109 / 175
冬物語
気になる存在
しおりを挟む
――次の日
いつもと変わらない日常、いつもと変わらない授業風景の中、私は一人そ私そわしていた。
昨日の一見以来、私は隣の席の神崎君の事が気になって仕方なかった。
授業中も、先生の話などまともに耳には入ってこないで、隣の席の神崎君を横目でちらちら盗み見てしまうのだ。
そんな私の気も知らないで、神崎はと言えば、数学の授業中だと言うのに堂々と机に突っ伏して、居眠りしている。
――『指切りげんまんうそついたら針千本飲~ます。指切った』
寝顔を見ながら、昨日強引に彼と交わされた指切りを思い出す。
あの瞬間、頭の中に甦えってきた何か。
でもその何か”が何だったのか、一夜明けた今もまだ思い出せなくて、でもあの時確かにどこか懐かしく、温かい気持ちを感じた。
あの感情の正体がいったい何だったのか、思い出したいのに思い出せない。
そんなモヤモヤとした感覚が、しこりとなって今もまだ私の中に残り続けているのだ。
――『俺をモデルに描いてよ。葵葉ならかけるよ』
何故あの時彼は、自分をモデルに絵を描く事を願い出たのだろう?
何故私自身描いた経験のない人物画を、まるで描いた事があるかのように描けると断言したのはどうして?
そもそも、何故神崎君は転校初日から私なんかに馴れ馴れしく構ってくるの?
何故先生達以外誰も知らないはずの私の病気の事を知っていたの?
彼に関して、以前から不思議に思っていた多くの事柄が、あの日交わした約束を交わした瞬間感じた#何か__・__の中に隠れているような気がして……
私は今まで以上に私は神崎君の事が気になって仕方なくなっていた。
ふと気がつくと、自分でも無意識のうちにノートの上にシャーペンを走らせていて、私は彼の無防備な寝顔をスケッチしていた。
そして、授業もそっちのけに、その後何枚も何枚も彼の姿をスケッチし続けた。
◆◆◆
――キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
その音に、神崎君の瞼も開かれる。
スケッチの為、神崎君へ向けていた私の視線と、目覚めたばかりの彼の視線がぶつかった。
「っ………」
気まずさに慌てて視線を反らした私だったが――
時既に遅し。
「何してんの?」
からかうような口調で彼に問われる。
「な、何でもないよ」
「嘘つけ。今、俺の寝顔見てただろ。スケッチでもしてた? 寝顔を盗み描くなんて、葵葉のエッチ」
「なっ?! ち、違うもん!そんな事してないもん!!」
誤魔化そうと必死に平静さを装うが、全くの図星をつかれて、恥ずかしさのあまり耳まで赤くなるのを感じた。
それでも必死に否定するものだから、ついつい声は大きくなって
「こ~らうるさいぞ~白羽、神崎。お前達二人、じゃれてないで早く立て」
数学の高橋先生に注意をされてしまう。
「す、すみませんっ!」
慌てて先生に視線を向ければ、いつの間に起立の号令が掛かっていたのか、立ち上がって私達を迷惑そうな顔で見下ろすクラスメイトと、先生の呆れ顔がそこにはあった。
と同時に、クスクスと嘲笑うような笑い声や、ヒソヒソと冷ややかな話声が聞こえてくる。
私は急いで立ち上がるも、そこにもし穴があったならば入りたい程の恥ずかしさが込み上げて来て、授業終了の礼の後も、私は暫く顔を上げる事が出来なかった。
いつもと変わらない日常、いつもと変わらない授業風景の中、私は一人そ私そわしていた。
昨日の一見以来、私は隣の席の神崎君の事が気になって仕方なかった。
授業中も、先生の話などまともに耳には入ってこないで、隣の席の神崎君を横目でちらちら盗み見てしまうのだ。
そんな私の気も知らないで、神崎はと言えば、数学の授業中だと言うのに堂々と机に突っ伏して、居眠りしている。
――『指切りげんまんうそついたら針千本飲~ます。指切った』
寝顔を見ながら、昨日強引に彼と交わされた指切りを思い出す。
あの瞬間、頭の中に甦えってきた何か。
でもその何か”が何だったのか、一夜明けた今もまだ思い出せなくて、でもあの時確かにどこか懐かしく、温かい気持ちを感じた。
あの感情の正体がいったい何だったのか、思い出したいのに思い出せない。
そんなモヤモヤとした感覚が、しこりとなって今もまだ私の中に残り続けているのだ。
――『俺をモデルに描いてよ。葵葉ならかけるよ』
何故あの時彼は、自分をモデルに絵を描く事を願い出たのだろう?
何故私自身描いた経験のない人物画を、まるで描いた事があるかのように描けると断言したのはどうして?
そもそも、何故神崎君は転校初日から私なんかに馴れ馴れしく構ってくるの?
何故先生達以外誰も知らないはずの私の病気の事を知っていたの?
彼に関して、以前から不思議に思っていた多くの事柄が、あの日交わした約束を交わした瞬間感じた#何か__・__の中に隠れているような気がして……
私は今まで以上に私は神崎君の事が気になって仕方なくなっていた。
ふと気がつくと、自分でも無意識のうちにノートの上にシャーペンを走らせていて、私は彼の無防備な寝顔をスケッチしていた。
そして、授業もそっちのけに、その後何枚も何枚も彼の姿をスケッチし続けた。
◆◆◆
――キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
その音に、神崎君の瞼も開かれる。
スケッチの為、神崎君へ向けていた私の視線と、目覚めたばかりの彼の視線がぶつかった。
「っ………」
気まずさに慌てて視線を反らした私だったが――
時既に遅し。
「何してんの?」
からかうような口調で彼に問われる。
「な、何でもないよ」
「嘘つけ。今、俺の寝顔見てただろ。スケッチでもしてた? 寝顔を盗み描くなんて、葵葉のエッチ」
「なっ?! ち、違うもん!そんな事してないもん!!」
誤魔化そうと必死に平静さを装うが、全くの図星をつかれて、恥ずかしさのあまり耳まで赤くなるのを感じた。
それでも必死に否定するものだから、ついつい声は大きくなって
「こ~らうるさいぞ~白羽、神崎。お前達二人、じゃれてないで早く立て」
数学の高橋先生に注意をされてしまう。
「す、すみませんっ!」
慌てて先生に視線を向ければ、いつの間に起立の号令が掛かっていたのか、立ち上がって私達を迷惑そうな顔で見下ろすクラスメイトと、先生の呆れ顔がそこにはあった。
と同時に、クスクスと嘲笑うような笑い声や、ヒソヒソと冷ややかな話声が聞こえてくる。
私は急いで立ち上がるも、そこにもし穴があったならば入りたい程の恥ずかしさが込み上げて来て、授業終了の礼の後も、私は暫く顔を上げる事が出来なかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】可愛くない私に価値はない、でしたよね。なのに今さらなんですか?
りんりん
恋愛
公爵令嬢のオリビアは婚約者の王太子ヒョイから、突然婚約破棄を告げられる。
オリビアの妹マリーが身ごもったので、婚約者をいれかえるためにだ。
前代未聞の非常識な出来事なのに妹の肩をもつ両親にあきれて、オリビアは愛犬のシロと共に邸をでてゆく。
「勝手にしろ! 可愛くないオマエにはなんの価値もないからな」
「頼まれても引きとめるもんですか!」
両親の酷い言葉を背中に浴びながら。
行くあてもなく町をさまようオリビアは異国の王子と遭遇する。
王子に誘われ邸へいくと、そこには神秘的な美少女ルネがいてオリビアを歓迎してくれた。
話を聞けばルネは学園でマリーに虐められているという。
それを知ったオリビアは「ミスキャンパスコンテスト」で優勝候補のマリーでなく、ルネを優勝さそうと
奮闘する。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!
灰銀猫
恋愛
筆頭侯爵家の令嬢レティシアは、真実の愛に目覚めたと言い出した婚約者の第三王子に婚約破棄される。元々交流もなく、学園に入学してからは男爵令嬢に骨抜きになった王子に呆れていたレティシアは、嬉々として婚約解消を受け入れた。
そっちがその気なら、私だって真実の愛を手に入れたっていい筈!そう心に決めたレティシアは、これまでの他人に作られた自分を脱ぎ捨てて、以前から心に秘めていた初恋の相手に求婚する。
実は可憐で庇護欲をそそる外見だった王子の元婚約者が、初恋の人に求婚して好きになってもらおうと奮闘する話です。
誤字脱字のご報告ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。
R15は保険です。
番外編~レアンドルはBL要素を含みます。ご注意ください。
他サイトでも掲載しています。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
逃げるが価値
maruko
恋愛
侯爵家の次女として生まれたが、両親の愛は全て姉に向いていた。
姉に来た最悪の縁談の生贄にされた私は前世を思い出し家出を決行。
逃げる事に価値を見い出した私は無事に逃げ切りたい!
自分の人生のために!
★長編に変更しました★
※作者の妄想の産物です
婚約者に浮気され、婚約破棄するしかなかった僕の話
もふっとしたクリームパン
恋愛
【本編完結】今夜のこの若い貴族達を中心に開かれた夜会にて、独身の男性陣に囲まれた一人の女子を見る。彼女の名は、ルル・キャメル。輝くような金の髪と翡翠のような綺麗な目を持つキャメル伯爵家の次女で、この僕、ルーベン・バーナーの婚約者だ。同じ伯爵であるバーナー家の嫡男である僕に、二つ年下の彼女が嫁いでくる予定……だったんだけどな。
貴族の婚約は家同士の契約でもあって、解消と破棄ではその重みや責任が全く異なる。僕としては、せめて解消にしたかったけど…もう出来そうにない。僕は決意するしかなかった。
派閥とか出て来ますがふわっとした世界観です。*カクヨム様でも投稿しております。*2021/07/12タイトルを変更しました。*本編29話+オマケ話4話と登場人物紹介で完結です。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる