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夏物語
決意の時
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「何を怖がっているんです、神耶」
「……」
「ここまでお願いされて、見捨てるつもりですか? 貴方にはまだ、葵葉さんの為に出来る事があるでしょう。神である貴方には」
「……師匠」
いつからそこにいたのか、俺達から少し離れた位置に立っていた師匠が、少し怖い顔で俺を叱責する。
そして一歩一歩、ゆっくり俺の元へと歩みを進めながら言葉を続けた。
「人間に落胆されるのが怖いですか。嫌われるのがそんなに怖いですか。いつまで逃げているつもりです。貴方も人間ばかり責めていないで、そろそろ自分の弱さに立ち向かう勇気を持ちなさい」
「…………」
「ほら、悩むよりまず行動!そんな血相を変えて走ってくる程葵葉さんの事が心配なら、助けたいのならなら、ほら行きなさい! 貴方に出来る事を全力でやって来なさい!悩むのはそれからでも遅くない」
そしてついに俺の目の前まで歩みを進めてきた師匠は、俺の体を強引に手術室へ向かせると、俺の背中を強く押した。
その反動で一歩前へと足が動く。
師匠の激励に俺はギュッと拳を握りしめる。
「分かった、待ってろ。葵葉は必ず俺が助ける。俺を信じて待ってろ!」
泣きながら祈り続ける葵葉の兄貴の肩に手を置き、そんな言葉を残すと、俺は集中治療室に向かって走り出した。
◆◆◆
「……え?」
不意に肩に何か触れた気がして、顔を上げた彼。葵葉の兄の瞳に、神社の神主のような、はたまた平安貴族のような着物を身に纏い、集中治療室へと向かって走って行く赤髪の少年の姿が写った。
「……あれが葵葉が言ってた神耶……君? あれが……神様。俺にも見えた……見えた……」
「貴方の想いが神耶に届きましたよ」
隣から聞こえたどこか聞き覚えのある声に人間の少年は振り向く。
そこには赤髪の少年同様、平安貴族のようなきらびやかな衣装に身を包み、白銀の、長く綺麗な髪をゆらゆら靡かせながら、一瞬女性かと見間違えてしまいそうな程、綺麗な顔立ちをした大人の男が立っていた。
「貴方が……師匠さん?」
「はい。面と向かっては初めまして。私達の存在を、信じてくれてありがとうございます。あなた達人間の信じる力が、私達神の、何よりの力になるんです。どうか、神耶の事を信じて待っていてあげて下さい。あの子ならきっと、葵葉さんを連れて戻って来ますよ」
そう言って、その人はニッコリと嬉しそうに、そして穏やかに微笑んでみせた。
人間の少年も、涙を拭いてコクりと頷いた。
「葵葉を……葵葉の事をどうか……お願いします」
「……」
「ここまでお願いされて、見捨てるつもりですか? 貴方にはまだ、葵葉さんの為に出来る事があるでしょう。神である貴方には」
「……師匠」
いつからそこにいたのか、俺達から少し離れた位置に立っていた師匠が、少し怖い顔で俺を叱責する。
そして一歩一歩、ゆっくり俺の元へと歩みを進めながら言葉を続けた。
「人間に落胆されるのが怖いですか。嫌われるのがそんなに怖いですか。いつまで逃げているつもりです。貴方も人間ばかり責めていないで、そろそろ自分の弱さに立ち向かう勇気を持ちなさい」
「…………」
「ほら、悩むよりまず行動!そんな血相を変えて走ってくる程葵葉さんの事が心配なら、助けたいのならなら、ほら行きなさい! 貴方に出来る事を全力でやって来なさい!悩むのはそれからでも遅くない」
そしてついに俺の目の前まで歩みを進めてきた師匠は、俺の体を強引に手術室へ向かせると、俺の背中を強く押した。
その反動で一歩前へと足が動く。
師匠の激励に俺はギュッと拳を握りしめる。
「分かった、待ってろ。葵葉は必ず俺が助ける。俺を信じて待ってろ!」
泣きながら祈り続ける葵葉の兄貴の肩に手を置き、そんな言葉を残すと、俺は集中治療室に向かって走り出した。
◆◆◆
「……え?」
不意に肩に何か触れた気がして、顔を上げた彼。葵葉の兄の瞳に、神社の神主のような、はたまた平安貴族のような着物を身に纏い、集中治療室へと向かって走って行く赤髪の少年の姿が写った。
「……あれが葵葉が言ってた神耶……君? あれが……神様。俺にも見えた……見えた……」
「貴方の想いが神耶に届きましたよ」
隣から聞こえたどこか聞き覚えのある声に人間の少年は振り向く。
そこには赤髪の少年同様、平安貴族のようなきらびやかな衣装に身を包み、白銀の、長く綺麗な髪をゆらゆら靡かせながら、一瞬女性かと見間違えてしまいそうな程、綺麗な顔立ちをした大人の男が立っていた。
「貴方が……師匠さん?」
「はい。面と向かっては初めまして。私達の存在を、信じてくれてありがとうございます。あなた達人間の信じる力が、私達神の、何よりの力になるんです。どうか、神耶の事を信じて待っていてあげて下さい。あの子ならきっと、葵葉さんを連れて戻って来ますよ」
そう言って、その人はニッコリと嬉しそうに、そして穏やかに微笑んでみせた。
人間の少年も、涙を拭いてコクりと頷いた。
「葵葉を……葵葉の事をどうか……お願いします」
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