願いが叶うなら

汐野悠翔

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冬物語

目が覚めて

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“ピピピ ピピピ”

目覚まし時計の音で目を覚ます。
時計を見ると、朝の7時を示していた。

ベッドの上、ゆっくりと体を起こす私。
と、頬には一雫の涙が流れ落ちた。


「……え?」


どうして涙なんて?
何か悲しい夢を見ていたのだろうか?

頬を伝った涙に手を触れながら、私は今朝見た夢をぼんやりと思い起こした。

けれど、見た夢の内容も、涙の訳も思い出せはしない。


まぁ良いかと、私は涙の意味をさほど気に止める事もなく着替えを始めた。

着替えながらふと机に目をやれば、そこには一冊のスケッチブックが無造作に置かれていた。


「このスケッチブック、何だっけ?」


見覚えのないスケッチブックに小首をかしげながら捲って見ると、そこには何も描かれていない真っ白なページが並んでいた。


「何も描いてないや。こんなのいつ買ったかな?」


そんな微かな疑問を呟きながら、でもやっぱりさほど気に止めずに私はそのスケッチブックを本棚へと閉まって居間へと降りた。


「あ、葵葉ちゃん、明けましておめでとう。もうお雑煮の支度できてるからね。手を洗ってきて準備手伝ってくれる?」

「うん、分かった。明けましておめでとう。今年も宜しくお願いします。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さんもお兄ちゃんも、明けましておめでとうございます」


今日は1月1日。一年の始まりの日だ。

私より先に居間へと集まっていた家族に新年の挨拶を交わしながら私は洗面所へと手た顔を洗いに行った。

顔を洗い、鏡に写る自分の姿を見ながら私はぼんやり考える。

迎えられるとは思ってもいなかった16歳の私。
今年はどんな年になるのかな?
私はあと何年生きられるのかな?と

毎年元日を迎えられる度に、私は私に残された残りの時間を強く意識させられる。

特別な日だからこそ、余計に意識させられるのかもしれない。

新しい年が始まる楽しみと不安を抱えながら、鏡に映る私自身にも「今年も宜しくね」と挨拶しながら私は再び居間へと戻った。




年の瀬は嫌でも忙しくなる。

初詣に、親戚通しの新年の挨拶まわり。学生の私達には冬休みに課せられた宿題も終わらせなければならない。

一年の始まりを特別なものだと感じながらも目まぐるしく過ぎて行く毎日に、あっと言う間に普段の生活が戻って来た。

そう、新学期、学校の始まりの日が――

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