132 / 175
冬物語
目的地は商店街?
しおりを挟む
「ここが、神崎君の目的の場所?」
「正確には、駅を出た所にある商店街が、だけどな」
「商店街?」
そんな会話を交わしながら私達は電車を降りる。
私達が乗り込んだ時には1人、2人しか乗っていなかった車内が、今は降りる順番待ちをする程に混雑していた。
駅校内に降り立つと、更に電車に乗る人、降りる人、そして乗り換えに慌ただしく移動する人と、様々な人の波でごった返していた。
「おえ、人がいっぱいいやがる。気持ち悪ぃ。やっぱり帰りてぇ……」
「帰りたいって、まだ来たばっかりだよ。神崎君がここに来たいって言って強引に連れて来たのに、もう帰りたいの?」
「うるせぇな。俺は人混みが嫌いなんだ」
「嫌いって……神崎君が来たいって言ったのに」
今にも回れ右して、降りたばかりの電車に乗り込みんでしまいそうな程うんざりした顔の神崎君。
決して逃すまいと私は彼の手をがっちり掴んで先へ進むよう促した。
――と、その瞬間、私の中に何か懐かしいものが込み上げてくるような、そんな不思議な錯覚に襲われて、私は足を止める。
「どうした、葵葉?」
「…………ううん。何でもない」
今の感覚は、何?
突然襲われた不思議な感覚に、私は首を傾げながらも、何でもないと返事をして再び歩き出した。
改札を抜け、駅の南口を出ると、綺麗「おえ、人がいっぱいいやがる。気持ち悪ぃ。やっぱり帰りてぇ……」
「帰りたいって、まだ来たばっかりだよ。神崎君がここに来たいって言って強引に連れて来たのに、もう帰りたいの?」
「うるせぇな。俺は人混みが嫌いなんだ」
「嫌いって……神崎君が来たいって言ったのに」
今にも回れ右して、降りたばかりの電車に乗り込みんでしまいそうな程うんざりした顔の神崎君を、決して逃すまいと私は彼の手をがっちり掴んで先へ進むよう促した。
――と、その瞬間、私の中に何か懐かしいものが込み上げてくるような、そんな不思議な錯覚に襲われて、私は足を止める。
「どうした、葵葉?」
「…………ううん。何でもない」
今の感覚は、何?
突然襲われた不思議な感覚に、私は首を傾げながらも、何でもないと返事をして再び歩き出した。
改札を抜け、駅の南口を出ると、綺麗に飾り付けられた大きなクリスマスツリーが目に飛び込んで来る。
目の前に広がる幻想的な景色に、「うわ~凄い!」と私の口から感嘆の声が漏れる。
その隣で、神崎君は感嘆とはまた少し違った驚きの声をあげていた。
「何だこれ? こんな巨大な木、前はなかったのに」
「何って、クリスマスツリーだよ」
「クリスマスツリー?」
「そう、クリスマスツリー」
と言ってもピンときていない様子の神崎君に、今度は私が驚きの声を上げた。
「……て……え? 神崎君もしかして、クリスマスツリー知らないの?」
「な、バ、バカにするな! クリスマスツリーぐらい知ってる! 西洋から入ってきた、やたら派手な木の事だろ!」
「…………まぁ、確かに、間違ってはいないんだろうけど」
「な、何だよ。人をバカにしたような顔しやがって」
「いや、あまりに変化球な返しに、どう反応したら良いのかわからなくて。もしかして神崎君って、クリスマスツリー見るの初めて?」
「う、うるせぇ。悪いかよ」
「嘘、本当に初めてなの? 私でさえ見たことあるのに、今時そんな人いるんだね」
「お前今、絶対俺のことバカにしただろ!」
顔を真っ赤にして怒る神崎君。
恥ずかさを隠してムキになって怒る彼の姿が、何だか可愛いらしく感じられて、私は自然と声を出して笑っていた。
「な、何笑ってんだよ! 笑うな!」
「だって、何か可愛いんだもん」
「かっ……可愛いだと? 葵葉のくせにバカにしやがって! もう良い! いつまでも笑ってねぇで早く行くぞ!」
「あ、ちょっと待ってよ。行くってどこに行くの? そろそろ行き先を教えてくれても……」
「良いから黙ってついて来い!」
神崎君に手を引かれながら駅前を離れ、南に向かって歩いていくと、すぐに様々なお店が立ち並ぶ賑やかな通りが見えて来た。
きっとここが神崎君の言っていた商店街なのだろうとすぐにわかった。
クリスマス一色に飾り付けられた華やかな商店街の姿を、落ち着きなくキョロキョロ見回しながら、私達は奥へ奥へと進んでいく。
と、突然前を歩く神崎君が立ち止まり、周囲に気を取られていた私は前方不注意で、彼の背中に突進してしまった。
「わっぷ――」
「あったあった、着いたぞ葵葉。あれが目的の場所だ」
鼻を抑えながら、ひょっこり神崎君の背中から顔を覗かせ見ると、彼の指し示す先には全く予想もしていなかったお店が立っていた。
「正確には、駅を出た所にある商店街が、だけどな」
「商店街?」
そんな会話を交わしながら私達は電車を降りる。
私達が乗り込んだ時には1人、2人しか乗っていなかった車内が、今は降りる順番待ちをする程に混雑していた。
駅校内に降り立つと、更に電車に乗る人、降りる人、そして乗り換えに慌ただしく移動する人と、様々な人の波でごった返していた。
「おえ、人がいっぱいいやがる。気持ち悪ぃ。やっぱり帰りてぇ……」
「帰りたいって、まだ来たばっかりだよ。神崎君がここに来たいって言って強引に連れて来たのに、もう帰りたいの?」
「うるせぇな。俺は人混みが嫌いなんだ」
「嫌いって……神崎君が来たいって言ったのに」
今にも回れ右して、降りたばかりの電車に乗り込みんでしまいそうな程うんざりした顔の神崎君。
決して逃すまいと私は彼の手をがっちり掴んで先へ進むよう促した。
――と、その瞬間、私の中に何か懐かしいものが込み上げてくるような、そんな不思議な錯覚に襲われて、私は足を止める。
「どうした、葵葉?」
「…………ううん。何でもない」
今の感覚は、何?
突然襲われた不思議な感覚に、私は首を傾げながらも、何でもないと返事をして再び歩き出した。
改札を抜け、駅の南口を出ると、綺麗「おえ、人がいっぱいいやがる。気持ち悪ぃ。やっぱり帰りてぇ……」
「帰りたいって、まだ来たばっかりだよ。神崎君がここに来たいって言って強引に連れて来たのに、もう帰りたいの?」
「うるせぇな。俺は人混みが嫌いなんだ」
「嫌いって……神崎君が来たいって言ったのに」
今にも回れ右して、降りたばかりの電車に乗り込みんでしまいそうな程うんざりした顔の神崎君を、決して逃すまいと私は彼の手をがっちり掴んで先へ進むよう促した。
――と、その瞬間、私の中に何か懐かしいものが込み上げてくるような、そんな不思議な錯覚に襲われて、私は足を止める。
「どうした、葵葉?」
「…………ううん。何でもない」
今の感覚は、何?
突然襲われた不思議な感覚に、私は首を傾げながらも、何でもないと返事をして再び歩き出した。
改札を抜け、駅の南口を出ると、綺麗に飾り付けられた大きなクリスマスツリーが目に飛び込んで来る。
目の前に広がる幻想的な景色に、「うわ~凄い!」と私の口から感嘆の声が漏れる。
その隣で、神崎君は感嘆とはまた少し違った驚きの声をあげていた。
「何だこれ? こんな巨大な木、前はなかったのに」
「何って、クリスマスツリーだよ」
「クリスマスツリー?」
「そう、クリスマスツリー」
と言ってもピンときていない様子の神崎君に、今度は私が驚きの声を上げた。
「……て……え? 神崎君もしかして、クリスマスツリー知らないの?」
「な、バ、バカにするな! クリスマスツリーぐらい知ってる! 西洋から入ってきた、やたら派手な木の事だろ!」
「…………まぁ、確かに、間違ってはいないんだろうけど」
「な、何だよ。人をバカにしたような顔しやがって」
「いや、あまりに変化球な返しに、どう反応したら良いのかわからなくて。もしかして神崎君って、クリスマスツリー見るの初めて?」
「う、うるせぇ。悪いかよ」
「嘘、本当に初めてなの? 私でさえ見たことあるのに、今時そんな人いるんだね」
「お前今、絶対俺のことバカにしただろ!」
顔を真っ赤にして怒る神崎君。
恥ずかさを隠してムキになって怒る彼の姿が、何だか可愛いらしく感じられて、私は自然と声を出して笑っていた。
「な、何笑ってんだよ! 笑うな!」
「だって、何か可愛いんだもん」
「かっ……可愛いだと? 葵葉のくせにバカにしやがって! もう良い! いつまでも笑ってねぇで早く行くぞ!」
「あ、ちょっと待ってよ。行くってどこに行くの? そろそろ行き先を教えてくれても……」
「良いから黙ってついて来い!」
神崎君に手を引かれながら駅前を離れ、南に向かって歩いていくと、すぐに様々なお店が立ち並ぶ賑やかな通りが見えて来た。
きっとここが神崎君の言っていた商店街なのだろうとすぐにわかった。
クリスマス一色に飾り付けられた華やかな商店街の姿を、落ち着きなくキョロキョロ見回しながら、私達は奥へ奥へと進んでいく。
と、突然前を歩く神崎君が立ち止まり、周囲に気を取られていた私は前方不注意で、彼の背中に突進してしまった。
「わっぷ――」
「あったあった、着いたぞ葵葉。あれが目的の場所だ」
鼻を抑えながら、ひょっこり神崎君の背中から顔を覗かせ見ると、彼の指し示す先には全く予想もしていなかったお店が立っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる