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秋物語
会えない間も
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いつもの如く、家主の返事を待たずにヅカヅカと、勝手知ったる社へと上がって行く私。
でもいつもならそこにいるはずの神耶君の姿が今日はない。
「あれ?」
いつもならこの時間、ここで寝てるはずなのに
「今日はもう起きてるのかな? 珍しいな。……どこに行ったんだろ、神耶君?」
社をはじめ、神社の周りは一通り探してみたけど見つからない。
仕方なく私は神耶君を探しに、神社より更に山の上を目指して、山の奥深くへと入って行くことにした。
「あ、いたいた。お~い神耶君!遊びに来たよ~」
木々が生い茂る山の中、山頂まで来ると突然開けた土地が広がる。
邪魔するものがなく開けた場所で、更には一番高い場所に存在するそこは、とても見晴らしが良い。
そしてこの場所に一本だけ堂々と聳え立つ桜の大木。その大木の上が神耶君のお気に入りの場所だった。
そして予想通り、彼のお気に入りの場所で神耶君の姿を見つけた私は、大声で神耶君を呼んだ。
けれど、私の呼び掛けに、神耶君からの反応は得られなかった。
「あれ?寝てるのかな?」
仕方なく、もう一度私は大きな声で神耶君の名前を呼ぶ。
すると一瞬神耶君の体がグラリと大きく揺れたかと思うと
「えぇ?!」
真っ逆さまに地面に向かって落ちてくる神耶君。
「きゃ~きゃ~きゃ~神耶君! 起きて! 起きて神耶君!! 起きないと死んじゃうよ~~~」
いや、起きた所でこの高さから落ちたのでは、いくら神様と言えど助からないかもしれない。
神耶君の危機に私が思わずギュッと目を閉じると
「お久しぶりですね、葵葉さん」
聞き慣れた声が頭上から聞こえてきた。
「その声はっ!師匠さん?!」
声に恐る恐る目を開ける。
すると師匠さんが神耶君を抱き抱えながら、ふわりふわりと空中に浮かんでる姿が目に入った。
「神耶君……良かった……」
師匠さんに助けられたのだろう神耶君の無事な姿に、ホッと胸を撫で下ろす。
「全く。暫く留守にしていた間にこの子はいったい何をやっていたのですかね」
少し怒ったような口調で、師匠さんは神耶君を抱えたまま地上へと着地した。
「あれ? 神耶君、まだ起きないんですか?」
大変な目にあっていたというのに、師匠さんの腕の中、未だ起きる気配のない神耶君に、私は不思議に思って顔を覗き込む。
と、神耶君が苦しそうに呼吸をしながら額にたくさんの汗をかいてる事に気が付いた。
心なしか、頬も赤い気がする。
「え? 神耶君……もしかして?」
「どうやら風邪をひいているようですね」
「えぇ?!」
◆◆◆
社に到着するなり師匠さんは自分が羽織っていた着物の上着を神耶君にかけて横にさせた。
私は神耶君の手を握りしめて何度も何度も呼びかけ続ける。
「神耶君……神耶君、大丈夫? 神耶君!」
何度目かの呼び掛けで、やっと神耶君が目を覚まして、まだ焦点の定まらない視線で私を見上げた。
「……葵……葉? お前……どうしてここに? 学校は??」
「神耶君。今日は日曜日だから学校はお休みだよ。だから神社に遊びに来たの。そしたら神耶君の姿が見当たらなくて、神耶君のお気に入りの場所まで探しに行ったら、神耶君が急に桜の大木から落ちて来て……本当にびっくりしたんだから!」
「日……曜日?……いつの間にそんなに時間が経ってたんだ?」
「神耶貴方、いつからあそこにいたのです? 正直きに白状しなさい」
「あ……れ………師匠? あんたこそ……いつ戻って……来てたんだよ……」
「ついさっきですよ。それより、いつからあそこにいたのです?」
「……さぁ? 今が日曜日だとすれば……何日くらい前……だったかな?」
「覚えていられない程の時間をあんな所で寝起きをしていたと言う事ですか?」
「まぁ………そうだな……」
「まったく。ちょっと目を離せばすぐこれです。だから貴方を一人にしておくのは心配なんですよ。秋も深まって肌寒くなってきているのに、そんな中で何日も夜をあかせば、風邪をひくのは当たり前でしょう」
「………」
珍しく怒った様子の師匠さんに、神耶君は何も言い返せないみたいで、しゅんと体を小さくした。
「でも神耶君、どうしてあんなに所で何日も寝起きをしてたの?」
私は神耶君に、助け舟を出すつもりで二人の会話に割り込み率直な疑問を尋ねてみた。
けれど、助け舟どころかどうやら地雷を踏んでしまったらしく、何故か固まる神耶君。
「ヒントは、あそこがこの町を見下ろすのに一番見晴らしの良い場所だと言う事ですよ、葵葉さん」
「???」
固まったままの神耶君に代わって、師匠さんがそんなヒントを与えてくれる。
だが、私には師匠さんの言おうとしている事がさっぱり分からなかった。
「答えは簡単です。葵葉さんが心配で、ずっとあそこから見守っていたのですよ。ね、神耶?」
「……えっ?」
今度は私が固まる番だった。
私の反応に、神耶君は烈火の如く怒り、取り乱して否定する。
「っな!? ばっ……師匠! 何馬鹿な事言ってんだよ! んな事あるわけないだろ!!」
熱で赤かった顔を、更に赤く染めながら全力で否定する神耶君。
その姿に私も思わず顔が熱くなるのを感じた。
だって素直じゃない神耶君がこう言う反応をする時は
「図星、ですか」
でもいつもならそこにいるはずの神耶君の姿が今日はない。
「あれ?」
いつもならこの時間、ここで寝てるはずなのに
「今日はもう起きてるのかな? 珍しいな。……どこに行ったんだろ、神耶君?」
社をはじめ、神社の周りは一通り探してみたけど見つからない。
仕方なく私は神耶君を探しに、神社より更に山の上を目指して、山の奥深くへと入って行くことにした。
「あ、いたいた。お~い神耶君!遊びに来たよ~」
木々が生い茂る山の中、山頂まで来ると突然開けた土地が広がる。
邪魔するものがなく開けた場所で、更には一番高い場所に存在するそこは、とても見晴らしが良い。
そしてこの場所に一本だけ堂々と聳え立つ桜の大木。その大木の上が神耶君のお気に入りの場所だった。
そして予想通り、彼のお気に入りの場所で神耶君の姿を見つけた私は、大声で神耶君を呼んだ。
けれど、私の呼び掛けに、神耶君からの反応は得られなかった。
「あれ?寝てるのかな?」
仕方なく、もう一度私は大きな声で神耶君の名前を呼ぶ。
すると一瞬神耶君の体がグラリと大きく揺れたかと思うと
「えぇ?!」
真っ逆さまに地面に向かって落ちてくる神耶君。
「きゃ~きゃ~きゃ~神耶君! 起きて! 起きて神耶君!! 起きないと死んじゃうよ~~~」
いや、起きた所でこの高さから落ちたのでは、いくら神様と言えど助からないかもしれない。
神耶君の危機に私が思わずギュッと目を閉じると
「お久しぶりですね、葵葉さん」
聞き慣れた声が頭上から聞こえてきた。
「その声はっ!師匠さん?!」
声に恐る恐る目を開ける。
すると師匠さんが神耶君を抱き抱えながら、ふわりふわりと空中に浮かんでる姿が目に入った。
「神耶君……良かった……」
師匠さんに助けられたのだろう神耶君の無事な姿に、ホッと胸を撫で下ろす。
「全く。暫く留守にしていた間にこの子はいったい何をやっていたのですかね」
少し怒ったような口調で、師匠さんは神耶君を抱えたまま地上へと着地した。
「あれ? 神耶君、まだ起きないんですか?」
大変な目にあっていたというのに、師匠さんの腕の中、未だ起きる気配のない神耶君に、私は不思議に思って顔を覗き込む。
と、神耶君が苦しそうに呼吸をしながら額にたくさんの汗をかいてる事に気が付いた。
心なしか、頬も赤い気がする。
「え? 神耶君……もしかして?」
「どうやら風邪をひいているようですね」
「えぇ?!」
◆◆◆
社に到着するなり師匠さんは自分が羽織っていた着物の上着を神耶君にかけて横にさせた。
私は神耶君の手を握りしめて何度も何度も呼びかけ続ける。
「神耶君……神耶君、大丈夫? 神耶君!」
何度目かの呼び掛けで、やっと神耶君が目を覚まして、まだ焦点の定まらない視線で私を見上げた。
「……葵……葉? お前……どうしてここに? 学校は??」
「神耶君。今日は日曜日だから学校はお休みだよ。だから神社に遊びに来たの。そしたら神耶君の姿が見当たらなくて、神耶君のお気に入りの場所まで探しに行ったら、神耶君が急に桜の大木から落ちて来て……本当にびっくりしたんだから!」
「日……曜日?……いつの間にそんなに時間が経ってたんだ?」
「神耶貴方、いつからあそこにいたのです? 正直きに白状しなさい」
「あ……れ………師匠? あんたこそ……いつ戻って……来てたんだよ……」
「ついさっきですよ。それより、いつからあそこにいたのです?」
「……さぁ? 今が日曜日だとすれば……何日くらい前……だったかな?」
「覚えていられない程の時間をあんな所で寝起きをしていたと言う事ですか?」
「まぁ………そうだな……」
「まったく。ちょっと目を離せばすぐこれです。だから貴方を一人にしておくのは心配なんですよ。秋も深まって肌寒くなってきているのに、そんな中で何日も夜をあかせば、風邪をひくのは当たり前でしょう」
「………」
珍しく怒った様子の師匠さんに、神耶君は何も言い返せないみたいで、しゅんと体を小さくした。
「でも神耶君、どうしてあんなに所で何日も寝起きをしてたの?」
私は神耶君に、助け舟を出すつもりで二人の会話に割り込み率直な疑問を尋ねてみた。
けれど、助け舟どころかどうやら地雷を踏んでしまったらしく、何故か固まる神耶君。
「ヒントは、あそこがこの町を見下ろすのに一番見晴らしの良い場所だと言う事ですよ、葵葉さん」
「???」
固まったままの神耶君に代わって、師匠さんがそんなヒントを与えてくれる。
だが、私には師匠さんの言おうとしている事がさっぱり分からなかった。
「答えは簡単です。葵葉さんが心配で、ずっとあそこから見守っていたのですよ。ね、神耶?」
「……えっ?」
今度は私が固まる番だった。
私の反応に、神耶君は烈火の如く怒り、取り乱して否定する。
「っな!? ばっ……師匠! 何馬鹿な事言ってんだよ! んな事あるわけないだろ!!」
熱で赤かった顔を、更に赤く染めながら全力で否定する神耶君。
その姿に私も思わず顔が熱くなるのを感じた。
だって素直じゃない神耶君がこう言う反応をする時は
「図星、ですか」
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