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第三十一話 プレゼント
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この世界の北半球では、冬至になると大切な人に贈り物をする風習がある。
元は良家の娘が恋仲の貧しい男に、「厳しい冬でも生き抜いて」と毛布と温かい食事を贈って身分違いの恋を温め合ったという悲恋伝説を由来とする風習である。
今ではそんな謂れも忘れられ、親子も友人同士も恋人同士も夫婦も、親しい人なら誰にでも贈り物をする一大イベントになっている。
街も冬至商戦でどの店も《贈り物には当店の商品を!》と宣伝している。
マクソン工房はというと、毎年包丁を妻に贈るようPOPを立てて宣伝していた。商店が忙しいのはいつも当日よりその前の期間だ。当日にはどの店も早々と店じまいし、早々とPOPを下げてしまう。その後は年末年始商戦に切り替わるのである。
アントンは忙しくなるこの時期を前に、バーバーパパの元で顔剃りをして毎日店に立った。ジェイクが接客と支払いをする傍ら、包丁のギフトボックスをラッピングするのである。
シーズンが始まったら息つく暇も休日もないとジェイクが言うので、アントンとジェイクはお互いのプレゼントは秋祭りごろに既に仕込んでいた。今年のプレゼントはどうしても外せない。とっておきのプレゼントを用意して、驚かせてやらなくては。
すると、シーズンが始まった途端にじわじわと忙しくなってきた。アントンは店を開けている間ラッピングや接客に追われ、閉店後に残業して武器のカスタムや修理の仕事をこなしていた。ジェイクはその一方で家事全般をこなす。二人とも余裕のない日々を送っていた。
「アントン、これ、頼む」
「それくらいジェイクがやってくださいよ。僕は寝る時間もないほど忙しいのに」
「あーあーわかったよ!悪かったな!」
忙しくなるとストレスから衝突も増えてきた。こんな時ロゼッタがいれば大分忙しさも楽になるのだろうが、もうロゼッタは帰国してここにはいない。猫の手も借りたいほど忙しいが、悲しい哉、本物のペットの猫はカールしかおらず、カールの手ではラッピングもカスタムも算盤|《そろばん》弾きもできないのであった。借りるなら猫ではなく猫族の方が助かるようだ。
お互いイライラしながら気まずい空気の中、阿吽の呼吸で仕事だけはきっちりこなしていたが、冬至一週間前からの駆け込み需要の中では口を利く元気も無くなっていた。
(疲れた……。アントンとはもう何日も仕事以外で喋ってねえ。さすがに忙しすぎて死んじまう。ほんとにあのプレゼントでよかったのかなあ……。後悔しねえかな?)
それはアントンも同じようで、愛しのジェイクと口を利けないのは耐えがたいストレスだった。こんなに忙しい季節があるとは想定外だったため、このままここで働いていけるかどうか不安になってしまう。
(ジェイクとはもう何日も話せていないなあ……。あのプレゼント、喜んでくれるのかな?そもそも、ジェイクがプレゼント用意する余裕があったかどうかも怪しい。僕だけの片想いになっちゃうかなあ……)
そして冬至当日、ジェイクは早々と店を閉め、腕によりをかけてご馳走を用意した。アントンも酒やケーキを買いに出かけた。
テーブルをセッティングして料理を次々配膳し、準備万端でアントンを待つジェイク。すると階下から階段を上ってくるアントンの足音が聞こえてきた。
「冬至おめでとうジェイク!」
その顔には疲労の色が見えたが、アントンは努めて明るくお祝いの言葉をかけた。
「冬至おめでとうアントン。おかえり」
「さ、座ってくれ」とジェイクが促すと、アントンは買ってきたケーキの箱をテーブルの端に載せ、新品のマタタビワインをグラスに注いだ。
用意ができたらいよいよいただきますのお祈りの時間だ。
『今年も無事に冬至を迎えられたことを感謝して。来年はいい年を迎えられますよう』
口を揃えてお決まりの祈りを捧げると、二人は顔を見合わせ、『乾杯!』とグラスをぶつけて鳴らした。
「今年のマタタビワインは美味しいですね!」
「毎年うめえよ!はっはっは!」
濃厚な甘さと爽やかな渋み、独特の香りのマタタビワインは、猫族はもちろん様々な種族のお気に入りの果実酒である。祝いの席ではこのマタタビワインを楽しむのが通例となっている。
さて、ジェイクの料理だが、シシャモのフリッターにボイルシュリンプ、ニンニクバジルのオイルドレッシングをかけた野菜サラダ、ラム肉のステーキと、お腹がはち切れそうな豪華さだった。
「すごいですねジェイク。あの短時間でこんなに料理作ってくれたんですか?お疲れ様です」
「定番料理だよ。俺は一人でもこのメニューだぜ」
アントンが美味い美味いと舌鼓を打っていると、上機嫌な様子にジェイクは安堵した。
(良かった。本当に忙しくて気が立っていただけみたいだ。じゃあ、あのプレゼントをしてもいいかな?)
ジェイクはコホンと一つ咳払いをすると、アントンにプレゼントの話を切り出した。
「アントン。お前はよくこの冬至商戦を乗り切ってくれた。毎年このぐらい忙しいんだが、お前がいてくれたおかげでいつもよりずっと助かったぜ。ありがとうな」
「あっ、いえ、こちらこそ。ジェイクのおかげで仕事がしやすかったです。こちらこそありがとうございます」
「それでだ。お前に、一つプレゼントがある」
「何ですか?」
アントンは内心しまったと思った。彼の計画では、自分から仕掛けたかった。しかし、ジェイクの料理に夢中になって機を譲ってしまった。
すると、ジェイクは小さな小箱を差し出した。
「開けてみてくれ」
アントンが小箱を開けると、中にはシンプルな銀のリングが収められていた。
「これって……」
「アントン。俺のパートナーになってくれないか?」
アントンは思わず目を潤ませ、顔を逸らして泣くのをこらえた。
「も、もちろんです。嬉しいです。ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。ああ、僕から言いたかったな」
するとアントンもポケットから小箱を取り出し、ジェイクに差し出した。
「実は僕も用意していたんです。受け取ってくれますよね?」
ジェイクが小箱を開けると、中には肉球種族用のフリーサイズリングが収められていた。肉球の刻印が刻まれた純銀製のリングで、肉球のある種族でも指にフィットするよう調節ができる、特別な指輪だった。
「ちゃんと……俺用に作ってくれたのか……。ありがとうアントン。」
「受け取ってくれますか?」
「当り前じゃねえか」
そして二人はお互いの左手の薬指に指輪を嵌め合った。同性同士のため結婚も結婚式も挙げられないが、役所に届け出を出せばパートナーとして申請できる。
「明日パートナー申請に行くか」
「行きましょう!ああ、ジェイクとパートナーになれるなんて夢のようです!」
二人は引き寄せられるように唇を重ねた。
その夜、二人はジェイクの部屋のベッドで身を寄せ合うように横たわっていた。繁忙期を乗り越え、婚約もし、満ち足りた気分で共にベッドでくつろぐ時間。ふと、ぐるぐると重低音がどこからともなく響いてきた。
「?ジェイク、この音何です?」
するとピタッと重低音は止まった。
「何が?」
「止まった……」
するとまた重低音が聞こえてきた。
「あ、この音です」
またピタッと重低音が止む。
「ああ、これ、俺の喉。喉鳴らしてたんだ」
「えっ、猫族も喉鳴らせたんですか?」
アントンは驚いた。猫族が猫のように喉を鳴らしているのを未だかつて聞いたことがなかった。ジェイクがアントンの前で喉を鳴らすのも初めてである。
「ああ、聞いたことなかったのか。確かに猫族はよっぽど信頼している人の前でないと喉鳴らさないな。猫と同じだってナメられるからな」
「そうなんですか」
「この音嫌い?」
ジェイクは嫌われたかと思って半分耳を伏せた。アントンは、
「信頼されてる音なのに嫌なわけないじゃないですか」
と微笑んだ。
再びぐるぐると地鳴りのような重低音が聞こえてくる。
猫より何倍も大きな体の猫族のゴロゴロは、ベッドが震えるほど大きな音だったが、これがジェイクの滅多に見せない幸せの音なのだと思うと心地いいサウンドだ。思わずジェイクの顎に手をのばし、喉元を撫でようとすると
「猫扱いすんな」
と軽く頭を叩かれた。
「だって、ジェイク可愛くて」
「うっせー」
また鳴り始める重低音。猫扱いするなと言っていながら、満更でもないのかもしれない。
翌日、役所は大混雑だった。毎年冬至は婚約するカップルが多く、翌日入籍の申請が混み合うのだ。
「あー、こりゃいつ申請できるか分かんねえな」
「日を改めますか?」
「そうだな。せっかくだからお前が初めて店に来た日に申請するか」
「あ、いいですね。記念日」
「じゃあ止めだ!帰ろ帰ろ!」
二人は踵を返し、近くの喫茶店に入って休日を過ごした。
「どこか旅行にでも行くか、近いうち」
「旅行!いいですね!骨董品店でいいものが仕入できるかもしれないし」
「仕事の話かよ。まあ、そうだな。仕入旅行ってのも悪くねえな」
「温泉とかどうでしょう?」
「温泉かあ、いいなあ。それか、前に繊細族の朝市で買ってくれたお菓子を探しに、アントンの家に行くのもいいな」
「えっ、僕の家ですか?それはちょっと……」
「なんか不味いか?」
「男性とパートナーになったなんて知られたら殴られます……」
「雇用主としてあいさつに行っちゃまずいか?」
「そ、それなら、多分」
「じゃ、それでいこうぜ」
「じゃあ、故郷の美味しいもの紹介しますよ。食べ歩きもいいかも」
「お、いいねえ」
二人はコーヒーが冷め切るまで、いつまでも、共に未来を思い描いていた。
元は良家の娘が恋仲の貧しい男に、「厳しい冬でも生き抜いて」と毛布と温かい食事を贈って身分違いの恋を温め合ったという悲恋伝説を由来とする風習である。
今ではそんな謂れも忘れられ、親子も友人同士も恋人同士も夫婦も、親しい人なら誰にでも贈り物をする一大イベントになっている。
街も冬至商戦でどの店も《贈り物には当店の商品を!》と宣伝している。
マクソン工房はというと、毎年包丁を妻に贈るようPOPを立てて宣伝していた。商店が忙しいのはいつも当日よりその前の期間だ。当日にはどの店も早々と店じまいし、早々とPOPを下げてしまう。その後は年末年始商戦に切り替わるのである。
アントンは忙しくなるこの時期を前に、バーバーパパの元で顔剃りをして毎日店に立った。ジェイクが接客と支払いをする傍ら、包丁のギフトボックスをラッピングするのである。
シーズンが始まったら息つく暇も休日もないとジェイクが言うので、アントンとジェイクはお互いのプレゼントは秋祭りごろに既に仕込んでいた。今年のプレゼントはどうしても外せない。とっておきのプレゼントを用意して、驚かせてやらなくては。
すると、シーズンが始まった途端にじわじわと忙しくなってきた。アントンは店を開けている間ラッピングや接客に追われ、閉店後に残業して武器のカスタムや修理の仕事をこなしていた。ジェイクはその一方で家事全般をこなす。二人とも余裕のない日々を送っていた。
「アントン、これ、頼む」
「それくらいジェイクがやってくださいよ。僕は寝る時間もないほど忙しいのに」
「あーあーわかったよ!悪かったな!」
忙しくなるとストレスから衝突も増えてきた。こんな時ロゼッタがいれば大分忙しさも楽になるのだろうが、もうロゼッタは帰国してここにはいない。猫の手も借りたいほど忙しいが、悲しい哉、本物のペットの猫はカールしかおらず、カールの手ではラッピングもカスタムも算盤|《そろばん》弾きもできないのであった。借りるなら猫ではなく猫族の方が助かるようだ。
お互いイライラしながら気まずい空気の中、阿吽の呼吸で仕事だけはきっちりこなしていたが、冬至一週間前からの駆け込み需要の中では口を利く元気も無くなっていた。
(疲れた……。アントンとはもう何日も仕事以外で喋ってねえ。さすがに忙しすぎて死んじまう。ほんとにあのプレゼントでよかったのかなあ……。後悔しねえかな?)
それはアントンも同じようで、愛しのジェイクと口を利けないのは耐えがたいストレスだった。こんなに忙しい季節があるとは想定外だったため、このままここで働いていけるかどうか不安になってしまう。
(ジェイクとはもう何日も話せていないなあ……。あのプレゼント、喜んでくれるのかな?そもそも、ジェイクがプレゼント用意する余裕があったかどうかも怪しい。僕だけの片想いになっちゃうかなあ……)
そして冬至当日、ジェイクは早々と店を閉め、腕によりをかけてご馳走を用意した。アントンも酒やケーキを買いに出かけた。
テーブルをセッティングして料理を次々配膳し、準備万端でアントンを待つジェイク。すると階下から階段を上ってくるアントンの足音が聞こえてきた。
「冬至おめでとうジェイク!」
その顔には疲労の色が見えたが、アントンは努めて明るくお祝いの言葉をかけた。
「冬至おめでとうアントン。おかえり」
「さ、座ってくれ」とジェイクが促すと、アントンは買ってきたケーキの箱をテーブルの端に載せ、新品のマタタビワインをグラスに注いだ。
用意ができたらいよいよいただきますのお祈りの時間だ。
『今年も無事に冬至を迎えられたことを感謝して。来年はいい年を迎えられますよう』
口を揃えてお決まりの祈りを捧げると、二人は顔を見合わせ、『乾杯!』とグラスをぶつけて鳴らした。
「今年のマタタビワインは美味しいですね!」
「毎年うめえよ!はっはっは!」
濃厚な甘さと爽やかな渋み、独特の香りのマタタビワインは、猫族はもちろん様々な種族のお気に入りの果実酒である。祝いの席ではこのマタタビワインを楽しむのが通例となっている。
さて、ジェイクの料理だが、シシャモのフリッターにボイルシュリンプ、ニンニクバジルのオイルドレッシングをかけた野菜サラダ、ラム肉のステーキと、お腹がはち切れそうな豪華さだった。
「すごいですねジェイク。あの短時間でこんなに料理作ってくれたんですか?お疲れ様です」
「定番料理だよ。俺は一人でもこのメニューだぜ」
アントンが美味い美味いと舌鼓を打っていると、上機嫌な様子にジェイクは安堵した。
(良かった。本当に忙しくて気が立っていただけみたいだ。じゃあ、あのプレゼントをしてもいいかな?)
ジェイクはコホンと一つ咳払いをすると、アントンにプレゼントの話を切り出した。
「アントン。お前はよくこの冬至商戦を乗り切ってくれた。毎年このぐらい忙しいんだが、お前がいてくれたおかげでいつもよりずっと助かったぜ。ありがとうな」
「あっ、いえ、こちらこそ。ジェイクのおかげで仕事がしやすかったです。こちらこそありがとうございます」
「それでだ。お前に、一つプレゼントがある」
「何ですか?」
アントンは内心しまったと思った。彼の計画では、自分から仕掛けたかった。しかし、ジェイクの料理に夢中になって機を譲ってしまった。
すると、ジェイクは小さな小箱を差し出した。
「開けてみてくれ」
アントンが小箱を開けると、中にはシンプルな銀のリングが収められていた。
「これって……」
「アントン。俺のパートナーになってくれないか?」
アントンは思わず目を潤ませ、顔を逸らして泣くのをこらえた。
「も、もちろんです。嬉しいです。ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。ああ、僕から言いたかったな」
するとアントンもポケットから小箱を取り出し、ジェイクに差し出した。
「実は僕も用意していたんです。受け取ってくれますよね?」
ジェイクが小箱を開けると、中には肉球種族用のフリーサイズリングが収められていた。肉球の刻印が刻まれた純銀製のリングで、肉球のある種族でも指にフィットするよう調節ができる、特別な指輪だった。
「ちゃんと……俺用に作ってくれたのか……。ありがとうアントン。」
「受け取ってくれますか?」
「当り前じゃねえか」
そして二人はお互いの左手の薬指に指輪を嵌め合った。同性同士のため結婚も結婚式も挙げられないが、役所に届け出を出せばパートナーとして申請できる。
「明日パートナー申請に行くか」
「行きましょう!ああ、ジェイクとパートナーになれるなんて夢のようです!」
二人は引き寄せられるように唇を重ねた。
その夜、二人はジェイクの部屋のベッドで身を寄せ合うように横たわっていた。繁忙期を乗り越え、婚約もし、満ち足りた気分で共にベッドでくつろぐ時間。ふと、ぐるぐると重低音がどこからともなく響いてきた。
「?ジェイク、この音何です?」
するとピタッと重低音は止まった。
「何が?」
「止まった……」
するとまた重低音が聞こえてきた。
「あ、この音です」
またピタッと重低音が止む。
「ああ、これ、俺の喉。喉鳴らしてたんだ」
「えっ、猫族も喉鳴らせたんですか?」
アントンは驚いた。猫族が猫のように喉を鳴らしているのを未だかつて聞いたことがなかった。ジェイクがアントンの前で喉を鳴らすのも初めてである。
「ああ、聞いたことなかったのか。確かに猫族はよっぽど信頼している人の前でないと喉鳴らさないな。猫と同じだってナメられるからな」
「そうなんですか」
「この音嫌い?」
ジェイクは嫌われたかと思って半分耳を伏せた。アントンは、
「信頼されてる音なのに嫌なわけないじゃないですか」
と微笑んだ。
再びぐるぐると地鳴りのような重低音が聞こえてくる。
猫より何倍も大きな体の猫族のゴロゴロは、ベッドが震えるほど大きな音だったが、これがジェイクの滅多に見せない幸せの音なのだと思うと心地いいサウンドだ。思わずジェイクの顎に手をのばし、喉元を撫でようとすると
「猫扱いすんな」
と軽く頭を叩かれた。
「だって、ジェイク可愛くて」
「うっせー」
また鳴り始める重低音。猫扱いするなと言っていながら、満更でもないのかもしれない。
翌日、役所は大混雑だった。毎年冬至は婚約するカップルが多く、翌日入籍の申請が混み合うのだ。
「あー、こりゃいつ申請できるか分かんねえな」
「日を改めますか?」
「そうだな。せっかくだからお前が初めて店に来た日に申請するか」
「あ、いいですね。記念日」
「じゃあ止めだ!帰ろ帰ろ!」
二人は踵を返し、近くの喫茶店に入って休日を過ごした。
「どこか旅行にでも行くか、近いうち」
「旅行!いいですね!骨董品店でいいものが仕入できるかもしれないし」
「仕事の話かよ。まあ、そうだな。仕入旅行ってのも悪くねえな」
「温泉とかどうでしょう?」
「温泉かあ、いいなあ。それか、前に繊細族の朝市で買ってくれたお菓子を探しに、アントンの家に行くのもいいな」
「えっ、僕の家ですか?それはちょっと……」
「なんか不味いか?」
「男性とパートナーになったなんて知られたら殴られます……」
「雇用主としてあいさつに行っちゃまずいか?」
「そ、それなら、多分」
「じゃ、それでいこうぜ」
「じゃあ、故郷の美味しいもの紹介しますよ。食べ歩きもいいかも」
「お、いいねえ」
二人はコーヒーが冷め切るまで、いつまでも、共に未来を思い描いていた。
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