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秋物語
初めての感情
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「お前今、人の妹を馬鹿にしたな?! 葵葉はな、少し不器用だけどがんばり屋で良い子なんだ!ておい、人の話を聞いてるのか?! こら~~~」
月岡先輩が消えて行った廊下に向かってお兄ちゃんが大声で叫ぶ。
そんなお兄ちゃんに向かって、今度は私が怒鳴った。
「お兄ちゃんの馬鹿!お兄ちゃんのせいで先輩怒らせちゃったじゃない!」
「ば、馬鹿って、葵葉……俺は、お前の事を心配して……」
「心配してくれるのはありがたいけど、お兄ちゃんの場合は度を超えてるの!」
「しかしだな、葵葉」
「もういいよ。そんな事より、どうしてお兄ちゃんここにいるの? 授業は?」
「お前が階段から落ちたって保健の北村先生が呼びにきてくれてたんだ。今から先生が病院に連れていってくれるから、付き添いとして俺もついてこいって。そうだ、そうだった。あんな奴と言い争いをしてる場合じゃなかった。先生、早く妹を病院に」
「……」
それまでの私達の会話についてこられず呆然と立ち尽くしたままの先生。
「先生、聞いてます? 早く妹を病院に」
急に話題を振られて、先生は驚いたように肩を跳ね上げていた。
「え? な、何?」
「何じゃないですよ先生、妹を早く病院まで連れて行って下さい!」
「そ、そうね。そうだったわね。えっと……あっと……」
まだ覚醒しきれていない様子で、先生はアタフタする。
「先生、ちょっとしっかりして下さいよ」
そんな先生にまでお兄ちゃんは、失礼な物言いをするものだから、私は慌ててお兄ちゃんを窘めた。
「ちょっとお兄ちゃん、先生に失礼でしょ! すみません先生。私のせいでご迷惑をおかけして。本当にすみません……」
そして私は先生に向かって何度も何度も頭を下げていた。
◇◇◇
保健室の窓の外。
2つの人影が葵葉達室内の様子を見守っている。
「葵葉さん、楽しそうですしたね。それにいつの間にか人間のお友達が出来たみたいで、良かったですね、神耶」
「……あぁ」
神社に戻ったはずの神耶と彼の師匠。
葵葉の『助けて』の声に、急いで学校へと戻って来ていた。
ゆえに二人は葵葉が保健室に運ばれたあたりからずっと外から葵葉達の様子を見守っていたのだ。
「神耶? どうしたんですか? そんなに暗い顔をして。葵葉さんの助けを呼ぶ声が聞こえたと、血相を変えて戻ってきたくせに。葵葉さんの無事が分かって良かったじゃないですか」
「……あぁ、そうだな」
「はぁ。心ここにあらずですね。そんなに心配なら、こんな所から見ていないで葵葉さんのもとへ行ってあげれば良いではないですか」
「いや、それは良い。無事ならそれで良いんだ。それに、せっかく人間達に囲まれて楽しそうにしてるのに、今俺が出てったらあいつの邪魔をしてしまう。また俺のせいで、あいつが人間から疎まれるのは……嫌だ」
「そうですか」
「でも……」
「でも?」
「…………」
「神耶?」
「何でかな。あいつに友達が出来る事は良い事だ。良い事だって、心から思ってる。でも、その姿を見て俺は……何でこんなにも淋しいと思っちまってるんだろうな」
「神耶……」
「なぁ師匠、この矛盾した変な気持ちって……一体何だと思う?」
「それは……私にもわかりません」
「そっか。師匠にも分からない事なんてあるんだな」
「…………」
「これ以上、ここであいつの姿見てるのはなんか辛いから、俺は社に戻るよ」
「わかりました。では私はもう少し葵葉さんの様子を見てから戻りますね」
「あぁ、分かった」
月岡先輩が消えて行った廊下に向かってお兄ちゃんが大声で叫ぶ。
そんなお兄ちゃんに向かって、今度は私が怒鳴った。
「お兄ちゃんの馬鹿!お兄ちゃんのせいで先輩怒らせちゃったじゃない!」
「ば、馬鹿って、葵葉……俺は、お前の事を心配して……」
「心配してくれるのはありがたいけど、お兄ちゃんの場合は度を超えてるの!」
「しかしだな、葵葉」
「もういいよ。そんな事より、どうしてお兄ちゃんここにいるの? 授業は?」
「お前が階段から落ちたって保健の北村先生が呼びにきてくれてたんだ。今から先生が病院に連れていってくれるから、付き添いとして俺もついてこいって。そうだ、そうだった。あんな奴と言い争いをしてる場合じゃなかった。先生、早く妹を病院に」
「……」
それまでの私達の会話についてこられず呆然と立ち尽くしたままの先生。
「先生、聞いてます? 早く妹を病院に」
急に話題を振られて、先生は驚いたように肩を跳ね上げていた。
「え? な、何?」
「何じゃないですよ先生、妹を早く病院まで連れて行って下さい!」
「そ、そうね。そうだったわね。えっと……あっと……」
まだ覚醒しきれていない様子で、先生はアタフタする。
「先生、ちょっとしっかりして下さいよ」
そんな先生にまでお兄ちゃんは、失礼な物言いをするものだから、私は慌ててお兄ちゃんを窘めた。
「ちょっとお兄ちゃん、先生に失礼でしょ! すみません先生。私のせいでご迷惑をおかけして。本当にすみません……」
そして私は先生に向かって何度も何度も頭を下げていた。
◇◇◇
保健室の窓の外。
2つの人影が葵葉達室内の様子を見守っている。
「葵葉さん、楽しそうですしたね。それにいつの間にか人間のお友達が出来たみたいで、良かったですね、神耶」
「……あぁ」
神社に戻ったはずの神耶と彼の師匠。
葵葉の『助けて』の声に、急いで学校へと戻って来ていた。
ゆえに二人は葵葉が保健室に運ばれたあたりからずっと外から葵葉達の様子を見守っていたのだ。
「神耶? どうしたんですか? そんなに暗い顔をして。葵葉さんの助けを呼ぶ声が聞こえたと、血相を変えて戻ってきたくせに。葵葉さんの無事が分かって良かったじゃないですか」
「……あぁ、そうだな」
「はぁ。心ここにあらずですね。そんなに心配なら、こんな所から見ていないで葵葉さんのもとへ行ってあげれば良いではないですか」
「いや、それは良い。無事ならそれで良いんだ。それに、せっかく人間達に囲まれて楽しそうにしてるのに、今俺が出てったらあいつの邪魔をしてしまう。また俺のせいで、あいつが人間から疎まれるのは……嫌だ」
「そうですか」
「でも……」
「でも?」
「…………」
「神耶?」
「何でかな。あいつに友達が出来る事は良い事だ。良い事だって、心から思ってる。でも、その姿を見て俺は……何でこんなにも淋しいと思っちまってるんだろうな」
「神耶……」
「なぁ師匠、この矛盾した変な気持ちって……一体何だと思う?」
「それは……私にもわかりません」
「そっか。師匠にも分からない事なんてあるんだな」
「…………」
「これ以上、ここであいつの姿見てるのはなんか辛いから、俺は社に戻るよ」
「わかりました。では私はもう少し葵葉さんの様子を見てから戻りますね」
「あぁ、分かった」
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