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秋物語
神耶を探して
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「神耶く~ん、どこにいるの? 隠れてないで出てきてよ~」
神耶君がいそうな場所として、まず最初に私が思いついたのは神耶君のお気に入りの場所。
この山の頂上に位置し、見晴らしが良く、町を一望できるその場所には、大きな大きな桜の木が佇んでいて、神耶君はよくそこで昼寝をしていた。
少し前にも、その場所から私のことをも見守ってくれていて、風邪をこじらせていたっけ。
もしかしたら今回も、なかなか神社に顔を出さなかった私を心配して、見守ってくれていたのかもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ、神耶君のお気に入りの場所まで来て来てみたのだけれど――
「神耶君? いないの? 隠れてないで出て来てよ~」
でも、そこにも神耶君の姿はなかった。
「ここにもいないか。どこ行っちゃったんだろう、神耶君。 お祭りデートの約束、忘れちゃったのかな? それとも顔を合わせるのが気まずくて、わざと姿を隠してるのかな? やっぱり私……嫌われちゃったのかな?」
一抹の不安を覚えながらも、私は次の場所を目指して登ってきたばかりの山を下り始めた。
次に目指すは、神耶君と魚を捕って遊んだあの小川。
魚を捕るのに1時時間もかかって、意外にも神耶君が運動音痴だという一面を知った場所。
それでも、私の為に一生懸命魚を追いかけ回してる姿はかっこよくて、ドキドキした記憶が昨日のことのように思い出される。
この場所も、神耶君との思い出が詰まった大切な場所――
「……神耶君~、神耶君~~!」
その思い出の場所で、私は何度も何度も神耶君の名前を呼んだ。
けれども、やはり神耶君のからの返事はなかった。
「ここにもいない……か。神耶君、本当にどこに行っちゃったの? お願いだから出てきてよ。意地悪しないで早く出てきて。早く出てきてくれないと、お祭り終わっちゃうよ。ねえ神耶君~~!」
私の必死のお願いにも、やはり神耶君からの返事はない。
すっかり暗くなった不気味な森の中、私は言いようのない不安に襲われていた。
遠くから風に乗って聞こえて来る陽気な笛や太鼓の音、人の笑い声が余計私を惨めな気持ちにさせた。
それでも私は、必死に不安な気持ちを押し殺して、その後も神耶君の姿を探して回った。
「……どこにもいない。どうして? どうして神耶君は出てきてくれないの? ねえ、神耶君、どうして??」
神耶君を探し回って、2時間は経っただろうか。
それでもまだ見つけられないくて、ついに私は癇癪を起こし叫んだ。
どうして神耶君は私の前に姿を現してくれないの?
今までどんなに嫌がっても神耶君が約束を破ることはなかったのに。
だから今日も、なんだかんだ言って最後は出てきてくれる事を期待していたのに、神耶君が現れる気配は全くない。
やはり彼は、あの日のキスを怒っているのだろうか?
私は神耶君に嫌われてしまった?
はっきりとした理由がわからないまま、時間ばかりが過ぎていき、祭りが終わるタイムリミットも迫って来ていた。
気持ちが焦れば焦る程、不安ばかりが押し寄せて――
ついには目にいっぱいの涙が溢れてきた。
「どうしてこんな事に? せっかくのお祭りだったのに……どうして……」
何度疑問を口にしたところで、答えてくれる人はいない。
泣いてみたところで何も解決しない状況に、私はなんとか気持ちを奮い立たせて、最後の可能性にかける事にした。
「……社に戻ろう。もしかしたら、社に戻って来ているかもしれない。もしいなかったとしても、あそこで待ってたいら、きっと神耶君は来てくれる。きっと来て……くれるはずだよ。だって今度こそお祭りデートしようって、約束したもん。神耶君は、絶対約束は破らない。守ってくれるはずだよ。ね、そうでしょ神耶君? ……待ってるから。神耶君の事、ずっと待ってるから。来てくれるまで、私ずっと待ってるから。ねえ、神耶君、聞いてる? 本当はどこかに隠れて見てるんでしょ? 私のことからかって遊んでるんでしょ? 来てくれるまで、絶対帰らないから! 絶対絶対、帰らないんだから!!」
一人不安に耐えきれなくなった私は、空に向かって大声で叫びながら、社への道を下りて行く。
神耶君がいそうな場所として、まず最初に私が思いついたのは神耶君のお気に入りの場所。
この山の頂上に位置し、見晴らしが良く、町を一望できるその場所には、大きな大きな桜の木が佇んでいて、神耶君はよくそこで昼寝をしていた。
少し前にも、その場所から私のことをも見守ってくれていて、風邪をこじらせていたっけ。
もしかしたら今回も、なかなか神社に顔を出さなかった私を心配して、見守ってくれていたのかもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ、神耶君のお気に入りの場所まで来て来てみたのだけれど――
「神耶君? いないの? 隠れてないで出て来てよ~」
でも、そこにも神耶君の姿はなかった。
「ここにもいないか。どこ行っちゃったんだろう、神耶君。 お祭りデートの約束、忘れちゃったのかな? それとも顔を合わせるのが気まずくて、わざと姿を隠してるのかな? やっぱり私……嫌われちゃったのかな?」
一抹の不安を覚えながらも、私は次の場所を目指して登ってきたばかりの山を下り始めた。
次に目指すは、神耶君と魚を捕って遊んだあの小川。
魚を捕るのに1時時間もかかって、意外にも神耶君が運動音痴だという一面を知った場所。
それでも、私の為に一生懸命魚を追いかけ回してる姿はかっこよくて、ドキドキした記憶が昨日のことのように思い出される。
この場所も、神耶君との思い出が詰まった大切な場所――
「……神耶君~、神耶君~~!」
その思い出の場所で、私は何度も何度も神耶君の名前を呼んだ。
けれども、やはり神耶君のからの返事はなかった。
「ここにもいない……か。神耶君、本当にどこに行っちゃったの? お願いだから出てきてよ。意地悪しないで早く出てきて。早く出てきてくれないと、お祭り終わっちゃうよ。ねえ神耶君~~!」
私の必死のお願いにも、やはり神耶君からの返事はない。
すっかり暗くなった不気味な森の中、私は言いようのない不安に襲われていた。
遠くから風に乗って聞こえて来る陽気な笛や太鼓の音、人の笑い声が余計私を惨めな気持ちにさせた。
それでも私は、必死に不安な気持ちを押し殺して、その後も神耶君の姿を探して回った。
「……どこにもいない。どうして? どうして神耶君は出てきてくれないの? ねえ、神耶君、どうして??」
神耶君を探し回って、2時間は経っただろうか。
それでもまだ見つけられないくて、ついに私は癇癪を起こし叫んだ。
どうして神耶君は私の前に姿を現してくれないの?
今までどんなに嫌がっても神耶君が約束を破ることはなかったのに。
だから今日も、なんだかんだ言って最後は出てきてくれる事を期待していたのに、神耶君が現れる気配は全くない。
やはり彼は、あの日のキスを怒っているのだろうか?
私は神耶君に嫌われてしまった?
はっきりとした理由がわからないまま、時間ばかりが過ぎていき、祭りが終わるタイムリミットも迫って来ていた。
気持ちが焦れば焦る程、不安ばかりが押し寄せて――
ついには目にいっぱいの涙が溢れてきた。
「どうしてこんな事に? せっかくのお祭りだったのに……どうして……」
何度疑問を口にしたところで、答えてくれる人はいない。
泣いてみたところで何も解決しない状況に、私はなんとか気持ちを奮い立たせて、最後の可能性にかける事にした。
「……社に戻ろう。もしかしたら、社に戻って来ているかもしれない。もしいなかったとしても、あそこで待ってたいら、きっと神耶君は来てくれる。きっと来て……くれるはずだよ。だって今度こそお祭りデートしようって、約束したもん。神耶君は、絶対約束は破らない。守ってくれるはずだよ。ね、そうでしょ神耶君? ……待ってるから。神耶君の事、ずっと待ってるから。来てくれるまで、私ずっと待ってるから。ねえ、神耶君、聞いてる? 本当はどこかに隠れて見てるんでしょ? 私のことからかって遊んでるんでしょ? 来てくれるまで、絶対帰らないから! 絶対絶対、帰らないんだから!!」
一人不安に耐えきれなくなった私は、空に向かって大声で叫びながら、社への道を下りて行く。
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