴と慕う頭の少年に説明を求めて視線を送った。
春太郎の戸惑いに、賊の頭である少年はフッと笑みを零し、ゆっくりと腰を上げ立ち上がった。
「面白い姫さんだろ。自分から進んで俺達に協力するって言うんだぜ」
「えぇ?? そうなの?」
「ってわけで姫さん。あんたは協力者であると同時に大事な人質だ。何かあったら困るから、今はまだここで大人しく待っていてく。俺はあんたを迎えに来た奴らの所へ行って来る」
「うむ。分かったぞ。妾はここで、大人しく待っておればよいのじゃな」
「あぁ。良い子で頼むぜ。それからヒナ、心配はいらないとは思うが、一応その姫さんは人質だから、姫さんが万が一にも逃げ出さないよう、お前はここで姫さんを見張っててくれ。頼んだぞ」
頭の少年から下された命令に、コクンと小さく頷くヒナ。
二人からの素直な返事に頭の少年は満足気に微笑むと、春太郎と共にこの寂れた神社を出て行った。
「…………」
「………………」
小さな寂れた神社の社の中、二人ポツンと残された千紗とヒナ。
まだ会って間もない二人の間に会話はない。
千紗と二人きりになった事で、ヒナは何故か言いようのない恐怖感から、この状況に緊張していた。
それもそのはず。先程からジリジリと、でも確実に自分との距離を詰めてきている千紗。
その顔には何かいけない事を企む悪人のような不敵な笑みが浮かんでいたのだから。
「ヒナ」
そしてヒナの恐怖に先に追い打ちをかけるように、千紗がヒナの名を呼んだ。
千紗の呼びかけにビクンと肩を震わせるヒナ。
恐る恐る千紗の顔を見たヒナに、千紗は更に不敵に笑いながら言った。
「お主に一つ、提案があるのだが」
提案?
一体彼女は、何を企んでいると言うのだろうか?
千紗が口にした提案の内容を聞くのが怖かったヒナは、今もまだジリジリと迫りくる千紗との距離を保とうと、一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。
だが、遂には逃げ場を壁で塞がれてしまったヒナは万事休す。迫り来る恐怖に息を呑んだ。
そして――
「よし!かかったか!」
秋成の誘い込まれた場所から少し離れた所に位置する、ある寂れた神社。彼等が根城とし、千紗を囚えていたその場所に、慌ただしく駆け込んで来る者があった。
「ん?お主、どこかで見覚えが?」
駆け込んで来た人物に千紗は眉をしかめる。どこかで見覚えのあるような、そんな違和感を覚えて。
「あっ!お主!!さっき市で会った子供ではないか?」
暫く考え込んだ後で、やっと辿り着いた記憶の一致に「あっ」と叫ぶ。
そうだそうだ。先程秋成と二人、市の外れにいた時に、声を掛けてきた子供ではないか。確か名前を、春太郎と呼ばれていたか。
予期せぬ春太郎との再会に、千紗は驚かずにはいられなかった。
まさか、彼も賊の一人だったとは。
「ご、ごめんねお姉ちゃん。こんな事に巻き込んで……」
千紗の上げた声に、まるで責められているような気分になった春太郎は、申し訳ないと言った様子で謝る。
「よいよい。これも人助けじゃ」
「え?」
だが、千紗から返ってきた思いもかけなかった言葉に、今度は春太郎が声を出して驚いた。
そして、何故人質であるはずの彼女が、怯える様子もなく、自分達の頭と笑いあっているのか。
状況が呑み込めない春太郎は、兄貴と慕う頭の少年に説明を求めて視線を送った。
春太郎の戸惑いに、賊の頭である少年はフッと笑みを零し、ゆっくりと腰を上げ立ち上がった。
「面白い姫さんだろ。自分から進んで俺達に協力するって言うんだぜ」
「えぇ?? そうなの?」
「ってわけで姫さん。あんたは協力者であると同時に大事な人質だ。何かあったら困るから、今はまだここで大人しく待っていてく。俺はあんたを迎えに来た奴らの所へ行って来る」
「うむ。分かったぞ。妾はここで、大人しく待っておればよいのじゃな」
「あぁ。良い子で頼むぜ。それからヒナ、心配はいらないとは思うが、一応その姫さんは人質だから、姫さんが万が一にも逃げ出さないよう、お前はここで姫さんを見張っててくれ。頼んだぞ」
頭の少年から下された命令に、コクンと小さく頷くヒナ。
二人からの素直な返事に頭の少年は満足気に微笑むと、春太郎と共にこの寂れた神社を出て行った。
「…………」
「………………」
小さな寂れた神社の社の中、二人ポツンと残された千紗とヒナ。
まだ会って間もない二人の間に会話はない。
千紗と二人きりになった事で、ヒナは何故か言いようのない恐怖感から、この状況に緊張していた。
それもそのはず。先程からジリジリと、でも確実に自分との距離を詰めてきている千紗。
その顔には何かいけない事を企む悪人のような不敵な笑みが浮かんでいたのだから。
「ヒナ」
そしてヒナの恐怖に先に追い打ちをかけるように、千紗がヒナの名を呼んだ。
千紗の呼びかけにビクンと肩を震わせるヒナ。
恐る恐る千紗の顔を見たヒナに、千紗は更に不敵に笑いながら言った。
「お主に一つ、提案があるのだが」
提案?
一体彼女は、何を企んでいると言うのだろうか?
千紗が口にした提案の内容を聞くのが怖かったヒナは、今もまだジリジリと迫りくる千紗との距離を保とうと、一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。
だが、遂には逃げ場を壁で塞がれてしまったヒナは万事休す。迫り来る恐怖に息を呑んだ。
そして――
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