転生して悪役令嬢な私ですが、ヒロインと協力して何とかハッピーエンドを目指します!

胡椒家-コショーヤ-

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●本編●

39.屋敷の空白部分を埋めに【往路】part.1

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 お父様とお母様の熱々ラブラブぶりをこれでもか!と超至近距離で平然と見せつけられてしまった直後、お2人の子供としてはどんな顔をするのが正解なのかしら?

1番長くお2人のイチャコラを間近で見せつけられ、耐性抜群なはずのお兄様ですら直視を避けての苦笑いしか浮かんでいないというのに、1番の若輩者のわたくしが一体どんな気の利いたリアクションを取れるというのだろうか!?
聞きしに勝る夫婦愛の実情に、知って後悔見て後悔、と思ってしまったぐらいなのに、どうすれば正解なの??

今の自分の顔色は赤いのに蒼い気もする。
だからって2色が混ざりあって紫色にならない、摩訶不思議な顔色をリアルにイメージしてしまえるのだから…不思議だ。

先行するお父様の背中を見ながらこんなことを考えてしまうのは、親不孝な考えなのかしら?

当事者のお父様はまったく恥じ入る様子は微塵もない。
当たり前だが子供の前だからと恥じ入れる人ならはじめから子供の前でしていないのだから。

お父様が出入り口に辿り着ききる前に、先んじて扉を開けようと控えていた従僕が動こうとした。
それを軽く上げた手の動きだけで止め、どうするのだろう?と思って見ている私に向かって、お父様自ら扉を開けてくださった。

驚く私に、ここでも戯けたように紳士ぶって声をかけられる

「お先にどうぞ、お嬢さんマドモアゼル。」

芝居がかった鹿爪らしい態度で、紳士的に先を譲ってくださる。

「ふふっ、ご親切にどうも、紳士様ムッシュー。」

お父様からの素敵なレディーファーストを受けて、くすぐったく思いながら調子を合わせて言葉を返した。
促されて扉を潜る前に、忘れずにお母様とお兄様に声をかけてからお父様より先に廊下に出る。

来たときとは少し角度を変えた光が燦々さんさんと降り注ぐ明るい廊下をじっと見つめる。
今朝1人でこの廊下を歩いていた時は不安で仕方なかった。
その不安は今も、本当の意味では何も解消されていない。

でも心は大分軽くなった。
色々聞けて、良かったと思う。

整理しきれない情報が多すぎるけれど、それはこれからじっくりと時間をかけて整理していけばいい、そんな心の余裕が持てた。

お父様も食堂を出る前に再びお母様に声をかけていたみたい。
聞いているだけで恥ずかしくなるほど甘々な台詞と、今生の別れか?と勘違いしてしまいそうな大げさな台詞も聞こえてくる。
気が済むまで想いの丈を伝えた後、ようやく廊下で待つ私の隣りにお父様が並び立った。

「いやぁ~、すまなかったねぇ~~! どうしてもアヴィと離れがたくてねぇ、どれだけ言葉を尽くしても足りないくらいなのさぁ~、私のアヴィに対する想いはねぇ~~!! じゃぁ行こうか、エントランスホールまでは道なりなんだが、そこからが少し入り組んだ通路部分もあるからねぇ~、ライラも部屋に戻る時は無理せず独りで戻ろうとしないことだよぉ~~。 いいねぇ?」

「はい、お父様! ちゃんと道筋を覚えるまで自分の記憶力を過信したりいたしませんわ!!」

前半部分は華麗にスルーしてみた、だってコメントが思い浮かばないのだもの。

 ーーやっぱり少しも恥じらっていないわ、お父様ったら…。 しかもまだ言い足りないなんて、愛が深すぎるのも考えものね。ーー

注意を促しながら差し出してくださった右手に自分の左手をのせて歩き出す。
ここで腕を差し出されなかったのは非常に有り難いと内心でかなりホッとする。
お父様との身長差が有りすぎて腕を絡める事などできず、片手懸垂のごとくぶら下がる羽目になっただろうから。

今現在の私の身長は…恐らく90㎝前後。
対してお父様は……たぶん私の倍はあるはず。
ちょうど半分と思うなかれ!
お父様は西洋人体型、つまり胴が短く脚が長いのだ!!
腰を折ってもらうとなると、かなり屈み込ませることになってしまう。
勿論当のお父様はそんなこと微塵も頭にないだろうし、愛娘から腰の心配をされていることも、想像すらしていないだろう。
しかしいくら鍛えていても腰を痛める確率大、だってお父様はアラフォーなのだから少しの油断が命取り、油断大敵なのだ!!!


 毎度しょうもない事を考えてしまっているとは思うけれど、頭に浮かぶとその事をとどんどんと掘り下げていってしまうのは前世からの性分+幼女のさがで強化されてしまって今のところ改善を差し挟める余地がない。

しょうもない事でも考えていると直ぐにエントランスホールまでたどり着いた。
ここからが私の脳内屋敷見取り図の空白を埋める、覚えねばならない作業の始まりだ。

「さぁ~て、ここからが肝心だよぉ~~? しっかり覚えて下さいねぇ、お嬢さんマドモアゼル?」

「しっかり教えてくださいね、紳士様ムッシュー!」

お互いにクスクス笑いながらも、引き続き紳士淑女ごっこを継続する。

2階へ至る階段を正面に見据えて、その階段を右に避けて奥へと進む。
暗がりになっていて遠目には気付けなかったが、近づくと通路がちゃんと見えた。

目の錯覚を利用しているのかと思っていたら、これも魔法による認識阻害の効果だそうだ。
近づかないと見えないようにしてあるそうだ。

玄関はどうしても多くの人目に触れる場所、それを目的としている場所でもあるが、いたづらに不特定多数の赤の他人に屋敷の全貌を知られるのは避けたい。

そこで屋敷の内部に至る各通路には魔法が施してある。
ある条件を満たさないと普通には認識できず、通ることのできない通路もあるとのこと。
絶対と言えないのは少なからず攻略方法が存在するからだった。
それでも魔法に造形の深くない常人に対しては、防犯対策として遺憾無く効果を発揮するのは想像に難くない。

家族は全員その魔法の影響を受けないので、どの通路でも自由に通ることができる。
そのかわりと言っては何だが、少し弊害もある。
それは使用人用通路も自由に通れてしまう事だ。
来客者では通常視認することも、通ることもない通路だが、私たちにはそれらが全て丸見えなのだ。

今眼の前に見える光景が、正にそれだ。

来客者の目には真っ直ぐな通路にしか見えないだろうけれど、私の目には細い使用人用通路がそこかしこに見えて、どこが客室へ至る道筋なのか頭が混乱しそうになる。

使用人用通路の先にはリネン室や備品室、キッチンや仮眠室など多種多様な使用人が使う部屋に繋がっていて、それらの分岐は不規則で先々で細かく枝分かれしているそう。
1度迷い込むと、本当に迷子確定だと実際に見てゾッとした。
笑い事では済まされない、大捜索に発展する事案だ。

 ーー絶っっっっっ対に、自分を過信しない!! 独りで歩いてなるものか!!ーー

使用人通路との識別の仕方も教えていただいたが、今日は絶対独りでは部屋に帰らないと心に誓う、その本気度は今までで1番ガチだ。


 因みに、お父様が教えてくださった順路は次の通り。
今現在歩いている通路は突き当たるまで真っ直ぐ、突き当たったら左に曲がり2つ目の通路で右に、その先3つ目の通路を左に、そして2つ目の通路で左に曲がればやっと、客室前の通路に辿り着ける。

一応覚える努力もしながらお父様に手を引かれて歩く。

 ーーここで左へターン、1…2で右へターン、そんでもってお次は1…2…3で左へターン、からの~~1、2で左へGO~~っ! うわぁ~~っ…広~~~いっ!! しかも明る~~~いっ!!!ーー

客室前の通路は今までより道幅が断然広かった。
この世界では身分が高いものを中心に配して考えるらしく、本邸での1等客室はエントランスの正面奥、屋敷の背面にある庭園に面した中央に配されている。
5つある客室の中から、滞在する人物の身分に応じて相応しい客室をあてがうことになる。

今回メイヴィスお姉様が使用している客室蒲公英ダンドリオンは5等客室となる。
今の位置から見ると、一番奥にある部屋だそうだ。

やっと目的地が視認できる位置にたどり着けたところで、隣から申し訳無さそうに声がかかる。

「部屋の前まで付き添いたかったんだがぁ、そろそろ本当に時間に猶予がなくなってしまってねぇ~…。 中途半端ですまないんだがぁ~、ここまででも大丈夫かなぁ~~?」

きまりが悪そうにポリポリと頬を掻きながら覗き込むように屈みながらお伺いを立てられる。
間延びした口調のままではあるが、その声にいつもの勢いはなく、申し訳無く思っているのがひしひしと伝わる声音だった。

「!? 勿論です、お父様! 時間がない中ここまで連れてきて下さって、本当にありがとうございます!! お仕事がんばっていらして下さいね!!」

今できる心からの笑顔でお礼の言葉を告げる。
私の笑顔を見てホッと胸を撫で下ろし、嬉しそうに笑い返してくださってから、「ありがとう、ライラ! それじゃぁ、楽しんでおいで。」と短く告げて、パッと消えてしまわれた。

 ーー本当に時間がなかったのだわ、お父様の優しさに甘えすぎてしまったわよね…反省。 今後は計画的に行動するようにしましょうっと!ーー

これまで1度も1回目で心に決めたことを実行できていないのに、またも無謀な抱負を抱いてしまったことには気づけないまま。

目的地の客室へと体ごと向き直り、再び歩き出した。
パタパタパタ。
人気のない通路に私の靴音だけが響く。

 ーーせっかくだから、客室の並びも確認しておきましょう♪ 確か扉にそれぞれの部屋の名前になっているお花の浮き彫り細工ルリエフがあるのよね~?ーー

進行方向に対して右手側に顔を向けると、5つの扉が不等間隔で並んでいるのが見えた。
客室の広さはグレードによって違うので、扉の位置が等間隔にならないのは当たり前の結果だった。

まず最初に見えた扉は4等客室のもので、美しい木目が目を引く前世でよくナチュラルと表現される明るめの茶色だった。
大人の目線の高さ丁度の所に紫陽花オルタンシアの、雨に濡れ光っているかのような瑞々しさを感じさせる見事な彩色が施されていた浮き彫り細工ルリエフが見えた。

着色までされているとは思いもよらず、その想像以上の美しさに目を奪われ、その扉の前で立ち尽くして見入ってしまった。

 ーー4等客室の扉でこれほど美しいなら…1等客室の扉は一体全体いか程の美しさなのかしら?!ーー

美術作品鑑賞気分で意気揚々と歩き出す。
期待に胸を膨らませながら、次なる扉を目指す。

次は2等客室、白百合リスブロン
先程は片開きだったが、こちらは両開き扉で、それぞれに向かい合う1対の白百合の浮き彫り細工ルリエフが施されている。
清楚な美しさがしなやかな曲線で優美に表現されている。
芳しい匂いまで感じられそうだ。
扉は白塗りで木目は見えないが、扉全体に銀で装飾まで施されている。

ほわ~~~~っと口をだらしなく開けてその繊細な美しさに見入ってしまう。

 ーーこの扉だけで…お幾ら万円?! あ、しまった!! 円じゃなかった、お幾らルクス!!?ーー

いちいち高価そうな物の金額が気になってしまうのは、元一般中流家庭育ちの元一般庶民の抜けきらないさがのせいだ。
今のところ、セレブの価値観は全く培えそうにない。

後ろ髪引かれながら次なる扉を目指す。

次はお待ちかねの1等客室、赤薔薇の園ロズレルージュ
名前からして豪華絢爛そう、と想像した通りの綺羅びやかさだった。
こちらも扉は白塗りの両開き仕様で、大輪の薔薇がアーチのように中央に向かって弧を描いている浮き彫り細工ルリエフが施されている。
その浮き彫り細工ルリエフを引き立たせるように、扉全体に茨が張り巡らされているかのような精緻な金の装飾が惜しげもなく施されている。
1等客室に相応しい上品で壮麗な美しさだ。

 ーー駄目だ…溜息しか出ない。 美しすぎる、それ以外の言葉がでてこない。 元々乏しい語彙力が事ここに至って、死滅してしまったわ。ーー

キラキラと自ら発光しているかのような煌めきを纏う扉の前で、時間も忘れて心ゆくまで鑑賞に没頭し、見惚れまくってしまった。

 ーーはあぁ~~っ、眼っ福♡ イケメン以外にこの言葉を使う日が来るなんて、想像すらしていなかったわ!ーー

もう既に目的を達成したかのような、もの凄く心地良い達成感が胸を満たしきっている。
本日のクライマックスを迎えてしまった気分になっている。

頭から本来の目的が転げ落ちてしまうほど、この扉の意匠に魅せられてしまった。
まだまだいくらでも眺めていられるが、メイヴィスお姉様に会うためにお忙しいお父様の手まで借りて来たのだから、しっかり目的を果たさねば!

名残惜しいがなんとか意志の力を総動員して足を動かし歩き出した。

次は3等客室、芍薬ピヴワヌ
この扉は片開きで白塗りではあるが装飾はされておらず、彩色された浮き彫り細工ルリエフが施されるのみ。
最初はこの浮き彫り細工ルリエフだけでも感動していたのに、現金なものだと若干自己嫌悪する。
上書きしてきた感動が大きすぎたのだから仕方ないけれど、自分が酷く低俗な為人に思えてしまう。

 ーーまぁ、精神はわりかしある種の毒に侵されきっている自覚はあるんだけど、正面切って突きつけられると落ち込んでしまうものね、だって人間だもの!ーー

この扉は通り過ぎるのに前の3つほどの時間はかからなかった。

 ーーホント現金すぎるわ、自分! ゴメン、ホント…ゴメンナサイィ~~~ッ!!ーー

胸中に押し寄せる苦い罪悪感から逃れるように、小走りで最後の扉を目指す。

たどり着いた扉は、ごくごく質素、あるがままの素材本来の色味を活かしきったウォルナットブラウンに、可憐で温かみのある黄色の蒲公英ダンドリオン
野原で風に揺られているかのような躍動感ある浮き彫り細工ルリエフを見て、メイヴィスお姉様にイメージが被る。

 ーーっっっ超~~~ピッタリィ~~~~!! 仔犬が野原で戯れる蒲公英ダンドリオン!! やっぱりそうだ、お母様から見てもメイヴィスお姉様は子犬系なんだわ、凄い、ドンピシャ、イメージぴったり、わかりみが深ぁ~~~~~いっっっ!!!ーー


 結局最後の扉の前でも5分以上もだもだしてしまって、お父様と分かれてからだいぶ時間が経過しているだろうことが時計を確認しなくても容易にわかった。

 ーー体感時間で小一時間ってところかな? 絶対時間ならもっと短いでしょうけど、ちょっとばかし寄り道が過ぎちゃったかなぁ~~??ーー

先触れとか出して無くて、ホント良かった。
そうでなければ待てど暮らせど到着しない私を心配したメイヴィスお姉様が屋敷の使用人に捜索を依頼してしまう失踪事件に発展していたわね、まず間違いなし。

うんうん、と自分の考えに自分で力強く肯定しながら、手の甲を向けた握り拳を扉にそっと近づけて軽く叩く。

シン…。

 ーーえ、うそ、幼女の拳って…サイレンサー付きなの?! コンコン言わないって、この手のぽてぽてが過ぎるってか??!ーー

拳は確実に扉を叩いた、触れた感触が確実にあったのだから当然だ。
なのに期待した乾いたノック音は響かなかった。

 ーーそれもこれも、ふっくふくのぽってぽてお手々のせいだ! 幼女だからって、ば、馬鹿に…するなよぉ~~~~っ!!ーー

過度の羞恥が怒りに変換された。
その結果、瞬間的に腕力が増強され扉を鳴らすことには成功した。
強く打ちつけ過ぎた幼女の手に、軽い打撲を与えたことは全くの計算外だった。

「?! は、はぁ~~いぃ?! 開いてますので、どうぞぉ~~?」

突然乱暴に扉を叩かれ、驚き半分怖さ半分の少女の声が部屋の中から聞こえる。
公爵家でこんな不作法な振る舞いをする使用人がいたら、即刻クビだろう。

背伸びをして、やっとの思いで扉の取手に手が届き、そのままぶら下がるようにして引き下げて扉を押し開けた。

カチャッ、キィーーーッ…。

幼女の力では扉をパッと押せない現実が悲しい。
重厚な見かけ通りに、この扉は押すのに力が必要だった。
開いた先には短い通路が見えて、その先は開けた空間が広がっているように見えた。

自然に扉は閉まらないので、開けたときと同じ労力を注いでパタンッと音がするまでしっかり押す。

そしてやっと、この部屋の今現在の主と顔を合わせることができた。
今日も今日とて、配分が間違ってると思える毛量で左右に結われた栗色の髪が垂れた耳のように見えるあざと可愛い髪型。
パーティーの時には同じ栗色に見えたけれど、明るい室内で見ると、その瞳は蘇芳色だった。
すこし垂れた目元が愛らしい子犬系女子、メイヴィス・アグネーゼ男爵令嬢が応接セットのソファーに置物のように身を固くして座っていた。

自分には分不相応な高級家具ひしめく室内で、何かやらかさないか気が気でなく、所在無げに1番安全安心なソファーに避難している現状が見て取れた。

私の顔を見るやいなや、プルプル震えだした少女の両の目から、ドッと噴水のような涙が噴き上がった。

「ライラざまぁーーーーーー! よがっだぁああぁ~~!! ゔわぁああぁ~~~~んっっ!!!」

 ーー屋内で虹が鑑賞できるなんて、すんごい特技!! 流石メイヴィスお姉様♡ 好き♡♡ーー

やっぱり可愛いいは正義、と再認識しながら勢いよく噴き上がりだした涙の噴水をうっとりと眺めたのだった。
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