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第三話

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さて、私の考えとは裏腹に、案外普通の生活が送れている今日この頃でございます。


特にクラスの方々からは歓迎されていないという訳ではなく、ごく普通の会話をする程度には馴染むことができました。

因みにラーファ様からは一定の距離を保つことを心がけておりますの。近づかれそうになったら誰かに話しかけ、なるべく1人にはならず、寮には同室の方と待ち合わせて帰宅致します。お手洗いのドレスの上げ下げは秒で出来るようになりましたわ。なんて。



1つだけ気になることといえば、殿下の友人Aがこちらをちらちらと見てくることでしょうか。
因みに私、名前を覚えることが大の苦手でございまして、殿下の友人のお名前が分かりません。

ええ、分かっております。貴族としてあるまじき事であると。でも苦手なものはすぐには治せませんので、こうやって話しかけられる事を待つのでございます。

しかし、殿下とは関わりたくないものです。
そもそも殿下の婚約者候補であるラーファ様は、とても美しく、気品もあり、学も素晴らしい為にほぼ殿下のお相手として周りから扱われております。
他の方の婚約者候補という肩書きはほぼ無効と言っていいでしょう、殿下以外の殿方との仲を頑張って深めている光景もちらほら見受けられます。


私はただ、ラーファ様の関係者とは関わりたくないのでございます。しかも殿下ってアニメの時のヒーローだし。
仲良く、絶対、ダメ。


「ハミルトン嬢」
「…………はい、私のことでしょうか」
「貴方以外に誰がいるんだ」

ほら、こういう時に噂してはだめとあれほど前の世界で言われて来たではありませんか。私は一体何をしているのでしょうか。でもこんな皆んなが見ているタイミングで話しかけなくてもと思うのですが、殿下……。

殿下は「ここでは人目が多いから場所を移そう」という私には理解しがたいセリフを吐きながら、手を差し伸べて参りました。

「………………」




ここで、いいじゃありません?!
なんなら斜め前からラーファ様がこちらを見ておりますので殿下の言葉を無視したい所存でございますが!

「ハミルトン嬢?」
「あは、申し訳ございません持病の難聴が」
「え?」
「なんでもありません、参りますわ」

おほほ、と口元に手を当てて穏やかに笑って席を立つと、殿下の後についていきます。
ラーファ様誤解です。お願いだから視線で殺して来ないでくださいまし。
心の中で叫びつつ、教室を後にしたのでした。


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