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冬物語
反省
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昇降口まで来ると、文化祭が近い事もあってか、大勢の生徒でごった返していた。
私達のクラスもまだ残っていたらしく、数人のクラスメイトと出くわした。
「あれ、朔夜と白羽じゃん。お前等もまだ残ってたんだな」
「おう、井上」
「あれ? でもお前等クラスにいなかったよな? こんな時間までどこで何してたんだ?」
「ご……ごめんなさい。私達、今まで美術室で部活動していて……」
「美術室? へぇ、白羽って美術部だったんだな。ん? 私達って事は、朔夜、お前が決めてた部活ってのも美術部だったのか? 意外だなぁ」
「おう。葵葉が美術部だったからな」
やっぱり! 私がいたから入ったんだ! このストーカーめ!
2人の会話に、私は思わず心の中で一人突っ込みを入れる。
「ははは。相変わらず仲良しだな、お前等」
「仲良しなんかじゃない!」
「あぁ、まあな」
今度の突っ込みは心の中では我慢出来なくて、思わず声に出してしまった。
そのタイミングが見事に神崎君と重なって「やっぱり仲良しだ」と、井上君に更に笑われてしまった。
恥ずかしさにかぁっと顔が赤くなるのを感じた。
と、その時、突然横からドンッと強い衝撃を感じて、私の体は下駄箱へとよろめき、「きゃっ」と短い悲鳴を零してしまう。
「あら、ごめんなさい。そんな所で突っ立ってるから、あたっちゃった」
「あ、安藤さん……。ごめんなさい」
衝撃の正体は、どうやらクラスメイトの安藤さんだったらしく、狭い下駄箱で立ち話をしていた事で彼女の邪魔をしてしまっていたようだ。
迷惑を掛けていた事に気付いて、急いで謝ったものの、彼女から注がれる眼差しは酷く冷たいものだった。
彼女以外にも、数人のクラスの女の子達から、私は冷たい視線を向けられていた。
「……安藤さん?」
視線に耐えかねて、私が彼女の名前を呼ぶと、彼女は冷たい声で言った。
「文化祭の準備では放課後残れないくせに、部活動ではこんな時間まで残れるんだ。へぇ~」
「あっ……の……これは………」
毎週部活動があると分かっている水曜日は、病院の予約を入れないようにしているから、何時まででも残る事が出来る。だからギリギリまで残って作業していた。
けれど、それは言い訳にもならない事に気付いて私は言いよどんだ。
放課後残る時間があったのに、私はその時間を自分の為に費やしてしまったのだから。
毎日のように放課後遅い時間まで残って準備している彼女達からしたら、私の身勝手さに腹を立てるのは当然の事だろう。
部活は時間通りに切り上げて、クラスに戻るべきだったと言う事を、今更ながらに気付いて深く反省した。
「…………ごめんなさい」
「別に、あなたなんか最初からあてにしてないからいいけど。井上邪魔よ! 私の靴が出せないじゃない」
「うお、怖ぇ」
謝罪の言葉すらもまともに聞き入れて貰えない。
それ程に私は、彼女達を怒らせてしまったのだろう。
安藤さんをはじめとしたクラスの女子達は、私に冷たい視線を残したまま、昇降口を後にした。
彼女達の背中を見送りながら、どうしたら許して貰えるだろうかと考えて、私は文化祭までの通院をなるべく減らしてもらえないか病院に相談してみようと心に決めた。
私達のクラスもまだ残っていたらしく、数人のクラスメイトと出くわした。
「あれ、朔夜と白羽じゃん。お前等もまだ残ってたんだな」
「おう、井上」
「あれ? でもお前等クラスにいなかったよな? こんな時間までどこで何してたんだ?」
「ご……ごめんなさい。私達、今まで美術室で部活動していて……」
「美術室? へぇ、白羽って美術部だったんだな。ん? 私達って事は、朔夜、お前が決めてた部活ってのも美術部だったのか? 意外だなぁ」
「おう。葵葉が美術部だったからな」
やっぱり! 私がいたから入ったんだ! このストーカーめ!
2人の会話に、私は思わず心の中で一人突っ込みを入れる。
「ははは。相変わらず仲良しだな、お前等」
「仲良しなんかじゃない!」
「あぁ、まあな」
今度の突っ込みは心の中では我慢出来なくて、思わず声に出してしまった。
そのタイミングが見事に神崎君と重なって「やっぱり仲良しだ」と、井上君に更に笑われてしまった。
恥ずかしさにかぁっと顔が赤くなるのを感じた。
と、その時、突然横からドンッと強い衝撃を感じて、私の体は下駄箱へとよろめき、「きゃっ」と短い悲鳴を零してしまう。
「あら、ごめんなさい。そんな所で突っ立ってるから、あたっちゃった」
「あ、安藤さん……。ごめんなさい」
衝撃の正体は、どうやらクラスメイトの安藤さんだったらしく、狭い下駄箱で立ち話をしていた事で彼女の邪魔をしてしまっていたようだ。
迷惑を掛けていた事に気付いて、急いで謝ったものの、彼女から注がれる眼差しは酷く冷たいものだった。
彼女以外にも、数人のクラスの女の子達から、私は冷たい視線を向けられていた。
「……安藤さん?」
視線に耐えかねて、私が彼女の名前を呼ぶと、彼女は冷たい声で言った。
「文化祭の準備では放課後残れないくせに、部活動ではこんな時間まで残れるんだ。へぇ~」
「あっ……の……これは………」
毎週部活動があると分かっている水曜日は、病院の予約を入れないようにしているから、何時まででも残る事が出来る。だからギリギリまで残って作業していた。
けれど、それは言い訳にもならない事に気付いて私は言いよどんだ。
放課後残る時間があったのに、私はその時間を自分の為に費やしてしまったのだから。
毎日のように放課後遅い時間まで残って準備している彼女達からしたら、私の身勝手さに腹を立てるのは当然の事だろう。
部活は時間通りに切り上げて、クラスに戻るべきだったと言う事を、今更ながらに気付いて深く反省した。
「…………ごめんなさい」
「別に、あなたなんか最初からあてにしてないからいいけど。井上邪魔よ! 私の靴が出せないじゃない」
「うお、怖ぇ」
謝罪の言葉すらもまともに聞き入れて貰えない。
それ程に私は、彼女達を怒らせてしまったのだろう。
安藤さんをはじめとしたクラスの女子達は、私に冷たい視線を残したまま、昇降口を後にした。
彼女達の背中を見送りながら、どうしたら許して貰えるだろうかと考えて、私は文化祭までの通院をなるべく減らしてもらえないか病院に相談してみようと心に決めた。
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