願いが叶うなら

汐野悠翔

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秋物語

神様って信じますか?

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私の唐突な質問に、先輩の手が私の頭の上から離される。


もし今、私が落ち込んでいるのだとしたら、それはクラスの人達と仲良くなれない事よりも、喧嘩してしまった事よりも、神耶君と言う大切な友達の存在を否定されてしまった。その事が何よりも私は悲しくて、悔しい。


そんな私の落ち込んだ気持ちを、手を差し延べてくれた先輩に上手く伝えられる自信がなくて、私は唐突にそんな質問をしてしまったのだ。


その質問に、返ってきた答えは



「さぁな」



肯定でも否定でもない曖昧な答え。


あぁ、やっぱり。
この人もまた、私の言う事なんて信じてくれないのか。そう思った時



「お前は?」



予想外に、問いを問いで返された。



「私は……」



先輩の問い掛けに、私は俯いていた瞳を持ち上げると、真っ直ぐに先輩を見据えながら、迷いなく答えた。




「いると信じてます」


「じゃあ、いるんじゃないか」


「……へ?」


先輩から返ってきた言葉に思わず変な声が漏れる。
馬鹿にされるかと身構えていたのに、拍子抜けだった。


そんな私の戸惑いを気にも止めず、先輩はこう言葉を続けた。



「お前が信じてるって言うなら、信じてれば良い。別に、他の奴らが信じていようと信じていまいと、周りなんて気にする必要はないだろ。俺は、そう思うけど」



その言葉にはっとした。
私は、何をムキになっていたのだろうかと。


たとえ皆に見えていなくても、神耶君は確かに存在していて、私にはその姿がはっきりと見えている。
それが紛れもない事実で、それが全てだ。
その事実だけで十分なはずなのに――


先輩の言葉で、何か大事な事を思い出せた気がして


「はい! 先輩、ありがとうございました!!」



私は満面の笑顔を浮かべて先輩にありがとうを伝えた。


「? 変な奴」


「へへへ。良く言われます」


「何照れてるんだ。 今のは別に褒め言葉でもなんでも」


「良いんです。嬉しかったから、良いんです」


「やっぱり変な奴」


「それより先輩、他は? 他はどこも怪我してないですか?命の恩人である先輩の手当ては私に任せて下さい! 私が責任をもってって……あ~先輩!? 腰……腰のあたり痛くないですか?血が……制服に血が滲んでますよ。こんな所も怪我してたなんて」


制服のズボンからはみ出たYシャツにチラッと見えた赤いシミに驚いて、私は先輩の着ていた制服のYシャツをサッと持ち上げ背中を晒す。


「うわっ?! 馬鹿よせっ! 何勝手に人の背中晒してるんだよっ!?」


「あ、ここ、血が出てる! すぐ手当てしますから、汚れないように制服脱いで下さい!! 血が広がらないうちに早く!!」 


「何なんだあんたは。落ち込んだかと思えば急に……って待て! 今度は何勝手に人の服脱がせようとしてんだよ!!」



逃げようとする先輩の腕をガシっと掴んで、ジワジワと先輩との距離を縮めて行く。
そして、先輩の制服のボタンを一つ、また一つと外して行った、その時、“バンッ”と、保健室のドアが勢いよく開け放たれて


「「っ?!」」



私と先輩は2人して慌てて音の方へと視線を向けた。



「葵葉~~!!」


「お兄ちゃん?!」



そこに立っていたのは、真っ青な顔で肩を大きく上下させながら俯き立つお兄ちゃんの姿。


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