5 / 5
第五話
しおりを挟む
「あの宝石のように美しく女神のごとく心が清らかなラーファ嬢をあのような顔にさせる女に何を教えよう」
「…………は」
急に始まったノロケのようなセリフに、耐性のない私は固まりました。
くそメロメロじゃねぇーか。
アニメでは初めからラーファ様だけが殿下に憧れてひっつき回っていたように描かれていたので、まさかの状況に驚きました。
じゃあこのまま私が何もしなければ、お2人はバッチリ結婚するのでは、という所まで考えを巡らせていると、友人Aもとい、エルティギス様が私の方を向いて頷いております。
なんでしょう。何かあるのでしょうか。
「殿下、まだラーファ嬢は婚約者候補、正式に決まった訳ではありません。そのように贔屓目で見ている事を気付かれる言葉はお控えください」
「この女がラーファ嬢に何かしようとしているかもしれない状況でそんな事を言ってられまい」
「殿下、この女というのも令嬢に対しては失礼にあたります」
本当にそうでございます。
令嬢に『この女』なんて他の方だったら、うっかりばしっと頬を叩かれてしまってもおかしくない状況でございます。
全く表情を変えていないのに、その言葉だけでいつも綺麗目王子を作っていることがバレてしまうのは問題なのではありませんか……。
しかし、このメロメロ状態でもまだ『候補』となると、今の状態(ラーファ様が私を殺しにくる)が続いてしまうと候補から外れてしまう可能性もあるという事。そして…このまま勘違いされたままであれば、私も悪魔関係者として殿下に裁かれる場合も出てくるということでしょうか。
それは大変よろしくありません。
「殿下、お言葉ですが」
私が口を開くと殿下とエルティギス様がこちらを振り返りました。
「あの日、私が裏庭に向かった時点で、ラーファ様は私に殺意を持っておりました」
「つまり?」
「つまり、あの状態にさせた根本の原因は……私ではない可能性があると考えております」
「何が言いたい」
「私を疑うだけでは恐らく解決いたしませんわ、他にも目をおかけください。という事でございます」
そしてあわよくば、私と関わらないでください。
「そんなハッタリが通じるとでも?」
「では殿下、あの日、ラーファ様が変わる瞬間を目撃されたのですか?」
「…………」
「 信じたく無いからと私の意見から目を背けていてはいつまでも解決いたしません」
「だが……」
「ラーファ様を救いたいのであれば、自分の感情だけで動くべきではないのです。将来国を守っていく殿下には必要な能力ではありませんか」
「ああ……」
「そして殿下には優秀な片腕がいらっしゃいますわ。絶対に解決できるはずです」
上手い事を言った気がして少し上機嫌になった私はチラリとエルティギス様を見ると、何を言いやがったこいつという様な目でこちらを見ておりました。
あれ、なんかマズイことを言った気がすると悟った瞬間、殿下は大きく頷きました。
「そうだな、私は将来国を治めなければならない人間だ。それにエルティギスもいる。そして、そこまで言う貴方が悪い人には思えない。ありがとう、少し目が覚めたよ」
「おほほほ……良かったですわ」
爽やかな笑顔で笑う殿下の後ろには、とってもいい笑顔で笑う片腕さんが居ります。
ああ、きっと、余計な仕事増やしたなとか思っているのでしょう。
でも、結局調べることになっていたと思うのですよ?それは私のせいじゃないと思いますし。ちょっとだけ時期早めちゃっただと思うのですよ!
なんて言葉をかけても、恐らくそれも分かっている彼には通じないでしょう。
「では、何かしら関わりがありそうな彼女にも協力してもらうのはいかがでしょうか殿下」
「ひぇ……!?」
「ああ、いい考えだなエルティギス。貴方ももちろん協力してくれるね?」
「…………殿下のお心のままに……」
くっそ、絶対わざとに違いない。
殿下に願われて従わない人間なんているものか。
関わらないようにお言葉をかけたのが仇となったとは思いませんが、言葉の選択ミスがあった事は否めません。
はぁ、私の平和な学園生活なんて初めから無かったのです。
私は静かに、心の涙を流しました。
「…………は」
急に始まったノロケのようなセリフに、耐性のない私は固まりました。
くそメロメロじゃねぇーか。
アニメでは初めからラーファ様だけが殿下に憧れてひっつき回っていたように描かれていたので、まさかの状況に驚きました。
じゃあこのまま私が何もしなければ、お2人はバッチリ結婚するのでは、という所まで考えを巡らせていると、友人Aもとい、エルティギス様が私の方を向いて頷いております。
なんでしょう。何かあるのでしょうか。
「殿下、まだラーファ嬢は婚約者候補、正式に決まった訳ではありません。そのように贔屓目で見ている事を気付かれる言葉はお控えください」
「この女がラーファ嬢に何かしようとしているかもしれない状況でそんな事を言ってられまい」
「殿下、この女というのも令嬢に対しては失礼にあたります」
本当にそうでございます。
令嬢に『この女』なんて他の方だったら、うっかりばしっと頬を叩かれてしまってもおかしくない状況でございます。
全く表情を変えていないのに、その言葉だけでいつも綺麗目王子を作っていることがバレてしまうのは問題なのではありませんか……。
しかし、このメロメロ状態でもまだ『候補』となると、今の状態(ラーファ様が私を殺しにくる)が続いてしまうと候補から外れてしまう可能性もあるという事。そして…このまま勘違いされたままであれば、私も悪魔関係者として殿下に裁かれる場合も出てくるということでしょうか。
それは大変よろしくありません。
「殿下、お言葉ですが」
私が口を開くと殿下とエルティギス様がこちらを振り返りました。
「あの日、私が裏庭に向かった時点で、ラーファ様は私に殺意を持っておりました」
「つまり?」
「つまり、あの状態にさせた根本の原因は……私ではない可能性があると考えております」
「何が言いたい」
「私を疑うだけでは恐らく解決いたしませんわ、他にも目をおかけください。という事でございます」
そしてあわよくば、私と関わらないでください。
「そんなハッタリが通じるとでも?」
「では殿下、あの日、ラーファ様が変わる瞬間を目撃されたのですか?」
「…………」
「 信じたく無いからと私の意見から目を背けていてはいつまでも解決いたしません」
「だが……」
「ラーファ様を救いたいのであれば、自分の感情だけで動くべきではないのです。将来国を守っていく殿下には必要な能力ではありませんか」
「ああ……」
「そして殿下には優秀な片腕がいらっしゃいますわ。絶対に解決できるはずです」
上手い事を言った気がして少し上機嫌になった私はチラリとエルティギス様を見ると、何を言いやがったこいつという様な目でこちらを見ておりました。
あれ、なんかマズイことを言った気がすると悟った瞬間、殿下は大きく頷きました。
「そうだな、私は将来国を治めなければならない人間だ。それにエルティギスもいる。そして、そこまで言う貴方が悪い人には思えない。ありがとう、少し目が覚めたよ」
「おほほほ……良かったですわ」
爽やかな笑顔で笑う殿下の後ろには、とってもいい笑顔で笑う片腕さんが居ります。
ああ、きっと、余計な仕事増やしたなとか思っているのでしょう。
でも、結局調べることになっていたと思うのですよ?それは私のせいじゃないと思いますし。ちょっとだけ時期早めちゃっただと思うのですよ!
なんて言葉をかけても、恐らくそれも分かっている彼には通じないでしょう。
「では、何かしら関わりがありそうな彼女にも協力してもらうのはいかがでしょうか殿下」
「ひぇ……!?」
「ああ、いい考えだなエルティギス。貴方ももちろん協力してくれるね?」
「…………殿下のお心のままに……」
くっそ、絶対わざとに違いない。
殿下に願われて従わない人間なんているものか。
関わらないようにお言葉をかけたのが仇となったとは思いませんが、言葉の選択ミスがあった事は否めません。
はぁ、私の平和な学園生活なんて初めから無かったのです。
私は静かに、心の涙を流しました。
0
お気に入りに追加
12
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる