夢端草(むたんそう)

ぐるぐるめー

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第十五話 冒険にトラブルはつきもの

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 ロゼッタの冒険者レンタル事業はじわじわと利用者が現れ始めた。ロゼッタをレンタルした冒険者がロゼッタの力を冒険者仲間に伝え、口コミでロゼッタの名と能力の高さが広まったのだ。ロゼッタの力を確かめたいという冒険者には、店の裏で実演して見せ、それで契約が決まることも増えた。まだ多忙というほどではないが、充実した毎日を過ごしていたロゼッタであった。
 リカルド達の遺跡調査クエスト以降、大きなトラブルもなく順調に仕事をこなしていたロゼッタだったが、順風満帆な日々は慢心を招く。仕事に慣れてきたロゼッタは、またとんでもないトラブルを引き起こすのである。
 その日、しくしくとすすり泣く仲間を庇いながら店にやってきた冒険者がいた。
「お、どうした?クエスト失敗でもしたのか?」
 ジェイクが声を掛けると、パーティーリーダーと思しき鬼族の男が、事情を説明した。
「クエストはクリアしたんだが、仲間が一人行方不明になっちまったんだ。捜したんだが見つからない。救出クエストを依頼しようと思って一回帰ってきたんだ」
「あたしはもっとくまなく捜そうって言ったのに!みんな帰るっていうんだもの!」
「あのまま捜し続けても俺たちも野垂れ死んでしまったことだろうよ。今は態勢を整えるんだ。大丈夫、奴は生きてる」
 山羊族の女が泣きながら仲間に抗議する。それを、なだめすかして説得する仲間。
「銃の弾の補充をしに来たんだ。これとこれとこれ……。いくらだ?」
 ジェイクは山羊族の女の様子が気になりつつも、事務的に接客する。
「二六〇ファルスだ」
「じゃあ、またな、ジェイク」
客が立ち去ろうとしたその時、その様子を店の隅の椅子から見ていたロゼッタが声を掛けた。
「あたし、その人捜し手伝おうか?」
「ロゼッタ……!」
 ジェイクは苦い顔をした。どうしてこの子は面倒臭そうなことにばかり首を突っ込もうとするのだろう。客は足を止め、ロゼッタに視線を注いだ。
「あたし体小さいから、お兄さんたちが入れないところも探しに行けるよ。あたし、冒険者のお手伝いをしてるの。あたしを雇わない?」
 どういうことかいまいち話が見えない冒険者パーティーが、ジェイクに視線を移してロゼッタを指さし首をひねるので、ジェイクはしぶしぶ事情を説明する。宣伝用チラシを一枚とり、客に見せながらロゼッタを紹介した。
「あー、この子はとある事情でうちの店で預かってるんだが、どうもブースターらしくてな。魔法は使えないんだが、マジックアイテムのパワーを三倍以上にして使えるみたいなんだ。それで、その能力が役に立つからって、冒険者にレンタルしてるんだよ。この子を無事にうちの店に帰すっていう約束ができるなら、百ファルスでレンタルしてる。どうだい?その子、使ってみるかい?」
 鬼族の男はチラシを受け取り、内容を熟読した。そして仲間にそのチラシを手渡すと、ふー、と、大きなため息をついて虚空を見つめ、一考した。
「ブースター能力でどんなことができる?」
 ロゼッタは得意になってプレゼンする。
「でっかいドラゴンや敵がいっぱい襲ってくるようなところで敵を全部倒したこともあるし、仲間がみんな死にそうになった時に、回復アイテムで生き返らせたこともあるよ。あたしすごく強いの。マジックアイテム使わせてくれればね」
「なるほど、アイテム次第か……」
「確かに、この子ぐらい小さかったら、狭いところも探せるかも」
 山羊族の女は鼻をすすりながらロゼッタの可能性について考える。犬族の仲間もそれに賛同した。
「この子、レンタルしてみるか」
 鬼族のパーティーリーダーはパァン!と手を打ち、
「よし!契約しよう!」
と決意した。
「毎度あり!よろしくね!」
 ロゼッタが慣れた様子で挨拶すると、ジェイクは額に手を当てて、はあーっと大きなため息を吐いた。
「……気を付けて行ってこい」
もはや止めても無駄なのだ。

「俺はマーカス。鬼族だ。一応このパーティーのリーダーをしている」
 赤い顔をした二本角の大柄の男だった。大きな手で、ロゼッタに握手を求めてくる。ロゼッタの手は丸ごとマーカスの手に包まれた。
「よろしくね」
「俺はグレン。犬族だ。これでも魔法使いなんだ。よろしくな」
 毛の伸び切ったアントンによく似ている、長毛種の犬族だった。毛むくじゃらで目も口もどこにあるのか判別がつかない。
「あたしはターヤ。山羊族よ。癒しの手をしているわ」
 ロゼッタは山羊族の癒しの手に初めて出会った。優しそうな女性だ。
「そして、捜してほしいのは小人族の鍵屋・カイという男だ。身長は君と同じぐらいだから、俺たちに入れないところに紛れ込んでいるかもしれない。よろしく頼むよ」
 と、鬼族のマーカスが説明した。
「わかった。小人族のカイね」
 そして一行は食料やマジックアイテムなどを蒸気自動車に積み込み、カイが失踪した洞窟へと向かった。

「カーイ!返事しろ!どこにいる?」
「カイー!捜しに来たわよ!返事して!」
 声を掛けた後しばらく耳を澄ませてみても、返事や物音は聞こえない。やがて一行はカイが失踪したポイントに辿り着いた。
「この辺りで居ないことに気付いたんだ」
「横道や落とし穴がないか、くまなく捜しましょう」
 グレンが指摘する。
「この辺りで居ないことに気付いたんだから、来た道をもう少し戻ったほうがいいんじゃないか?今までの道で横道や落とし穴がないか、戻って探したほうがいい」
 一理ある。だが、今まで探してきて見つからなかったのに、見落としなどあるだろうか?ロゼッタは彼女なりに知恵を巡らせて提案した。
「今までの道で分かれ道だったところをもう一度探そう?ターヤ、明かりの魔法でもっと壁を照らして」
 すると、今までただの壁の亀裂としか思えなかった場所でロゼッタが立ち止まった。
「もしかしてここじゃない?」
「えっ、こんな小さな亀裂、さすがに入らないんじゃ……」
「あたし入れるよ」
すると、ぎりぎりロゼッタの体が亀裂の奥へ入った。
「ちょっと捜してくる!」
「あ!ちょっと待て!」
マーカスがロゼッタを呼び止め、ロープの端を持たせた。
「万が一のことがあったらこのロープを思いっきり引け」
「わかった」
 ロゼッタはそろそろと亀裂の奥へと進んだ。
「カイさーん!どこー?」
亀裂の奥は意外に広く、入り口を削るなり破壊するなりすれば仲間たちも入れそうだった。すると、「おい!おーい!」とかすかに声が聞こえた。
「カイさん?!」
 ロゼッタが駆け出すと、「危ない!こっちに来るな!」と声がした。その時には遅かった。ロゼッタは足を滑らせ、落とし穴に転落した。
「きゃあああ!!」
 その勢いでロープが強く引っ張られ、仲間たちに異常が伝わった。
「何か悲鳴が聞こえた!」
「ロゼッター!何があったー!?」
 しかし、ロゼッタはあまりに奥に侵入していたため、何かを話していることはわかるが、微かにしか聞こえなかった。
「グレン、この壁を壊せるか?」
「やってみる!」
 グレンが爆裂魔法で亀裂を広げると、亀裂の奥は何とか通れそうな広さだった。
「よし、行こう!」
 しかしその衝撃波は、洞窟に眠る怪物たちの目を覚ましてしまったことに、この時は誰も気づかなかった。

 一方、ロゼッタは足を滑らせて落ちた落とし穴の底で、カイを発見した。
「あ、あなたカイさん?」
「ああ、俺はカイ。捜しに来てくれたのか?」
「どうしてこんなところにいるの?」
「それは君がここにいるのと同じ理由さ」
 どうも、この亀裂が気になり調査に入ったら足を滑らせて脱出困難になったらしい。鍵屋の本能からこの亀裂の奥にお宝の気配を感じて入ったのが、そもそもの間違いだった。
「ここは袋小路で、お宝なんか何もなかった。ただの骨折り損だったよ」
「そうだったんだ……。気をつけて歩かないとだめじゃない」
 小さな少女にたしなめられて、返す言葉もない。
「まったくだ」
 ロゼッタは道具袋をまさぐり、水筒と黒パンを取り出して手渡した。
「おなかすいてない?ご飯もってきたよ。食べよう」
「おお、ありがてえ!腹が減って死にそうだったんだ!幸い水が染み出していたからそれを舐めていたけど、助かる!」
 カイは水筒の水を飲み干し、黒パンを平らげた。と、
「カイー!ロゼッター!」
 仲間たちが近づいてくる声が聞こえる。
「おーい!ここだー!足元気をつけろー!」
 ターヤの魔法の明かりが近づいてきて、ようやくこの場所の様子がはっきりした。二人ともずいぶんな高さを滑り落ちてきたらしい。
「カイ!無事だったのね!よかった!よかった……!」
 ターヤはまた泣き出してしまった。
「すまねえ、心配かけたな」
ターヤは両手を伸ばしてロゼッタとカイを癒しの魔法で回復させると、ロゼッタに持たせたロープを引き、二人を引き上げた。
「もう!勝手な行動しないで!どれだけ心配したか……!」
ターヤは膝をついて小柄なカイを抱きしめた。
「悪かったよ。今度からは気を付ける」
「まったくだ。肝が冷えたぜ」
 五人が亀裂から出てくると、コウモリの大軍が襲い掛かってきた!
「うわっ!何だこいつら!」
一行がコウモリ退治に手こずっていると、「うぉーーーん」と獣の遠吠えのような声が微かに聞こえた。
「今の声、何?」
 耳ざといグレンが最初にその声に気付き、耳を澄ませていると、その声はやがて大きくなった。
と、地響きのような音を立てて、二足歩行の恐竜が洞窟の奥から襲い掛かってきた!
「うわあ!!やべえ、みんな、逃げろ!!!」
「ギャオオオオオオ!!!」
 恐竜は猪突猛進に一行めがけて突進してきた。一行は二手に分かれて突進を避け、振り返る恐竜を迎え撃つ。
「なんでこんな奴が急に出てくるの!」
「知らねえよ!でも、やるしかねえだろ!」
 マーカスの銃は硬い鱗にはじかれ、ほとんどダメージが通らない。グレンの魔法攻撃も恐竜を一瞬ひるませる程度しか効果がなかった。
「くそっ、効いてねえ!」
「サポートするわ!」
 ターヤは身体能力を上げる魔法で仲間を援護するが、それでも有効な攻撃は通らないようだった。
(あたしなら……できるかな……)
 ロゼッタは物陰に隠れてフリントロック銃に爆裂魔法の弾丸を込めた。
「みんな、離れて!あたしがやってみる!」
 ロゼッタが引鉄を引くと、辺りが大爆発し、恐竜は吹き飛んだ。
あまりの威力の大きさに、パーティーメンバーたちは唖然茫然である。
「す…………ごい……」
しかし、それでも恐竜は立ち上がろうとした。ゆっくりと起き上がり、よろよろと二本足で立ちあがる。
「やば!効いてねえぞ!」
「来る!」
一行は恐竜がまだふらついている隙に逃げだそうとした。しかしロゼッタはもう一発弾丸を銃に込め、戦う姿勢を見せた。
「無駄だ!相手が悪すぎる!逃げるぞ!」
「大丈夫!もっと強いの使えば倒せる!」
「だめよ!こんな狭い洞窟でこれ以上爆裂魔法なんか使ったら……!」
ドゴォン!!!
ロゼッタは仲間の制止を振り切って最強の爆裂魔法の弾丸を撃った。それはロゼッタの魔力のブーストを受け、味方達も吹き飛ばされるような大爆発となった。
と……。
「なんか、地響き聞こえないか?」
「まずい、今の爆発でこの洞窟崩落するんじゃねえか?」
 天井から、岩の欠片がパラパラと降ってきた。地響きは大きくなり、天井が崩れてくる!
「逃げろ!走れえええええ!!!」
恐竜は落盤に巻き込まれ、岩の下敷きになって事切れたようだが、そんなことよりも脱出することが急務である。洞窟の天井は次々と崩落し、一行がやっとの思いで洞窟から脱出すると、洞窟はすっかり岩に塞がれてしまった。
「みんな、いるか?」
「なんとか、助かった……」
「危なかった……」
「……はあ、はあ」
 ロゼッタは「またやってしまった」と青くなっていた。
「ご、ごめんなさい。やりすぎちゃった……」
パーティーメンバーの視線がロゼッタに注がれる。そして崩落した洞窟に視線が移り、お互いを見つめ合うと、「ふっ」と誰からともなく吹き出した。
「あははははははは!」
「うふふふふあはははは」
「やりすぎちゃったか!こりゃあ傑作だ!」
 一同はあっはっはとひとしきり笑うと、ロゼッタの頭をくしゃくしゃと撫でまわした。
「死ぬかと思ったけど、お前のおかげで助かったよ!生きていたからラッキーだ!」
「お手柄だよ!助かった!」
「百ファルス以上の働きだよ!あっはっは!」
 叱られることを覚悟していたロゼッタだったが、仲間たちが笑って許してくれたので、ほっと胸をなでおろした。
 ジェイクの店に帰ってきた一行は、ロゼッタの武勇伝をジェイクに語って聞かせたが、後でジェイクに拳骨を食らったロゼッタだった。
「あれほど気をつけて使えって言ったのに!」
「ごめんなさーい!もう反省してるから!今度は気を付けるから!」
「今度は今度はって、何度目だよ!まったく心配しすぎて禿が広がるぜ!」
「ごめんってば!でも、生きてたからよかったでしょ!」
「そういう問題じゃねえ!」
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