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夏物語
かくれんぼ
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「か~ぐやく~ん! 遊びましょ~!」
次の日――
午後一番から予告通り奴が現れた。
昨日の一件で、俺は恐怖のあまりろくに眠れず、つい先程やっと眠りについたと言うのに、奴のあの楽しそうな声はなんだ?
耳を塞いで気付かないふりをしながら、俺はこのまま睡眠を続ける事を決め込む。
「おや、こんにちは、お嬢さん。昨日はどうも」
「あ、こんにちは! 約束通り遊びに来ました。神耶君はいますか?」
誰も約束なんかしていない。お前が一方的に言ってるだけじゃないか。俺は遊ばない! 絶対に遊ばない! 人間と友達になんて、絶対友達になんかならない!
外から聞こえる師匠と人間の会話を訊きながら、俺は一人心の中で固く誓うも
「神耶なら社の中でまだ寝てますよ」
おい、馬鹿師匠、何勝手に俺の居場所を教えてんだよ。入れないぞ、絶対ここには入れてやるもんか!
師匠の裏切りによって身の危険を感じた俺は、急いで飛び起き、社の扉を開けられないようにと、扉に向かって飛び付いた。
だが一足遅く、俺が扉を抑えようとしたその瞬間、扉は勢いよく開け放たれて――
「あっ、神耶君、おはよう」
「うわぁぁぁぁ~~~~!!!」
突然目の前に、あのおぞましい奴の顔が現れた。
瞬間、昨日の恐怖が蘇って、俺は叫び声を上げながら勢いよく後ろへと飛び退いた。
「来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな~~~~~~!!!」
俺は助けを求めて師匠の姿を探す。
と、人間の後ろから、ひょっこりと顔を覗かせる小さな師匠の姿が目に入った。
助けを求めて「師匠」と声を出しかけた時、師匠の肩が小刻みに奮えている事に気付いて声を飲み込む。
まさかあの野郎、笑ってやがるのか?
情けない俺の姿はそんなに滑稽か?
昨日、少しでも師匠を見直した俺が馬鹿だった!
結局、今この恐怖から逃れられる為は、大人しく奴の言いなりになるしかない。
情けなくも、俺はそう悟った。
◆◆◆
とは言ったものの――
「何で俺、こんな事してるんだ?」
蜘蛛の巣だらけの暗くジメジメした社の軒下で、一人惨めに縮こまっている今の状況に、俺は早くも不満が零れる。
「てか、何で俺が人間のガキの隠れんぼなんかに付き合わなきゃならないんだ。俺はそんなキャラだったか? いやいや、違うだろう」
何がどうしてこんな事になった?
何故奴のペースに巻き込まれてる?
「そうだ、俺は断じてこんなキャラじゃない! 神であるこの俺が、こんな蜘蛛の巣だらけになってまで人間のガキのおもりをしてやる必要なんて……あ~も~あほらしい! もう、やめだやめ!」
そう言って、勢いよく立ち上がる。
ここがどこであったかも忘れて。
"ゴンッ"という鈍い音と一緒に
「いって~~!!」
俺の悲痛な叫び声が辺りに響き渡った。
軒下と言う狭い空間で、立ち上がれる程、高さに余裕などあるはずが無かったのだ。
「あっ、神耶君み~っけ!」
更に追い撃ちをかけるようにムカつく奴の声が聞こえてくる。
「ダメだよ~、そんな大きな声を上げたら。隠れんぼにならないでしょ~」
泣きっ面に蜂とは、まさにこの事を言うのか。
「あれ~、どうしたの、その大きなタンコブ。痛くない? 痛そう~」
「うるさい、黙れ! 全部何もかもお前のせいだ!」
情けなくも涙目になりながら、俺は奴に向かって込み上げてくる苛立ちをぶちまけた。
次の日――
午後一番から予告通り奴が現れた。
昨日の一件で、俺は恐怖のあまりろくに眠れず、つい先程やっと眠りについたと言うのに、奴のあの楽しそうな声はなんだ?
耳を塞いで気付かないふりをしながら、俺はこのまま睡眠を続ける事を決め込む。
「おや、こんにちは、お嬢さん。昨日はどうも」
「あ、こんにちは! 約束通り遊びに来ました。神耶君はいますか?」
誰も約束なんかしていない。お前が一方的に言ってるだけじゃないか。俺は遊ばない! 絶対に遊ばない! 人間と友達になんて、絶対友達になんかならない!
外から聞こえる師匠と人間の会話を訊きながら、俺は一人心の中で固く誓うも
「神耶なら社の中でまだ寝てますよ」
おい、馬鹿師匠、何勝手に俺の居場所を教えてんだよ。入れないぞ、絶対ここには入れてやるもんか!
師匠の裏切りによって身の危険を感じた俺は、急いで飛び起き、社の扉を開けられないようにと、扉に向かって飛び付いた。
だが一足遅く、俺が扉を抑えようとしたその瞬間、扉は勢いよく開け放たれて――
「あっ、神耶君、おはよう」
「うわぁぁぁぁ~~~~!!!」
突然目の前に、あのおぞましい奴の顔が現れた。
瞬間、昨日の恐怖が蘇って、俺は叫び声を上げながら勢いよく後ろへと飛び退いた。
「来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな~~~~~~!!!」
俺は助けを求めて師匠の姿を探す。
と、人間の後ろから、ひょっこりと顔を覗かせる小さな師匠の姿が目に入った。
助けを求めて「師匠」と声を出しかけた時、師匠の肩が小刻みに奮えている事に気付いて声を飲み込む。
まさかあの野郎、笑ってやがるのか?
情けない俺の姿はそんなに滑稽か?
昨日、少しでも師匠を見直した俺が馬鹿だった!
結局、今この恐怖から逃れられる為は、大人しく奴の言いなりになるしかない。
情けなくも、俺はそう悟った。
◆◆◆
とは言ったものの――
「何で俺、こんな事してるんだ?」
蜘蛛の巣だらけの暗くジメジメした社の軒下で、一人惨めに縮こまっている今の状況に、俺は早くも不満が零れる。
「てか、何で俺が人間のガキの隠れんぼなんかに付き合わなきゃならないんだ。俺はそんなキャラだったか? いやいや、違うだろう」
何がどうしてこんな事になった?
何故奴のペースに巻き込まれてる?
「そうだ、俺は断じてこんなキャラじゃない! 神であるこの俺が、こんな蜘蛛の巣だらけになってまで人間のガキのおもりをしてやる必要なんて……あ~も~あほらしい! もう、やめだやめ!」
そう言って、勢いよく立ち上がる。
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「あれ~、どうしたの、その大きなタンコブ。痛くない? 痛そう~」
「うるさい、黙れ! 全部何もかもお前のせいだ!」
情けなくも涙目になりながら、俺は奴に向かって込み上げてくる苛立ちをぶちまけた。
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