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秋物語
叶わぬ想い
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「あれ? そう言えば神耶君は? 一緒じゃないんですか?」
「残念ながら、神耶は先に社に戻っていると。貴方の事はとても心配してましたが、それ以上に貴方に気をつかったのでしょう」
「そうなんですか。別に気なんて使わなくても良いのに」
私は、クスリと小さく笑いを零しながらそう呟く。
そんな私に、師匠さんがそれまで浮かべていた優しい微笑みを鎮めて、真剣な表情で私の名前を呼んだ。
「葵葉さん」
「はい?」
「突然ですが、貴方に一つお尋ねしても宜しいですか?」
「? はい、私で答えられる事であれば」
「ありがとうございます。では、単刀直入にお聞きしますね。神耶の事、貴方はどう思ってますか? 神耶は貴方にとってどんな存在ですか?」
本当に突然の質問に一瞬面食らう。
でも師匠さんの顔があまりに真剣で、私も躊躇いながらも真剣に答えを返した。
「どんな存在かと聞かれたら、私は迷わずヒーローだと答ます」
「ヒーロー、ですか」
「はい。神耶君は、私を死の淵から助けてくれました。神耶君がいるから今、私はこうしてここで生きていられる。神耶君は、私にとってヒーローで、私は神耶君の事が大好きです」
「……そう……ですか。その好きは、友達としてですか? それとも……恋心?」
「友達としても大好きです。けど、恋心としても、きっと……」
不器用な優しさで、いつも私を助けてくれたヒーローは、気付かないうちに私の中でどんどん大きな存在になっていて、一年ぶりに再会した時、やっと自覚した。
あぁ、私は―――
「神耶君の事が好きです」
師匠さんの顔を真っすぐに見ながら私は素直な気持ちを答えた。
私の出した答えに、師匠さんの顔に一瞬浮かんだ悲しみの表情。その表情を私は見逃さなかった。
師匠さんの表情に、私の中で神耶君への気持ちが大きくなればなる程に不安に思っていたある事が、核心へと変わった。
……変わってしまった。
あぁやっぱり、この恋は叶わないのだと。
「やはり、貴方は自覚していたんですね」
「……はい」
「…………」
「………………」
私達は、お互いに無言になった。
長い沈黙が続く。
先にその沈黙を破ったのは、師匠さんの方で
「突然、変な事を聞いてすみませんでした。でも、葵葉さんの気持ちを聞いてしまった以上、私は貴方にお願いしなければなりません」
「お願い?」
「はい。これから先、もう二度と神耶とは会わないで頂きたい」
「……え? どうしてですか?!」
予想外の言葉だった。
まさか、もう会ってもいけないなんて、どうして?
「貴方と神耶の為です。貴方達二人の為なのです。神と人間が愛し合う事は、残念ながら許されない禁忌」
「私はっ、神耶君と付き合いたいとか両想いになりたいとか、そんな事は思ってません。ただ、神耶君と一緒にいられれば……神耶君の側にいられればそれだけで……。その為に私は、辛い治療に堪えてこの町に戻って来たんです。なのに……神耶君に会えなくなるなんて……」
そんな日常を想像して、私は急に胸が苦しくなった。
と同時に呼吸が早くなる。
「葵葉さん!? 苦しいのですか? もしかしてまた発作が?」
「……大……丈夫……です……。私は……大丈夫…………」
「ですがっ!」
「お願いします。神耶君に会うななて……そんな悲しい事……言わないで下さい……」
「…………」
「私は今のままで、十分幸せなんです。この幸せを守る為なら私は、神耶君に気付かれないよう神耶君への気持ちを隠し通します。絶対に隠し通してみせますから、だから……お願いします。会うななんて言わないで……」
「葵葉さん……」
「お願い……します……」
胸が苦しくて、呼吸も上手く出来ない。
それでも私は必死に師匠さんの着物の袖を掴んで、一生懸命にお願いした。
「分かりました。分かりましたから、神耶に会うなとは言いません。人の気持ちをどうこうする事など、神である私にもできる事ではない。だから、落ち着いて、もう喋らないで」
「本当……ですか?」
「ええ。葵葉さん、あんないじっぱりで、怒りっぽくて、素直じゃなくて可愛くない神耶の事を、好きになって下さってありがとうございます。心から感謝します。でも、一つだけ約束して下さい。その気持ちはどうか貴方の胸の中だけに留めておくと。神耶には決して気付かれないように。……お願いします」
「……はい……分かりました」
「もし、神耶が貴方の気持ちに気付いて―――」
――自分の気持ちにまで気付いてしまったら、その時その先に待っているのはきっと、辛い別れだけ。貴方達の苦しむ姿など、私は見たくない――
「残念ながら、神耶は先に社に戻っていると。貴方の事はとても心配してましたが、それ以上に貴方に気をつかったのでしょう」
「そうなんですか。別に気なんて使わなくても良いのに」
私は、クスリと小さく笑いを零しながらそう呟く。
そんな私に、師匠さんがそれまで浮かべていた優しい微笑みを鎮めて、真剣な表情で私の名前を呼んだ。
「葵葉さん」
「はい?」
「突然ですが、貴方に一つお尋ねしても宜しいですか?」
「? はい、私で答えられる事であれば」
「ありがとうございます。では、単刀直入にお聞きしますね。神耶の事、貴方はどう思ってますか? 神耶は貴方にとってどんな存在ですか?」
本当に突然の質問に一瞬面食らう。
でも師匠さんの顔があまりに真剣で、私も躊躇いながらも真剣に答えを返した。
「どんな存在かと聞かれたら、私は迷わずヒーローだと答ます」
「ヒーロー、ですか」
「はい。神耶君は、私を死の淵から助けてくれました。神耶君がいるから今、私はこうしてここで生きていられる。神耶君は、私にとってヒーローで、私は神耶君の事が大好きです」
「……そう……ですか。その好きは、友達としてですか? それとも……恋心?」
「友達としても大好きです。けど、恋心としても、きっと……」
不器用な優しさで、いつも私を助けてくれたヒーローは、気付かないうちに私の中でどんどん大きな存在になっていて、一年ぶりに再会した時、やっと自覚した。
あぁ、私は―――
「神耶君の事が好きです」
師匠さんの顔を真っすぐに見ながら私は素直な気持ちを答えた。
私の出した答えに、師匠さんの顔に一瞬浮かんだ悲しみの表情。その表情を私は見逃さなかった。
師匠さんの表情に、私の中で神耶君への気持ちが大きくなればなる程に不安に思っていたある事が、核心へと変わった。
……変わってしまった。
あぁやっぱり、この恋は叶わないのだと。
「やはり、貴方は自覚していたんですね」
「……はい」
「…………」
「………………」
私達は、お互いに無言になった。
長い沈黙が続く。
先にその沈黙を破ったのは、師匠さんの方で
「突然、変な事を聞いてすみませんでした。でも、葵葉さんの気持ちを聞いてしまった以上、私は貴方にお願いしなければなりません」
「お願い?」
「はい。これから先、もう二度と神耶とは会わないで頂きたい」
「……え? どうしてですか?!」
予想外の言葉だった。
まさか、もう会ってもいけないなんて、どうして?
「貴方と神耶の為です。貴方達二人の為なのです。神と人間が愛し合う事は、残念ながら許されない禁忌」
「私はっ、神耶君と付き合いたいとか両想いになりたいとか、そんな事は思ってません。ただ、神耶君と一緒にいられれば……神耶君の側にいられればそれだけで……。その為に私は、辛い治療に堪えてこの町に戻って来たんです。なのに……神耶君に会えなくなるなんて……」
そんな日常を想像して、私は急に胸が苦しくなった。
と同時に呼吸が早くなる。
「葵葉さん!? 苦しいのですか? もしかしてまた発作が?」
「……大……丈夫……です……。私は……大丈夫…………」
「ですがっ!」
「お願いします。神耶君に会うななて……そんな悲しい事……言わないで下さい……」
「…………」
「私は今のままで、十分幸せなんです。この幸せを守る為なら私は、神耶君に気付かれないよう神耶君への気持ちを隠し通します。絶対に隠し通してみせますから、だから……お願いします。会うななんて言わないで……」
「葵葉さん……」
「お願い……します……」
胸が苦しくて、呼吸も上手く出来ない。
それでも私は必死に師匠さんの着物の袖を掴んで、一生懸命にお願いした。
「分かりました。分かりましたから、神耶に会うなとは言いません。人の気持ちをどうこうする事など、神である私にもできる事ではない。だから、落ち着いて、もう喋らないで」
「本当……ですか?」
「ええ。葵葉さん、あんないじっぱりで、怒りっぽくて、素直じゃなくて可愛くない神耶の事を、好きになって下さってありがとうございます。心から感謝します。でも、一つだけ約束して下さい。その気持ちはどうか貴方の胸の中だけに留めておくと。神耶には決して気付かれないように。……お願いします」
「……はい……分かりました」
「もし、神耶が貴方の気持ちに気付いて―――」
――自分の気持ちにまで気付いてしまったら、その時その先に待っているのはきっと、辛い別れだけ。貴方達の苦しむ姿など、私は見たくない――
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