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冬物語
長かった1日の終わりに②
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「あぁ、そっか。そう言えばお前、今日はびょうい」
「っ!」
「うぐ。あいふんあおあほは(何すんだよ葵葉)」
神崎君が口にしかけただろう言葉を察して、私は慌てて彼の口を塞ぐ。
相変わらず何故彼が私の事情を知っているのかはわからないが――
「病院に通ってる事は、みんなには言わないで!」
「はんへ(何で)?」
「病気の事は知られたくないから」
周りに聞こえないヒソヒソ声で、私は必死に神崎君にお願いした。
その間、安藤さんの眉間にとても深い皺が刻まれていた事にも気付かずに。
「ちょっと白羽、あんた何を朔夜君と二人でコソコソ内緒話してんのよ。あんた用事があるんでしょう。だったらさっさと行きなさいよ」
「ご、ごめんなさい。いつも手伝えなくて……。用事のない日は必ず手伝いますから、その時は雑用でも何でも言って下さい」
「ふん、あんたの手なんか別にあてにしてないっての」
私の謝罪に対し返って来たのは嫌みの言葉。
その嫌みにどう切り返すせば良いのか分からなかった私は、ただ「へへへ」と笑う事しか出来なくて、これ以上彼女を怒らせない為にも私は早くこの場を退散する事にした。
「神崎君、さっき言った事、お願いね。絶対言わないでね」
と、神崎君に再度念押ししながら私は一人教室を後にした。
彼はどこか納得していない顔をしてたけど、言わずにいてくれたかな?
大丈夫だったかな?
◆◆◆
「――はぁ~」
病院までの道のりをバスに揺られ、私は神崎君に対する不安と不満に押し潰されそうになりながら、一人大きな溜め息を吐いた。
「はぁ……」
「はぁ…………」
「はぁ~~…………」
一度ではおさまらず、何度も、何度も――
本当に、今日は疲れる1日だった。
謎の転校生、神崎朔夜君に振り回されて、一日がとても長く感じられる日だった。
彼の怪物ぶりを思い返しながら、気がつけば私は溜息をつきながら膝の上の鞄に突っ伏していた。
この先こんな日がずっと続くのだろうか。
想像しただけでどっと疲れる。
本当に、一体彼はなんのつもりなのだろうか?
何故私なんかに付きまとうのだろうか?
初対面のはずなのに、やたら馴れ馴れしいし。
そしてなにより一番謎なのは、クラスメイトの誰にも言っていないはずの、私の秘密を知っていた事。
どうして彼は、私の病気の事を知っていたの?
「……もしかして、彼と以前にどこかで会った事があったのかも?」
考えて思いついた答えが思わず声に出た。
「いやいや、でも、あんな見た目も中身も強烈な人、一度会ったら忘れないと思うんだけど」
と、すぐにその考えを否定した。
結局いくら考えた所で、「わからない」以上の答えは私の中に出てこなくて、この堂々巡りの謎を考える事に疲れた私は、再び深い深い溜め息を吐いた。
疲れた心を癒すかのように顔を上げ、窓からの景色に目を向けると、窓の外には夕日に染まる綺麗な景色が広がっていた。
山に沈みかかった夕日をぼんやりと眺めながら、その後私は病院までの道のりを30分近くバスに揺られ続けた。
「っ!」
「うぐ。あいふんあおあほは(何すんだよ葵葉)」
神崎君が口にしかけただろう言葉を察して、私は慌てて彼の口を塞ぐ。
相変わらず何故彼が私の事情を知っているのかはわからないが――
「病院に通ってる事は、みんなには言わないで!」
「はんへ(何で)?」
「病気の事は知られたくないから」
周りに聞こえないヒソヒソ声で、私は必死に神崎君にお願いした。
その間、安藤さんの眉間にとても深い皺が刻まれていた事にも気付かずに。
「ちょっと白羽、あんた何を朔夜君と二人でコソコソ内緒話してんのよ。あんた用事があるんでしょう。だったらさっさと行きなさいよ」
「ご、ごめんなさい。いつも手伝えなくて……。用事のない日は必ず手伝いますから、その時は雑用でも何でも言って下さい」
「ふん、あんたの手なんか別にあてにしてないっての」
私の謝罪に対し返って来たのは嫌みの言葉。
その嫌みにどう切り返すせば良いのか分からなかった私は、ただ「へへへ」と笑う事しか出来なくて、これ以上彼女を怒らせない為にも私は早くこの場を退散する事にした。
「神崎君、さっき言った事、お願いね。絶対言わないでね」
と、神崎君に再度念押ししながら私は一人教室を後にした。
彼はどこか納得していない顔をしてたけど、言わずにいてくれたかな?
大丈夫だったかな?
◆◆◆
「――はぁ~」
病院までの道のりをバスに揺られ、私は神崎君に対する不安と不満に押し潰されそうになりながら、一人大きな溜め息を吐いた。
「はぁ……」
「はぁ…………」
「はぁ~~…………」
一度ではおさまらず、何度も、何度も――
本当に、今日は疲れる1日だった。
謎の転校生、神崎朔夜君に振り回されて、一日がとても長く感じられる日だった。
彼の怪物ぶりを思い返しながら、気がつけば私は溜息をつきながら膝の上の鞄に突っ伏していた。
この先こんな日がずっと続くのだろうか。
想像しただけでどっと疲れる。
本当に、一体彼はなんのつもりなのだろうか?
何故私なんかに付きまとうのだろうか?
初対面のはずなのに、やたら馴れ馴れしいし。
そしてなにより一番謎なのは、クラスメイトの誰にも言っていないはずの、私の秘密を知っていた事。
どうして彼は、私の病気の事を知っていたの?
「……もしかして、彼と以前にどこかで会った事があったのかも?」
考えて思いついた答えが思わず声に出た。
「いやいや、でも、あんな見た目も中身も強烈な人、一度会ったら忘れないと思うんだけど」
と、すぐにその考えを否定した。
結局いくら考えた所で、「わからない」以上の答えは私の中に出てこなくて、この堂々巡りの謎を考える事に疲れた私は、再び深い深い溜め息を吐いた。
疲れた心を癒すかのように顔を上げ、窓からの景色に目を向けると、窓の外には夕日に染まる綺麗な景色が広がっていた。
山に沈みかかった夕日をぼんやりと眺めながら、その後私は病院までの道のりを30分近くバスに揺られ続けた。
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