願いが叶うなら

汐野悠翔

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秋物語

思いがけない人との再会

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「あっ、貴方は、昨日の!」



その人は昨日、階段から落ちた私を助けてくれたあの、月岡先輩。



「やっぱりあんたか。そんな所で一人漫才なんかして何してるんだ? サボりか?」


「先輩こそ、制服姿でどうしてこんなところに? 学校は?」


「俺は勿論サボりだ」



何の悪びれもなく、さも当たり前のように言ってのける月岡先輩に、私は笑いながら言った。



「ダメじゃないですか。サボったりなんかしたら」


「平日に私服でこんな所フラフラしてる奴に言われたくねぇよ」


「私はサボりじゃなくて、暫くの間学校通えなくなっちゃったんで。暇つぶしにちょっと遊びに来ただけですよ」


「おいおい、通えなくなったって、もしかして停学か? あんた昨日一体何をやらかしたんだ。しかも停学くらってる奴が、んな堂々と遊び周ってていいのかよ」


「え? ダメなんですか?」



正確には停学ではなく、ドクターストップなんだけど。
私はあえて先輩の勘違いを訂正する事もせず、キョトンとした顔でそう聞き返した。


すると先輩に、呆れ顔で大きな溜息をつかれてしまった。



「はぁ~……。まぁいいけどな。俺には関係ないし。でも気をつけろよ。あんた、見た目小学生だから、んな所で一人漫才なんかして目立つような行動してたら、すぐに補導され――」


「ちょっと君達」



先輩が最後まで言い終わらないうちに、私達はまた後ろから声をかけられる。


先輩は、私の後ろに視線を向けると、ぽりぽりと頭をかきながらばつの悪そうな顔で小さく言った。



「あ~あ。遅かった」


「え?」



いったいどうしたと言うのだろう。私は不思議に思って声のした方を振り返る。


するとそこには、警察官の制服を着たおじさん2人が、怖い顔をして私達に近寄ってくる。



「こんな時間にこんな所で何をしてるのかな? 学校は?」

「……え? ……ええ?」



まるで怒られているかのような威圧感で、警察官が迫り来る今の状況が、うまく呑み込めずにいた私は、ポカンと口をあけて立ち尽くしていた。



「おいおい、あんた、何ぼ~っと突っ立ってんだ!早く逃げるぞ!」


すると、そんな私の腕を掴んで、先輩は急に走り出した。



「え?! あ、はいっ!」



先輩に引っ張られるがままに走らされた私は、先輩に掴まれている方とは反対の手で、咄嗟に神耶君の手を掴むと叫んだ。



「なんか良く分かんないけど、神耶君も早く!」



一瞬不思議そうな顔で私の手の先へ視線を漂わせる先輩と視線が合ったのだけれど、別段何か言う事はなく、追いかけて来る警察から逃げるべく私達は必死になって走った。



「こら~!待ちなさ~い!!」


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