80 / 108
●本編●
76.それぞれの夜、執務室にて。【後】
しおりを挟む
フォコンペレーラ公爵家の歴史は長い。
その興りは古く、現在から遡るよりもフォスラプスィ王国建国当初から時を進めたほうが早い。
建国から現在に至るまで紆余曲折がありつつも1度たりとも王権を失うことなく一貫してフリソスフォス王家がフォスラプスィ王国を治めてきた。
そして初となる大公家の興りは、建国から5代目の国王の治世、第二王子がその武勇で以て隣国との戦禍を鎮めた功績への褒賞として大公位を叙爵し、それに伴い与えられた権利を行使して興したのが始まりだった。
その後も数々の功績を残し、1代限りの大公位から公爵へと降爵しながらも世襲する許しを与えられ、フォスラプスィ王国の高位貴族として確固たる地位を確立し現在に至るまで見事に存続し続けた最古の公爵家なのだ。
大公家であった当初から一度も場所を移さず、建て替えることもなく、現在まで同じ姿で在り続けてきたカントリーハウスは、建造した当時の魔術の粋を集めて作り上げられた建造物で、その資産価値は今や当時の倍かそれ以上、歴史的な観点から見ても計り知れないものとなっている。
そんな歴史ある建物の2階、広大な図書室の一角を切り取って設けられた、限られた者だけが開扉でき入室することができる公爵家当主の執務室がある。
窓のないこの執務室には、重苦しい空気とともに現在2人の人物が在室している。
当主であるコーネリアスと、その忠実なる下僕(自称)である領地家令のサミュエルが、執務机との揃いの椅子と応接セットのソファーとに別れて座している。
食堂で息子たちと別れた後、コーネリアスが執務室へ来たのはただの気まぐれだった。
執務室で後ほど、と示し合わせた覚えはない、だからといって何か先触れを寄越され所在を問われたわけでも無く、この領地家令はコーネリアスがここに居て当たり前であるかのように決め打ちでふらりとやって来た。
何の用か問う前に、家令の男は言葉数少なく急ぎだという一束の書類を手渡した後、心ここにあらず、といった体でソファーに背を預けて腰掛け、これも非常に珍しいことにぼんやりとしながら何事かの物思いに耽っている。
サミュエルがここまで閉口しているのも珍しい、この男と2人でいて、沈黙が続くなどそうあることではない稀有な状況だった。
沈黙に耐えかねたから、というわけでは全くなく、ただ単に文句が言いたくなって口を開くことにしたコーネリアスは手渡された書類を適宜処理しながら、今日サミュエルがとった数々の異常な行動に言及する。
「それで? 許可もなく食堂に乱入してきたかと思えば散々好き勝手言いたい事だけ宣って、挙げ句のはてには分不相応にもライラのエスコートまで申し出てぇ~、今日のお前は何がしたいんだぁ、どうかしているとしか思えないよぉ~~? そんなに死期を早めたいのかい?? 自殺を志願しているのならもっとわかりやすく意思表示したまえよぉ、そうすれば直ぐにでも昔の誼で兎角苦しませずサクッと逝かせてやるからねぇ~~!!」
ハッハッハ、と渇いた笑い声を上げて物騒な内容を嘯く。
それに返す家令の言葉は平坦で抑揚が欠落していた。
「はぁ、まぁ…そーでございますねぇ。 貴重なご提案を賜り恐悦至極、お気遣い痛み入りますぅ~。 ですが今現在、特にそのような予定はございませんので、必要に迫られた際は折を見て適宜検討させていただきますネ。」
適当な言葉を吐き出しながら、並行して強張った体を蠢かせたあと、軽く揉み解していく。
次には静かに両目を閉じて、目頭を押さえて目元を解しにかかる。
それからソファーの背もたれに頭を預けて、今度は首元から肩にかけてを解し始めた。
「おい、人の話をちゃんと聞く気があるのかサミー?」
サミュエルがこういう対応をするときは、大抵頭の中で他事を考え続けている時だとは長年の付き合いの中で知り得ており、解ってはいる。
けれど考え事をしていると解っていると、無性に邪魔してやりたくなってしまうのが人間の性というもの。
気分を害して若干憤慨している風を装って、意地悪くちょっかいを出す。
「はいはい、しかと聞き届ける態勢でおりますともぉー旦那様。 聞いているからこそ、今こうやって旦那様の言葉遊びにちゃんとお付き合いしている次第でございますからねぇ~、義理堅い使用人だと褒めて頂けましたら何よりの誉れでございますよぉ~~。」
そんな妨害は慣れたもののようで、対応も卒がない。
しかしまだ紡がれる言葉は抑揚を欠いたまま、視線も相手に向けられる事はなく、真っ直ぐ自身から見た正面に向けられたままだった。
「こちらを見る振りだけでもして見せたらどうなんだ? 本当にどうしたと言うんだ、今日の態度は輪をかけて酷いよぉ、悪い病気でも患ってやしないだろうねぇ~?! 子豚を送り届けたならその足で腕の良い医者を探してぇ、一度精密に検査してきたらどうだ、もしかしたら万に1つ、お前のその捩じ曲がった性根を叩き直す手立てが見つかるかもしれないよぉ~??」
っはぁ~~、とわざとらしく盛大に溜息を吐く。
これはいつもサミュエルが寄越してくる反応の中で、コーネリアスが一際イラッとさせられたものを選んで真似てみせたのだった。
自分の振る舞いを真似られて、少しでも不快感を与えられたかと期待したが…、その期待は大きく裏切られた。
くつくつと喉の奥で笑ってから、いつもの調子を取り戻してサミュエルがコーネリアスを見遣った。
つまりは頭の中で考えていた他事が一段落ついたということだった。
「んふふ、謹んで辞退致します♡ 私は旦那様と違って、定期的に行われる全ての検診にちゃぁ~~んと、参加しておりますから♪ 毎回異常なし、とユーゴ君はじめ、医師の皆様から全くの健康体である、との太鼓判を頂いておりますから、これ以上の検査は無用の長物、まぁ~~~ったく必要ございません。 それこそ時間の無・駄、貴重な時間の浪費、でございますからねぇ~♪」
「ふん、あぁそ~かい、なら何が原因だと云うんだい~? 今日見せた異常行動の数々は、ライラのせいだとでも云うつもりじゃないだろうねぇ~?? 弁明如何、事と次第によっては、首を挿げ替えるだけで済まないだろうことを、此処に宣言しておくよぉ!!」
期待した反応を得られず、いつものうざったい態度で痛いところを的確に突っつかれて、知らないうちに相手のペースに飲まれていたことに気付いたときには、時すでに遅し。
当初の目的とは逆に自分が気分を害する羽目に陥ってしまった、というこの上ない皮肉。
憤慨遣方なし、と不機嫌に塗れた渋面で刺々しくシンプルに脅しつける。
「ライリエルお嬢様のせいではございませんので、その必要はございませんよ、旦那様。 それよりも1つご提案させて頂きたいのですがぁ、もうしばらくお耳を拝借して宜しいでしょうか? 率直に申し上げます、い~~加減、あの夫人をどーにか致しませんかぁ? 私、控えめに申しましてぇ、もぉ限・界デス♡。 いつものよーにぃ、サクサクーーッと処理しましょーよー、迅速に、可及的速やかに!」
しかしこれも暖簾に腕押し、サミュエルには響かず軽くかわされて徒労に終わる。
脅されたことも何のその、今までのやり取りは全て言葉遊びの延長と捉え、何一つ引き摺ることなく自分が聞かせたい話題を話せる状況を強引にでも作り上げる。
軽い調子でありながら、その実言葉の1つ1つに込められた負の感情は、計り知れない積年の重みを伴っていた。
「…珍しいなぁ~、サミーがそこまではっきりと音を上げるなんて。 しかしまた唐突だねぇ~、今までだって限界だとぼやきながらも上手く取り繕ってやれてきたじゃないかぁ、なんでまた急にそんなことを言い出したのかねぇ~~?」
パラリ、と書類を捲る手を止めて、思いがけない提案を寄越した家令の顔をまじまじと見る。
その顔には相変わらずの胡散臭い笑顔が張り付いてはいるが、目が笑っていなかった。
「はぁ……、そーですねぇ、その起因となる理由には事欠きませんが、敢えて1つ、今日起こった事例から理由を挙げるとしたならば…ライリエルお嬢様に対する無礼な振る舞い、でございましょうか?」
「ライラに対する無礼な…? おい、サミー!」
「えぇーえぇーー、仰りたいことは皆まで言わずとも重々承知しておりますよ。 年の瀬だからと完全に油断しておりました。 ライリエルお嬢様の部屋に向かう途中、あの夫人に遭遇してしまいました。 まさか夜も更けてから屋敷の2階を我が物顔で闊歩し出すとは…。 私がついていながら不甲斐ない…、ライリエルお嬢様のお目汚しとなる害虫を遠ざけられず、誠に遺憾です。」
コーネリアスが声を荒らげきる前に止めにかかる。
サミュエルだって会いたくて会ったわけでは無い、ほとんど突発的に発生した事故のような邂逅だったのだからサミュエルもれっきとした被害者だ。
それなのにあらぬ誹りを甘んじて受けるなど耐えられない、可能性から根絶やさずにはいられない、業腹ものの嫌疑だった。
「家政婦のマダム・サロメがこんな時間に2階へ降りてきて、一体どこに向かう必要が……、まさかアヴィに会いに?! 全く、あの夫人は何を考えているのか!! まさかそれをそのまま見送ったのか? ライラが居たからと、まんまと行かせたことを私が許すとでも??」
「私に八つ当たりするのはお止めください、全くのお門違いでございますからネ! あそこで私が苦言を呈したならどーなっていたとお思いで? あの夫人に普段以上にしつこく粘着質に絡まれた上、不信感を植え付けてしまっていたことでしょうとも!! それでは本末転倒、今までの忍耐も苦労も、水泡に帰したことでございましょーよっ!!」
「……確かにそうだろうねぇ、あれはお前を自分側の人間だと思い込んでくれている。 それなのにお前があれの意に染まない行動や言動をしようものなら…結果は言わずもがな、かねぇ~。」
「今以上に御し難くなる事請け合いでございましょうネ。 ですがどうぞご安心を、奥様のお部屋には極めて優秀な番犬がおりましたか・ら♡ ライリエルお嬢様は驚いておられましたが、侍女と家政婦の相性の悪さは私共にとっては常識中の常識でございますからねぇ~、万が一を想定して侍らせておいてぇ、だ~いせ~~いかぁ~~~いっ♪でございましたねぇ~~!! どうぞこの優れた采配を思う存分褒め称えて下さいましね♡」
「嫌だね、断固却下だ。 だがまぁ、確かに間違いなく適任な人選ではあるねぇ~、メリッサが居たのなら安心だ、アヴィもあの酷い匂いにあてられる事なく済んだだろうともぉ~~! 彼女は本当に優秀だなぁ~、この屋敷の内外の誰にも懐柔される心配がないしねぇ、女主人の侍女には正にうってつけの人材だともぉ~~!!」
サミュエルへの褒め言葉は死んでも口にしたくない、と態度で示してから、打って変わって侍女へは手放しで称賛してみせる。
そんな主人のつれない態度にも怯むことなく、調子を合わせて同じ様にメリッサを褒め称えてみせる家令の言葉は、何故か言葉通りの賛辞では受け取り難いニュアンスになって耳に届いた。
「そうそう、正に旦那様の仰るとぉーりですからねぇ! 本人・配偶者共に親兄弟も無く、親戚も居らず、誰に唆される心配もない寡婦、おまけに寡黙で勤勉で有能な侍女兼乳母、とくれば確かに好条件が揃い踏みの貴重な人材でございますよねぇ~♪」
「お前が言うと、途端に嫌味にしか聞こえないから不思議だなぁ~。 褒め言葉が反転して聞こえるなんて、嫌ぁ~~な特技だねぇ。 んまぁ、サミーにとっては殊更しっくりくる相性抜群な特技なのだろうけどねぇ~?」
「ほらまたぁ~、そんな失敬な事ばかり仰っていると、ライリエルお嬢様から向けられる、なけなしの信頼を根刮ぎ失くされますよぉ?」
「お前がライラの何を知っていると云うんだ? 知った風な口を聞くなよぉ~、ライラはお前と違って心からの信頼を私に向けてくれているともぉ~!! それがお前に対する言葉遣いなんかで損なわれるはずないだろう、自意識過剰も大概にし給えよぉ~~!!!」
苛立った感情を一層増幅させて家令を睨めつけ、無遠慮に寄越された不吉な言葉を即座に否定し、一笑に付す。
「私がライリエルお嬢様の何を知っているか、でございますか…? ふぅ~~む…、そぉーーですねぇ、お嬢様は見かけによらず幼女らしからぬお方、といったところでしょうかねぇ~?? 後は…。」
鹿爪らしい表情を作って考える素振りをしながら、実際には先程のやり取りを思い起こしていた。
この執務室がある2階の階段付近で予期せず遭遇してしまったマダム・サロメが角を曲がり姿を消した後の通路にて、ライリエルに問うた問答の場面を思い出す。
あの時、確か自分は『誕生日パーティーからこっち、本当に1段と大人びて聡明におなりでぇ、直に見聞きした今でも信じ難い激的で急激な変化ですからねぇ~?』そう言って年端もいかない幼すぎる少女に対して、殆ど好奇心からそう問いかけていた。
けれどそんな気配を少しでも気取らせないように、敢えて真意を探るような目つき且つ全てを見通そうとするかの如く真剣に見えるよう心がけて、表情を作っていた。
何かしらを試されている、そうわかっていながらも、目の前に佇む少女は別段何か気負うでもなく、取り繕うことも、誤魔化すこともせずに思ったままの本心を告げてくれた。
あの澄みきったラピスラズリの双眸が、紛れもない本心であることを如実に物語っていたのもある。
『そんなに私は変わったかしら? 確かに流暢に喋れるようになって、話すのが楽だから今まで以上に沢山喋ってしまっている自覚はあるのだけど…、私はずっと私よ。 それだけは変わってないの、本当に。』
『…左様でございますか。 成程、それは何とも意味深長なお言葉ですねぇ…。』
『子供らしくない…かしら? でもお父様もお母様も、お兄様たちも、誰も否定せずにいてくれたから、私はこのままで良いんだってやっと思えたの。 私が大事だと思う人達が認めて、受け入れてくれた私を、今度こそは素直に誇れる自分でありたいの。』
『子供らしくない』と言われることをどこか恐れているように、不安げに瞳を揺らしながらも、続く言葉を紡いでいくうちにラピスラズリの瞳には惑いがなくなっていき、揺らぎは一切消え失せた。
『私の言動を聞き慣れないうちは違和感を感じると思うけど、これが偽りの無いありのままの私だから、せめて戸惑わずに居てくれたら嬉しいわ! 話す内容は興味がなければ全然聞き流してくれて良いから、ね?』
冗談めかして自分の言動には目を瞑って欲しい、と願う少女の顔を、面白さ半分、驚き半分で見ながら、間を開けず言葉を返す。
『聞き流すなど、とんでもない! そのようなつもりは毛頭ございませんので、ご安心を♡ それに先程も申しましたが、私如きに気遣いなど必要ございませんとも! 私はライリエルお嬢様の話し方を可怪しいとは微塵も思いませんし、子供らしくないとも思いません。』
ふむ…、と少し言葉を選ぶため人差し指でトントンと頬を軽く叩き、考える素振りを見せながら、ライリエルに対して肯定的な言葉を紡ぎ出す。
『そもそも『子供らしい』などという曖昧で漠然とした括りに当て嵌めようとするその行為の方がどうかと思いますし、ねぇ? なのでどうぞ今のまま、思ったままを気兼ねなく、何也とお話しくださいませ♪ それに何を隠そうここだけの話、私は存外ライリエルお嬢様のお言葉を拝聴することを愉しみと感じはじめておりますので、寧ろ是非にとお願いしたく存じます♡』
『ふふふっ、それはちょっと良く言いすぎていないかしら? でもありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ、サミュエル!』
自分の吐く薄っぺらな言葉より、少女の紡ぐ言葉は稚拙で整合性に欠けている。
それなのに自分はあの時言葉にしたよりもずっと、あの少女の心情をできる限り吐露しようとする必死ささえ感じる喋りが、嫌味なく好ましいと感じている。
こんな嘘を塗り固めて造った胡散臭さの塊のような自分にも、心から笑いかけてくれるところも、好ましいと感じているのだ。
こんなにも簡単に少女への好感を認められてしまう、常に無く素直過ぎる自分に、くすりと自嘲の笑みが漏れる。
コーネリアスが何編も、何回でも、しつこいくらいに指摘したように、今日の自分は本当に何処かが可怪しいのかもしれない。
「…ライリエルお嬢様はとても変わられましたね。 勿論、良い意味で申し上げておりますとも。 私にしては大変珍しいことではございますが、全くの嫌味なく、本心からそう思っておりますよ。」
作り笑いでなく、素のままでにこりと表情を和らげる。
こんなにも穏やかに微笑まれたことが無さすぎて、その表情を不意打ちで食らわされたコーネリアスはギョッと面食らうしかなかった。
「それはまた…なんと捉えて受け取れば良いのかねぇ、反応の仕方に困る高評価だ。 ライラはサミーの一際厳しいお眼鏡に適った、そう言葉通りに捉えて良いのかなぁ~? 捻くれ者のお前がこれほど素直に褒めるとはねぇ、天変地異の前触れでないことを願うよ。」
「おやおや、旦那様は一体私を何だとお思いなのですか? 如何な私とて、褒めるべきモノ・コトには素直に称賛し称える必要最低限の情緒くらい、ちゃぁ~~んと持ち合わせておりますとも! ただ残念なことに、私の個人的に設けたある一定の基準を満たすモノ・コトがひっじょーーーっに、少ない。 と、云うのが悲しい現実なのでございますよ。」
先程の穏やかな表情は夢幻の如く一瞬で消え失せて、普段と変わらないニヤついた表情に立ち戻ってしまった。
けれどこちらの方が見慣れていて心臓に優しい、言いたくはないが、ほっと安心してしまったほどだ。
「あ~あぁ~~、お前の自分勝手な講釈は耳にタコだ。 それで、今日は結局何時頃にここを発つ運びになったのかねぇ~?? 見送ったりはしないが、年内に終わらせたいと云うからには、明日には帰って来るつもりでいるんだろう? お前のことだから、ここに記してある鬼のような行程を道すがら全て完璧に消化して来るつもりなのだろうしねぇ~。 その為に数いる騎士団員の中から絞り込んで選びぬいたのがこの面々という訳なのだろうがぁ…。 ヴァルバトスを随行させるとは…正しい人選とは口が裂けても言えやしない、正気の沙汰とは思えない誤人選だがねぇ~。」
「許可を下されたのは旦那様でございましょ? 道中かかるだろうと予想されるこの上ない精神的苦痛を伴う心因性疲労、慣れない強行での旅程によって引き起こされる身体的疲労等の多大な負担に私の蚤の心臓が保つかどうか、と心配して下さるのは誠に嬉しゅうございますが、ヴァルバトス君を連れ出すことには些かの文句も無いでしょうに。 『うるさい奴が一時でも消えて一石二鳥♪』とでも思って、お心の内で盛大に小躍りなさっていらっしゃるのでしょう、旦那様はそういうお方ですからねぇ。」
「喜んで何が悪いと言うんだい? これが極々自然な反応、何の問題もない正常な感情の起こりだろうともぉ~! お前たちにも異存はあるまい、喜んでいたのが私独りきりのはずもあるまいにぃ~、さも私が可怪しな反応を示しているかのように宣うものではないよぉ~!?」
心外だと声高に抗議して、自分の訴えの正当性を主張する。
それに、雇用主からの監視の目を逃れて羽を伸ばせるまたとない機会なのだから、喜ばない者は居ないだろう。
「ピンポンピンポぉ~~ンッ! これまたそのとーーりっ、でございますですハイ♡ ヴァルバトス君本人はいたく乗り気でしたよぉ~♪ 仰る通り、いい事づくしだといたく喜んでおりましたからねぇ~! 『心置きなく暴れられてタダ飯食らって酒まで飲める、最っ高じゃねぇかぁーーー!!!』だそうです♡」
「誰がいつ、あいつの無駄に嵩む酒代まで出すと言ったんだ? 論外、考える余地なく全面的に却下だ!! 寧ろ諸々上乗せして給金から天引きしてやれ、遠慮なくな。」
「ンアッハッハッハッハ! それは流石にカワイソーでござーますよ、旦那様! そ・れ・にぃ~、そんな事しようものなら昼夜を問わず抗議しに付き纏われるのは目に見えておりますからぁ、ぜぇ~~~ったいに、イ・ヤ・です♡ そんな無用な被害は被りたくございませんので、上乗せ請求は致しません♪ ですが耳を揃えてきっちりと、請求通りの金額で天引きさせて頂きますとも♪」
自由人なヴァルバトスがはしゃぎ浮かれていた様を、ケタケタ笑いながら主人に語り聞かせる領地家令。
それを聞いて返す主人の言葉は、ヴァルバトスに対して何の情けも容赦もない言葉のみとなった。
辛辣ついでに、過剰請求の提案をぶっ込んでみる。
大変魅力的ではあるが、無用な逆恨みの種は御免被る、と心底嫌そうに言い捨ててから、主人の提案をにこやかな表情のまま却下する。
「あぁ…! これから待ち受ける仕事量の多さを考えただけで動悸が…! 更にその後、待ち受ける事後処理の多さをも思うと、特別手当を頂かないと割に合わない仕事量に思えてまいりますねぇ~? ねぇ~、旦那様ぁ? そーは思われませんかぁ~~??」
「さぁ~て、終わった終わったぁ~~! サミー、お前が追加で寄越した書類はこのとーり!! きっちり処理し終わったからねぇ~、さっさと確認して、さっっさと退室してくれ給えよぉ~~!!!」
バンっと必要以上の音を立てて執務机の際に勢い良く打ち置かれた書類の束は、不揃いなまま束ねられていたものが打ち付けられた衝撃で今は乱雑に折り重なっている状態になっていた。
「…はぁ、やれやれぇ。 旦那様の暴君ぶりにはほとほと、愛想が尽きそうですよ。 しかしながらこの場合は涙をのんで、薄情な主人に泣かされるのはいつもの事、と諦める他ございませんねぇ~、ホロリ。」
主人のいつもと変わらぬ横柄な態度に、こちらもわざとらしく嘆息してから身を預けていたソファーから腰を上げて執務机へと歩み寄る。
折り重なった書類の一塊を手に取り、きっちりと整えてから上から順にパラパラと捲って確認していく。
「心にもない事を、よくもぬけぬけと云えたものだなぁ~、全く。 しかし思いのほか早く事が済んだなぁ…。 アヴィとライラの様子でも見に行くかなぁ~、今ならまだ……、いや、止めておくか。」
「おや、珍しい! 旦那様が奥様に関わることで遠慮なさるなんて、……今日は大雪にでも見舞われますかねぇ~? 困ったなぁ、馬で出る心積もりでしたのにぃ~、予定が狂ってしまいますよぉ~~! 只でさえライリエルお嬢様から別れ際に頂いた申し出を断れず苦心していたというのに……、あーーっと、これはうっかり!! 口が滑ってしまいましたネ。」
「ライラの申し出? しかもお前が苦心するほどの内容だなんてねぇ、ライラに一体何を申し出られたんだ、これ以上の隠し立ては許容しないよぉ~? サミー、包み隠さず、今ここではっきりとその内容を私に話せ。 これは命令だとわざわざ言わなくても、勿論理解しているだろう??」
「はぁーーーーっ、これだから圧の強い主人に仕えるのは骨が折れるのですよぉ~、まぁ~~ったくぅ! えーえぇーー、申し上げますとも、旦那様のお望みのままに。 端的に申し上げますと、ある人物への面会が可能かを問われましたので、結果的には是とお答え致しました。 双方の認識確認の為に申し上げますが、ライリエルお嬢様が望まれた面会相手に関しまして、旦那様からは事前に何も禁止されておりませんでしたからね? なのでぇ~、ライリエルお嬢様との問答に対しての如何なる咎も今後一切受け付けませんので、悪しからずご承知おきくださいませ♡」
「? 何をそこまで年押す必要があると云うんだ? 嫌な予感しかしない…、ライラは誰に面会を希望していたと云うんだ? そもそも何故面会なんて言葉が出てくるんだ、屋敷に居る人間にならそんな言葉使う必要などないだろうに………、うん…? いやいや、まさかねぇ~、そんなはずは………。 誰なんだ、まさかとは思うが、あの子豚では無いだろうかと思ったのは勿論私の気の所為ーー」
「さっすが旦那様♪ 大・正・解、でございまぁ~~~っす!」
「 !!? 」
「いやはやぁ~、苦心いたしましたともぉ~~! 旦那様にどーやって、自然且つ自主的に答えに辿り着いて頂くか考えるのわぁ~~! 手掛かりとなる情報をお教えしていると云うのにぃ、中々正解にたどり着いてくださらないので、内心どーしたものか、と頭を悩ませては気を揉んでおりましたがねぇ~~? ようやっと子豚さんに辿り着いて下さって、心底安堵いたしましたぁ~~♪ さぁ~てさてっ、肩の荷が下りたところで、私は本日の最終確認でもしてまいりましょうかねぇ~~? あぁ~~忙しー忙しいぃ~~~っ♪ それでわ旦那様、御前失礼致しまっすぅ~~、ネ♡」
「おいっ、サミュエル!! 言いたいことだけ言って逃げるな、ちゃんと説明しろっ!!! 戻って来い、サミィーーーーーっ!!!!」
云うが早いか、さっとソファーから立ち上がり、ささっと執務室の扉前まで移動して、さささっと自分がすり抜けられる幅に開けた扉から廊下へと体を逃してから、ヒョコリと上半身だけ覗かせて『御前失礼致しまっすぅ~~、ネ♡』と告げてパタンと扉を閉めて逃げ果せた。
後に続いた主人の声を丸っと無視して、鼻歌交じりに私室のある3階へと迷いなく向かう。
フォコンペレーラ公爵家の誇る有能な領地家令の長い1日はまだまだ終わる目処がたたないが、その足取りは今日1番の軽やかさだった。
その興りは古く、現在から遡るよりもフォスラプスィ王国建国当初から時を進めたほうが早い。
建国から現在に至るまで紆余曲折がありつつも1度たりとも王権を失うことなく一貫してフリソスフォス王家がフォスラプスィ王国を治めてきた。
そして初となる大公家の興りは、建国から5代目の国王の治世、第二王子がその武勇で以て隣国との戦禍を鎮めた功績への褒賞として大公位を叙爵し、それに伴い与えられた権利を行使して興したのが始まりだった。
その後も数々の功績を残し、1代限りの大公位から公爵へと降爵しながらも世襲する許しを与えられ、フォスラプスィ王国の高位貴族として確固たる地位を確立し現在に至るまで見事に存続し続けた最古の公爵家なのだ。
大公家であった当初から一度も場所を移さず、建て替えることもなく、現在まで同じ姿で在り続けてきたカントリーハウスは、建造した当時の魔術の粋を集めて作り上げられた建造物で、その資産価値は今や当時の倍かそれ以上、歴史的な観点から見ても計り知れないものとなっている。
そんな歴史ある建物の2階、広大な図書室の一角を切り取って設けられた、限られた者だけが開扉でき入室することができる公爵家当主の執務室がある。
窓のないこの執務室には、重苦しい空気とともに現在2人の人物が在室している。
当主であるコーネリアスと、その忠実なる下僕(自称)である領地家令のサミュエルが、執務机との揃いの椅子と応接セットのソファーとに別れて座している。
食堂で息子たちと別れた後、コーネリアスが執務室へ来たのはただの気まぐれだった。
執務室で後ほど、と示し合わせた覚えはない、だからといって何か先触れを寄越され所在を問われたわけでも無く、この領地家令はコーネリアスがここに居て当たり前であるかのように決め打ちでふらりとやって来た。
何の用か問う前に、家令の男は言葉数少なく急ぎだという一束の書類を手渡した後、心ここにあらず、といった体でソファーに背を預けて腰掛け、これも非常に珍しいことにぼんやりとしながら何事かの物思いに耽っている。
サミュエルがここまで閉口しているのも珍しい、この男と2人でいて、沈黙が続くなどそうあることではない稀有な状況だった。
沈黙に耐えかねたから、というわけでは全くなく、ただ単に文句が言いたくなって口を開くことにしたコーネリアスは手渡された書類を適宜処理しながら、今日サミュエルがとった数々の異常な行動に言及する。
「それで? 許可もなく食堂に乱入してきたかと思えば散々好き勝手言いたい事だけ宣って、挙げ句のはてには分不相応にもライラのエスコートまで申し出てぇ~、今日のお前は何がしたいんだぁ、どうかしているとしか思えないよぉ~~? そんなに死期を早めたいのかい?? 自殺を志願しているのならもっとわかりやすく意思表示したまえよぉ、そうすれば直ぐにでも昔の誼で兎角苦しませずサクッと逝かせてやるからねぇ~~!!」
ハッハッハ、と渇いた笑い声を上げて物騒な内容を嘯く。
それに返す家令の言葉は平坦で抑揚が欠落していた。
「はぁ、まぁ…そーでございますねぇ。 貴重なご提案を賜り恐悦至極、お気遣い痛み入りますぅ~。 ですが今現在、特にそのような予定はございませんので、必要に迫られた際は折を見て適宜検討させていただきますネ。」
適当な言葉を吐き出しながら、並行して強張った体を蠢かせたあと、軽く揉み解していく。
次には静かに両目を閉じて、目頭を押さえて目元を解しにかかる。
それからソファーの背もたれに頭を預けて、今度は首元から肩にかけてを解し始めた。
「おい、人の話をちゃんと聞く気があるのかサミー?」
サミュエルがこういう対応をするときは、大抵頭の中で他事を考え続けている時だとは長年の付き合いの中で知り得ており、解ってはいる。
けれど考え事をしていると解っていると、無性に邪魔してやりたくなってしまうのが人間の性というもの。
気分を害して若干憤慨している風を装って、意地悪くちょっかいを出す。
「はいはい、しかと聞き届ける態勢でおりますともぉー旦那様。 聞いているからこそ、今こうやって旦那様の言葉遊びにちゃんとお付き合いしている次第でございますからねぇ~、義理堅い使用人だと褒めて頂けましたら何よりの誉れでございますよぉ~~。」
そんな妨害は慣れたもののようで、対応も卒がない。
しかしまだ紡がれる言葉は抑揚を欠いたまま、視線も相手に向けられる事はなく、真っ直ぐ自身から見た正面に向けられたままだった。
「こちらを見る振りだけでもして見せたらどうなんだ? 本当にどうしたと言うんだ、今日の態度は輪をかけて酷いよぉ、悪い病気でも患ってやしないだろうねぇ~?! 子豚を送り届けたならその足で腕の良い医者を探してぇ、一度精密に検査してきたらどうだ、もしかしたら万に1つ、お前のその捩じ曲がった性根を叩き直す手立てが見つかるかもしれないよぉ~??」
っはぁ~~、とわざとらしく盛大に溜息を吐く。
これはいつもサミュエルが寄越してくる反応の中で、コーネリアスが一際イラッとさせられたものを選んで真似てみせたのだった。
自分の振る舞いを真似られて、少しでも不快感を与えられたかと期待したが…、その期待は大きく裏切られた。
くつくつと喉の奥で笑ってから、いつもの調子を取り戻してサミュエルがコーネリアスを見遣った。
つまりは頭の中で考えていた他事が一段落ついたということだった。
「んふふ、謹んで辞退致します♡ 私は旦那様と違って、定期的に行われる全ての検診にちゃぁ~~んと、参加しておりますから♪ 毎回異常なし、とユーゴ君はじめ、医師の皆様から全くの健康体である、との太鼓判を頂いておりますから、これ以上の検査は無用の長物、まぁ~~~ったく必要ございません。 それこそ時間の無・駄、貴重な時間の浪費、でございますからねぇ~♪」
「ふん、あぁそ~かい、なら何が原因だと云うんだい~? 今日見せた異常行動の数々は、ライラのせいだとでも云うつもりじゃないだろうねぇ~?? 弁明如何、事と次第によっては、首を挿げ替えるだけで済まないだろうことを、此処に宣言しておくよぉ!!」
期待した反応を得られず、いつものうざったい態度で痛いところを的確に突っつかれて、知らないうちに相手のペースに飲まれていたことに気付いたときには、時すでに遅し。
当初の目的とは逆に自分が気分を害する羽目に陥ってしまった、というこの上ない皮肉。
憤慨遣方なし、と不機嫌に塗れた渋面で刺々しくシンプルに脅しつける。
「ライリエルお嬢様のせいではございませんので、その必要はございませんよ、旦那様。 それよりも1つご提案させて頂きたいのですがぁ、もうしばらくお耳を拝借して宜しいでしょうか? 率直に申し上げます、い~~加減、あの夫人をどーにか致しませんかぁ? 私、控えめに申しましてぇ、もぉ限・界デス♡。 いつものよーにぃ、サクサクーーッと処理しましょーよー、迅速に、可及的速やかに!」
しかしこれも暖簾に腕押し、サミュエルには響かず軽くかわされて徒労に終わる。
脅されたことも何のその、今までのやり取りは全て言葉遊びの延長と捉え、何一つ引き摺ることなく自分が聞かせたい話題を話せる状況を強引にでも作り上げる。
軽い調子でありながら、その実言葉の1つ1つに込められた負の感情は、計り知れない積年の重みを伴っていた。
「…珍しいなぁ~、サミーがそこまではっきりと音を上げるなんて。 しかしまた唐突だねぇ~、今までだって限界だとぼやきながらも上手く取り繕ってやれてきたじゃないかぁ、なんでまた急にそんなことを言い出したのかねぇ~~?」
パラリ、と書類を捲る手を止めて、思いがけない提案を寄越した家令の顔をまじまじと見る。
その顔には相変わらずの胡散臭い笑顔が張り付いてはいるが、目が笑っていなかった。
「はぁ……、そーですねぇ、その起因となる理由には事欠きませんが、敢えて1つ、今日起こった事例から理由を挙げるとしたならば…ライリエルお嬢様に対する無礼な振る舞い、でございましょうか?」
「ライラに対する無礼な…? おい、サミー!」
「えぇーえぇーー、仰りたいことは皆まで言わずとも重々承知しておりますよ。 年の瀬だからと完全に油断しておりました。 ライリエルお嬢様の部屋に向かう途中、あの夫人に遭遇してしまいました。 まさか夜も更けてから屋敷の2階を我が物顔で闊歩し出すとは…。 私がついていながら不甲斐ない…、ライリエルお嬢様のお目汚しとなる害虫を遠ざけられず、誠に遺憾です。」
コーネリアスが声を荒らげきる前に止めにかかる。
サミュエルだって会いたくて会ったわけでは無い、ほとんど突発的に発生した事故のような邂逅だったのだからサミュエルもれっきとした被害者だ。
それなのにあらぬ誹りを甘んじて受けるなど耐えられない、可能性から根絶やさずにはいられない、業腹ものの嫌疑だった。
「家政婦のマダム・サロメがこんな時間に2階へ降りてきて、一体どこに向かう必要が……、まさかアヴィに会いに?! 全く、あの夫人は何を考えているのか!! まさかそれをそのまま見送ったのか? ライラが居たからと、まんまと行かせたことを私が許すとでも??」
「私に八つ当たりするのはお止めください、全くのお門違いでございますからネ! あそこで私が苦言を呈したならどーなっていたとお思いで? あの夫人に普段以上にしつこく粘着質に絡まれた上、不信感を植え付けてしまっていたことでしょうとも!! それでは本末転倒、今までの忍耐も苦労も、水泡に帰したことでございましょーよっ!!」
「……確かにそうだろうねぇ、あれはお前を自分側の人間だと思い込んでくれている。 それなのにお前があれの意に染まない行動や言動をしようものなら…結果は言わずもがな、かねぇ~。」
「今以上に御し難くなる事請け合いでございましょうネ。 ですがどうぞご安心を、奥様のお部屋には極めて優秀な番犬がおりましたか・ら♡ ライリエルお嬢様は驚いておられましたが、侍女と家政婦の相性の悪さは私共にとっては常識中の常識でございますからねぇ~、万が一を想定して侍らせておいてぇ、だ~いせ~~いかぁ~~~いっ♪でございましたねぇ~~!! どうぞこの優れた采配を思う存分褒め称えて下さいましね♡」
「嫌だね、断固却下だ。 だがまぁ、確かに間違いなく適任な人選ではあるねぇ~、メリッサが居たのなら安心だ、アヴィもあの酷い匂いにあてられる事なく済んだだろうともぉ~~! 彼女は本当に優秀だなぁ~、この屋敷の内外の誰にも懐柔される心配がないしねぇ、女主人の侍女には正にうってつけの人材だともぉ~~!!」
サミュエルへの褒め言葉は死んでも口にしたくない、と態度で示してから、打って変わって侍女へは手放しで称賛してみせる。
そんな主人のつれない態度にも怯むことなく、調子を合わせて同じ様にメリッサを褒め称えてみせる家令の言葉は、何故か言葉通りの賛辞では受け取り難いニュアンスになって耳に届いた。
「そうそう、正に旦那様の仰るとぉーりですからねぇ! 本人・配偶者共に親兄弟も無く、親戚も居らず、誰に唆される心配もない寡婦、おまけに寡黙で勤勉で有能な侍女兼乳母、とくれば確かに好条件が揃い踏みの貴重な人材でございますよねぇ~♪」
「お前が言うと、途端に嫌味にしか聞こえないから不思議だなぁ~。 褒め言葉が反転して聞こえるなんて、嫌ぁ~~な特技だねぇ。 んまぁ、サミーにとっては殊更しっくりくる相性抜群な特技なのだろうけどねぇ~?」
「ほらまたぁ~、そんな失敬な事ばかり仰っていると、ライリエルお嬢様から向けられる、なけなしの信頼を根刮ぎ失くされますよぉ?」
「お前がライラの何を知っていると云うんだ? 知った風な口を聞くなよぉ~、ライラはお前と違って心からの信頼を私に向けてくれているともぉ~!! それがお前に対する言葉遣いなんかで損なわれるはずないだろう、自意識過剰も大概にし給えよぉ~~!!!」
苛立った感情を一層増幅させて家令を睨めつけ、無遠慮に寄越された不吉な言葉を即座に否定し、一笑に付す。
「私がライリエルお嬢様の何を知っているか、でございますか…? ふぅ~~む…、そぉーーですねぇ、お嬢様は見かけによらず幼女らしからぬお方、といったところでしょうかねぇ~?? 後は…。」
鹿爪らしい表情を作って考える素振りをしながら、実際には先程のやり取りを思い起こしていた。
この執務室がある2階の階段付近で予期せず遭遇してしまったマダム・サロメが角を曲がり姿を消した後の通路にて、ライリエルに問うた問答の場面を思い出す。
あの時、確か自分は『誕生日パーティーからこっち、本当に1段と大人びて聡明におなりでぇ、直に見聞きした今でも信じ難い激的で急激な変化ですからねぇ~?』そう言って年端もいかない幼すぎる少女に対して、殆ど好奇心からそう問いかけていた。
けれどそんな気配を少しでも気取らせないように、敢えて真意を探るような目つき且つ全てを見通そうとするかの如く真剣に見えるよう心がけて、表情を作っていた。
何かしらを試されている、そうわかっていながらも、目の前に佇む少女は別段何か気負うでもなく、取り繕うことも、誤魔化すこともせずに思ったままの本心を告げてくれた。
あの澄みきったラピスラズリの双眸が、紛れもない本心であることを如実に物語っていたのもある。
『そんなに私は変わったかしら? 確かに流暢に喋れるようになって、話すのが楽だから今まで以上に沢山喋ってしまっている自覚はあるのだけど…、私はずっと私よ。 それだけは変わってないの、本当に。』
『…左様でございますか。 成程、それは何とも意味深長なお言葉ですねぇ…。』
『子供らしくない…かしら? でもお父様もお母様も、お兄様たちも、誰も否定せずにいてくれたから、私はこのままで良いんだってやっと思えたの。 私が大事だと思う人達が認めて、受け入れてくれた私を、今度こそは素直に誇れる自分でありたいの。』
『子供らしくない』と言われることをどこか恐れているように、不安げに瞳を揺らしながらも、続く言葉を紡いでいくうちにラピスラズリの瞳には惑いがなくなっていき、揺らぎは一切消え失せた。
『私の言動を聞き慣れないうちは違和感を感じると思うけど、これが偽りの無いありのままの私だから、せめて戸惑わずに居てくれたら嬉しいわ! 話す内容は興味がなければ全然聞き流してくれて良いから、ね?』
冗談めかして自分の言動には目を瞑って欲しい、と願う少女の顔を、面白さ半分、驚き半分で見ながら、間を開けず言葉を返す。
『聞き流すなど、とんでもない! そのようなつもりは毛頭ございませんので、ご安心を♡ それに先程も申しましたが、私如きに気遣いなど必要ございませんとも! 私はライリエルお嬢様の話し方を可怪しいとは微塵も思いませんし、子供らしくないとも思いません。』
ふむ…、と少し言葉を選ぶため人差し指でトントンと頬を軽く叩き、考える素振りを見せながら、ライリエルに対して肯定的な言葉を紡ぎ出す。
『そもそも『子供らしい』などという曖昧で漠然とした括りに当て嵌めようとするその行為の方がどうかと思いますし、ねぇ? なのでどうぞ今のまま、思ったままを気兼ねなく、何也とお話しくださいませ♪ それに何を隠そうここだけの話、私は存外ライリエルお嬢様のお言葉を拝聴することを愉しみと感じはじめておりますので、寧ろ是非にとお願いしたく存じます♡』
『ふふふっ、それはちょっと良く言いすぎていないかしら? でもありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ、サミュエル!』
自分の吐く薄っぺらな言葉より、少女の紡ぐ言葉は稚拙で整合性に欠けている。
それなのに自分はあの時言葉にしたよりもずっと、あの少女の心情をできる限り吐露しようとする必死ささえ感じる喋りが、嫌味なく好ましいと感じている。
こんな嘘を塗り固めて造った胡散臭さの塊のような自分にも、心から笑いかけてくれるところも、好ましいと感じているのだ。
こんなにも簡単に少女への好感を認められてしまう、常に無く素直過ぎる自分に、くすりと自嘲の笑みが漏れる。
コーネリアスが何編も、何回でも、しつこいくらいに指摘したように、今日の自分は本当に何処かが可怪しいのかもしれない。
「…ライリエルお嬢様はとても変わられましたね。 勿論、良い意味で申し上げておりますとも。 私にしては大変珍しいことではございますが、全くの嫌味なく、本心からそう思っておりますよ。」
作り笑いでなく、素のままでにこりと表情を和らげる。
こんなにも穏やかに微笑まれたことが無さすぎて、その表情を不意打ちで食らわされたコーネリアスはギョッと面食らうしかなかった。
「それはまた…なんと捉えて受け取れば良いのかねぇ、反応の仕方に困る高評価だ。 ライラはサミーの一際厳しいお眼鏡に適った、そう言葉通りに捉えて良いのかなぁ~? 捻くれ者のお前がこれほど素直に褒めるとはねぇ、天変地異の前触れでないことを願うよ。」
「おやおや、旦那様は一体私を何だとお思いなのですか? 如何な私とて、褒めるべきモノ・コトには素直に称賛し称える必要最低限の情緒くらい、ちゃぁ~~んと持ち合わせておりますとも! ただ残念なことに、私の個人的に設けたある一定の基準を満たすモノ・コトがひっじょーーーっに、少ない。 と、云うのが悲しい現実なのでございますよ。」
先程の穏やかな表情は夢幻の如く一瞬で消え失せて、普段と変わらないニヤついた表情に立ち戻ってしまった。
けれどこちらの方が見慣れていて心臓に優しい、言いたくはないが、ほっと安心してしまったほどだ。
「あ~あぁ~~、お前の自分勝手な講釈は耳にタコだ。 それで、今日は結局何時頃にここを発つ運びになったのかねぇ~?? 見送ったりはしないが、年内に終わらせたいと云うからには、明日には帰って来るつもりでいるんだろう? お前のことだから、ここに記してある鬼のような行程を道すがら全て完璧に消化して来るつもりなのだろうしねぇ~。 その為に数いる騎士団員の中から絞り込んで選びぬいたのがこの面々という訳なのだろうがぁ…。 ヴァルバトスを随行させるとは…正しい人選とは口が裂けても言えやしない、正気の沙汰とは思えない誤人選だがねぇ~。」
「許可を下されたのは旦那様でございましょ? 道中かかるだろうと予想されるこの上ない精神的苦痛を伴う心因性疲労、慣れない強行での旅程によって引き起こされる身体的疲労等の多大な負担に私の蚤の心臓が保つかどうか、と心配して下さるのは誠に嬉しゅうございますが、ヴァルバトス君を連れ出すことには些かの文句も無いでしょうに。 『うるさい奴が一時でも消えて一石二鳥♪』とでも思って、お心の内で盛大に小躍りなさっていらっしゃるのでしょう、旦那様はそういうお方ですからねぇ。」
「喜んで何が悪いと言うんだい? これが極々自然な反応、何の問題もない正常な感情の起こりだろうともぉ~! お前たちにも異存はあるまい、喜んでいたのが私独りきりのはずもあるまいにぃ~、さも私が可怪しな反応を示しているかのように宣うものではないよぉ~!?」
心外だと声高に抗議して、自分の訴えの正当性を主張する。
それに、雇用主からの監視の目を逃れて羽を伸ばせるまたとない機会なのだから、喜ばない者は居ないだろう。
「ピンポンピンポぉ~~ンッ! これまたそのとーーりっ、でございますですハイ♡ ヴァルバトス君本人はいたく乗り気でしたよぉ~♪ 仰る通り、いい事づくしだといたく喜んでおりましたからねぇ~! 『心置きなく暴れられてタダ飯食らって酒まで飲める、最っ高じゃねぇかぁーーー!!!』だそうです♡」
「誰がいつ、あいつの無駄に嵩む酒代まで出すと言ったんだ? 論外、考える余地なく全面的に却下だ!! 寧ろ諸々上乗せして給金から天引きしてやれ、遠慮なくな。」
「ンアッハッハッハッハ! それは流石にカワイソーでござーますよ、旦那様! そ・れ・にぃ~、そんな事しようものなら昼夜を問わず抗議しに付き纏われるのは目に見えておりますからぁ、ぜぇ~~~ったいに、イ・ヤ・です♡ そんな無用な被害は被りたくございませんので、上乗せ請求は致しません♪ ですが耳を揃えてきっちりと、請求通りの金額で天引きさせて頂きますとも♪」
自由人なヴァルバトスがはしゃぎ浮かれていた様を、ケタケタ笑いながら主人に語り聞かせる領地家令。
それを聞いて返す主人の言葉は、ヴァルバトスに対して何の情けも容赦もない言葉のみとなった。
辛辣ついでに、過剰請求の提案をぶっ込んでみる。
大変魅力的ではあるが、無用な逆恨みの種は御免被る、と心底嫌そうに言い捨ててから、主人の提案をにこやかな表情のまま却下する。
「あぁ…! これから待ち受ける仕事量の多さを考えただけで動悸が…! 更にその後、待ち受ける事後処理の多さをも思うと、特別手当を頂かないと割に合わない仕事量に思えてまいりますねぇ~? ねぇ~、旦那様ぁ? そーは思われませんかぁ~~??」
「さぁ~て、終わった終わったぁ~~! サミー、お前が追加で寄越した書類はこのとーり!! きっちり処理し終わったからねぇ~、さっさと確認して、さっっさと退室してくれ給えよぉ~~!!!」
バンっと必要以上の音を立てて執務机の際に勢い良く打ち置かれた書類の束は、不揃いなまま束ねられていたものが打ち付けられた衝撃で今は乱雑に折り重なっている状態になっていた。
「…はぁ、やれやれぇ。 旦那様の暴君ぶりにはほとほと、愛想が尽きそうですよ。 しかしながらこの場合は涙をのんで、薄情な主人に泣かされるのはいつもの事、と諦める他ございませんねぇ~、ホロリ。」
主人のいつもと変わらぬ横柄な態度に、こちらもわざとらしく嘆息してから身を預けていたソファーから腰を上げて執務机へと歩み寄る。
折り重なった書類の一塊を手に取り、きっちりと整えてから上から順にパラパラと捲って確認していく。
「心にもない事を、よくもぬけぬけと云えたものだなぁ~、全く。 しかし思いのほか早く事が済んだなぁ…。 アヴィとライラの様子でも見に行くかなぁ~、今ならまだ……、いや、止めておくか。」
「おや、珍しい! 旦那様が奥様に関わることで遠慮なさるなんて、……今日は大雪にでも見舞われますかねぇ~? 困ったなぁ、馬で出る心積もりでしたのにぃ~、予定が狂ってしまいますよぉ~~! 只でさえライリエルお嬢様から別れ際に頂いた申し出を断れず苦心していたというのに……、あーーっと、これはうっかり!! 口が滑ってしまいましたネ。」
「ライラの申し出? しかもお前が苦心するほどの内容だなんてねぇ、ライラに一体何を申し出られたんだ、これ以上の隠し立ては許容しないよぉ~? サミー、包み隠さず、今ここではっきりとその内容を私に話せ。 これは命令だとわざわざ言わなくても、勿論理解しているだろう??」
「はぁーーーーっ、これだから圧の強い主人に仕えるのは骨が折れるのですよぉ~、まぁ~~ったくぅ! えーえぇーー、申し上げますとも、旦那様のお望みのままに。 端的に申し上げますと、ある人物への面会が可能かを問われましたので、結果的には是とお答え致しました。 双方の認識確認の為に申し上げますが、ライリエルお嬢様が望まれた面会相手に関しまして、旦那様からは事前に何も禁止されておりませんでしたからね? なのでぇ~、ライリエルお嬢様との問答に対しての如何なる咎も今後一切受け付けませんので、悪しからずご承知おきくださいませ♡」
「? 何をそこまで年押す必要があると云うんだ? 嫌な予感しかしない…、ライラは誰に面会を希望していたと云うんだ? そもそも何故面会なんて言葉が出てくるんだ、屋敷に居る人間にならそんな言葉使う必要などないだろうに………、うん…? いやいや、まさかねぇ~、そんなはずは………。 誰なんだ、まさかとは思うが、あの子豚では無いだろうかと思ったのは勿論私の気の所為ーー」
「さっすが旦那様♪ 大・正・解、でございまぁ~~~っす!」
「 !!? 」
「いやはやぁ~、苦心いたしましたともぉ~~! 旦那様にどーやって、自然且つ自主的に答えに辿り着いて頂くか考えるのわぁ~~! 手掛かりとなる情報をお教えしていると云うのにぃ、中々正解にたどり着いてくださらないので、内心どーしたものか、と頭を悩ませては気を揉んでおりましたがねぇ~~? ようやっと子豚さんに辿り着いて下さって、心底安堵いたしましたぁ~~♪ さぁ~てさてっ、肩の荷が下りたところで、私は本日の最終確認でもしてまいりましょうかねぇ~~? あぁ~~忙しー忙しいぃ~~~っ♪ それでわ旦那様、御前失礼致しまっすぅ~~、ネ♡」
「おいっ、サミュエル!! 言いたいことだけ言って逃げるな、ちゃんと説明しろっ!!! 戻って来い、サミィーーーーーっ!!!!」
云うが早いか、さっとソファーから立ち上がり、ささっと執務室の扉前まで移動して、さささっと自分がすり抜けられる幅に開けた扉から廊下へと体を逃してから、ヒョコリと上半身だけ覗かせて『御前失礼致しまっすぅ~~、ネ♡』と告げてパタンと扉を閉めて逃げ果せた。
後に続いた主人の声を丸っと無視して、鼻歌交じりに私室のある3階へと迷いなく向かう。
フォコンペレーラ公爵家の誇る有能な領地家令の長い1日はまだまだ終わる目処がたたないが、その足取りは今日1番の軽やかさだった。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる