願いが叶うなら

汐野悠翔

文字の大きさ
上 下
140 / 176
冬物語

クラスメイトとの合流

しおりを挟む
ゲームセンターを出た後、急いで駅を目指した私達は、運良く停車していた列車に飛び乗り、待ち合わせ場所である学校近くの駅へと急いだ。

待ち合わせ時刻から15分程遅れて目的の駅へと到着した私と神崎君。

駅から学校までの距離は目と鼻の先で、校門の前には既に大勢の人影が見える。


「はぁ、はぁ、はぁ、ごめんなさい。遅れました」

「お、来た来た。おい、朔也と白羽が来たぞ。お前等二人一緒だったんだな。なかなか来ないから心配したぞ」

「ごめんなさい井上君。皆さんも、遅くなってごめんなさい」


私達の姿を見つけて一番に声を掛けてくれた井上君に、私はまだ息の整わない荒い呼吸で謝罪の言葉を口にしながら深く深く頭を下げた。


「まぁまぁ、こうやって無事に合流できたんだから気にすんなって」


井上君の優しい言葉に恐る恐る顔を上げると、ニコニコ穏やかな笑顔を浮かべる井上君の後ろで、不機嫌な顔でこちらを睨む安藤さんと目があう。


「っ……」


安藤さんから溢れ出ている苛立ちのオーラに、私はビクンと肩を震わせながらも、そもそも遅刻したのは私のせいなのだから安藤さんが怒るのは仕方がないと、少しでも反省の気持ちを伝えようと、再び深く深く頭を下げて必死に反省の姿勢を示した。


「だから大丈夫だって白羽。もう頭あげろよ。さっき店に電話して30分予約ずらしてもらうようにお願いしたからさ。んじゃ無事に皆揃った事だし、打ち上げ会場に移動するとしましょうか」


学級委員であり、今回の打ち上げパーティーの企画者でもある井上君の呼び掛けに、皆がぞろぞろと移動を始める。


「ところで朔也、何で白羽と一緒に来たんだ? もしかしてお前ら、今まで二人でいたのか?」

「んぁ? まあな。今日一日葵葉と一緒に隣町まで遊びに行ってた」

「何だ何だ? デートか?」

「ばっ、ちげぇ! デートなんかじゃねぇって!」

「ほんとに~?」


移動する群衆の中、先程まで私の隣にいた神崎君は、井上君と肩を組みながら、何やら楽しそうに話している様子。

私はと言えば、あっと言う間に一人群れから取り残されて、最後尾から皆の後を必死に追いかけていた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


クラスの群れから離れて歩く私の呼吸は一人荒い。
ここへ来るまでの全力ダッシュが今も私の心臓を騒がしていたから。

必死に足を前に出して、歩いても歩いても、気が付けばクラスメイト達ははるか前方にいて――
学校からカラオケ店まで10分程の道のりは、私には酷く遠いものに感じられた。

お願い、あともう少し、今日が終わるまでは我慢していて――

体の悲鳴を感じながらも、私はそう心の中で必死に願った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...