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冬物語
歩みより
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「どうした葵葉? 今日は何だかずっとぼ~っとしてるな」
」
「……え?」
――昼休み
いつものように屋上でお弁当を食べている私の隣で、当たり前のように一緒にお昼を食べていた神崎君が、心配そうに私の顔を覗き込んで言った。
そんな神崎君の質問に、私は朝からずっと心に残っている蟠りを口にした。
「ねぇ、神崎君……私、本当に行っても良いのかな?」
「は? どこに?」
「だから朝の話。クリスマスイブにやるって言う文化祭の打ち上げに、本当に私なんかが参加しても良いのかな?」
「は? お前も参加するって話で落ち着いただろ。何を今更ぐだぐだと悩む必要があんだよ?」
「だって、あれは神崎君が強引に押し通したからで……クラスの女の子達はやっぱり私が参加する事に納得いってないんじゃないのかな」
「強引になんて押し通してないだろ。人聞きの悪い。俺はただ、葵葉が行くなら行くし、葵葉が行かないなら行かないって言っただけだ」
「だから、それが強引だったんだって」
「はぁ? 何が強引だ。俺は俺の意思をはっきり伝えただけだろ。じゃあ聞くけどな、お前の意思はどうなんだよ。周りがどうとかじゃなくて、お前自身は行きたいのか? 行きたくないのか? どっちだ!」
「それは……行きたい……よ。私だって……クラスの人達ともっと仲良くなりたい……」
「じゃあ周りに遠慮なんかしないで行けば良い。ただそれだけの話だろ。何をそんなにぐだぐた考える必要があんだよ。面倒臭い奴だなぁ」
「だって……」
「だってじゃねぇ! 言っとくけどな、クラスの輪に入りたいって思ってるだけじゃ一生かかったって無理だからな! 自分から動かなければ、どんな思いも実現なんかしねぇんだよ!」
「っ…………」
「今回の事は、お前にとって良い機会になるんじゃねぇの。思いを実現する為にも、一歩踏み出してみりゃ良いじゃねぇか」
「…………」
神崎君の正論に、私は痛い所をつかれたと、それ以上何も返す事ができなかった。
何とか口にした言葉は、私が何度も神崎君に抱いた疑問だけ。
「どうして神崎君は、こんな私なんかをいつも気にかけてくれるの?」
神崎君は今、自分から歩み寄ろうとしなければ何も変わらないと言った。
でも神崎君は、神崎君だけは自分から私に歩み寄ろうとしてくれた。
どんなに迷惑がって突き放してみても、見捨てずに何度も何度も。
そんな神崎君のおかげで、クラスの中で井上君ともお話が出来るようになった。
学校の行事で初めての思い出が出来た。
今も文化祭の打ち上げで私をクラスの輪に溶け込ませようとしてくれている。
どうして神崎君は、こんなはみ出し者の私なんかを構ってくれるのだろうか?
「どうしてって、そりゃ~俺が、もっとお前と仲良くなりたいって思ってるからだろ」
「だから……どうして私なんかと仲良くなりたいと思ってくれるの? 神崎君と仲良くしたいと思ってる子は他にもいっぱいいるんだから、神崎君ならもっと色々な人と仲良くなれるはずなのに」
「仲良くしたいと思うのに、理由がなきゃダメなのか?」
「…………ダメじゃないけど……」
あぁ、またはぐらかされてしまった。
結局彼は、いつも曖昧な言葉で誤魔化そうとする。
本当に、彼が私にこだわる理由は何なのだろうか?
初めて会った時から、まるで昔からの友達のように接してくれる神崎君。
先生以外誰も知らないはずの私の病気の事をはじめ、色々な事を知っていた神崎君。
転校して来たばかりだと言うのに、彼の言動は不思議な事だらけ。
もしかして私は、本当に以前から神崎君と知り合っていたのではないかと、そんな錯覚すら覚えてしまう程に。
けれど何度思い返してみても、やっぱり私には神崎君と知り合った記憶は存在しない。
どうして?
どうして神崎君は私の事を知っているのに、私は彼の事を知らないのだろう?
…………知りたい。
神崎君の事をもっと、もっと知りたい。
「おい、葵葉! まぁたぼ~っとして!」
「っ!」
神崎君の事を色々考えていた私は、神崎君の声ではっと我に返った。
「この話はもう良いだろ。12月24日はお前も参加って事で、はい、終わり!」
「え……」
結局分からないまま一方的に話を完結させられてしまって、辿り着けなかった答えにガックリと肩を落とす。
――『言っとくけどな、#思ってるだけ__・__じゃ一生かかっても無理だからな! 自分から動かなければ、どんな思いも実現なんてしないんだよ!』――
ふと、先程の神崎君の言葉が私の頭に甦る。
うん、そうだよね。知りたいと思うだけじゃダメなんだ。自分から動かなければ、どんな思いも実現しない。
神崎君の事が知りたいと思うのならば、私ももっと神崎君に歩み寄らなければ。
その為にもまずは――
「……神崎君、ありがとう……」
神崎君が私に向けてくれる優しさに、私からの感謝の気持ちを伝えてみる事にした。
」
「……え?」
――昼休み
いつものように屋上でお弁当を食べている私の隣で、当たり前のように一緒にお昼を食べていた神崎君が、心配そうに私の顔を覗き込んで言った。
そんな神崎君の質問に、私は朝からずっと心に残っている蟠りを口にした。
「ねぇ、神崎君……私、本当に行っても良いのかな?」
「は? どこに?」
「だから朝の話。クリスマスイブにやるって言う文化祭の打ち上げに、本当に私なんかが参加しても良いのかな?」
「は? お前も参加するって話で落ち着いただろ。何を今更ぐだぐだと悩む必要があんだよ?」
「だって、あれは神崎君が強引に押し通したからで……クラスの女の子達はやっぱり私が参加する事に納得いってないんじゃないのかな」
「強引になんて押し通してないだろ。人聞きの悪い。俺はただ、葵葉が行くなら行くし、葵葉が行かないなら行かないって言っただけだ」
「だから、それが強引だったんだって」
「はぁ? 何が強引だ。俺は俺の意思をはっきり伝えただけだろ。じゃあ聞くけどな、お前の意思はどうなんだよ。周りがどうとかじゃなくて、お前自身は行きたいのか? 行きたくないのか? どっちだ!」
「それは……行きたい……よ。私だって……クラスの人達ともっと仲良くなりたい……」
「じゃあ周りに遠慮なんかしないで行けば良い。ただそれだけの話だろ。何をそんなにぐだぐた考える必要があんだよ。面倒臭い奴だなぁ」
「だって……」
「だってじゃねぇ! 言っとくけどな、クラスの輪に入りたいって思ってるだけじゃ一生かかったって無理だからな! 自分から動かなければ、どんな思いも実現なんかしねぇんだよ!」
「っ…………」
「今回の事は、お前にとって良い機会になるんじゃねぇの。思いを実現する為にも、一歩踏み出してみりゃ良いじゃねぇか」
「…………」
神崎君の正論に、私は痛い所をつかれたと、それ以上何も返す事ができなかった。
何とか口にした言葉は、私が何度も神崎君に抱いた疑問だけ。
「どうして神崎君は、こんな私なんかをいつも気にかけてくれるの?」
神崎君は今、自分から歩み寄ろうとしなければ何も変わらないと言った。
でも神崎君は、神崎君だけは自分から私に歩み寄ろうとしてくれた。
どんなに迷惑がって突き放してみても、見捨てずに何度も何度も。
そんな神崎君のおかげで、クラスの中で井上君ともお話が出来るようになった。
学校の行事で初めての思い出が出来た。
今も文化祭の打ち上げで私をクラスの輪に溶け込ませようとしてくれている。
どうして神崎君は、こんなはみ出し者の私なんかを構ってくれるのだろうか?
「どうしてって、そりゃ~俺が、もっとお前と仲良くなりたいって思ってるからだろ」
「だから……どうして私なんかと仲良くなりたいと思ってくれるの? 神崎君と仲良くしたいと思ってる子は他にもいっぱいいるんだから、神崎君ならもっと色々な人と仲良くなれるはずなのに」
「仲良くしたいと思うのに、理由がなきゃダメなのか?」
「…………ダメじゃないけど……」
あぁ、またはぐらかされてしまった。
結局彼は、いつも曖昧な言葉で誤魔化そうとする。
本当に、彼が私にこだわる理由は何なのだろうか?
初めて会った時から、まるで昔からの友達のように接してくれる神崎君。
先生以外誰も知らないはずの私の病気の事をはじめ、色々な事を知っていた神崎君。
転校して来たばかりだと言うのに、彼の言動は不思議な事だらけ。
もしかして私は、本当に以前から神崎君と知り合っていたのではないかと、そんな錯覚すら覚えてしまう程に。
けれど何度思い返してみても、やっぱり私には神崎君と知り合った記憶は存在しない。
どうして?
どうして神崎君は私の事を知っているのに、私は彼の事を知らないのだろう?
…………知りたい。
神崎君の事をもっと、もっと知りたい。
「おい、葵葉! まぁたぼ~っとして!」
「っ!」
神崎君の事を色々考えていた私は、神崎君の声ではっと我に返った。
「この話はもう良いだろ。12月24日はお前も参加って事で、はい、終わり!」
「え……」
結局分からないまま一方的に話を完結させられてしまって、辿り着けなかった答えにガックリと肩を落とす。
――『言っとくけどな、#思ってるだけ__・__じゃ一生かかっても無理だからな! 自分から動かなければ、どんな思いも実現なんてしないんだよ!』――
ふと、先程の神崎君の言葉が私の頭に甦る。
うん、そうだよね。知りたいと思うだけじゃダメなんだ。自分から動かなければ、どんな思いも実現しない。
神崎君の事が知りたいと思うのならば、私ももっと神崎君に歩み寄らなければ。
その為にもまずは――
「……神崎君、ありがとう……」
神崎君が私に向けてくれる優しさに、私からの感謝の気持ちを伝えてみる事にした。
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