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冬物語
打ち上げパーティー
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カラオケ店があるのは、学校からおよそ10分程離れた場所に建つ大型ショッピングモールの一角。
クリスマスイブの今日は、ショッピングモール全体が家族連れやカップルなど、多くの人で賑わっていた。
そしてそれはカラオケ店内も例外ではなく――
店内は空室を待つお客さんでごった返していた。
そんな中でも井上君の言っていた通り、事前に予約をしていた私達は、待たされる事なくスムーズに2階の団体向けの部屋へと案内された。
クラスの皆が和気あいあいと用意されたカラオケルームへ向かう中、私一人だけはぜぇぜぇと、息をきらしながら皆から少し遅れて部屋へ入った。
私が到着した頃には、カラオケルームの中はもうすっかり賑わっていて、女子達は誰が神崎君の隣に座るのかを言い争い、男子達は誰が一番に歌うのかマイクの争奪戦を繰り広げていた。
今日初めて、カラオケボックスと言う場所へ足を踏み入れた私はと言えば、右も左も分からないまま賑やかなクラスメイト達の様子に圧倒されながら、ぼーっと立ち尽くしていた。
「白羽何やってんだよ。んな所突っ立ってないで空いてる席に座れよ」
そんな私に、入り口近くの空いていた椅子を差し示しながら、少し離れた場所から井上君がそう声を掛けてくれる。
私はコクンと頷いて、井上君に言われた通り入り口近くの椅子に腰かけた。
一人、賑やかな空気に圧倒されながらも、なるべく皆の邪魔にならないようにと隅で小さくなっていた私だったけれど、やはり慣れない環境についついソワソワ、キョロキョロと視線を漂わせてしまう。
と、少し離れた場所に、神崎君の姿を見つけた。
神崎君の隣には、安藤さんの姿があった。
どうやら神崎君の隣の席を巡る激しい争奪戦は、安藤さんが勝ち取ったらしい。
「ねぇねぇ神崎君、何か歌ってよ」
「いや、俺歌えねぇし」
「えぇ~そんな謙遜しなくて良いのに。あぁ分かった、一人で歌うのが恥ずかしいんでしょ。じゃあ私と一緒に歌おうよ。神崎君の好きな歌教えて」
「いや、だから、最近の歌とか知らねぇんだって」
「そうなの? じゃあ昔の懐メロとかでも良いよ? 誰か好きなアーティストとかいないの?」
神崎君の腕に自身の腕を絡ませながら、安藤さんは彼に一曲歌って欲しいとせがんでいる。
何故か私は、そんな二人の仲睦まじい姿を遠くから眺めながら、胸がチクリと痛むのを感じた。
つい数十分前まで私の隣にいた神崎君。
でも今は他の女の子と楽しげに話している。
その姿が何処だか急に遠い人に感じられて……私の胸には不思議と、寂しいと思う気持ちが込み上げていた。
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一人、賑やかな空気に圧倒されながらも、なるべく皆の邪魔にならないようにと隅で小さくなっていた私だったけれど、やはり慣れない環境についついソワソワ、キョロキョロと視線を漂わせてしまう。
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「いや、俺歌えねぇし」
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