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秋物語
葵葉の未来
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「それで神様に?」
「あぁ。でも、結局神になった所で、俺は何も変わらなかった。望んで手にした現状にも満足出来なくなって、俺は神としての責務を今もサボり続けてる」
「…………」
「ようは無いものねだりだったんだよな。疎まれるだけの俺が、人から頼られたいなんて。頼られたら頼られたでさ、それがウザったくなって、投げ出して……ホント、情けない話だよな」
「…………」
「でもそれはきっと俺だけじゃない。人はみんな無いものねだりなんだよな。この仕事をやるようになって思い知らされた。人がどれ程欲深い生き物なのか。どんなに願いを叶えても、人は現状に満足できない。次から次へと新たな欲が出て来るんだ。俺は、そんな繰り返しに疲れたんだ」
神耶君の言葉にドキっとした。
だって私も、神耶君が嫌いな欲深い人間の一人だったから。
最初はただ、友達が欲しかった。
それが心からの願いだった。
けれど神耶君と出会って、神耶君と過ごす日々が楽しくて、一分一秒でも長くこの時間が続けばいいのにと、そう望むようになった。
楽しいと思う時間が続けば続く程、私は生きたいと望んだ。
そしてその望みは、神耶君の力によって今も奇跡的に叶えられている。
神耶君の言う通り、願いが叶い、今も命が繋がっている事にただただ感謝し、現状に満足しなければいけないのに、命が繋がった今度は、更に元気な体が欲しいと欲が出た。
また神耶君に会いたいと願って、元気な私の姿を見せたいと願って――
望みが叶えば叶う程に、自分の気持ちが抑えられなくなって行って、いつの間にか神耶君と友達以上の関係を望む私がいる。
人間の私が神様と釣り合うはずがない。そんな事、頭ではちゃんと分かっていた。分かっていた……はずだったのに……
この恋心は報われないこと、覚悟していたはずだったのに、なのに神耶君に優しくされればされる程、心のどこかで期待してしまう私がいる。
もし私が、神耶君に抱くこの気持ちを口にしたら?
神耶君との未来を望んだら?
私達にはどんな未来が待ってるのだろうか?
何度打ち消してみても、私と神耶君の明るい未来を、心のどこかで期待してしまう私がいるのだ。
自分がこんなにも欲深い人間だったなんて、知らなかった。
――『この仕事をやるようになって思い知らされた。人がどれ程欲深い生き物だったのか。どんなに願いを叶えても人は現状に満足できない。次から次へと新たな欲が出て来るんだ。俺は、そんな繰り返しに疲れたんだ』――
神耶君の言う通りだ。
人間は欲深い。
もし私のこの欲深い感情が神耶君に知られてしまったら、きっと、嫌われてしまう。
嫌だ。
嫌われたくない。
私はずっと、神耶君とずっと一緒にいたいよ。
神耶君と一緒にいられる時間が私にとっては何よりの幸せな時間で、その願いが叶ってる今、十分に幸せなはずなのに、どうして私は、今の現状に満足出来ないの?
どうしたら満足出来るのかな?
どうしたらこの気持ちを……抑えられるんだろう?
こんな欲深い私を、神耶君には知られたくない。
絶対に、知られたくない。
「……ば? ……葵葉、どうしたんだ、急に黙りこんで?」
「なっ、何でもないよ!!」
神耶君の声にはっと我に返って、私は私の中の醜い欲望をニッコリ笑ってごまかした。
「?? 変な奴」
「へへへ。あっそうだ。もう一つ、聞きたい事があったんだった」
「聞きたい事?」
「うん、これ。これって、神耶君が描いてくれたんだよね。師匠さんが言ってたんだ。神耶君は人間だった時、よく絵を描いてたって。神耶君も絵を描く事が好きだったの? 神耶君も、もしかしてそれを将来の夢に考えてたりしたのかな?」
何とか話題を逸らそうと、私はとっさに手に持っていたスケッチブックを神耶君に開いて見せた。
開いたページは、私の姿が描かれた、昨日までは真っ白だったはずのページ。
神耶君が描いた私のスケッチ画。
「“俺も”って事は、お前はそれが夢なのか?」
「え? あっ?!……やばっ!!?」
神耶君から返って来た言葉に、私は急いで口を抑えた。
とっさに振った話題だったから、思わず余計なことまで口走ってしまったと。
あまりの恥ずかしさに、私はその場に突っ伏した。
「おいおい。何をそんなに項垂れてる? 俺、そんなにまずい事聞いたか?」
「まずいって言うか……恥ずかしいから……」
「あぁ。でも、結局神になった所で、俺は何も変わらなかった。望んで手にした現状にも満足出来なくなって、俺は神としての責務を今もサボり続けてる」
「…………」
「ようは無いものねだりだったんだよな。疎まれるだけの俺が、人から頼られたいなんて。頼られたら頼られたでさ、それがウザったくなって、投げ出して……ホント、情けない話だよな」
「…………」
「でもそれはきっと俺だけじゃない。人はみんな無いものねだりなんだよな。この仕事をやるようになって思い知らされた。人がどれ程欲深い生き物なのか。どんなに願いを叶えても、人は現状に満足できない。次から次へと新たな欲が出て来るんだ。俺は、そんな繰り返しに疲れたんだ」
神耶君の言葉にドキっとした。
だって私も、神耶君が嫌いな欲深い人間の一人だったから。
最初はただ、友達が欲しかった。
それが心からの願いだった。
けれど神耶君と出会って、神耶君と過ごす日々が楽しくて、一分一秒でも長くこの時間が続けばいいのにと、そう望むようになった。
楽しいと思う時間が続けば続く程、私は生きたいと望んだ。
そしてその望みは、神耶君の力によって今も奇跡的に叶えられている。
神耶君の言う通り、願いが叶い、今も命が繋がっている事にただただ感謝し、現状に満足しなければいけないのに、命が繋がった今度は、更に元気な体が欲しいと欲が出た。
また神耶君に会いたいと願って、元気な私の姿を見せたいと願って――
望みが叶えば叶う程に、自分の気持ちが抑えられなくなって行って、いつの間にか神耶君と友達以上の関係を望む私がいる。
人間の私が神様と釣り合うはずがない。そんな事、頭ではちゃんと分かっていた。分かっていた……はずだったのに……
この恋心は報われないこと、覚悟していたはずだったのに、なのに神耶君に優しくされればされる程、心のどこかで期待してしまう私がいる。
もし私が、神耶君に抱くこの気持ちを口にしたら?
神耶君との未来を望んだら?
私達にはどんな未来が待ってるのだろうか?
何度打ち消してみても、私と神耶君の明るい未来を、心のどこかで期待してしまう私がいるのだ。
自分がこんなにも欲深い人間だったなんて、知らなかった。
――『この仕事をやるようになって思い知らされた。人がどれ程欲深い生き物だったのか。どんなに願いを叶えても人は現状に満足できない。次から次へと新たな欲が出て来るんだ。俺は、そんな繰り返しに疲れたんだ』――
神耶君の言う通りだ。
人間は欲深い。
もし私のこの欲深い感情が神耶君に知られてしまったら、きっと、嫌われてしまう。
嫌だ。
嫌われたくない。
私はずっと、神耶君とずっと一緒にいたいよ。
神耶君と一緒にいられる時間が私にとっては何よりの幸せな時間で、その願いが叶ってる今、十分に幸せなはずなのに、どうして私は、今の現状に満足出来ないの?
どうしたら満足出来るのかな?
どうしたらこの気持ちを……抑えられるんだろう?
こんな欲深い私を、神耶君には知られたくない。
絶対に、知られたくない。
「……ば? ……葵葉、どうしたんだ、急に黙りこんで?」
「なっ、何でもないよ!!」
神耶君の声にはっと我に返って、私は私の中の醜い欲望をニッコリ笑ってごまかした。
「?? 変な奴」
「へへへ。あっそうだ。もう一つ、聞きたい事があったんだった」
「聞きたい事?」
「うん、これ。これって、神耶君が描いてくれたんだよね。師匠さんが言ってたんだ。神耶君は人間だった時、よく絵を描いてたって。神耶君も絵を描く事が好きだったの? 神耶君も、もしかしてそれを将来の夢に考えてたりしたのかな?」
何とか話題を逸らそうと、私はとっさに手に持っていたスケッチブックを神耶君に開いて見せた。
開いたページは、私の姿が描かれた、昨日までは真っ白だったはずのページ。
神耶君が描いた私のスケッチ画。
「“俺も”って事は、お前はそれが夢なのか?」
「え? あっ?!……やばっ!!?」
神耶君から返って来た言葉に、私は急いで口を抑えた。
とっさに振った話題だったから、思わず余計なことまで口走ってしまったと。
あまりの恥ずかしさに、私はその場に突っ伏した。
「おいおい。何をそんなに項垂れてる? 俺、そんなにまずい事聞いたか?」
「まずいって言うか……恥ずかしいから……」
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