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秋物語
聞かされた真実
しおりを挟む「……え……え? ……奪った? 師匠さんが? 神耶君を? ……それは…………一体どう言う…………」
何とか頭の中を整理して、やっと返した言葉に、師匠さんはとても苦しそうに、絞り出すような声でこんな事を語った。
「先程も言いましたよね。神耶は貴方の前に姿を見せないんじゃない、見せられないのだと。それは、神耶が……神耶と言う存在が……この世から消滅してしまったから。あの子をそんな事態に追い込んでしまったのは全て私のせいなんです」
師匠さんが語った話。
その中の単語の意味がよく理解できなくて、思わずぽかんと呆けながらも、何故か強烈に響いて何度も繰り返し頭の中に流れ込んでくる単語。
「………………消滅? ……消滅……って…………何??」
震える声で聞き返した私に師匠さんはまるで開き直ったかのように垂れていた頭を持ち上げて、真っ直ぐに私を見て言った。
「言葉の通りです。神耶と言う存在は、この世から消えてなくなりました。どんなに探しても、もう神耶を見つける事は出来ません。だって神耶は、もうこの世のどこにもいないのだから……」
「……嘘……」
「嘘ではありません。これは事実です」
「そんなの……嘘だよ。……どうして?どうして神耶君が消滅なんて………」
「あの子が、神として決して許されない禁忌を犯してしまったから。だからあの子は、天界より一番重く厳しい罰を課せられたのです。それが……魂の消滅……」
「禁忌? 罰? 師匠さんは、一体何を言っているんですか? あの優しい神耶君が、一体どんな悪いことをして罰せられたって言うんですか?! たちの悪い冗談はやめてください!」
「……残念ながら……冗談ではありません。神耶は神界から罰を受けて、その存在を消滅させられた。これが紛れもない事実です」
「…………そんな……そんな………神耶君が……消滅? 一体どうして……何があってそんな事になったんですか? 教えてください師匠さん。こんな訳分からない事を聞かされて、はいそうですかなんて、とても納得できないし信じられません。私が会いにこなかった間に、一体神耶君は何をして消滅したって言うんですか?!」
「それは……」
「教えてください、師匠さん。お願いします……お願いします」
私の必死の訴えに、一瞬私から顔を逸らした師匠さん。
何かを語ろうと再び視線を私に向ける。けれどやはり何かを躊躇っている様子で、なかなか口を開いてはくれない。
その様子に、私ははっとする。
「……もしかして……私の……私のせい?」
神耶君が罰を受けた理由。それは私に原因があるから、だから師匠さんは理由を話そうにも話しずらくて、躊躇っているのではないだろうか?
私は突然、そんな考えに思い至った。
だって師匠さんは前に言っていた。
――『これから先、もう二度と神耶とは会わないで頂きたい。神と人間が惹かれ会う事は……残念ながら許されない禁忌』だと。
師匠さんに忠告されていたのに、私が神耶君への想いを隠し通す事が出来なかったから?
眠っている神耶君にキスなんてして、自分の想いを神耶君に知らせるような事をしてしまったから?
だから神耶君は罰を受けて――
「それは違います。貴方のせいではありません。全ては私のせい」
私の中に沸き起こった疑念を師匠さんは大きな声で否定する。
かと思うと、今度は切ない声で小さくこう漏らした。
「………いや、これは誰のせいでもないのかもしれません。好きと言う気持ちは誰にも止める事が出来ないやっかいなものなのだから」と。
師匠さんが漏らした言葉の意味が分からなくて、私は小さく首を傾げる。
そんな私に師匠さんはぽつりぽつりと語り始めた。
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