153 / 176
冬物語
大晦日の約束②
しおりを挟む
「ね、ねぇ神崎君。八幡神社の初詣には何か出店も並ぶの?」
「あぁ。夏祭りの時程出店の数は多くはないけどな。祭好きの大人達が有志で店を出して、毎年大晦日から1日の夜はばか騒ぎして盛り上がってるよ」
「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあさ、たこ焼きは……ある?」
「たこ焼きはどうだったかな。でも確か焼きそばはあったかな。あとは甘酒とか、フライドポテトとかもあったと思う。子供向けなら綿菓子やリンゴ飴なんかもあったと思うけど……」
「リンゴ飴! 私リンゴ飴と綿菓子食べたい!」
「あぁ、食べたいものは全部食べれば良いさ。回れる限りの出店を回ろう」
「本当?」
「あぁ。そう言う、約束だったからな」
……約……束……
会話の中、神崎君の口にした一言に私ははっとした。
私の頭の中、以前神耶君と交わしたあるやり取りが思い出されて。
――『楽しみだな~夏祭り。一緒にかき氷食べようね!たこ焼きも、りんご飴も!あ~金魚すくいもやりたいな~。それから……』
『待て待て待て。一緒にってなんだよ』
『え?だから、お祭りの日に、一緒に出店を見て回ろう。ってデートのお誘いだよ』
『はぁ~?!デート?何馬鹿な事言って……回りたきゃ勝手に回れば良いだろ!俺を巻き込むな!』
『え~~しようよお祭りデート!ねぇ~しようよしようよ~!!』
『あ~お前っ、何勝手に…』
『指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲~ます。指切った!』
あぁ、そうか。神耶君は、あの時の約束を果たそうとしてくれているんだ。
今までの#神崎__・__君の言動に、私はふとそんな事を思った。
今回だけではない。きっと文化祭の時も。
あの時一緒に回ろうと誘ってくれたのも、もしかしたら同じ理由からだったのかもしれない。
あんな一方的な約束を、一年以上経った今も覚えていてくれたなんて。
果たそうとしてくれていたなんて。
私は素直に嬉しいと思った。
嬉しさに、込み上げてくるものを感じた。
でも、この込み上げてくる感情を、神崎君にだけは気づかれてはいけないと思った。
だから私は神崎君の声が聞こえなかったふりをして、気付いていないふりをした。
そして出来る限り普段通りを装って、その後は他愛のない会話を交わしながら、努めて賑やに振る舞った。
「なんだか、賑やかになって来たね」
八幡神社に近付くにつれて増えて行く人の数。
親子連れから友達同士、それから私達のような男女の二人組まで様々な組み合わせの人々が楽しそうに神社へ続く坂道を登って行く。
夜の10時を過ぎているとは思えないくらい周囲はとても賑やかだ。
神社の境内に着くと、更に多くの人で賑わっていて、参道の左右には色とりどりの出店が並ぶ。
まるで夏祭りのような賑わいに、私のテンションも自然と高くなっていた。
「うわぁ~凄い!凄い凄い凄い!人がいっぱいいる! お店がいっぱい並んでる! 私、こんなお祭りみたいな雰囲気初めて!」
「いつもは誰も寄り付かないくせにな。夏と秋の祭と、大晦日から元日にかけてのこの時だけは毎年人で賑わうんだ」
屋台に並ぶ人の群れを横目に見ながら私達はまず社へと参拝に赴く。
短いながらも伸びた参拝を待つ人の列に並びながら、私は願い事を頭の中で呟いていた。
『どうか神耶君が私の前からいなくなりませんように』と。
「あぁ。夏祭りの時程出店の数は多くはないけどな。祭好きの大人達が有志で店を出して、毎年大晦日から1日の夜はばか騒ぎして盛り上がってるよ」
「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあさ、たこ焼きは……ある?」
「たこ焼きはどうだったかな。でも確か焼きそばはあったかな。あとは甘酒とか、フライドポテトとかもあったと思う。子供向けなら綿菓子やリンゴ飴なんかもあったと思うけど……」
「リンゴ飴! 私リンゴ飴と綿菓子食べたい!」
「あぁ、食べたいものは全部食べれば良いさ。回れる限りの出店を回ろう」
「本当?」
「あぁ。そう言う、約束だったからな」
……約……束……
会話の中、神崎君の口にした一言に私ははっとした。
私の頭の中、以前神耶君と交わしたあるやり取りが思い出されて。
――『楽しみだな~夏祭り。一緒にかき氷食べようね!たこ焼きも、りんご飴も!あ~金魚すくいもやりたいな~。それから……』
『待て待て待て。一緒にってなんだよ』
『え?だから、お祭りの日に、一緒に出店を見て回ろう。ってデートのお誘いだよ』
『はぁ~?!デート?何馬鹿な事言って……回りたきゃ勝手に回れば良いだろ!俺を巻き込むな!』
『え~~しようよお祭りデート!ねぇ~しようよしようよ~!!』
『あ~お前っ、何勝手に…』
『指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲~ます。指切った!』
あぁ、そうか。神耶君は、あの時の約束を果たそうとしてくれているんだ。
今までの#神崎__・__君の言動に、私はふとそんな事を思った。
今回だけではない。きっと文化祭の時も。
あの時一緒に回ろうと誘ってくれたのも、もしかしたら同じ理由からだったのかもしれない。
あんな一方的な約束を、一年以上経った今も覚えていてくれたなんて。
果たそうとしてくれていたなんて。
私は素直に嬉しいと思った。
嬉しさに、込み上げてくるものを感じた。
でも、この込み上げてくる感情を、神崎君にだけは気づかれてはいけないと思った。
だから私は神崎君の声が聞こえなかったふりをして、気付いていないふりをした。
そして出来る限り普段通りを装って、その後は他愛のない会話を交わしながら、努めて賑やに振る舞った。
「なんだか、賑やかになって来たね」
八幡神社に近付くにつれて増えて行く人の数。
親子連れから友達同士、それから私達のような男女の二人組まで様々な組み合わせの人々が楽しそうに神社へ続く坂道を登って行く。
夜の10時を過ぎているとは思えないくらい周囲はとても賑やかだ。
神社の境内に着くと、更に多くの人で賑わっていて、参道の左右には色とりどりの出店が並ぶ。
まるで夏祭りのような賑わいに、私のテンションも自然と高くなっていた。
「うわぁ~凄い!凄い凄い凄い!人がいっぱいいる! お店がいっぱい並んでる! 私、こんなお祭りみたいな雰囲気初めて!」
「いつもは誰も寄り付かないくせにな。夏と秋の祭と、大晦日から元日にかけてのこの時だけは毎年人で賑わうんだ」
屋台に並ぶ人の群れを横目に見ながら私達はまず社へと参拝に赴く。
短いながらも伸びた参拝を待つ人の列に並びながら、私は願い事を頭の中で呟いていた。
『どうか神耶君が私の前からいなくなりませんように』と。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる