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04.異世界召喚されたんだけど、勇者さまがチート過ぎました
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またしてもロザリンド姫に乗せられただけじゃなく、王太子の思惑にもまんまとハマっていた事に気づいたのは、その日の夜だった。道理でさっさと出て行ったと思ったわ。あの腹黒王太子めっ。
正気に戻った長瀬くんは、一緒に暮らせないというのでかなりしょんぼりしていたのだけど、魔法使いが年頃の未婚の男女が一緒に暮らす事の問題点がどうとか言うと大人しくなった。長瀬くんが狼にはならないとしても、周りの目があるからって、どこの世界も一緒なんだなぁ。
夕飯は国王家族も交えての、ちょっと緊張したものになった。長瀬くんも一緒だ。彼は城下にある家には帰らず、今日は城に泊まる事にしたようだ。先方は身内だけのって言ってたけど、この国で一番偉い人だもん、緊張するなというのが難しい。国王夫妻以外、ロザリンド姫や、先程会った王子二人も同席した。
赤毛王子はさっきと同様、あたしへの敵意を隠そうともしない。視線がチリチリ痛いです。席はテーブルを挟んで国王家族と向かい合う形で、長瀬くん、あたし、魔法使いが座った。あたしの前には王妃さま。さすがロザリンド姫の母親だけあって凄い美人だ。
魔法使いが一緒って、びっくりしたのだけど、彼はこれでも公爵家の次男で、次の宰相候補らしい。長瀬くんと一緒に、魔王を倒しに行った仲間でもあるそうだ。それで2人で話してて砕けた感じだったのか。
どんな料理が出て来るのかと思ったら、何故かメインはハンバーグだった。いや、ハンバーグは好きですけど、どうして異世界にハンバーグ? そりゃ、あってもおかしくはないけどね。そして何よりご飯。お米だよ! まさかヨーロッパ的な異世界でご飯が食べれるとは。ハンバーグ以外はフランス料理を思わせるような優雅なものなのに、家庭料理的なそれが浮いてます。
「サクラの好きなものだと聞いたのでな、異世界料理を作らせてみたのだが、口に合うだろうか」
気さくそうな国王が、そう話しかけてくる。なるほど。あたしのためにわざわざ作らせたらしい。初対面のあたしにここまでしてくれるって、きっと長瀬くんの功績があってこそだよね。何であたしがハンバーグが好きな事を知ってるのかについては、もう突っ込むのは止めよう。
「このご飯というのは、ユキヤが教えてくれた異世界文化のひとつだ。彼は世界を救ってくれただけでなく、我が国に様々な文化をもたらしつつある。まことにそなたの勇者殿は素晴らしい」
あたしの勇者殿じゃないんだけど。そうは思ったものの、上機嫌な国王に、一応反論は控える事にした。明日の朝食は味噌汁と納豆を出してくれるらしい。もそもそとお箸を使って料理を食べながら、隣に座る長瀬くんを見ると、彼は照れたように頭をかいた。
「偶然だよ。昔から雑学書を読むのが好きで、たまたま似たものがこの世界にもあっただけ。魔王討伐の途中で見つけたのが殆どだし、それに佐倉さん朝食は和食派だって聞いてたし」
最後の方は聞かなかった事に……ダメだ! 長瀬くん、まさかあたしが食べる姿を想像しながら開発したとか言わないよね!?
どうやらあたしのショボイ異世界知識は、要らない子になりそうです。ハンバーグはあたしの世界のものより少しぽそぽそしてるけど、十分美味しい。料理だけじゃなく、色々な分野で彼が与えた影響は計り知れないものなのだとか。長瀬くんマジチート。
「どうかしたの?」
鬱々としているのを気づかれたらしい。長瀬くんはあたしの顔を覗き込んで来た。
「あ、いや、長瀬くんはすごいなって……」
「えっ?」
もごもごと、口の中でそんな事を言うと、きょとんとした顔をされた。う~、聞き返さないで。なんと言うかね、あたしを歓迎してくれる国王も、あたしが召喚された理由も、出された異世界の料理も、全て長瀬くんという存在があるからだよね。彼らにしてみたら、あたしは勇者さまのお嫁さんで、単なる長瀬くんのオマケに過ぎない。それが判ってしまったというか、実感したというか。それが現在進行形というか。
勝手に召喚された立場とはいえ、あたしのこの世界の存在意義って、長瀬くんの付属物なのかなと思い知らされるにつれ、何の取り柄もないのが嫌だとかワガママかなぁ。素直に甘えれたら良いのに。
「長瀬くんに比べたら、あたし何も出来ないなって思ってさ」
「そんな事はないよ!」
笑顔を作ろうとしたけど、多分苦笑いになっているだろうあたしの顔を、真剣な表情で見返す長瀬くん。音がしそうな勢いで立ち上がると、明後日の方向を向いて拳を振り上げた。
「佐倉さんはこの世に存在してるだけで世界に光と潤いを与えてるんだ! 言うなれば女神! この地上に舞い降りた天使と言うか……えっと」
さすがに自分で言って恥ずかしくなったらしい。我に返ったのか、握り締めていた拳を開いて椅子に座り直し、テーブルに頭が付きそうな位俯いた。はい、あたしは既に撃沈済みですがなにか。
うぅ、長瀬くんは王太子に負けない位の恥ずかしい人だった。気をつけよう。
「はっはっは!」
静かになった室内に、突然大きな笑い声が響いた。国王だ。隣で釣られるように、扇で口元を隠しながら笑う王妃。
「仲睦まじいようで結構結構。ユキヤの婚約者とはどんな人かと思っていたが、ずいぶんと健気で愛らしい人だ。お似合いではないか。なぁ?」
「本当に。さすがユキヤの選んだ人ですわね」
多大なる誤解が生じているかと思われます。何だかどんどん外堀が埋まって来てるように思えるのはあたしだけかな。いや、長瀬くんが嫌な訳じゃないんだけど。ちょっとというか、かなり変な人だとは思うけどね。
「安穏と暮らすのではなく、ユキヤの役に立ちたいという、そなたの願いは受け入れた。ローザ、サクラを頼んだぞ」
「もちろんですわ。ユキヤの大事な人ですもの」
器用に箸を操りながら、したり顔で頷くロザリンド姫。いや、役に立ちたいとかいうのとは違うのだけど、上手く説明出来る気がしない。難しいなぁ。
「父上」
「ジークか。どうした?」
和やかムードの食卓に、硬い声が響く。先程からムッツリしていた第二王子だ。彼は立ち上がると、周りを睥睨する。あたしと目が合うと、ジロリと睨んで来た。
「私は反対です」
「何故だ」
「彼女は何も知らない。それに……」
これ以上は言いにくいのか、第二王子は口を閉ざした。ぐっと結ばれた唇が、彼の心情を現しているのだろう。あたしってかなり彼に疎まれているようだ。
「フレアの事を言っているなら、サクラがここに居る以上、どうこう言うまでもない。解っている筈だ」
「しかし!」
「ジーク、ここは食事の場だ。控えろ」
「兄上……」
第二王子は、王と王太子に言われて、悔しそうに唇を噛み締める。きっとあたしを睨むと、そのまま踵を返し、此方を振り返る事なく部屋を出て行った。無言の意思表示というやつですね。彼は兄と違って直情的な性格のようだ。あたしはというと、現状に加え、面倒そうなのが増えたなと、ウンザリしていたのだけど、実は少しわくわくもしていた。
今までので何となく流れは掴めた。ぽっと出のあたしがいきなり勇者の婚約者とか許すまじというやつですね。なんて王道展開。このまま本が一冊書けそうだわ。タイトルはそうだな、
『勇者の嫁にさせられそうなのだけど、何か質問ある?』というのはどうかな。何処かの掲示板みたいだけど、ちょっと最近流行だし。ノンフィクションで、渦中に居るのが自分というのが笑えないのだけど。でもどうせ帰れないのなら、異世界ライフを目一杯楽しむしかないよね。ポジティブシンキングだ。
そんな事を考えているあたしの隣で、長瀬くんが微笑ましそうにこっちを見ていたのを、あたしは全然気づかなかった。
正気に戻った長瀬くんは、一緒に暮らせないというのでかなりしょんぼりしていたのだけど、魔法使いが年頃の未婚の男女が一緒に暮らす事の問題点がどうとか言うと大人しくなった。長瀬くんが狼にはならないとしても、周りの目があるからって、どこの世界も一緒なんだなぁ。
夕飯は国王家族も交えての、ちょっと緊張したものになった。長瀬くんも一緒だ。彼は城下にある家には帰らず、今日は城に泊まる事にしたようだ。先方は身内だけのって言ってたけど、この国で一番偉い人だもん、緊張するなというのが難しい。国王夫妻以外、ロザリンド姫や、先程会った王子二人も同席した。
赤毛王子はさっきと同様、あたしへの敵意を隠そうともしない。視線がチリチリ痛いです。席はテーブルを挟んで国王家族と向かい合う形で、長瀬くん、あたし、魔法使いが座った。あたしの前には王妃さま。さすがロザリンド姫の母親だけあって凄い美人だ。
魔法使いが一緒って、びっくりしたのだけど、彼はこれでも公爵家の次男で、次の宰相候補らしい。長瀬くんと一緒に、魔王を倒しに行った仲間でもあるそうだ。それで2人で話してて砕けた感じだったのか。
どんな料理が出て来るのかと思ったら、何故かメインはハンバーグだった。いや、ハンバーグは好きですけど、どうして異世界にハンバーグ? そりゃ、あってもおかしくはないけどね。そして何よりご飯。お米だよ! まさかヨーロッパ的な異世界でご飯が食べれるとは。ハンバーグ以外はフランス料理を思わせるような優雅なものなのに、家庭料理的なそれが浮いてます。
「サクラの好きなものだと聞いたのでな、異世界料理を作らせてみたのだが、口に合うだろうか」
気さくそうな国王が、そう話しかけてくる。なるほど。あたしのためにわざわざ作らせたらしい。初対面のあたしにここまでしてくれるって、きっと長瀬くんの功績があってこそだよね。何であたしがハンバーグが好きな事を知ってるのかについては、もう突っ込むのは止めよう。
「このご飯というのは、ユキヤが教えてくれた異世界文化のひとつだ。彼は世界を救ってくれただけでなく、我が国に様々な文化をもたらしつつある。まことにそなたの勇者殿は素晴らしい」
あたしの勇者殿じゃないんだけど。そうは思ったものの、上機嫌な国王に、一応反論は控える事にした。明日の朝食は味噌汁と納豆を出してくれるらしい。もそもそとお箸を使って料理を食べながら、隣に座る長瀬くんを見ると、彼は照れたように頭をかいた。
「偶然だよ。昔から雑学書を読むのが好きで、たまたま似たものがこの世界にもあっただけ。魔王討伐の途中で見つけたのが殆どだし、それに佐倉さん朝食は和食派だって聞いてたし」
最後の方は聞かなかった事に……ダメだ! 長瀬くん、まさかあたしが食べる姿を想像しながら開発したとか言わないよね!?
どうやらあたしのショボイ異世界知識は、要らない子になりそうです。ハンバーグはあたしの世界のものより少しぽそぽそしてるけど、十分美味しい。料理だけじゃなく、色々な分野で彼が与えた影響は計り知れないものなのだとか。長瀬くんマジチート。
「どうかしたの?」
鬱々としているのを気づかれたらしい。長瀬くんはあたしの顔を覗き込んで来た。
「あ、いや、長瀬くんはすごいなって……」
「えっ?」
もごもごと、口の中でそんな事を言うと、きょとんとした顔をされた。う~、聞き返さないで。なんと言うかね、あたしを歓迎してくれる国王も、あたしが召喚された理由も、出された異世界の料理も、全て長瀬くんという存在があるからだよね。彼らにしてみたら、あたしは勇者さまのお嫁さんで、単なる長瀬くんのオマケに過ぎない。それが判ってしまったというか、実感したというか。それが現在進行形というか。
勝手に召喚された立場とはいえ、あたしのこの世界の存在意義って、長瀬くんの付属物なのかなと思い知らされるにつれ、何の取り柄もないのが嫌だとかワガママかなぁ。素直に甘えれたら良いのに。
「長瀬くんに比べたら、あたし何も出来ないなって思ってさ」
「そんな事はないよ!」
笑顔を作ろうとしたけど、多分苦笑いになっているだろうあたしの顔を、真剣な表情で見返す長瀬くん。音がしそうな勢いで立ち上がると、明後日の方向を向いて拳を振り上げた。
「佐倉さんはこの世に存在してるだけで世界に光と潤いを与えてるんだ! 言うなれば女神! この地上に舞い降りた天使と言うか……えっと」
さすがに自分で言って恥ずかしくなったらしい。我に返ったのか、握り締めていた拳を開いて椅子に座り直し、テーブルに頭が付きそうな位俯いた。はい、あたしは既に撃沈済みですがなにか。
うぅ、長瀬くんは王太子に負けない位の恥ずかしい人だった。気をつけよう。
「はっはっは!」
静かになった室内に、突然大きな笑い声が響いた。国王だ。隣で釣られるように、扇で口元を隠しながら笑う王妃。
「仲睦まじいようで結構結構。ユキヤの婚約者とはどんな人かと思っていたが、ずいぶんと健気で愛らしい人だ。お似合いではないか。なぁ?」
「本当に。さすがユキヤの選んだ人ですわね」
多大なる誤解が生じているかと思われます。何だかどんどん外堀が埋まって来てるように思えるのはあたしだけかな。いや、長瀬くんが嫌な訳じゃないんだけど。ちょっとというか、かなり変な人だとは思うけどね。
「安穏と暮らすのではなく、ユキヤの役に立ちたいという、そなたの願いは受け入れた。ローザ、サクラを頼んだぞ」
「もちろんですわ。ユキヤの大事な人ですもの」
器用に箸を操りながら、したり顔で頷くロザリンド姫。いや、役に立ちたいとかいうのとは違うのだけど、上手く説明出来る気がしない。難しいなぁ。
「父上」
「ジークか。どうした?」
和やかムードの食卓に、硬い声が響く。先程からムッツリしていた第二王子だ。彼は立ち上がると、周りを睥睨する。あたしと目が合うと、ジロリと睨んで来た。
「私は反対です」
「何故だ」
「彼女は何も知らない。それに……」
これ以上は言いにくいのか、第二王子は口を閉ざした。ぐっと結ばれた唇が、彼の心情を現しているのだろう。あたしってかなり彼に疎まれているようだ。
「フレアの事を言っているなら、サクラがここに居る以上、どうこう言うまでもない。解っている筈だ」
「しかし!」
「ジーク、ここは食事の場だ。控えろ」
「兄上……」
第二王子は、王と王太子に言われて、悔しそうに唇を噛み締める。きっとあたしを睨むと、そのまま踵を返し、此方を振り返る事なく部屋を出て行った。無言の意思表示というやつですね。彼は兄と違って直情的な性格のようだ。あたしはというと、現状に加え、面倒そうなのが増えたなと、ウンザリしていたのだけど、実は少しわくわくもしていた。
今までので何となく流れは掴めた。ぽっと出のあたしがいきなり勇者の婚約者とか許すまじというやつですね。なんて王道展開。このまま本が一冊書けそうだわ。タイトルはそうだな、
『勇者の嫁にさせられそうなのだけど、何か質問ある?』というのはどうかな。何処かの掲示板みたいだけど、ちょっと最近流行だし。ノンフィクションで、渦中に居るのが自分というのが笑えないのだけど。でもどうせ帰れないのなら、異世界ライフを目一杯楽しむしかないよね。ポジティブシンキングだ。
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