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●本編●
90.期待のし過ぎには、ご用心。
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カントリーハウスの1階、少々奥まった位置にある広々とした食堂では、1人の幼気な少女が嘆き悲しみ、悲嘆に暮れ、うぐぐぐっと嗚咽を堪えてボタボタと顎の先から止め処なく滴るほど滂沱していた。
「ライラ…少しは落ち着いたか? ……まだ無理みたいだな。 泣き止んだなら直ぐに治癒を施こそう。 もしライラが泣き止んだことに僕が気づけなかったら、遠慮なく言ってくれて構わないからな?」
「……っ、はい、ありがどぅ……っ、ござ……ますっ……! アルヴェイン、お、……っ、兄、様っ!!」
兄から向けられる、惜しみない優しが120%(個人的見解)配合された言の葉に感極まって、熱い涙がドバドバと両の目から追加量産される。
優しさが沁みた、沁み渡りすぎて…逆向きに絶大な効果を発揮してしまった。
ーー恥ずかしいっ! ただただ単純に…、恥ずかしいよぉ~~~っ!! こんな何でもない理由で、こんなに泣いてしまうなんて、あり得ない!!! 幼女の直情的な感性が、今は死ぬ程恨めしいぃっ!!!!ーー
グズズビッと豪快に鼻を啜る。
此の場にサイボーグ侍女が居合わせていたならば、これまでに何回叱責(激しめな物理込み)されていたことか…、考えただけで恐ろしい。
けれどここで手を抜くわけにはいかない。
一度でも失敗したならば大事故必至、黒歴史更新と相成ってしまう未来しか視えない。
そんな未来は全く及びではないのだから、気を引き締めて、一所懸命に事に当たらなければならない。
せめて今この顔面に塗れさせるのは涙だけでありたいという強い想いから、気を抜くと直ぐにでも鼻孔から溢れてしまいそうになる液体を全身全霊を賭して、啜り上げる。
ーー鼻を垂らしてる公爵令嬢なんて…目も当てられないっ! と云うか、女子として社会的に終わってしまう!! そして何より、イケメン家族の眼前でそんな醜態を晒すのか、と考えただけで………ショック死してしまうわっ!!!ーー
即刻お陀仏してしまえる自信しかない。
そんな事態に陥ってしまったなら、此の場に居合わせた全員の脳内から黒歴史に該当する記憶を根刮ぎ消去しきるまで、生きた心地になんてなれやしない。
ーーだからお父様も、そんな必死に笑いを噛み殺しながら私をあたたかく見守らないで下さいな! 私は至って真面目に、真剣に、今直面している現実問題に発憤忘食して対処しているのですからね?!ーー
そうなのだ、今現在食堂にいるにも関わらず、この少女は眼前に据え置かれた料理には一切手を付けていない。
正しくは手をつける前、供された食事内容をその両目で直に確認した段階で、涙腺が決壊してしまった為、食事どころの騒ぎではなくなってしまったのだった。
少女が高熱にうなされ、やっとこさ目覚めたのがつい2日前のこと。
様々な理由で滅入りに滅入っていた精神のまま、向かい来たこの食堂で、先程優しい言葉をかけてくださった天使の如くな長兄が口にした言葉を、正しく、一言一句違えずに、然と覚えている。
誰が忘れてしまったとしても、当事者であるこの少女は覚えていた。
ガッツリ当事者なこの少女は、忘れられるはずもなかったのだ。
あの時と今も変わらず、表情を優しく和らげて見詰められていた。
もしかしたら顔面のコンディションを観察されていただけなのかもしれないけれど、こんなに溢れるほどの優しさを醸してイケショタに見つめてもらえるのなら、どんな理由でだって問題ない、いつでもウェルカムで受け入れ態勢は万端整っている。
ーあ、やっぱ前言撤回、だって……無理無理っ! こんな涙に塗れたくっちゃくちゃ顔、イケショタにもイケオジにも見られ続けたくないっ!!ーー
これ以上悲惨な状態の顔面を見られまい、と両手で隠そうとするも、幼女の小さすぎる椛形の手ではどうやっても覆い隠しきれず、徒労に終わる。
隠せないなら俯くまでよ、と開き直って即行動に移し実行する。
視界には自分の下半身しか見当たらない状態で、先日長兄が口にした言葉、その内容を、録音したかと錯覚するハイクオリティな音質で脳内で再生してみせる。
『物足りないだろうが、今日一日は控え目な量の食事が続くからな。 徐々に量を増やしながら2、3日様子を見る。 それで大丈夫そうなら、普通の食事に戻るから、それまで我慢できるか?』
我慢する、そう答える以外に、あのときの自分に選べる言葉はなかった。
でもそんな言葉しか選べなかったあの時の自分が心底恨めしい。
そしてこの『2、3日』、この厄介極まりない表現のせいで、自分がここまで涙することになろうとは…、誠に遺憾だ。
受け取り手の解釈次第で、この言葉はあらぬ期待を抱かせるのに十分な効力を発揮して、幼心を抉る凶器となりえる表現だった。
早い話が、食事は変わらずの病理食だった。
『2、3日』の『2、』で病理食とはお別れできるものと、勝手に期待してしまったことがそもそもの間違い。
自らが勝手に掘り下げた大きな落とし穴に、るんたったぁ~♪とスキップしながら愉しげにその落とし穴に足を踏み出し、ものの見事に真っ逆さまぁ~に、転がり落ちたしまったのだった。
ーー2日間、出された料理はほぼ全部、食べ滓も残さずにキレーーに平らげてこの腹部におさめてきた。 それなのに…っ何でぇ?! 何でなのぉ~っ!? 何が駄目だったって云うのぉおぉ~~~っっっ?!?ーー
面会した子爵令息の事も、直前まで見送っていた騎士たちと家令の事さえも押しのけて、食堂に辿り着くまでの道すがら、良いだけ頭を占領しきって、募る思いを馳せていた本日の朝食の献立。
なのにこの裏切りは……酷くないだろうか?
私の身体と健康を慮っての、優しさしか無い最高の配慮なのだと云うことはわかる、その理屈は大変よく理解できる、けれど心情的にはまっっっっったく、理解できない。
ーー不足していただろう栄養もすっかり補われて、ともすれば寝込む前よりもふっくらつややかで、至って健康そのものにまで回復せしめたっていうのにっ!! 何が足りないの?? 他にどんな物的証拠が必要だって仰るのかしら??!ーー
途端、強く沸き起こった悔しさに突き動かされて、反射的にある動作を取る。
今の視界に映り込むある部分、そこをじっと見詰めながら、自分の太腿の上に置いた両手にギュッと力を込めて、掴んだ手触り最高なスカートの生地を皺になるのも構わず力いっぱい握り締める。
ーー証拠が欲しいと仰るのなら、れっきとした紛うことなき動かぬ証拠がちゃーーーんと、此の場にありますともっ!! 見さらせっ!!! この見事にぽんっと張り出した、幼児体型を象徴するぽっこりお腹を!!! これこそ動かぬ証拠也ぃ~~~っっっ!!! ど~~だっ、まいったかぁ~~??! 臨月な妊婦さんよりもぽんぽこりんなぽっこりお腹だぞぉ~~~、わぁ~~っはっはっはっはっっっはぁああァァ~~……。ーー
自分で言って、瞬時に悲しくなる。
食べても食べていなくても、いつだってこのお腹は幼女のなけなしの自尊心を滅多切りにして細切れにし尽くしてくるくらい、出っ張っている。
引っ込めようと奮闘してもその甲斐虚しく、その存在を主張するように、いついかなる時もデンッと張り出したままでいる。
だというのに、自分から誇るようにして、注目を煽るような発言をするなんて…自虐行為であり自傷行為でしかない。
これ以上精神にダメージが付加されてしまったなら、気が狂れてしまいかねない。
今だってもう十分過ぎるくらいヤバイのに、これ以上ヤバイ要素が追加されるのは避けたい。
思考が制御不能に陥り、手のつけられない暴走を開始し出す前に止めにかかる。
ーーふぅ~~、危ない危ないっ! ひょんな切っ掛けで本筋から逸脱して、放っておくと寄り道に邁進しまくってしまう幼女の直線的思考、ホント危うしだわっ!! 歯止めをかけるタイミングを見誤ると、とんでもない方向に突っ走って行ってしまうのだもの、ホント困る…。 それに疲れた……。 癒やしが欲しい………っ!!!ーー
疲労困憊気味な精神を立ち所に回復する秘訣、それは今から行動で示す方法以外にあり得ない。
超時間短縮で行える治療であり、超回復をも見込める画期的治療法。
ーーそれは何かと問われれば、イケメン鑑賞、これ一択!! これより他に、精神を癒せる手立ては存在しないと云っても過言ないっ!! 私にはコレが一番肌に合うのだから、コレ以外受け付けない、それが全て!!ーー
仰々しい風に御託を並べ、四の五のこじつけまがいの自論を並べ立ててもみたけれど、結局はいつもの方法に他ならない。
赴く感情のままに、バッと勢いよく顔を上げ、机を挟んで向かい合う親兄弟に目を向ける(特に顔面)。
ーーうん、目の覚めるようなイケメン三昧だわ!! これだけで、ご飯を軽く3杯おかわりできてしまうわねっ!! 眼福ぅ~~~っ♡♡♡ーー
私がいきなり勢いよく顔を上げたせいで、三者三様でありながらも、やっぱりどこかがばっちり共通して似通っているパチクリ顔で見返されてしまった。
ーーっ!? こ、これは…まさか、本当にぃっ?! 似たような表情で横並ぶ親子のスリーショット、にお目にかかれた……?? 成功した………だとぉっ?!?ーー
まさかまさかの棚ぼたで大チャンスが到来し、予期せぬスリーセブンを叩き出してしまった模様。
此の瞬間に、確実に今日の運気は使い果たしてしまったと思われる。
ーーあぁっ、やっぱり似てるぅっ!! さすが親子!! 表情の出し方が、眉の上がる角度とか…、クリソツで……、萌が途切れる暇が………、無い!!!ーー
ブルブルっと激しく震えてしまいそうになる身体を、まだ腿の上に置いたままだった両手をきつく握ることで、どうにか小刻みな状態に留めることに成功する。
先日は実現し得なかった貴重且つ希少なスリーショットに、心のシャッターが絶賛連写モードフル稼働中で、いつオーバーヒートしてもおかしくないほど過負荷気味だ。
またとないチャンスに真剣になりすぎて、瞬きを忘れた真顔と据わりきった目で見ている私に驚いたのか、3名のパチクリ顔はしばらく続いた。
これも棚ぼたラッキーに他ならない、なんとも幸運がひっきりなしに訪れ過ぎていて、悪いことが起こる前触れにさえ思えてきてしまう。
そんなしょーもないことを考えている私をよそに、いち早くパチクリ顔かを解いて優しさを滲ませた微笑みに表情を切り替えてから、私にいつも通り声をかけてくださったのはアルヴェインお兄様だった。
「……? 無事に泣き止んだみたいだな、何はともあれ良かった、安心したよ。 あのまま泣き続けていたら、それこそ本当に目が溶けてしまわないか、と心配するところだったよ。 手は、届かないか。 そちらに行くから少しの間そのままで、もう泣かないように気を落ち着けたままでいてくれるかな?」
私のある種の感情(ただの煩悩)に支配されて、鬼気迫る表情を崩さない私に不思議そうにしながらも、泣きすぎた私がこれから気不味くならないよう、からかう体に見せかけた言葉をかけて、気遣いバッチリな配慮を寄越してくださるお兄様に、感謝しか無い。
「うぅ、溶けたりしないって、ちゃんとわかってて仰ってますよね、アルヴェインお兄様。 大丈夫です、ちゃんと出来ます! もう泣いたり致しませんから、…本当の本当に大丈夫なんですからね?!」
クスクスっと微笑いながら、テーブルを回り込んでこちらに向かい来る長兄の姿を頭ごと動かして目で追う。
ぷんすことわかり易く、気分を害している風を装って頬を膨らませて、怒ったような口調で長兄に言い返してはいるが、内心はその真逆、長兄からのさり気ない気遣いと愛あるイジりにキュンキュンときめいて、小さなこの胸は高鳴りっぱなしだった。
治癒魔法を施すには、癒やす対象の患部に触れていなければならないらしい。
魔法の習熟度によっては、必ずしも触れることは必須ではなくなるようだけれど、その習熟度合いにも個人差があるらしく、どれくらい数をこなせば技量が上がる、という目安も存在しない。
そう語り聞かせて下さったのは他でもなく、今正に私の腫れぼったい瞼に触れ、治癒魔法を行使してくださっているアルヴェインお兄様だった。
私が泣き過ぎて腫らしてしまった瞼や、浮腫んでしまった顔面を魔法で癒やしてくださる間、じっと終わるのを待つ私が退屈しないように、ここでもさり気なく気遣って下さる。
ーーうん、やっぱりアルヴェインお兄様は控えめに言っても天使だと思う。 だってこんなに優しくって、さり気ない気遣いが自然とできる10歳児とか、普通の人間の子供な訳がない。 きっと清らかな天使様がアルヴェインお兄様の前世のお姿だったのよ、うんうん、そうに違いないわっ!!ーー
勝手な見解を好き勝手述べて、勝手に真実であると思い込み、勝手に納得して、あっさりと自己完結を終える。
この一連の流れも、パターンになりつつある。
誰にも迷惑をかけない脳内のみで行われる処理なので、問題なし。
お兄様が教えてくださった内容に話を戻して。
新たに聞き知った情報を精査して、自分なりに考えを整理して、自分なりにまとめる。
目に見えないゲージが人知れず溜まり、限界まで溜まりきるとレベルアップのような現象がこれまた人知れず起こり、ひっそりと完了する。
そんな漠然としたイメージが頭に浮かんでしまうのは、ゲームのステータスバーのイメージがチラついて離れない、前世の記憶に汚染されきっている私だからこんな解釈になってしまうのだろうか。
ふむふむ?と目を閉じて考えているうちに、アルヴェインお兄様の魔法による治癒は、滞り無く速やかに完了した。
「しかしあれだねぇ~、ライラが予告もなく泣き出したときは驚いてしまったよぉ~~! 本当に…、どう懲らしめてやろうかと思ったよねぇ~~?! 今回の失態の落とし前を、どうやってあのサミーにつけさせてやろうか、って瞬時に考え倦ねいてしまったよねぇ~!?」
お兄様が自分の席に戻り腰を下ろしたタイミングで、お父様がいつもの戯けた口調で、私が泣いたことへの感想をもらす。
けれどそれは、私だけに対する言葉では済まなかった。
「心配させてしまってごめんなさい、お父様………って、あら? どうして…コレに関して、サミュエルが落とし前を迫られる必要があるのでしょう??」
ーー何でここでサミュエルの名前が急に出てきたの? もしかして、今日の朝食の献立を病理食のままで、って進言したのがサミュエルだったとか……って、コト??ーー
あまりに脈絡がない言葉過ぎて、うっかりそのまま聞き逃してしまいそうになってしまった。
きょとんとして、理解できなかった部分を取り沙汰して聞き返す。
その際に自然と、少しだけ首が斜めに傾く。
「んん~~? いやいやぁ~、何でも何もぉ、至極当然の結果だろうともぉ~~?! ライラのすぐ側に控えて居たというのにぃ、ライラを庇護するという己の役目を果たせなかったのだからねぇ~、それ相応の責を負うのは当然というものだろうよぉ~~っ!?」
お父様もまた、何故自分の言葉の意味が伝わらないのかわからない、といった不思議そうな表情でこちらを見返しながら言葉を重ねる。
私につられたのか、お父様の首も少しだけ斜めに傾ぐ。
「………え??」
「………うん??」
お父様の発言を受けて、どんなに反芻しても意味が分からず、更にコテンと頭を傾げる。
やっぱりそんな私につられて、お父様も同じ方向に更にコテンと頭を傾げた。
お互いがお互いの脳内迷宮に入り込み、迷子になってしまったかのような、似通った困惑具合に陥ってしまった。
それまで繰り広げられた噛み合わない私達父娘の会話を静かに見守っていたお兄様ーずが今の状況を冷静に分析して口を開く。
「ん~~? なぁ~んか、ライラと父さんってば、噛み合ってない感じくないぃ~~?? 何ていうかぁ、お互いが全く違う内容を頭に浮かべて会話してるって感じぃ~。」
「そうだな、正しくそんな感じだな。 ……そう云えば、ライラは何で泣いたんだ? てっきり泣くほど辛い思いをしたのかと、…面会であの子爵令息に、深く心を傷付けられるような何らかの暴言を吐かれたのかと……、思ったんだが………、違ったのか?」
「…、……っ、………っちぃがぁいますぅう~~~っっっ!!!」
ーーめっちゃ!! めぇ~~~っちゃくちゃ、タイミング悪かった!! 最悪最低ぇーーーっに、誤解させるタイミングで泣いてしまった私が悪ぅございましたぁあーーーっっっ!!!ーー
アルヴェインお兄様に懇切丁寧にお父様が言わんとしていた言葉の背景を控えめに説明され、やっと合点がいった。
私が泣く前に交わされていた親子の会話、その内容は食堂に辿り着く前に終えたばかりの子爵令息との面会に関しての内容だった、と今やっと思い出した。
あんな子豚さんから言われたあれこれや、やらかしてしまったどれそれなんて、それこそ屁の河童並みに、此の場ではもうどーとも考えていなかった。
具体例をあげるなら、『化け物』と言われたことも、再び失禁させてしまったことも、すっかり忘れてしまっていた。
それなのに、テーブルに供された朝食の内容を目にしたのが、偶々、ホントーーーになんの因果か偶然に、あの面会の内容を聞かれてそれについて『毒にも薬にもならない内容だった。』と答えようと口を開いた、丁度その時な絶妙過ぎるタイミングだったことが、今現在行われた会話のすれ違いを招く、華麗な誤解釈をお父様ならびにお兄様ーずに抱かせてしまった、らしい。
このまま誤解した内容を採用して、献立が期待した内容と違ったことがショック過ぎて泣いてしまった、という本当の理由を隠蔽することも出来た…はず。
だけれども、己の恥辱溢れる失態を覆い隠すために、あの子豚さんが関係する事柄をカムフラージュの理由として採用したくなかった、凄く個人的な理由で、凄く気分的な理由で。
だからこそ、恥を忍んで、ごにょご~にょ、ぼそぼ~そ、と蚊の鳴くような声量で、消え入りそうになりながらも…本当のことを包み隠さず暴露した。
その結果は、と云えば…。
再び3人揃ってのパチクリ顔、それに+してのきょとん顔からの、十分過ぎるシーン…と静まり返った沈黙の間をおいた後で、の爆笑だった。
顔から火が出たのは云うまでもなく、この場から全速力で逃走したくなったのもまた然り。
けど、どんなに笑われても、此の場で真実をぶっちゃけられた事自体は、凄く良いことだったと思う。
だって、どんなに笑われたって、絶対に嘲笑われる事はないって、今目の前にいる家族を信じて私が嘘を付きたくないと思って、行動した結果だったから。
顔と云わず、全身の肌という肌を真っ赤に染め上げて、炙られるような羞恥を耐え忍んだ。
親兄弟が爆笑している間ずっと、そのまま忍耐力を試されるような時間は続いたが、そのかわりに呵い悶えるレア度ランク外なスリーショットを心のアルバムに収めることに成功したので、真実を伝えられて本当に良かった♡と胸をホクホクっと温めてもいられた。
3人が呵い終わるのを待っている間、恥ずかしさは消えないまでも、もの凄く手持ち無沙汰だったので、供された病理食な朝食に手を付け始めた。
早朝からのハイキング(バタンキュー寸前まで身体を酷使)に始まり、結構な時間立ちっぱなしでいたりしたせいで、お腹の空き容量は十分確保できていた(パッと見の外観からはそうとは見えなくとも)。
だから、一口食べたらすぐに二口目、続いて三口目、四口目、……エトセトラ、と続いて、口に食べ物を運ぶ手の動きは途中1回も途切れること無く続き、瞬く間に完食せしめた。
その頃には笑い転げていた親兄弟は殆ど呵いをおさめて、いち早く私に声をかけたのは、意外にもエリファスお兄様だった。
「ところでさぁ~、ライラは今日この後何して過ごす感じなのかなぁ~~って、聞いてもいぃ~いぃ~~?」
だらんと崩した姿勢でテーブルに頬杖をついて、長い前髪の隙間から覗くスフェーンの瞳に見詰められ、今までの流れをぶった切るように、全く関係のない内容の質問をぶつけられ、答えるまでに変な間を空けてしまった。
「あ、えーと、……この後は、全く予定を決めていませんでした。 でも一度お母様の様子を窺いに行こうかなぁ~、とは考えてます。 朝ほとんど寝惚けた状態で出てきてしまったので、きちんとしたご挨拶も出来ないままだったので…。」
自分の足で歩いて出てきた、と云うよりも、サイボーグ侍女に小脇に抱えられて運搬された、と云うのが本当のところだった。
けれど、犬と猿な間柄のメリッサが行った本当の所業を耳に入れたなら、今は気分良さ気に問いかけている次兄がどんな気分変換を行うことか………、全く予想できないので、この場を穏便に過ごすために、この真実は一生覆い隠すことを固く決意する。
「ん~? 心配ないよぉ、きっと母さんなら全然気にしてないと思うしさぁ~。 それにぃ、様子窺いとかってのもそうだけどさぁ~、母さんに関することは丸っきりぜぇ~~んぶ父さんに任せておけば良いんだよぉ~~♪ 今日明日は何か起こんない限り部外者は来ないはずだしぃ~、何か起こるかもってぇ、心配する必要ないと思うよぉ~~?」
私の心の中で行われた忖度は気づかれた節はなく、エリファスお兄様は変わらない良い調子で、尤もらしい見解を口にされた。
概ねその通りだなぁ~、と納得したのでそれについては素直に相槌を返す。
「確かに…お母様なら気にされてはいらっしゃらないかも、ですねぇ…。 でも、今日と明日は部外者の方は…来ないのですか? …それは何でなのでしょう??」
相槌にプラスして疑問に思ったことも問いかけてみた。
「んん~? …あぁ、そっかぁ~! ライラは今日が何日かわかるぅ~?」
その結果、唐突に日付を問われる。
けれどこれは食堂に来る前、まだ裏庭の一角に居た時に一度考えていたのですぐに答えることは出来た。
「えぇと、はい、今日は雪月の…34日でしたよね?」
ーーすごく違和感しかない日付なのだけど、これがこの世界の暦、決して間違いじゃないのだから、慣れる他ないのよねぇ~、慣れられる気が全くしないけど。 34日、34日、…うん、先ず一番の問題は、シンプルに言い難いってことよね!!ーー
「そ~そぉ~~♪ 凄いねぇ、ちゃんと知ってるなんて、ライラはお利口さんだねぇ~♡ じゃあ、明日が大晦日だって事はどう? 知ってたぁ~??」
「今年最後の日、ですよね? 年末だって事は知ってます。」
褒められて照れつきながらも、その後の問にも言葉少なに答える。
「そっかぁ~、そこまでちゃんと理解してるなら大丈夫だねぇ~~♪ 何で部外者は来ないかって言うとぉ、答えは年末だからって単純な話なんだよねぇ~。 ホントだったらもっとずっと早くぅ、ライラの誕生日くらいから仕事納めになるのが普通なんだってぇ~。 だからここんところずぅ~っと、殆ど毎日父さんが家に居るんだねぇ~。」
「こらこらぁ、エリファスぅ~? 私が居たら嫌みたいにぃ、そんな風に思える言い方で言うものではないよぉ~~??」
「あはは、そんなつもりなかったんだけどぉ、ごめんね父さん♪」
次兄の、ともすれば嫌そうにも聞こえる言い方に、すかさず苦言を呈したのはお父様だった。
確かに、私も少しだけお父様が居たら嫌なのかぁ…?と疑問に感じてしまった部分だったので、そんなニュアンスで言った言葉ではないとわかって、ちょっと安心した。
「んでぇ、外部からの往来も無くなってるはずだったんだけどぉ~、今年は例外だったよねぇ~~。 まぁ~、母さんが臨月だしぃ、これからも先が読めないのが現実だけどねぇ~~。 出物腫れ物所嫌わずぅって言うくらいだからぁ、まだこれからど~なるかわかんないけどさぁ~~? 一応の公式な予定としてはぁ、来ないって感じかなぁ~♪」
「…お前は何処でそういった言い回しを覚えてくるんだ? ここにある蔵書にそんな記載がある書物があったとでも云うつもりか?」
ーー…本、そう云えば、昨日の夜……お母様が教えてくださったあの本!! あれをこの後探しに行こうかなぁ…?ーー
「えぇ~、なになにぃ~~? 兄さんってばぁ~、ボクが普段どんな本を読んでるのかってぇ、気になっちゃったのぉ~~?? そこが気になっちゃうなんてぇ、やっぱりボクのことに興味津々じゃないぃ~、兄さんったらぁ~~、ボクがだぁ~~い好き♡なんだねぇ~~♪」
ーーでも、いくら屋敷の中とはいえ、行ったことのない図書室に1人で行くってなるとちょっと心細いし…、どうしようかなぁ?ーー
「違う! そういった意味での興味は無い。 全く微塵も無い、事実無根だ。」
ーー場所は知っているのだし、行って行けないことはないけど…、う~~ん、悩ましい。ーー
「ムキになっちゃってぇ~、そんなに照れなくっても良いのにさぁ~~♪」
ーーん? あれれ?? でも、図書室って…入り口はどこにあるのだっけ??? ヤバイ、ここにきてまさかの…ど忘れした!!!ーー
「やめろ!」
一連の兄弟の戯れ付きが一段落付いた、丁度そのタイミングで。
「…図書室の入り口って、どこだったかしら…?」
途端にシン…と静まり返る食堂。
今まで兄弟の戯れ付きで賑やかだったのが嘘のように、水を打ったような静けさが広がった。
「「「 ん? 」」」
同じ単音と、寸分のブレ無くまったく同じタイミングで、奇跡の三重奏で問い返される。
「………え? あら…、私ったら、声に出てましたでしょうか?! スミマセンっ、独り言なので、全然気にしないでくださいね!!」
慌てて自分の発言は忘れて欲しいと願い出たけれど、この次兄は受け流してはくれなかった。
「ライラは図書室に行きたいのぉ~? 入り口なら大階段の途中にあるけどぉ、良かったら今からボクと一緒に行ってみるぅ~~?」
「えっ!? …良いのですか?? でも、エリファスお兄様はこの後、何かご予定があったのでは?!」
「ん~? とくには決めてなかったからねぇ、全然大丈夫ぅ~♪ それにさぁ~、忘れちゃったかもれないけどぉ、昨日できなかったエスコートをしたいなぁ~~って、さぁっ♪ そう思ってたから今日何するか聞いたんだけどぉ、ね? 良いでしょ~? ボクと一緒に図書室にぃ~、行ってくれるでしょ~~??」
「はいっ♡ 是非っっ♡♡ ご一緒させてくださいっっっ♡♡♡ ありがとうございますエリファスお兄様ぁ♡♡♡♡」
ハート乱舞になりながらイチコロされた。
ーーあぁっ、一生かかっても小悪魔次兄のおねだり抗える気がしないっ、否、抗いたくはないのだけど、だって至福でしか無いのだから、一切問題なし!!ーー
「ん、どぉ~いたしましてぇ~♪ じゃ、さっそく行こっかぁ~♪♫ お手をどうぞ、お嬢さん♡」
いつの間にかテーブルを回り込んでやって来ていたエリファスお兄様が、すぐ近くで左手を差し出してくださる。
その手に自分の右手を重ねて、ニコニコ笑顔で答える。
「ありがとうございます、小さな紳士様♡」
棚ぼたラッキーで急遽決まった次なる目的を果たしに、次兄のエスコートを得て向かい行く。
本当に今日はツキにツイている。
大体のことがトントン拍子に進んでしまって、うっかり今日はこのままいい事尽くしな一日になるのでは…と期待値大になってしまった。
その事が後々、吉と出るか凶と出るか、この時の私の頭には、そんな危機的考えは何一つ思い浮かんではいなかった。
「ライラ…少しは落ち着いたか? ……まだ無理みたいだな。 泣き止んだなら直ぐに治癒を施こそう。 もしライラが泣き止んだことに僕が気づけなかったら、遠慮なく言ってくれて構わないからな?」
「……っ、はい、ありがどぅ……っ、ござ……ますっ……! アルヴェイン、お、……っ、兄、様っ!!」
兄から向けられる、惜しみない優しが120%(個人的見解)配合された言の葉に感極まって、熱い涙がドバドバと両の目から追加量産される。
優しさが沁みた、沁み渡りすぎて…逆向きに絶大な効果を発揮してしまった。
ーー恥ずかしいっ! ただただ単純に…、恥ずかしいよぉ~~~っ!! こんな何でもない理由で、こんなに泣いてしまうなんて、あり得ない!!! 幼女の直情的な感性が、今は死ぬ程恨めしいぃっ!!!!ーー
グズズビッと豪快に鼻を啜る。
此の場にサイボーグ侍女が居合わせていたならば、これまでに何回叱責(激しめな物理込み)されていたことか…、考えただけで恐ろしい。
けれどここで手を抜くわけにはいかない。
一度でも失敗したならば大事故必至、黒歴史更新と相成ってしまう未来しか視えない。
そんな未来は全く及びではないのだから、気を引き締めて、一所懸命に事に当たらなければならない。
せめて今この顔面に塗れさせるのは涙だけでありたいという強い想いから、気を抜くと直ぐにでも鼻孔から溢れてしまいそうになる液体を全身全霊を賭して、啜り上げる。
ーー鼻を垂らしてる公爵令嬢なんて…目も当てられないっ! と云うか、女子として社会的に終わってしまう!! そして何より、イケメン家族の眼前でそんな醜態を晒すのか、と考えただけで………ショック死してしまうわっ!!!ーー
即刻お陀仏してしまえる自信しかない。
そんな事態に陥ってしまったなら、此の場に居合わせた全員の脳内から黒歴史に該当する記憶を根刮ぎ消去しきるまで、生きた心地になんてなれやしない。
ーーだからお父様も、そんな必死に笑いを噛み殺しながら私をあたたかく見守らないで下さいな! 私は至って真面目に、真剣に、今直面している現実問題に発憤忘食して対処しているのですからね?!ーー
そうなのだ、今現在食堂にいるにも関わらず、この少女は眼前に据え置かれた料理には一切手を付けていない。
正しくは手をつける前、供された食事内容をその両目で直に確認した段階で、涙腺が決壊してしまった為、食事どころの騒ぎではなくなってしまったのだった。
少女が高熱にうなされ、やっとこさ目覚めたのがつい2日前のこと。
様々な理由で滅入りに滅入っていた精神のまま、向かい来たこの食堂で、先程優しい言葉をかけてくださった天使の如くな長兄が口にした言葉を、正しく、一言一句違えずに、然と覚えている。
誰が忘れてしまったとしても、当事者であるこの少女は覚えていた。
ガッツリ当事者なこの少女は、忘れられるはずもなかったのだ。
あの時と今も変わらず、表情を優しく和らげて見詰められていた。
もしかしたら顔面のコンディションを観察されていただけなのかもしれないけれど、こんなに溢れるほどの優しさを醸してイケショタに見つめてもらえるのなら、どんな理由でだって問題ない、いつでもウェルカムで受け入れ態勢は万端整っている。
ーあ、やっぱ前言撤回、だって……無理無理っ! こんな涙に塗れたくっちゃくちゃ顔、イケショタにもイケオジにも見られ続けたくないっ!!ーー
これ以上悲惨な状態の顔面を見られまい、と両手で隠そうとするも、幼女の小さすぎる椛形の手ではどうやっても覆い隠しきれず、徒労に終わる。
隠せないなら俯くまでよ、と開き直って即行動に移し実行する。
視界には自分の下半身しか見当たらない状態で、先日長兄が口にした言葉、その内容を、録音したかと錯覚するハイクオリティな音質で脳内で再生してみせる。
『物足りないだろうが、今日一日は控え目な量の食事が続くからな。 徐々に量を増やしながら2、3日様子を見る。 それで大丈夫そうなら、普通の食事に戻るから、それまで我慢できるか?』
我慢する、そう答える以外に、あのときの自分に選べる言葉はなかった。
でもそんな言葉しか選べなかったあの時の自分が心底恨めしい。
そしてこの『2、3日』、この厄介極まりない表現のせいで、自分がここまで涙することになろうとは…、誠に遺憾だ。
受け取り手の解釈次第で、この言葉はあらぬ期待を抱かせるのに十分な効力を発揮して、幼心を抉る凶器となりえる表現だった。
早い話が、食事は変わらずの病理食だった。
『2、3日』の『2、』で病理食とはお別れできるものと、勝手に期待してしまったことがそもそもの間違い。
自らが勝手に掘り下げた大きな落とし穴に、るんたったぁ~♪とスキップしながら愉しげにその落とし穴に足を踏み出し、ものの見事に真っ逆さまぁ~に、転がり落ちたしまったのだった。
ーー2日間、出された料理はほぼ全部、食べ滓も残さずにキレーーに平らげてこの腹部におさめてきた。 それなのに…っ何でぇ?! 何でなのぉ~っ!? 何が駄目だったって云うのぉおぉ~~~っっっ?!?ーー
面会した子爵令息の事も、直前まで見送っていた騎士たちと家令の事さえも押しのけて、食堂に辿り着くまでの道すがら、良いだけ頭を占領しきって、募る思いを馳せていた本日の朝食の献立。
なのにこの裏切りは……酷くないだろうか?
私の身体と健康を慮っての、優しさしか無い最高の配慮なのだと云うことはわかる、その理屈は大変よく理解できる、けれど心情的にはまっっっっったく、理解できない。
ーー不足していただろう栄養もすっかり補われて、ともすれば寝込む前よりもふっくらつややかで、至って健康そのものにまで回復せしめたっていうのにっ!! 何が足りないの?? 他にどんな物的証拠が必要だって仰るのかしら??!ーー
途端、強く沸き起こった悔しさに突き動かされて、反射的にある動作を取る。
今の視界に映り込むある部分、そこをじっと見詰めながら、自分の太腿の上に置いた両手にギュッと力を込めて、掴んだ手触り最高なスカートの生地を皺になるのも構わず力いっぱい握り締める。
ーー証拠が欲しいと仰るのなら、れっきとした紛うことなき動かぬ証拠がちゃーーーんと、此の場にありますともっ!! 見さらせっ!!! この見事にぽんっと張り出した、幼児体型を象徴するぽっこりお腹を!!! これこそ動かぬ証拠也ぃ~~~っっっ!!! ど~~だっ、まいったかぁ~~??! 臨月な妊婦さんよりもぽんぽこりんなぽっこりお腹だぞぉ~~~、わぁ~~っはっはっはっはっっっはぁああァァ~~……。ーー
自分で言って、瞬時に悲しくなる。
食べても食べていなくても、いつだってこのお腹は幼女のなけなしの自尊心を滅多切りにして細切れにし尽くしてくるくらい、出っ張っている。
引っ込めようと奮闘してもその甲斐虚しく、その存在を主張するように、いついかなる時もデンッと張り出したままでいる。
だというのに、自分から誇るようにして、注目を煽るような発言をするなんて…自虐行為であり自傷行為でしかない。
これ以上精神にダメージが付加されてしまったなら、気が狂れてしまいかねない。
今だってもう十分過ぎるくらいヤバイのに、これ以上ヤバイ要素が追加されるのは避けたい。
思考が制御不能に陥り、手のつけられない暴走を開始し出す前に止めにかかる。
ーーふぅ~~、危ない危ないっ! ひょんな切っ掛けで本筋から逸脱して、放っておくと寄り道に邁進しまくってしまう幼女の直線的思考、ホント危うしだわっ!! 歯止めをかけるタイミングを見誤ると、とんでもない方向に突っ走って行ってしまうのだもの、ホント困る…。 それに疲れた……。 癒やしが欲しい………っ!!!ーー
疲労困憊気味な精神を立ち所に回復する秘訣、それは今から行動で示す方法以外にあり得ない。
超時間短縮で行える治療であり、超回復をも見込める画期的治療法。
ーーそれは何かと問われれば、イケメン鑑賞、これ一択!! これより他に、精神を癒せる手立ては存在しないと云っても過言ないっ!! 私にはコレが一番肌に合うのだから、コレ以外受け付けない、それが全て!!ーー
仰々しい風に御託を並べ、四の五のこじつけまがいの自論を並べ立ててもみたけれど、結局はいつもの方法に他ならない。
赴く感情のままに、バッと勢いよく顔を上げ、机を挟んで向かい合う親兄弟に目を向ける(特に顔面)。
ーーうん、目の覚めるようなイケメン三昧だわ!! これだけで、ご飯を軽く3杯おかわりできてしまうわねっ!! 眼福ぅ~~~っ♡♡♡ーー
私がいきなり勢いよく顔を上げたせいで、三者三様でありながらも、やっぱりどこかがばっちり共通して似通っているパチクリ顔で見返されてしまった。
ーーっ!? こ、これは…まさか、本当にぃっ?! 似たような表情で横並ぶ親子のスリーショット、にお目にかかれた……?? 成功した………だとぉっ?!?ーー
まさかまさかの棚ぼたで大チャンスが到来し、予期せぬスリーセブンを叩き出してしまった模様。
此の瞬間に、確実に今日の運気は使い果たしてしまったと思われる。
ーーあぁっ、やっぱり似てるぅっ!! さすが親子!! 表情の出し方が、眉の上がる角度とか…、クリソツで……、萌が途切れる暇が………、無い!!!ーー
ブルブルっと激しく震えてしまいそうになる身体を、まだ腿の上に置いたままだった両手をきつく握ることで、どうにか小刻みな状態に留めることに成功する。
先日は実現し得なかった貴重且つ希少なスリーショットに、心のシャッターが絶賛連写モードフル稼働中で、いつオーバーヒートしてもおかしくないほど過負荷気味だ。
またとないチャンスに真剣になりすぎて、瞬きを忘れた真顔と据わりきった目で見ている私に驚いたのか、3名のパチクリ顔はしばらく続いた。
これも棚ぼたラッキーに他ならない、なんとも幸運がひっきりなしに訪れ過ぎていて、悪いことが起こる前触れにさえ思えてきてしまう。
そんなしょーもないことを考えている私をよそに、いち早くパチクリ顔かを解いて優しさを滲ませた微笑みに表情を切り替えてから、私にいつも通り声をかけてくださったのはアルヴェインお兄様だった。
「……? 無事に泣き止んだみたいだな、何はともあれ良かった、安心したよ。 あのまま泣き続けていたら、それこそ本当に目が溶けてしまわないか、と心配するところだったよ。 手は、届かないか。 そちらに行くから少しの間そのままで、もう泣かないように気を落ち着けたままでいてくれるかな?」
私のある種の感情(ただの煩悩)に支配されて、鬼気迫る表情を崩さない私に不思議そうにしながらも、泣きすぎた私がこれから気不味くならないよう、からかう体に見せかけた言葉をかけて、気遣いバッチリな配慮を寄越してくださるお兄様に、感謝しか無い。
「うぅ、溶けたりしないって、ちゃんとわかってて仰ってますよね、アルヴェインお兄様。 大丈夫です、ちゃんと出来ます! もう泣いたり致しませんから、…本当の本当に大丈夫なんですからね?!」
クスクスっと微笑いながら、テーブルを回り込んでこちらに向かい来る長兄の姿を頭ごと動かして目で追う。
ぷんすことわかり易く、気分を害している風を装って頬を膨らませて、怒ったような口調で長兄に言い返してはいるが、内心はその真逆、長兄からのさり気ない気遣いと愛あるイジりにキュンキュンときめいて、小さなこの胸は高鳴りっぱなしだった。
治癒魔法を施すには、癒やす対象の患部に触れていなければならないらしい。
魔法の習熟度によっては、必ずしも触れることは必須ではなくなるようだけれど、その習熟度合いにも個人差があるらしく、どれくらい数をこなせば技量が上がる、という目安も存在しない。
そう語り聞かせて下さったのは他でもなく、今正に私の腫れぼったい瞼に触れ、治癒魔法を行使してくださっているアルヴェインお兄様だった。
私が泣き過ぎて腫らしてしまった瞼や、浮腫んでしまった顔面を魔法で癒やしてくださる間、じっと終わるのを待つ私が退屈しないように、ここでもさり気なく気遣って下さる。
ーーうん、やっぱりアルヴェインお兄様は控えめに言っても天使だと思う。 だってこんなに優しくって、さり気ない気遣いが自然とできる10歳児とか、普通の人間の子供な訳がない。 きっと清らかな天使様がアルヴェインお兄様の前世のお姿だったのよ、うんうん、そうに違いないわっ!!ーー
勝手な見解を好き勝手述べて、勝手に真実であると思い込み、勝手に納得して、あっさりと自己完結を終える。
この一連の流れも、パターンになりつつある。
誰にも迷惑をかけない脳内のみで行われる処理なので、問題なし。
お兄様が教えてくださった内容に話を戻して。
新たに聞き知った情報を精査して、自分なりに考えを整理して、自分なりにまとめる。
目に見えないゲージが人知れず溜まり、限界まで溜まりきるとレベルアップのような現象がこれまた人知れず起こり、ひっそりと完了する。
そんな漠然としたイメージが頭に浮かんでしまうのは、ゲームのステータスバーのイメージがチラついて離れない、前世の記憶に汚染されきっている私だからこんな解釈になってしまうのだろうか。
ふむふむ?と目を閉じて考えているうちに、アルヴェインお兄様の魔法による治癒は、滞り無く速やかに完了した。
「しかしあれだねぇ~、ライラが予告もなく泣き出したときは驚いてしまったよぉ~~! 本当に…、どう懲らしめてやろうかと思ったよねぇ~~?! 今回の失態の落とし前を、どうやってあのサミーにつけさせてやろうか、って瞬時に考え倦ねいてしまったよねぇ~!?」
お兄様が自分の席に戻り腰を下ろしたタイミングで、お父様がいつもの戯けた口調で、私が泣いたことへの感想をもらす。
けれどそれは、私だけに対する言葉では済まなかった。
「心配させてしまってごめんなさい、お父様………って、あら? どうして…コレに関して、サミュエルが落とし前を迫られる必要があるのでしょう??」
ーー何でここでサミュエルの名前が急に出てきたの? もしかして、今日の朝食の献立を病理食のままで、って進言したのがサミュエルだったとか……って、コト??ーー
あまりに脈絡がない言葉過ぎて、うっかりそのまま聞き逃してしまいそうになってしまった。
きょとんとして、理解できなかった部分を取り沙汰して聞き返す。
その際に自然と、少しだけ首が斜めに傾く。
「んん~~? いやいやぁ~、何でも何もぉ、至極当然の結果だろうともぉ~~?! ライラのすぐ側に控えて居たというのにぃ、ライラを庇護するという己の役目を果たせなかったのだからねぇ~、それ相応の責を負うのは当然というものだろうよぉ~~っ!?」
お父様もまた、何故自分の言葉の意味が伝わらないのかわからない、といった不思議そうな表情でこちらを見返しながら言葉を重ねる。
私につられたのか、お父様の首も少しだけ斜めに傾ぐ。
「………え??」
「………うん??」
お父様の発言を受けて、どんなに反芻しても意味が分からず、更にコテンと頭を傾げる。
やっぱりそんな私につられて、お父様も同じ方向に更にコテンと頭を傾げた。
お互いがお互いの脳内迷宮に入り込み、迷子になってしまったかのような、似通った困惑具合に陥ってしまった。
それまで繰り広げられた噛み合わない私達父娘の会話を静かに見守っていたお兄様ーずが今の状況を冷静に分析して口を開く。
「ん~~? なぁ~んか、ライラと父さんってば、噛み合ってない感じくないぃ~~?? 何ていうかぁ、お互いが全く違う内容を頭に浮かべて会話してるって感じぃ~。」
「そうだな、正しくそんな感じだな。 ……そう云えば、ライラは何で泣いたんだ? てっきり泣くほど辛い思いをしたのかと、…面会であの子爵令息に、深く心を傷付けられるような何らかの暴言を吐かれたのかと……、思ったんだが………、違ったのか?」
「…、……っ、………っちぃがぁいますぅう~~~っっっ!!!」
ーーめっちゃ!! めぇ~~~っちゃくちゃ、タイミング悪かった!! 最悪最低ぇーーーっに、誤解させるタイミングで泣いてしまった私が悪ぅございましたぁあーーーっっっ!!!ーー
アルヴェインお兄様に懇切丁寧にお父様が言わんとしていた言葉の背景を控えめに説明され、やっと合点がいった。
私が泣く前に交わされていた親子の会話、その内容は食堂に辿り着く前に終えたばかりの子爵令息との面会に関しての内容だった、と今やっと思い出した。
あんな子豚さんから言われたあれこれや、やらかしてしまったどれそれなんて、それこそ屁の河童並みに、此の場ではもうどーとも考えていなかった。
具体例をあげるなら、『化け物』と言われたことも、再び失禁させてしまったことも、すっかり忘れてしまっていた。
それなのに、テーブルに供された朝食の内容を目にしたのが、偶々、ホントーーーになんの因果か偶然に、あの面会の内容を聞かれてそれについて『毒にも薬にもならない内容だった。』と答えようと口を開いた、丁度その時な絶妙過ぎるタイミングだったことが、今現在行われた会話のすれ違いを招く、華麗な誤解釈をお父様ならびにお兄様ーずに抱かせてしまった、らしい。
このまま誤解した内容を採用して、献立が期待した内容と違ったことがショック過ぎて泣いてしまった、という本当の理由を隠蔽することも出来た…はず。
だけれども、己の恥辱溢れる失態を覆い隠すために、あの子豚さんが関係する事柄をカムフラージュの理由として採用したくなかった、凄く個人的な理由で、凄く気分的な理由で。
だからこそ、恥を忍んで、ごにょご~にょ、ぼそぼ~そ、と蚊の鳴くような声量で、消え入りそうになりながらも…本当のことを包み隠さず暴露した。
その結果は、と云えば…。
再び3人揃ってのパチクリ顔、それに+してのきょとん顔からの、十分過ぎるシーン…と静まり返った沈黙の間をおいた後で、の爆笑だった。
顔から火が出たのは云うまでもなく、この場から全速力で逃走したくなったのもまた然り。
けど、どんなに笑われても、此の場で真実をぶっちゃけられた事自体は、凄く良いことだったと思う。
だって、どんなに笑われたって、絶対に嘲笑われる事はないって、今目の前にいる家族を信じて私が嘘を付きたくないと思って、行動した結果だったから。
顔と云わず、全身の肌という肌を真っ赤に染め上げて、炙られるような羞恥を耐え忍んだ。
親兄弟が爆笑している間ずっと、そのまま忍耐力を試されるような時間は続いたが、そのかわりに呵い悶えるレア度ランク外なスリーショットを心のアルバムに収めることに成功したので、真実を伝えられて本当に良かった♡と胸をホクホクっと温めてもいられた。
3人が呵い終わるのを待っている間、恥ずかしさは消えないまでも、もの凄く手持ち無沙汰だったので、供された病理食な朝食に手を付け始めた。
早朝からのハイキング(バタンキュー寸前まで身体を酷使)に始まり、結構な時間立ちっぱなしでいたりしたせいで、お腹の空き容量は十分確保できていた(パッと見の外観からはそうとは見えなくとも)。
だから、一口食べたらすぐに二口目、続いて三口目、四口目、……エトセトラ、と続いて、口に食べ物を運ぶ手の動きは途中1回も途切れること無く続き、瞬く間に完食せしめた。
その頃には笑い転げていた親兄弟は殆ど呵いをおさめて、いち早く私に声をかけたのは、意外にもエリファスお兄様だった。
「ところでさぁ~、ライラは今日この後何して過ごす感じなのかなぁ~~って、聞いてもいぃ~いぃ~~?」
だらんと崩した姿勢でテーブルに頬杖をついて、長い前髪の隙間から覗くスフェーンの瞳に見詰められ、今までの流れをぶった切るように、全く関係のない内容の質問をぶつけられ、答えるまでに変な間を空けてしまった。
「あ、えーと、……この後は、全く予定を決めていませんでした。 でも一度お母様の様子を窺いに行こうかなぁ~、とは考えてます。 朝ほとんど寝惚けた状態で出てきてしまったので、きちんとしたご挨拶も出来ないままだったので…。」
自分の足で歩いて出てきた、と云うよりも、サイボーグ侍女に小脇に抱えられて運搬された、と云うのが本当のところだった。
けれど、犬と猿な間柄のメリッサが行った本当の所業を耳に入れたなら、今は気分良さ気に問いかけている次兄がどんな気分変換を行うことか………、全く予想できないので、この場を穏便に過ごすために、この真実は一生覆い隠すことを固く決意する。
「ん~? 心配ないよぉ、きっと母さんなら全然気にしてないと思うしさぁ~。 それにぃ、様子窺いとかってのもそうだけどさぁ~、母さんに関することは丸っきりぜぇ~~んぶ父さんに任せておけば良いんだよぉ~~♪ 今日明日は何か起こんない限り部外者は来ないはずだしぃ~、何か起こるかもってぇ、心配する必要ないと思うよぉ~~?」
私の心の中で行われた忖度は気づかれた節はなく、エリファスお兄様は変わらない良い調子で、尤もらしい見解を口にされた。
概ねその通りだなぁ~、と納得したのでそれについては素直に相槌を返す。
「確かに…お母様なら気にされてはいらっしゃらないかも、ですねぇ…。 でも、今日と明日は部外者の方は…来ないのですか? …それは何でなのでしょう??」
相槌にプラスして疑問に思ったことも問いかけてみた。
「んん~? …あぁ、そっかぁ~! ライラは今日が何日かわかるぅ~?」
その結果、唐突に日付を問われる。
けれどこれは食堂に来る前、まだ裏庭の一角に居た時に一度考えていたのですぐに答えることは出来た。
「えぇと、はい、今日は雪月の…34日でしたよね?」
ーーすごく違和感しかない日付なのだけど、これがこの世界の暦、決して間違いじゃないのだから、慣れる他ないのよねぇ~、慣れられる気が全くしないけど。 34日、34日、…うん、先ず一番の問題は、シンプルに言い難いってことよね!!ーー
「そ~そぉ~~♪ 凄いねぇ、ちゃんと知ってるなんて、ライラはお利口さんだねぇ~♡ じゃあ、明日が大晦日だって事はどう? 知ってたぁ~??」
「今年最後の日、ですよね? 年末だって事は知ってます。」
褒められて照れつきながらも、その後の問にも言葉少なに答える。
「そっかぁ~、そこまでちゃんと理解してるなら大丈夫だねぇ~~♪ 何で部外者は来ないかって言うとぉ、答えは年末だからって単純な話なんだよねぇ~。 ホントだったらもっとずっと早くぅ、ライラの誕生日くらいから仕事納めになるのが普通なんだってぇ~。 だからここんところずぅ~っと、殆ど毎日父さんが家に居るんだねぇ~。」
「こらこらぁ、エリファスぅ~? 私が居たら嫌みたいにぃ、そんな風に思える言い方で言うものではないよぉ~~??」
「あはは、そんなつもりなかったんだけどぉ、ごめんね父さん♪」
次兄の、ともすれば嫌そうにも聞こえる言い方に、すかさず苦言を呈したのはお父様だった。
確かに、私も少しだけお父様が居たら嫌なのかぁ…?と疑問に感じてしまった部分だったので、そんなニュアンスで言った言葉ではないとわかって、ちょっと安心した。
「んでぇ、外部からの往来も無くなってるはずだったんだけどぉ~、今年は例外だったよねぇ~~。 まぁ~、母さんが臨月だしぃ、これからも先が読めないのが現実だけどねぇ~~。 出物腫れ物所嫌わずぅって言うくらいだからぁ、まだこれからど~なるかわかんないけどさぁ~~? 一応の公式な予定としてはぁ、来ないって感じかなぁ~♪」
「…お前は何処でそういった言い回しを覚えてくるんだ? ここにある蔵書にそんな記載がある書物があったとでも云うつもりか?」
ーー…本、そう云えば、昨日の夜……お母様が教えてくださったあの本!! あれをこの後探しに行こうかなぁ…?ーー
「えぇ~、なになにぃ~~? 兄さんってばぁ~、ボクが普段どんな本を読んでるのかってぇ、気になっちゃったのぉ~~?? そこが気になっちゃうなんてぇ、やっぱりボクのことに興味津々じゃないぃ~、兄さんったらぁ~~、ボクがだぁ~~い好き♡なんだねぇ~~♪」
ーーでも、いくら屋敷の中とはいえ、行ったことのない図書室に1人で行くってなるとちょっと心細いし…、どうしようかなぁ?ーー
「違う! そういった意味での興味は無い。 全く微塵も無い、事実無根だ。」
ーー場所は知っているのだし、行って行けないことはないけど…、う~~ん、悩ましい。ーー
「ムキになっちゃってぇ~、そんなに照れなくっても良いのにさぁ~~♪」
ーーん? あれれ?? でも、図書室って…入り口はどこにあるのだっけ??? ヤバイ、ここにきてまさかの…ど忘れした!!!ーー
「やめろ!」
一連の兄弟の戯れ付きが一段落付いた、丁度そのタイミングで。
「…図書室の入り口って、どこだったかしら…?」
途端にシン…と静まり返る食堂。
今まで兄弟の戯れ付きで賑やかだったのが嘘のように、水を打ったような静けさが広がった。
「「「 ん? 」」」
同じ単音と、寸分のブレ無くまったく同じタイミングで、奇跡の三重奏で問い返される。
「………え? あら…、私ったら、声に出てましたでしょうか?! スミマセンっ、独り言なので、全然気にしないでくださいね!!」
慌てて自分の発言は忘れて欲しいと願い出たけれど、この次兄は受け流してはくれなかった。
「ライラは図書室に行きたいのぉ~? 入り口なら大階段の途中にあるけどぉ、良かったら今からボクと一緒に行ってみるぅ~~?」
「えっ!? …良いのですか?? でも、エリファスお兄様はこの後、何かご予定があったのでは?!」
「ん~? とくには決めてなかったからねぇ、全然大丈夫ぅ~♪ それにさぁ~、忘れちゃったかもれないけどぉ、昨日できなかったエスコートをしたいなぁ~~って、さぁっ♪ そう思ってたから今日何するか聞いたんだけどぉ、ね? 良いでしょ~? ボクと一緒に図書室にぃ~、行ってくれるでしょ~~??」
「はいっ♡ 是非っっ♡♡ ご一緒させてくださいっっっ♡♡♡ ありがとうございますエリファスお兄様ぁ♡♡♡♡」
ハート乱舞になりながらイチコロされた。
ーーあぁっ、一生かかっても小悪魔次兄のおねだり抗える気がしないっ、否、抗いたくはないのだけど、だって至福でしか無いのだから、一切問題なし!!ーー
「ん、どぉ~いたしましてぇ~♪ じゃ、さっそく行こっかぁ~♪♫ お手をどうぞ、お嬢さん♡」
いつの間にかテーブルを回り込んでやって来ていたエリファスお兄様が、すぐ近くで左手を差し出してくださる。
その手に自分の右手を重ねて、ニコニコ笑顔で答える。
「ありがとうございます、小さな紳士様♡」
棚ぼたラッキーで急遽決まった次なる目的を果たしに、次兄のエスコートを得て向かい行く。
本当に今日はツキにツイている。
大体のことがトントン拍子に進んでしまって、うっかり今日はこのままいい事尽くしな一日になるのでは…と期待値大になってしまった。
その事が後々、吉と出るか凶と出るか、この時の私の頭には、そんな危機的考えは何一つ思い浮かんではいなかった。
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