夢端草(むたんそう)

ぐるぐるめー

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第二十話 発情

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 ある夏の日、今日はジェイクが食料や生活必需品を購入するために街を歩いていた。しかし、ジェイクとしてはやはりモモの様子が気になってしまう。あれから気まずくなってモモの店を見ないように過ごしていたが、アントンとロゼッタが誕生日プレゼントをモモに相談したと話していたため、ジェイクは数日ぶりにモモのことが気になった。
 チラチラと入り口から店の様子をのぞき見していると、まだ店に客の姿はなく、モモが緩慢な動きで花の入ったバケツを運んでいた。すると。
 バシャーン!ガランガランゴロゴロ……!
 突然モモが倒れた。あたりは水浸しで、花もグシャグシャになってしまった。慌ててジェイクはドアを蹴破り、モモに駆け寄る。
「モモ!大丈夫か!?具合悪いのか!?」
「ジェ、ジェイク……!」
「無理すんな、具合悪いなら仕事なんか休んじまえ!何か手伝うことあるか?」
「ご、ごめんジェイク……」
 ジェイクはモモを抱き起して店の奥の小上がりに運び寝かせると、散らかった花をかき集めてバケツに収め、水を入れて店の奥に片付けた。
「ありがとうジェイク」
「モモ、今日は店じまいだ。家まで付き添ってやる。とりあえず荷物だけもってこい。持ってこれるか?」
「う、うん。分かった」
 モモはよろよろと起き上がり、バックヤードからハンドバッグを持ってくると、ジェイクにお姫様抱っこされて自宅に帰ることにした。
「気持ち悪かったら吐いても大丈夫だからな」
「大丈夫だよ、そんなんじゃない」
「じゃあどう具合悪いんだ?」
「あの……ボク……」
 ジェイクは立ち止まり、大きな耳をモモに向けて声を聞こうとした。だが、モモは話そうとしない。相当具合が悪いのかもしれない。
 ジェイクはモモの自宅へ急ぎ、モモから鍵を借りて部屋に入り、ベッドにモモを横たわらせた。
「一体どうしたんだ?風邪か?」
「じ、実は……」
 モモはなかなか口を開こうとしない。辛抱強く待っていると、ジェイクは急に股間のジェイク自身が膨張したのを感じた。
(あれ?こんな時におかしいな?まあ、いつもの息子の気まぐれか)
 すると、モモはようやく話す気になったようだ。
「あのね、ジェイク、冷静に聞いてほしいの」
「ああ、冷静だぜ」
「ボク、今発情期なんだ……」
「なっ?!」
 発情期──。猫族の女性は春から夏にかけて一定期間猛烈な性欲に襲われて体調を崩すことがある。吐き気、めまい、火照り、腹痛などの身体的不調と、猛烈な性への渇望が沸き起こり、日常生活が困難になる。その時期はフェロモンを発し、誰彼構わず男を誘惑してしまうので、レイプ被害に遭いやすい危険な時期だ。モモは朝起きた時少し熱っぽい程度だったので油断して出勤してしまったが、見る見るうちに発情が本格的になってきて、倒れてしまったのである。
 そんな時に自分に好意を寄せる男性に介抱されて部屋に二人きり。モモは怯えていた。しかし、発情期を目の当たりにしてしまった童貞のジェイクもどうしていいかわからず困惑していた。
「ど、どうすればいい?俺、抱いたほうがいいのかな?」
「それは止めて。レイプで警察呼ぶよ」
「そ、そんなこと言われても……」
 ジェイクの股間はモモのフェロモンに反応してますますいきり立った。今にもはちきれそうだ。
「も、モモ、あの、俺、なんか変な気分になってきたよ」
「やめて!ジェイク、襲い掛かってきたらボクほんとにジェイクのこと嫌いになるよ!」
「そんなこと言われても、俺もモモの発情伝染っちまったよ」
「やめて、お願いだからやめて」
「モモ……お、俺……どうしたらいいか……」
 ジェイクはモモのフェロモンに当てられてすっかり発情していた。今すぐモモと肌を重ねないと、気が変になりそうだった。吸い寄せられるようにモモに顔を寄せ、口づけしようとしたところで──モモはジェイクの左頬を思いっきり引っ掻いた。
「痛てっ!何すんだよ!」
「それ以上近づいたらジェイクのこと嫌いになる」
 モモは目を細めて瞳孔を縦に細く引き絞り、耳を後ろに伏せて威嚇した。
「お願いだよジェイク、ボクは君と、ずっとずっと友達でいたいんだ。身体の関係とか恋人とか、君とは絶対に嫌なんだ。ボクと友達のままでいて?」
 改めてきっぱりと振られて、ジェイクは泣きそうになり、滲んだ涙を乱暴に拭うとモモの部屋を飛び出した。
 友達のままでいたいから、体の関係や恋人にはなれない。
 たとえ発情期に狂っていても、威嚇してでも攻撃してでも、肌を重ねたくはない。
 そう、どんなに発情期が長引き、性欲に苦しむとしても、ジェイクとだけは体の関係になりたくない。
 モモにきっぱりと拒絶され、発情して狂ったジェイクの体は今にも張り裂けてしまいそうだった。
「助けてくれ、助けてくれ、俺は、俺はどうしたらいいんだよ……!」
 ジェイクは涙を流して走った。こんな時、誰が助けてくれるだろう?
 いきり立ったジェイク自身を冷ましてくれる手近な女などジェイクにはいない。
 ふと、アントンにレイプされたときのことが脳裏をよぎった。
(貴方のためなら何でもします)
 ああ、今なら、アントンが性処理してスッキリさせてくれるかもしれない。
「アントン!アントンいるか?!」
 ジェイクは店に帰ってくるなり悲鳴のような声でアントンを呼んだ。アントンはその声音に驚いて工房から出てきた。
「ジェイク、どうしたんですか?」
 ジェイクはアントンの胸に飛び込むと膝からくずおれた。アントンは慌ててそれを抱きとめる。
「ジェイクどうしたの?具合悪いの?」
 ロゼッタも工房から鉛筆を握ったままジェイクの様子を窺っている。
「アントン、お前、俺のためなら、何でもするって言ったよな?」
「は、はい」
「この前やってくれたあれ、やってくれ。お前にしか頼めない」
 アントンはしばし考えて、はたと思い至った。おそらくジェイクは発情している。ならば。
「わかりました。お部屋まで運びます」
 ロゼッタもジェイクを介抱しようとして、「あたしお水持っていこうか?」と聞くと、アントンに鋭く「ロゼッタは来ちゃだめだ!」と拒絶された。
「ロゼッタ、ジェイクは今危ない状態だ。だから絶対に部屋に入っちゃだめだ。聞き耳も立てちゃだめだ。落ち着くまで外で遊んできてくれないか?店の玄関の鍵を開けるまで外で遊んできてくれ」
 そのただならぬ様子に、ロゼッタは震え上がり、「わかった」と言って、勉強道具をまとめて店から出て行った。
 アントンは店を施錠し内カーテンを閉め、ジェイクを横抱きにしてジェイクの部屋へ運んだ。

 ジェイクの部屋のドアを開けると、鼻腔を猫の匂いがくすぐった。
 濃厚な猫の体臭の匂い。
 お日様の下で日向ぼっこした毛皮のような、茹でた空豆のような、猫の匂い。
(これがジェイクの匂い……。ああ、何ていい匂いなんだ)
 アントンは高鳴る心臓を押さえ、ジェイクを部屋の奥のベッドに横たわらせると「あれをしてほしいんですね?」と改めて確認した。
「ああ、早く、早くしてくれ。気が狂いそうだ……!」
 アントンはジェイクのジレを脱がせ、ペンダントを外し、上着を脱がせ、ズボンのベルトを外した。チャックを開けると中から赤くそそり立ったジェイク自身が下着の窓の間から顔を出していた。
(可哀想に、早くしてあげないと)
 そしてズボンを下ろして下着も脱がせ、丸裸にすると、アントンは股間のジェイク自身にむしゃぶりついた。
「にゃおっ!」
 舌先で先端を転がし、左手で茨の茎のようなそれを握り上下にしごく。棘は興奮のあまり鋭さを増していて、容赦なくアントンの掌を刺してきたが、アントンは耐えた。空いた右手でジェイクの胸の先端をこねくり回す。
「にゃあああああ!にゃあああああ!」
 ジェイクはすっかり本能に振り回されて大きな雄猫になっていた。耳をぺったりと後ろに伏せ、目に涙を浮かべて鳴いている。
 発情して敏感になった先端からはとめどなく先走りがあふれ出て、アントンの口中を満たした。アントンはそれをごくごくと飲み下す。
「にゃおーん。で、出る……。にゃおーん。はあ、はあ……」
「出してください。我慢しないで」
 ジェイクは左胸と股間を同時に攻められて快感に震えた。溜まりに溜まったマグマが底からせりあがってきて、じんわりとした痺れを伴う。
「……はっ、はっ、で、出る、にゃおーん!」
 そしてジェイクは勢い良くアントンの口中に精を放った。
 アントンはそれをごくごくと飲み下し、仕上げにぺろぺろと先端に追加攻撃を加えると、最後の一滴まで絞り出した。
「落ち着きましたか、ジェイク?」
 しかしジェイクはふるふると首を横に振った。
「駄目だ、まだ体が熱くて、全然スッキリしねえ」
「発情してるから……ですかね?」
「多分、そうだ。こんなこと、生まれて初めてだ。発情した女のフェロモン浴びすぎちまった。我慢できねえ」
 アントンはしばし考えた。これは、本格的に行為をしなければ解決しない類のものかもしれない。
「ジェイク、油かなんかありますか?自己処理用の」
「ええ?ああ、その辺に転がってる」
 アントンが散らかったジェイクのベッドの周りを探ると、半分ほど使われている自己処理用のオイルが転がっていた。
「じゃあ、ジェイク……僕、抱きましょうか?」
「抱くって?」
「僕が、ジェイクを抱きます。セックスです。そうすれば落ち着かないですかね?」
 ジェイクは発情で脳が火照っていたため判断力が極限まで低下していた。発情を抑えられるなら何をされてもいいと思えた。
「何かよくわかんねえけど、辛くてたまんねえんだ。とにかく、俺をめちゃくちゃにしてくれ。落ち着かせてくれるんだったら何してくれてもいい。めちゃくちゃに抱きつぶしてくれ」
 アントンは許可が下りたので服を脱ぎ、ベッドに片膝をついた。
 ジェイクは四つん這いになって尻を高く突き出し、尻尾を真横に垂らして菊門をアントンの目の前に見せつける。発情した雌猫の体勢だ。
「早く……早くくれよ……」
「落ち着いて。まずは油でほぐしてからです。裂けますからね」
 アントンは自分の右手指とジェイクの菊門にオイルを垂らし、人差し指を菊門に挿入した。
「にゃおーん……」
 しばらくピストンしていると緩んできたので中指もいれて押し広げる。
「はっ、はっ」
 二本指で出し入れすると、さらに緩んできたのでもう一本、薬指を添える。
「早く、早く入れてくれ」
「そろそろですかね」
 小指まで入るほど菊門が緩んだのを見届けると、いよいよアントンは己自身にオイルを垂らし、馴染ませながら鋭さを増すと、ジェイクの菊門にあてがい、侵入した。
「にゃああ」
「入りました。ゆっくり動きますね」
 馴染ませるように、ゆっくりと出し入れすると、奥の壁にぶつかった。
「にゃ!」
「ここがいいんですか?」
「そこ、そこもっと激しくしてくれ」
 アントンは奥の壁──前立腺を自身の先端でグイグイ刺激した。堪らずジェイクは喉の奥から鳴き声を漏らす。
「にゃああああ、にゃああああ、にゃああああ」
 徐々に、刺激するスピードは速くなってくる。
「もっと!もっとガンガン突いてくれ!ぶち抜いてくれ!!もっと!もっと!」
 アントンはそれを聞いて興奮を抑える理性を手放した。オイルの助けがあるとはいえ、生まれて初めて挿入した人の穴の中は気が狂いそうなほど気持ちいい。はやる心を落ち着けて、ジェイクが辛くないように様子を見ていたが、ジェイクがもっともっとと煽るので、もうこの際我慢するのはやめてしまおう、ジェイクを心から楽しんでしまおうと、吹っ切れた。
「本気出します。ジェイクをとことんぶち抜きます」
 アントンはジェイクの腰を掴んでガツンがツンと腰を打ち付けた。ジェイクの前立腺にぶつかってくる肉棒はオイルで滑ってその奥の壁まで穿つ。ジェイクの快感は脳天まで突き抜けた。
「にゃああああ!ああああああ!い、イクっ!おかしくなっちまうよおおおお!!!」
 そしてジェイクはアントンの猛攻の最中、精を吐き出さずにメスイキした。
「あああ、僕も、出ますっ!」
「出してくれ!イッてくれ!」
「うあ、っくはあっ!はあっ!はあっ!」
 アントンもせりあがってきて、堪らずジェイクの中に精を吐き出した。
 ジェイクの先端からは、先走りが糸を引いて滴り落ちた。
「イケましたか?」
 ジェイクから自身を引き抜き、アントンはジェイクの様子を窺う。
「おかしいんだ、イッたはずなのに出てこなかった」
「変ですね」
 アントンは未だ真っ赤にいきり立つジェイクのそれを掴むと、上下にしごいた。
「あっ、やべえ、今度こそ出そう」
「出してください。スッキリしましょう」
「あ、ああ、あああああ!出る!」
 そしてほどなくジェイクは二度目の精を吐き出し、今度こそ腰砕けになってベッドに突っ伏した。
「どうです?落ち着きましたか?」
「ああ、人生で一番気持ちよかった……」
「それはよかった。お役に立てて嬉しいです」
 アントンはベッドの上に正座したまま、ベッドの上に俯せで倒れているジェイクを愛おしそうに眺めた。
(仕方なかったとはいえ、ジェイクと一つになれた。ジェイクと、僕、ついに、一線を越えてしまったんだ)
「ジェイク」
「ん?なんだ?」
「愛しています」
「そうか」
 ジェイクはそういうと、すうっと気を失った。アントンは服を着て、ジェイクに布団をかけると、部屋から出て店の玄関を開けた。すると、ちょうどロゼッタが帰ってきたところだった。
「ジェイクどうだった?落ち着いた?」
「うん。今落ち着いて、寝てるよ。そっとしておいてあげよう」
「よかった」
 アントンは何事もなかったかを装って、工房で作業を再開した。
(ついにジェイクと結ばれたんだ。こんな幸せなことって……。今ならどんな理不尽も許せそうだ。ああ、ジェイク、僕は、貴方の為なら何だってします。また、僕を頼ってください……!)
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