72 / 167
出会い
しおりを挟む
夫婦の案内で河本一家の屋敷に香織はたどり着いた。
表の門が半開きになっている。
扉が開いている…?
香織は注意深く扉をそっと開けた。
すると力ない腕が倒れた。
扉を内側から開けようとして倒れたようだ。
どうしたのだ?
出入りか?
香織は中庭から様子を見ようと静かに侵入した。
が、砂利を踏む音を近くにいた者に聞かれた。
「誰だ!」
こうなっては仕方がない。
覚悟を決めた香織は刀の鍔に左手を掛け、その者の前に出た。
「陰流宗家愛洲香織と申す。故あってこちらに連れて来られた亜香里という娘をもらい受けに来た」
夜、電気もない暗闇の中である。
声の主は縁側に立ち香織を見下ろしている。
「陰流?宗家…あの愛洲移香斎のゆかりの者か?」
この話し方はやくざ者ではないな…
武士、いや浪人。河本一家の用心棒といったところか…
ここは親の七光りでいくか。
「いかにも愛洲移香斎は某の曽祖父。拙者は陰流の技を受け継げし唯一の継承者だ。おとなしく娘を出せばよし、さもなくば陰流の技を貴殿に披露することになるが。いかに!」
相手が引いてくれれば今はそれでいい…
「陰流の愛洲香織か…ふふふ女侍だな」
怯んでいない…やはりおなごと舐めているか…
香織は鍔を内切りに押し出した。
「やめておけ!こちらはすでに抜いている」
剣を抜いている?
「声で位置はわかっている。動けば砂利の音を追って斬りつける」
いかん…もう構えているに違いない。
動けば砂利の音でバレてしまう。
それにしても若い声だ…
まるで声変わりもしてないような声。
それでいてこの慣れた駆け引き…かなりの修羅場をくぐって来たと見える。
「貴殿は河本一家のゆかりの者か?」
「用心棒だ。いや、用心棒だったと言うべきか…」
そのとき夜雲が流れ満月の月の光が差した。
香織の前にいた侍は刀を肩に置き、返り血に染まった服や髪をもろともせず堂々と香織を見下ろしていた。
まるで相手の力を値踏みするかのように。
整った顔立ち、子供のような肌、長いまつ毛。
香織は目が見開いていった。
女だ!こやつも女侍か!
女侍は言った。
「無外流、人斬り地井頭こと地井頭沙織だ」
これが香織と沙織の前世の出会いだった。
表の門が半開きになっている。
扉が開いている…?
香織は注意深く扉をそっと開けた。
すると力ない腕が倒れた。
扉を内側から開けようとして倒れたようだ。
どうしたのだ?
出入りか?
香織は中庭から様子を見ようと静かに侵入した。
が、砂利を踏む音を近くにいた者に聞かれた。
「誰だ!」
こうなっては仕方がない。
覚悟を決めた香織は刀の鍔に左手を掛け、その者の前に出た。
「陰流宗家愛洲香織と申す。故あってこちらに連れて来られた亜香里という娘をもらい受けに来た」
夜、電気もない暗闇の中である。
声の主は縁側に立ち香織を見下ろしている。
「陰流?宗家…あの愛洲移香斎のゆかりの者か?」
この話し方はやくざ者ではないな…
武士、いや浪人。河本一家の用心棒といったところか…
ここは親の七光りでいくか。
「いかにも愛洲移香斎は某の曽祖父。拙者は陰流の技を受け継げし唯一の継承者だ。おとなしく娘を出せばよし、さもなくば陰流の技を貴殿に披露することになるが。いかに!」
相手が引いてくれれば今はそれでいい…
「陰流の愛洲香織か…ふふふ女侍だな」
怯んでいない…やはりおなごと舐めているか…
香織は鍔を内切りに押し出した。
「やめておけ!こちらはすでに抜いている」
剣を抜いている?
「声で位置はわかっている。動けば砂利の音を追って斬りつける」
いかん…もう構えているに違いない。
動けば砂利の音でバレてしまう。
それにしても若い声だ…
まるで声変わりもしてないような声。
それでいてこの慣れた駆け引き…かなりの修羅場をくぐって来たと見える。
「貴殿は河本一家のゆかりの者か?」
「用心棒だ。いや、用心棒だったと言うべきか…」
そのとき夜雲が流れ満月の月の光が差した。
香織の前にいた侍は刀を肩に置き、返り血に染まった服や髪をもろともせず堂々と香織を見下ろしていた。
まるで相手の力を値踏みするかのように。
整った顔立ち、子供のような肌、長いまつ毛。
香織は目が見開いていった。
女だ!こやつも女侍か!
女侍は言った。
「無外流、人斬り地井頭こと地井頭沙織だ」
これが香織と沙織の前世の出会いだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる